IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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ちょっとタイトルを中二っぽくしてみました。
いわゆるコンセプト変えってやつです。


青い泪は零れ落ちる

<アリーナ内、彰久視点>

 

 

 

『彰久、来るわ! 真っ正面よ! 』

「分かってる――」

 

ロックオン警告が鳴ってから僅か数秒、いや1秒にも満たない速さでギャプランの胴体に青い閃光が襲いかかっていた。

 

「どわぁぁっ!? 」

 

その衝撃に思わず体制を崩し、アリーナ内にあるグラウンドへと俺は容赦なく叩きつけられる。

大きな土煙が周りに立ち込め、セシリアはこちらを一瞥するように見下していた。

 

だが、これはある意味好機ともいえる。

一撃で伏したと彼女は思っているようだが、そんなやわだったら変態紳士などやってはいけない。

 

「ふん、所詮は大見得を切っていてもその程度という訳ですわ。やれやれ、これではわたくしのワンマンショーに――――」

 

「派手にやってくれるねぇ! セシリア様ぁっ! 」

 

そう言い放ったが直後、俺は右腕のシールドビームライフルをセシリア目掛けて数発放った。

完全に油断し切っていたようで、素人の腕でも1発は確実に命中しているようである。

 

「なっ!? 」

 

実はあの時、あらかじめシールドビームライフルを盾として構えており、防御の体制をとっていたおかげでほとんどダメージを削ることが出来た。

衝撃を抑え切れずに落下したのは計算外であったが、結果的には問題ないだろう。

 

「くっ……! おのれ卑怯な……! 」

「戦いに卑怯もクソもありませんよ、これは勝負ですから」

 

「なら、こちらも全力で行かせて貰いますわ! ブルー・ティアーズッ! 」

『何か来るわ、注意して! 』

 

俺の発言を挑発と捉えたのか、セシリアは自身のIS"ブルー・ティアーズ"の展開羽から数基の何かを射出させた。

 

挙動が早く目で追えない以上、"何か"としか判断出来ない俺はエマさんの言う通りに従い、周囲に気を配る。

 

『彰久! 左右2時と9時の方向! 』

 

しかし、ギャプランを襲うのは左右からの衝撃。

不意を突かれた俺は体制を崩しそうになるが、胴体を二つのシールドビームライフルで防ぎつつ地上をブースターによって駆け抜けた。

 

「さあ、踊りなさい。"ブルー・ティアーズ"の奏でるワルツで」

 

セシリアの方を見るが、彼女は見下すように俺を見つめるだけである。

 

急いでこの青い弾幕から抜け出そうと上空高く飛び上がるギャプランを追うのは、先程"ブルー・ティアーズ"から射出された「ビット」であった。

 

「おいおい、あれはストライクフリーダムガンダムか何かっつーの!? ドラg……ビットがあるなんて聞いてねーぞ!? 」

 

『落ち着いて、あれはケルディムよ』

 

「どうでもいいわそんな事!! 」

 

やけに冷静なエマさんにツッコミを入れるが、元々装甲が薄いギャプランには「ビット」の攻撃をも油断することは出来ない。

 

可変機である以上、どうしてもシールドエネルギーや装甲、被弾箇所などには常に気を配ってなければならないのだ。

 

だがこの追われている状況、特別授業の試験の時と似ている。

そう、確かあの時は――――。

 

「エマさん、ビームサーベルの展開を維持する事は可能か? 」

『出来るけど、あなた一体何をするつもり……? 』

「なら上出来! 」

 

俺はギャプランの速度を急激に減速させ、後を追う数基のビット目掛けてあらかじめ抜刀しておいたビームサーベルをブーメランのように投げた。

 

「あら、気をおかしくして自棄になったのかしら? 」

「まぁ見てなって! 」

 

 

オレンジ色の刀身は未だにビットの周辺で回転し続け、そのビームサーベル目掛けて俺はシールドビームライフルを放つ。

 

「ビーム・コンフューズッ! 」

「な、なんて無茶苦茶な……! 」

 

