狭間に生きる   作:神話好き

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十二話(フェローの岩場~最終決戦前夜)

輝ける森エレアルーミン。世界の根レレウィーゼ。そして、ゾフィル氷刃海。フェローが火を司る精霊イフリートになり、残るは地水風の三元素。現存する始祖の隷長に精霊に転生できるような有力者はもはや四体しか残っておらず、その内の三体は明確に敵対をする者。足りないのだ。敵でも見方でもないグシオスを説得できたとしても、まだ半分しかない。

「トートはベリウスの聖核を肌身離さず持っているだろう。直接衝突は避けられぬ」

「だろうな。あいつの懐よりも安全な場所があるとは思えねえし」

精霊となり、世界と繋がったとも言えるイフリート。拡大された知覚はトートの君臨する地点を薄皮一枚隔てた上に己の存在が位置することを悟り、その事実は一筋の光明となった。無論、その案も四大精霊全てが協力してくれることが前提となるのだが。

「そうなると、問題は時間の管理ですね。正直、手も足も出ませんでした」

「触れたら終わりとか、何それズルくない?流石旦那って感じ」

「時間の管理……。なんだか壮大過ぎて想像ができません」

「なんにせよ、彼は私たちと直接決着を着けるつもりでいると思うわ。『星喰み』の侵攻を防いでいるあの方陣がその証拠。待っててやるからここまで来い、ってところかしら」

今も虚空を覆い尽くす巨大な文字盤だが、リミットを示すように時計は回る。注視しなければ分からないが、確実に『星喰み』は地表に接近してきている。もう、あまり時間は取れない。フェロー、いやイフリートが知っていたトートの切り札も千年前のもの。しかし、あのトートがそこで立ち止まってるとは到底思えない。尤も、奥の手の一つを知れただけでも僥倖と言うべきなのだろうが。

「ならば、我はその時までにこの姿に慣れなければならぬな。総ての火を従えるこの身ですら、気を抜けば掌握されてしまいそうだ」

「技術と知識の問題ね。そういう部分なら、学長の右に出るものはいないわ。多分、そのうち圧倒できるようになるとは思うけど……何年後になるかは分からない」

「そういうものなんです……?」

「人が研鑽を積んだ始祖の隷長に対して大きな隔たりがあったのと同じ。研鑽を積んだ精霊は確実に始祖の隷長を上回るわ。その分野においての格が違うのよ」

「あの人と格が違うって……。精霊ってすごいんだね」

「ただ、旦那と付き合いが比較的長い俺からすると、術を封じたとしても手ごわいことには変わりないと思うんだよね。……この間ボッコボコにされたばっかだし」

巨大な爪を振り翳し圧倒したバルボスとの争い。王道とは程遠い動きの体術は、きっと千年の内に編み出したものの一つだろう。その厄介さはパティを除いたメンバーの記憶にも新しく刻まれ、計算高さと野性を合わせたような武は、対策を講じるのが至極難しい。各々の培ってきた力量をぶつけ、仲間全員で隙を補うことでしか対処できない。あるいは、トートの狙いはそこなのかもしれない。個人ではなく、ユーリたちでもなく、世界の全てを相手取って打ち勝つ。文句のつけようのないくらい愚直な案だが、全てを敵に回してでもに自分を貫くのならこれ以上に納得できる方法もない。

「結局、やってみなきゃ分かんねえってことか。まあ、いつも通りだな」

「ボクたち、よく無事に旅を続けられたよね。砂漠で行き倒れたり、帝都からカプワ・ノールまで吹き飛ばされたりもしたっけ」

「誰かさんが大海原のど真ん中で船の魔導器壊して遭難しかけたりね」

「おっさんは血まみれで空高くから落ちたりもしたわよ」

「あなたたち、一体どんな旅をしてたんですか……」

フレンが目頭を押さえながら軽く首を左右に振る。規律正しい騎士団にいた身には、無鉄砲で行き当たりばったりな旅は少々カルチャーショックだったようだ。

「ま、兎に角やることは決まったわ。目的地はエレアルーミン石英林。その後レレウィーゼ古仙洞。そしたら一旦アスピオに戻って連中の研究成果を確認する。異論はないわね?」

