多世界の物語 ~NARUTO~   作:瀧音

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始まる修行

 ナルトの修行が始まった。と言っても最初は体を動かす実践は行わず、座学だけにとどめた。これはナルトがまだ三歳ということと、今まで全く外に出て遊んだことがないことからマツモが判断した。まずは外で遊べ。それがナルトに課された一番最初の修行内容だった。

 

 座学もやはり本腰を入れることはなかった。内容は語学のみにとどめ、文字を読めるようになることを最優先にしていた。文字さえ読めれば自分で本を読むことができ、自分の意思で知識を得ることができるからだ。幸いナルトは読み物を好み、マツモが手渡したあらゆる入門書を読破していった。さらにナルトは読み方の効率さえ高めていき、一日で十冊の本を読むようになっていた。まだそこまで厚い本はなくせいぜい五十ページというところだが、全部合わせて五百ページを超える文章を読むナルトの集中力は恐ろしいものがあった。

 

 しかし一日中本を読むことは許されなかった。何しろ体作りをしなければ実践には移れない。どれだけ知識をためてもそれを試すことができないのだ。頭を使うことで精神的に成長していたナルトだが、お預け状態は勘弁してほしかった。なので太陽が出ている間はとにかく庭を走り回り、付き合ってくれるクラマを追いかけ、追いかけられ、泉で泳ぎ、山を登った。もちろん最初は修行のためという意識があったのだが、そのうち楽しくなって忘れてしまうというのはやはり歳相応であった。

 

 

 そして、そんな生活を続けて一年がたとうというころ、マツモは次の段階の準備を行った。

 

 

 「さて、今日から本格的な修行を始めるよ」

 「オッス!」

 

 庭に流れる川の近くにナルトとマツモの姿があった。ナルトは実践が始まるということで興奮を抑えきれない様子だ。すぐにでも体を動かしたいとうずうずしているのを見て、マツモは苦笑した。

 

 「あんまりはりきりすぎるなよ、ナルト。

  すぐに疲れちゃうぞ」

 「大丈夫だってばよ!それで、何するんだってば?」

 

 ナルトが修行内容を聞くと、マツモは「ほい」と緑色の筒のようなものを渡した。竹でできているようで、ナルトの手でもしっかり持てるくらいの太さになっていた。筒の両端はふたがされているが、片方には小さい穴が開いている。ナルトはこれに似たものを見た覚えがあった。

 

 「兄ちゃん、これ水鉄砲?」

 「そう、これは水鉄砲だね」

 「でもこれ、水を押す棒がついてないってばよ?」

 

 確かにそれは水鉄砲にそっくりだったが、本来穴が開いてないほうの端から棒が出ていないとおかしかった。中の水を押すものがなければ水は出てこない。

 

 「この水鉄砲はちょっと変わっててね。

  水はもう入ってるから、川に向けて両手でぐっと握ってごらん」

 

 言われるがままにナルトは筒を持ち、強く握ってみた。

 

 「わ!水が出たってば!」

 

 竹が変形するほど握ってないはずなのに、穴から水が飛び出し川に落ちた。「すげーってば」と何回も握って離してを繰り返すと、その回数だけ水が飛び出した。今度は長く握ってみると、握っている間水が勢いよく出続けた。そのうち水がでなくなった。

 

 「水は川から補充して、次はあの的を狙ってみてごらん」

 

 いつの間にか川の中央、そして対岸のほうに的が立っていた。ナルトは急いで水を入れると、まずは近くのほう、川の中央にある的を狙う。水鉄砲から水を出しっぱなしにして方向を修正すると、簡単に中央に当たった。今度は対岸に立っている的を狙うと、水の勢いが足りなく手前で落ちてしまう。しかしナルトは何回か握り離しするうちにこの水鉄砲の特性を理解していた。先ほどより強く握ると、水が勢いよく飛び出し対岸まで届いた。あとは同じように角度を変えれば当てることに成功できた。

 

 「こんぐらい簡単だってばよ!」

 「そうかそうか、よし、ならあれはどうかな?」

 

 余裕そうに言うナルトにマツモはさらに奥を指し示す。その的は対岸の的よりかなり奥にあり、そのまた奥にも的があるのが見えた。

 

 「げ、あそこまで?」

 

 ナルトは一転顔をしかめた。川の幅は五メートルほどであり、その奥の一つ目の的は十メートル、さらに奥のは十五メートルほどのところにあった。とにかくやってみようと水鉄砲を握る。しかしナルトが限界まで強く握っても手前の的には届かず、それどころか対岸以上には飛距離が伸びなかった。

 

 「あ、あれ?この水鉄砲これ以上勢いでない?」

 「さて、どうだろうね」

 

 意味深に笑うマツモにナルトは唸る。ここでナルトはやっと思い出したのだが、これは修行だ。だとすると、今回の課題が見えてくる。

 

 「ではナルト、課題を説明しよう。

  その水鉄砲はもっと勢いよく水を飛ばすことができるんだ」

 

 「こんなふうにね」とマツモが試しに水鉄砲を片手で持つと、パァン!、と何かが破裂したような音が響く。それが一番奥の的に水が当たった音だと気づくのに、ナルトはかなり時間がかかった。

 

 「今やったように特別な道具は必要ない。

  ナルトはまだ両手でないと難しいかもしれないけど、俺やクラマなら片手でもできる。

  これは握力の問題じゃないんだ。

  いったいどうすればもっと勢いよく水が出せるか?

  それを考えて実践、一番向こうの十五メートルの的まで届かせるんだ」

 

 ナルトは水鉄砲をもう一度受け取ると、まじまじと見つめた。同じ水鉄砲なのにあそこまで勢いが違うなんて、目の前で見せられてもすぐには信じられなかった。

 

 「期限は一週間。その間に成功させること。

  それと、的に水を当てるとき出しっぱなしにしてはいけないことにしよう。

  水鉄砲から出た最初の水が的に当たるようにするんだ」

 「…わかった」

 「あんまり無理はしないこと。疲れたらしっかり休むんだぞ」

 

 こうしてナルトの初の実践課題が始まったのだ。




無事にあげられました。
できれば明日も上げたいと思っていますが、間に合えば、ですね。

ナルトの修行に関してはあんまり書く気はないです。
まあ修行パートってたいていつまんないですし。
書いてても微妙ですからね。
なので多分これと次の話だけです。

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