ビームサーベルの刀身のみだけを狙撃し、回転とビームの跳弾によって複数あったビットをほとんど撃墜する。

 

「あなた、本当に初心者なの!? 」

 

命中率さえは低いが、ビット自身が大きければ確率は上がるはず……。

その読みは見事的中し、セシリアを大きく驚かすことが出来た。

 

『彰久、良い報せよ。一次移行が可能になったわ。これによって変形形態へ移行や、ビームサーベルのエネルギーが増幅されて使用時間が延びたわよ』

 

「うっひょー! 変形してアキヒサ・スペシャルしちゃったりそのままセシリア様に抱き付けるのか!! やったぜフラン! 」

『あなた一回撃たれてきなさい』

 

その瞬間ギャプランの画面上に"一次移行完了"との文字が表情され、変形後の形態が事細かに記されている。

 

どうやら変形する時は仰向けになった状態で両腕と顔のみを上げるという形になるらしく、きちんと搭乗者の安否も考慮して設計されているようだ。

 

最高のスピードに、最強の剣……。流石だ、片桐さん!

 

「……わたくしは、負ける訳にはいかない。男なんかに……負ける訳にはッ!! 」

「おわっ!? 」

 

気がついたようにセシリアの方を見ると、何か自分に暗示を掛けていたようで、俺に明確な敵意を向けて手にした狙撃銃"スターライトmkⅢ"を乱射してきた。

だがその射撃は正確無比、的確に胴体や腕部を狙ってきている。

これほど恐ろしい相手はいない。

 

「なら……俺だって打つ手はあるぜ! 」

 

 

瞬間、ギャプランが戦闘機のように変形し観客席やピット内の一夏と箒ちゃんを湧かせる。

 

「すげえ、彰久のISが変形した! 」

 

これこそがギャプランの真の姿であり、"中距離を主体とした可変機"というコンセプトで作られた俺の専用機であった。

 

「こ、この体制はなかなか腰と首にくるなエマさん……。正直痛いぜ……」

 

『仕方ないわ、それが一番安全だったらしいんですもの。他には腰が180度回る体制とかあったんだから勘弁してちょうだい』

 

「殺す気満々だろアンタら!? 」

 

そんな会話を続ける暇も与えないと言うように彼女は容赦なくビットの追撃を行い、自身も"スターライトmkⅢ"を構えており、隙が出来たらすぐさま撃てるようにしている。

だが変形形態時のギャプランは第三世代の機体の中でトップの速さを誇り、第四世代をも凌ぐ速度であるので到底ビットが獲物を捉えることは無理に近かった。

 

「来る……! い、インターセプター! 」

「やっとお近づきになれたな! セシリアッ! 」

 

その速度を保ったまま俺はセシリアとの距離を詰め、互いに手にしたビームサーベルで鍔競り合う。

 

ここだけの会話を切り取れば俺は何回もセシリアに詰め寄る変態みたいだが、決してそんなことはないと弁解したい。

 

だが彼女は遠距離が得意で近距離戦闘が不慣れなのか、昨日の一夏とほとんど同じ挙動で近接ブレードを展開していた。

 

その為、素人の俺でも競り合いに勝つことは容易ではある。

 

しかし油断はできない。

代表候補生はその程度のものではない、何か対抗策を講じてくるはず――――。

 

その時であった。

 

「もらったぁっ!! 」

 

ビームサーベルを握っていた腕の抵抗が無くなり、そのまま切り裂かんと振り下ろすとそこには誰もおらず、ただ俺は空を薙いだことになる。

 

「―――掛かりましたわね」

「なっ……!? 」

 

声のする方向へ視線を向けると、そこには既に腰の砲台を向けるセシリアの姿が。

まだ隠していた、"ミサイルビット"という切り札を隠していたのだ。

 

「に、逃げるんだよォぉぉぉッ!! 」

 

本能的に変形した俺は迫り来るミサイルをなんとか躱そうとアリーナ中を駆け回るが、生憎追尾式であるようでしぶとく付き纏ってくる。

 