「はい!」

手札は順調に揃いつつある。ならば、そろそろむこうが何かしらのアクションを起こしてもおかしくは無い。そんな一抹の不安と共にユーリたちはまた一歩前へと進んだ。

 

 

・・・

クロームが向こう側につくかもしれないという知らせを聞いたのは、テムザ山からそう遠くない現在のヨームゲンでの事だった。かつての面影は点在する廃墟しかなく砂嵐が吹きすさぶ中、待っていたのはデューク。この状況で傍らにクロームの姿が見られないのは些か不自然だと思い聞いてみたところ、まったくもって寝耳に水な回答が返ってきた。涼しい顔したままだったので冗談かと疑ってみたが、現実はもっと複雑で。

「落ち着け。あくまでも可能性の話だ」

「いや……そうだな。考えてすらいなかったから、取り乱した」

四回ほど聞き返したところで我に返り、フェローとの小競り合いでメモリいっぱいいっぱいの頭を回転させる。

「だとしても、何故。咎める気は更々ないけど、クロームがお前と敵対するなんて夢にも思わなかった考えだぞ」

「……私を突き動かすものは友との約束を守りたいという気持ち。お前は家族を守ろうと。些細な願いであれ、守りたいと思ったなら命を掛けるに値する」

「ああ、なるほど。思えば僕の計画を聞いてる時から、あまりいいリアクションは無かったか……」

「逆ならまだしも、自分だけ生き残るのは許せないのだ。彼女は優しすぎる。始祖の隷長らしいと言い換えてもいい。それに……」

デュークにしては珍しく、暫し自身の言葉に言いよどむ。

「それに、彼女は私たちの中で一番三人の会合を心待ちにしていた。あのテーブルこそが彼女の帰る場所で、守りたいものなのだ」

「そりゃ、一人でテーブルを囲むことは出来ないからな……。まあ、そういう理由なら仕方ないと言うか、察せなかった僕たちが悪いと言うか」

「誰しもが帰る場所を必要とする。それを無くしてしまった私たちを一番間近で見ていたのは、他でもない彼女だ。それだけは避けたいと願っても不思議ではない」

不思議ではない、などとぼかした言い方をしてはいるが、デュークの言葉には確信が籠っていた。誰よりもクロームと深い付き合いだった奴の言葉だ。まず間違いはないだろう。それに、不思議と嫌な気分ではない。一部とはいえ、僕なんかが帰る場所になれるとは到底思っていなかったから。あの日、ベリウスが僕にくれたものを、僕は誰かにあげることが出来た。満足だ。これで、あまり思い残すこともない。

「もう、引き返すことは出来ないぞ」

「……そうだな」

「お前は僕とは全くの別物なのに、一番近い。自己犠牲を貴ぶ始祖の隷長とも、欲に忠実な人間とも違う。実に中途半端で、だからこそ愚直だ」

「この身が愚かあることは、十年も前に思い知っている。人の汚い部分を見ていなかった私は、代償として友を失った。そうして私は人でありながら人の世界から自らの居場所を見失った」

「僕は、生まれながらにここにいた。始祖の隷長とも人ともどこか違うこの場所に。全部全部中途半端な狭間の世界。何処にもたどり着かない行き止まり。お世辞にもいいところとは言えないが……。まあ、それでも居ついた物好きがいたもんだからさ」

張り上げたわけでもない声は、甲高く唸る風の音に邪魔されることなくはっきりと届く。僕にとってはたった十年足らず、デュークにとってはもう十年も続く関係。人の欲望で終わらせられるような希薄な関係などではない。だからこれは、僕たちが望んだ終わり。

「……今、地の属性も僕の管理を離れた。審判の時はもうすぐそこ。計画の最終段階を始めよう。世界を救うのは、始祖の隷長の献身でも、人の義でもない。僕たち狭間に生きる者の他愛ないありふれた感傷だ」

