IS-突き進め!変態紳士-   作:「旗戦士」

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今回は彰久の初戦闘シーンです。
気合い入れていくぜよ。


変態紳士、初戦闘

<アリーナ内、放課後>

 

 千冬さんの指示に従ってアリーナへと射出された俺は、空中を飛んでいるという感覚に慣れず四苦八苦しながらもなんとか体制を立て直す。

 

入学試験の際にも一度動かしたきり、IS操縦などからっきしなのでやはり慣れていないところは目立ってしまっていた。

 

「やるしかねえ、よな」

 

この状態で試験を乗り越えられるか不安ではあるが、迷っていても仕方がない。

俺はとにかく特別授業で習ったことは活かすように努力するだけだ。

 

そう覚悟を決め、アサルトライフルを無言で展開するとタイミング良く3体のドローンが出現する。

おそらく俺の様子を見計らって千冬さんがそうしてくれたのだろう。

 

 

「草薙、これより特別授業修了試験を開始する。構えろ」

「……はい」

 

 

俺が銃を構えると、相手のドローン達も一斉に個々の武器を構えだした。

 

「先手必勝! 」

 

戦闘開始の合図は俺の銃撃にて始まりを告げるが、15年の人生の中で銃など一度も使ったことがないので案の定ほとんど命中せず、相手の反撃を許す事に。

 

先程の一夏が戦ったドローン達とは異なり今度は剣のドローンが2体、俺との距離を詰める。

やはり試験と言えど恐怖もあり、俺はすかさずその2体から逃げることにした。

 

「だが試験には制限時間がある……。なら、こいつだ」

 

逃げると言っても本当に試験を放棄するわけではない。

いわゆる「逃げるんだよォ~~ッ! スモーキーィッ! 」の戦法をとってみたのだ。

 

そして俺が展開させたのはハンドガンとナイフ、この二つであのドローン達を迎撃と画策する。

確信はないに等しいが、やれるだけやってみよう。

 

「ぬおっ! 」

 

そう思ったが直後、俺は"ラファール・リヴァイヴ"の速度を急激に落とし背後を振り向いてからハンドガンを構えた。

ちなみにナイフは口に咥えており、今の俺はランボーのそれに近い。(うろ覚え)

 

俺の眼前には剣を構えた二体のドローンが迫っており、恐れるようにして俺はハンドガンのトリガーを無我夢中で引いた。

 

「食らいやがれぇぇぇぇッ!! 」

 

至近距離で銃を撃てば、どんなに銃に慣れていなくても命中させることは出来る。

俺はそう考え、極論ではあるがこの方法に至った。

 

……まあ、実戦や試合じゃ役に立たなさそうだけどな。

 

「ッ! 弾切れか! 」

 

マガジンの弾を全部撃ち込んでようやく消滅した1体目のドローンを一瞥し、俺は2体目の剣のドローンと対峙した。

 

武装を先程と同じアサルトライフルに切り替えると、ドローンは動きを予測されないようにと軌道を変えて徐々に俺に接近する。

 

「うわぁっ!? 」

 

射撃の腕など皆無な俺にとってはその軌道を予測することは不可能であり、動きに沿って銃弾を撃つことしか出来ない。

 

だが俺は忘れていた、もう1体のドローンの存在を。

剣のドローンから攻撃を受けないことに必死で、もう1体のドローンが銃を俺に構えていることなど知る由もなかったのである。

 

「ぐッ……!? ど、どこからだ!? 」

 

銃声がアリーナ内に響く度、"ラファール・リヴァイヴ"のシールドエネルギー(いわゆる耐久値)が削られていき、俺の焦りを増大させた。

 

「くっそ、やべぇ! 」

 

剣のドローンに追いつかれないように必死になって速度を上げるが、焦りによって直線的な動きばかりが生じ、銃のドローンにばかり攻撃を受けてしまっている。

この状況は非常にまずい……。

 

「…! そこかッ!? 」

 

突如俺が気配を感じ、銃を構えたその先には確かに銃を携えたドローンの姿が。

だがその時すでに試験終了を告げるブザー音がアリーナ内に鳴り響いており、ドローン2体は消滅していた。

 

「試験終了だ、ピット内に戻れ」

「……はい」

 

しばらく呆然としていた俺は千冬さんの声が聞こえると同時に我に返り、急いでピットへと戻る。

こうして俺は、初のIS戦闘で敗北を喫したのであった。

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<ピット内、彰久視点>

 

 

 「彰久、お疲れ! 」

「おう、ありがとな」

 

「あっきーおつかれ! カッコよかったよ~? 」

「……ぬふふふ、ありがとう本音ちゃん」

 

ピットへと戻って"ラファール・リヴァイヴ"から降りると、一夏と本音ちゃんがそれぞれスポーツドリンクとタオルを手渡してくれた。

 

正直先に試験を行なった一夏と差を感じてた俺であるが、こいつはそんな事を思っていないはず。

……野暮な事思ってしまったかもな。

 

「織斑、草薙、二人ともこっちに並べ。これより評価を言い渡す」

 

それでも構わず千冬さんは俺と一夏を自分の元へ呼び寄せ、試験の結果を言い渡すようである。

やはり表情から察するに結果は良いものではないようだ。

 

「まず織斑。遠距離の相手に対して軌道を読ませない点は良かったが、武装展開の際に発声して展開するな。あれでは敵に戦法を教えているようなものだ。あと相手の把握は常にしておけ、反撃を食らう恐れがあるからな」

 

「うっ……耳が痛いな……ハハ」

 

一夏の評価を言い渡した後、俺の方へ視線を向ける。

 

「次に草薙。武装展開のスピード・挙動共に入学試験後初めて動かしたにしては上出来だった。今後も精進しろ。だが遠距離からの攻撃を受けて焦りを見せるようではまだまだ一人前には程遠い。近距離戦闘もまだ脇や背後があまり見えていない、これから成果を上げていけ」

 

「は、はい! 」

 

 

やはり千冬さんの指摘は的確で、今俺が気にしていた欠点を見事に言い当てた。

一夏も同じように該当したらしく、照れるように頭を掻いている。

そして、評価を聞き終えたところで帰ろうとした俺達を千冬さんが引き留めた。

 

「お前達はIS操縦に関してまだ未熟だが、この1週間ご苦労だった。……明日の代表決定戦、負けるなよ」

 

「はい! ありがとうございました! 」

「……ふっ、見事勝利を貴女に捧げてみましょう! 」

 

微かだが千冬さんの口元が緩み、笑ったことに俺達は敢えて見て見ぬフリをする。

それが変態紳士、女性の笑顔は口に出して喜ばずに心の中に仕舞っておくものなのだ。

 

 

「よし、今日はもう解散だ。明日に備えて早く寝ろ」

「俺千冬さんと一緒に寝てもいいですか? 」

 

「調子乗んなクソボケ」

「ごめんなさい」

 

むぅ、せっかくイケそうな雰囲気だったのに。

それはともかく、既に夕食の時間を回っていた為に俺と一夏は大急ぎで着替えてから食堂へ向かう。

 

こうして、俺にまたひとつ明日の代表決定戦で負けられない理由が出来た。

 

それは、千冬さんの為でもあるから。

 

 




というわけでいよいよギャプランの戦闘シーンへ突入です。
なんか最近戦闘シーンしか書いてないけどいいよね。

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