このままではミサイルが直撃して、その隙をセシリアに狙撃されてお陀仏だ。

それだけはなんとしても避けたい俺は、エマさんに指示を仰ぐ。

 

「エマさん! 何か打開策は!? 」

『そのままオルコットさんへ向かって! 自爆を狙うのよ! 』

 

ギャプランの速度を高めることによって肯定の意を示した俺は、相変わらず追撃として狙撃銃を放って来るセシリアへと段々近づいていった。

 

だが距離を詰められていることを理解出来ない彼女であるまい、即座に生きているビットを自分の周囲へと配置する。

 

「いっけえぇぇぇぇぇぇぇッ!! 」

「見えて、いますわッ!! 」

 

真っ正面にいるセシリアへと急接近するが、ビットと"スターライトmkⅢ"の弾幕によってミサイルは射ち落とされ、爆風がギャプランへと直撃した。

 

こういう事を予測していたのか、それとも苦し紛れの打開策なのかは分からないがギャプランのシールドエネルギーは確かに100を切っている。

 

「やりまし――」

 

だがその後、爆風によって得たエネルギーと元々のスピードが合成されて突発的な突進力を生み出したのは彼女も予測出来なかったはずだ。

 

「の、のわあああああああッ!!? 」

「え、ちょっ、きゃああああ!! だ、試合中に抱き付くなんてあなたは何を考えていますの!? 」

 

「俺だって不本意だ!! そりゃ普段の言動を見てれば信用してくれないだろうけどね!! 」

「こ、このままじゃ落ち―――」

 

結果的にセシリアに抱き付くような感じになってしまい、いきなり異性に抱き付かれるものだから顔を真っ赤にして怒鳴り散らしている。

 

あ、腕にとても幸せな感覚がするのでそのままでお願いしたい。

 

 

「早く離して下さい! このままでは二人もろとも地面に落下してしまいますわ! 」

「この高度じゃ危険だ! どのみち怪我するぞ! 」

 

「ISには絶対防御という機能が……! ああもう聞いてない!? というか抱き付いてから離れないあなたが悪いんですの!! 」

「それはごめんなさい! 俺が責任をとるから!! 」

 

彼女に抱き付いたまま俺とセシリアは絶賛落下中、体制を立て直すにもこの高度では危険が生じてしまうと考えた俺は――――。

 

彼女を自分の胸へと抱き寄せて、自分自身が盾になるという行動をとった。

 

「―――え? 」

「来るぞ、衝撃に耐えろ! 」

 

直後アリーナ内のグラウンドから大きな衝撃音と土煙が上がり、観客席の生徒たちはその中心に視線を向ける。

 

「草薙彰久、行動不能。勝者、セシリア・オルコット」

 

そのアナウンスを聞いた瞬間、俺の意識は途絶えた。

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<アリーナ内、セシリア視点>

 

 

 彼に抱きしめられて地面に叩き付けられたその後、私の勝利を告げるアナウンスと試合終了のブザー音がアリーナに鳴り響く。

 

おそらく地面に叩きつけられたことが彼のISの僅かなシールドエネルギーを削る決定打になったのだろうが、今はそんな事どうでもいい。

 

「なぜ……わたくしを庇って? 」

 

不思議でしょうがなかった。

 

今まで、ずっと彼に冷たい言葉を投げ掛けていたのに。

どうして彼は、草薙彰久は身を挺して自分を守ってくれたのだろうか。

 

「ふにゃにふゃ……」

 

その問い掛けに、彼からの返答はない。

絶対防御が作動している状態で、運悪く気絶してしまっていたからである。

 

「彼は……もしかしたら……」

 

そう呟いてから私は率先して気絶した草薙さんの介抱へ向かい、ピット内へと彼を搬送してから自分も機体を仕舞おうとピット内へ戻ることに。

 

その際、私の心に確かに芽生えていた。

彼に対する関心が。

 

「彰久、さん……と言いましたわね」

 

そして――――同時に違う心も。





というわけでまた彰久くんの敗北です。
最後辺りが設定的に矛盾してないか心配ですが、そんなご意見がありましたら書き直しますので。


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