「私にも少なからず矜持がある。お前と同じ場所に立って刻んだ事の意味を、永劫の事実とすることで、私はお前と並び立とう。例え、その果てが自らの死であろうとも」

「その時は僕も似たようなものさ。術式の核になるんだ、生きてるとは言い難い」

お互いにいくつも先にある言いたいことを看過しての会話。傍から見たら微妙に噛み合っていないようにも見えるそれは、人で言うところの絆に近い何か。ただ、そこに在るだけで多くと繋がり生きていく人とは違う。狭間に生きるとは、ただ寄りそうだけなのだ。

「じゃあ、行こうか」

目指すはアスピオ。長年かけて改造した『タルカロン』の起動。全ての人の命を啜る災厄を起動させるため、僕とデュークはその場を後にした。

 

 

・・・

「……見事です。あの人たちを止められるとは思いませんが、それでも私が足掻くよりは遥かに可能性があるでしょう」

荘厳で神秘的な雰囲気に包まれたレレウィーゼ古仙洞での激闘は苛烈を極め、双方ともにボロボロ。天秤はどちらに傾いてもおかしくは無かったほどに紙一重の勝負だった。クロームの胸裏に刻まれた小さくて強い願いを託すに足るかの試験。それにユーリたちは見事合格したのだ。

「精霊化の事はトート様から聞いています。不死を嫌うあの方の配慮を無為にしてあなた方に付く私は、きっと背信者なのでしょうね」

「あなたは……」

自嘲の笑みを浮かべて遠くを見据えるクロームの言葉は、誰が聞いてもすぐにわかるほどに後悔に満ちていて、穏やかな慟哭だった。声は震えず、涙も流さず。一枚の絵画のような佇みは、なんて強いのだろうと見るもの全ての心を大きく揺さぶった。世界を救うためでもなんでもない、ユーリたちよりもよほど身勝手で人間的な願いこそがクロームを支え、これほどの力を発揮する。世界に匹敵する想いを目の当たりにして、各々が考えを改める。自分たちの行動もまた、名も知らぬ誰かの祈りを飲み込んでいるかもしれないと。かつて、レイヴンは心臓魔導器なる物で命をつないでいた。例えば、他にもそんな人がいたとして、ならば、世界を作り替え魔導器を捨て去らなくてはならなくなった時、自分たちはその誰かに何と言えばよいのか。覚悟が足りていない。勝利したと言うのに一様に神妙な顔をしているのはそれが原因であった。

「そこで、顔も知らぬ誰かのために悩めるのなら、あなたたちは前に進むべきです。でなければあの二人を止めるなど夢のまた夢。強い意志のみがあの人たちに比肩しうる武器唯一の武器。ここで折れるようなら戦いにすらなりませんよ」

「分かってても割り切れないのが人間なのよ。それが出来るようになるには、一度底を見てこなきゃ無理ってもんさ。……パティちゃんとか俺とかね」

「そうじゃのう……。うちやレイヴンは奪い奪われで一度全てを失くしておるから、奪われない為に戦うことから目を背けずにいられるのじゃ。それに、うちはトートに会わねばならぬ。全てを思い出した今、何をおいても会って話をしなくてはならぬのじゃ」

ユーリたちの中で一番の年長にして元『海精の牙』のボスをやっていた経験は大きく重い。命を懸け、奪い、上に立ち、そして奪われる。立場や責任を深く理解し、受け止めてきた者は、いかなる時も最も強い。それは偽りの立場であったシュヴァーンでも同様だ。少なくともレイヴンは復讐のためとはいえ、隊長としての責任を出来うる限り果たしていたし、結果として慕ってくれる部下も多かった。つまりは、自分の行動で多くの命を散らす覚悟。それをこの二人は持っているのだ。フレンがシュヴァーンを尊敬していた理由もここにある。

「人に限らずすべての生き物はね、生きてるだけで何かを奪い合う競争をしてるのよ」

幼子に言い聞かせるようにレイヴンが口を開く。普段とはかけ離れた優しげな表情も、今は誰も茶々を入れようとせず紡がれる言葉を一字一句聞き漏らさないように耳を傾ける。

「この世界で起きる物事は、突き詰めればそこに行きつく。ああ、嬢ちゃん、そんな顔しないでって。別に悪いって言ってるわけじゃなくて……」

「ご、ごめんなさい…!わたし、レイヴンの話思い出しちゃってつい」

「いや、まあ。そこで俺のために悲しめるなら、やっぱり説教臭い話はいらないかなあ」

うーむ、と顎に手を当てて唸るレイヴン。何を考えているかは定かではないが、ユーリたちにとってマイナスにはならない事だけは確定だろう。

「こんな話して、何が言いたいかっていうとだね―――」

「奪うことを受け止めて、それでも前に進むのが大切なのじゃ!」

「ああ、パティちゃん!今、久々に来た俺の見せ場だったのに!」

やはり、緊迫した空気は数分しか持たなかった。狙ってやったのかは置いといて、普段と変わりない雰囲気に戻ったユーリたちのその胸の内には、確かに新たな覚悟の形が芽生えていた。

「……それでは、お願いします。どうか、あの人たちを止めてあげて下さい」

いい方向に変わった面構えを一瞥し、一瞬だけ微笑むとクロームは言う。

「心です。それで上回る以外に勝利は有り得ません。だからこそ、私はあなたたちに懸けることにしたのです。敵わないと一抹でも思ってしまった私には、あの方たちと相対する資格はない。それでも、私は私の願いを捨てる事だけは出来ない。そして、そんな愚かな私を、あの人たちは誇ってくれるのでしょうから」

「その前に教えて下さい。自分の命を捨ててまで遂げたいと言うあなたの願いは、いったいどんなものなんですか?」

「小さな、本当に小さな約束ですよ。また三人でテーブルを囲みたい。ただそれだけです」

淡い光を放ちながら、体の構成が少しずつ変化していく。生き物から現象へ。劇的な変異による知覚の改変は、クロームだったものに多くの知恵をもたらした。全ての風がクロームに従う感覚。優雅な風をまき散らし、クロームは精霊シルフへと転生を遂げた。

 

 

○○○

三体の精霊を味方に付け、各々思うところは多々あれど、意気揚々とアスピオに凱旋してきてみれば、街そのものが宙に浮いているという異常事態を目の当たりにすることとなった。

「ちょ、なにこれ!?アスピオってこんなだったっけ!?」

「んなわけないでしょ!冗談言ってる場合じゃないってのに、このガキんちょは」

「灯台下暗しってやつだな。アスピオに何かあるのを疑わなかった俺たちも俺たちだが」

「仕方ないよ、これは。街ごと浮くなんて、知らなければ絶対に想像できない」

もはや呆れることは無いだろうと思っていた矢先の出来事だけに、フレンが珍しく乾いた笑いをした。

「きっと、あの場所で待ってるのでしょうね」

「はい……。精霊の皆さんもそう言っています。あの場所の最奥に干渉の出来ない部分があって、その前で待ち構えていると」

「今更話し合いって訳にもいかねえだろうな。互いに譲れねえもんがある」

「それでいいじゃない。少なくとも学長はそのために時間をくれたんだと思うわよ。それに―――」

「リタ・モルディオ!それに皆さんも無事みたいですね。ひとまず安心しました」

ひょこひょこと息を切らせて駆け寄ってきたのは見覚えのあるおかっぱの少年。ウィチルだ。

「りんご頭。お前無事だったのか。てっきり今頃空の上かと思ってたぜ」

「誰がりんご―――ってそんなこと言ってる場合じゃないでしょう。こっちは大変だったんですからね。アスピオが浮上したり魔物の大群が押し寄せたり」

「魔物が!?他の皆は無事なのか……?」

「あ、はい。向こうの方で全部固まったまま動かなくなってます」

「ってことは、そっちも準備は出来てるのね」

「読み取った術式を反転させただけの付け焼刃ですが、効果は莫大です。目立つ欠点としたは、抑えが利かない点でしょうか。何分サンプルがザウデの魔核しかなかったもので。まあ、おかげで魔物の襲来を防ぐことが出来た訳ですが」

「何の話をしてるんです……?」

「対抗策その一、よ」

リタが無造作に歩み寄り手を出すと、ウィチルが懐から傍目には暗号にしか見えない文字の羅列が記された紙の束を受け渡す。ぱらぱらと捲られていく書類の一字一句を見逃さないよう、一切の言葉を発することなく没頭するリタに変わって、ウィチルが置いてきぼりを喰らっているユーリたちに説明を始める。

「いいですか。学長と戦うに当たって、警戒すべき事柄がいくつかあります。一つ目に魔術。二つ目に時間操作。三つ目にその不死性。もちろん他にも脅威はありますが、大別すると大きく目立つのはこの三つです。ですから、僕たちはそれをどうにか封じられないかと考えました」

こほんと小さく咳払いをして、計画の全貌を語り始める。

「リタ・モルディオの仮説から、僕たちは『マナ』と呼ばれる存在を操れるようになれば、互角とはいかなくとも対抗できると考えました。あまり言いたくはありませんが、彼女は天才ですから」

「そりゃ朗報だ。間違ってもあの魔術を受けたくはねえからな」

「続いて時間操作。とりわけ危険なのは停止ですね。やられてしまったら詰みです。なので、あなたたちが旅をしている間にアスピオが総力を挙げてこれを作りました」

再び懐から取り出したのは手のひらサイズの懐中時計。ただし、中を見てみると数字の並びが反時計回りになっている。

「まだ試作品の域を出ない物ですが、一度だけなら学長の真似事が出来ます。と言っても本人に効果があるとは思えませんので、止められてしまった人の時間を正す。解毒剤のように使うといいと思います。今、避難所で同型の物をいくつか作っている最中ですので、どうにか人数分くらいは用意できるはずです」

「一人に付き一度は触れられる。それなら、いくらか作戦の立てようもありますね。零と一の差は大きい」

一対一で手も足も出なかったフレンのトラウマも、これで少しは払拭されただろうか。心の底からほっとしながらそう呟いた。

「最後に不死性ですが……。これに関してはお手上げですね。無茶ぶりもいいところですよ、こんなの」

「十分だ。一番厄介なのを解決してくれたんだからな。残りは俺たちの方でどうにかするさ」

「……歯がゆいですね。僕が戦うことが出来たなら、無理にでも着いていくのですが。足手纏いにしかならないことくらい、分かってるんですけどね」

「そんなこと気にしなくていいっての。あんたたちは仕事をきっちりこなしたわ。後はこのリタ・モルディオに任せておきなさい。さくっとあの浮いてるの撃墜して、学長のして連れ帰って来てあげる。数日後にはいつも通りのアスピオよ」

一通り目を通し終わったリタが会話の輪に入ってくる。珍しく素直な労いにウィチルの顔が驚愕に歪んでいるが、それを完全に無視して紙の束を返却すると、全員が見渡せる位置に立って腰に手を当てる。

「現状で打てる手は全て打ったわ。成果も上々。魔術に関してはほぼ封じられたと言っていいのは、いい意味で誤算ね」

「正確には地火風の魔術は、ですが」

「まあ、なるようにしかならないでしょ。どっちにしろ、旦那は何かしらの奥の手くらい持ってるだろうし」

「です。わたしも、トートを止めて、そして謝らなきゃいけません。あれから世界を見て、自分を知りました。たくさんの事を知って、一回りだけ大きくなれました。今ならきっと、受け取ってくれると思うんです」

「じゃあ、行くか。俺たちの答えを示すために」

日は沈み、一様に夜空に浮かぶ最後の場所を見上げながら、ユーリたちは決意を声にした。


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