1.三代目火影と上忍
―――火影の執務室にて
「失礼します、火影様。報告書が届いております」
そう言いかけて執務室に入った上忍は、思わず叫びそうになった。
「おお…そうか…こちらへ」
何しろ答えるヒルゼンの顔色は青ざめ、手はプルプルと震え、こちらを見つめる瞳には生気が宿っていないかった。上忍は自分の上司を完全に幽霊と見間違えた。
「ほ、火影様!?どうされたのですか!?生きておられますか!?」
「だ、大丈夫じゃ…ほ、ほう、ほうこ、報告書、ををを、ももももももも」
「全然大丈夫じゃありません‼何があったのですか、悪いものでも食べたのですか!?」
何気かなりひどいことを上司に叫んでいるが、いつものような叱咤は返ってこず、まるで壊れたテープのようにおんなじ言葉を繰り返すばかり。これは本格的にまずいと上忍は焦った。
――ここで何かあったら、私が疑われる‼
結構ひどい性格の上忍だった。
「な、何か、そうじゃな、あったと言えば、あった」
「そ、それは?」
「ふ、ふ、ふむ、昨夜の、夢、夢見が、悪くて、のののの」
もう今にも口から泡を吹きそうなヒルゼンに対し、上忍はすぐにでも逃げ出したかったが、原因に興味がでてきて思わず聞いてしまった。
「夢、ですか?それは、どのような?」
「小さな、部屋に、閉じ込められての、上から水が落ちてくるのじゃ、忍術も使えず、部屋を水が満たし、息が持たなくなったと思ったら、水が消えて、また息が持たなくなったら消えて、もたなくなったらきえて、ももももももももももももぶくぶくぶくぶくぶく」
「誰かああああぁぁぁぁ‼医療班‼霊媒師‼誰でもいいからおらぬかああああぁぁぁぁ‼」
本当に泡を吹き始めたヒルゼンにパニックに陥って部屋から飛び出す上忍。
ちなみに、ヒルゼンの机の上にはなぜか紙に大量のサインと印鑑が押されていた。本人がしたと思われるが、どうしてなのかは永遠の謎だった。
2.二十歳になってから‼
「これおいしいってば!」
「そうかそうか、良かったな」
新しい家の居間でナルトとマツモの楽しそうな声が聞こえる。
八畳あるので二人だと十分余裕があった。
「あ、クラマ!クラマものむ?」
「ほう?何を飲んでおる、の、じゃ…?」
そんな声に誘われて夜の月を見に行っていたクラマが戻ってくる。
しかしクラマが見た光景はとんでもないものだった。
「ナルト、その、手に持っておるのは…?」
「ん?えっとね、かわずころし、っていうへんなのみものだってば」
「どう考えてもお酒ではないか‼」
その茶色の一升瓶はどう見繕ってもお酒だった。
「ちなみに蛙ころしはアルコール度数二十五%だよ」
「そんなこと聞いておらん‼子供に酒を飲ますとは何事じゃ‼」
そしてやはりお前が飲ませたかと牙をむいて威嚇するクラマ。
マツモはやっぱりニコニコ笑いながら弁明した。
「いや、ナルトが飲んでみたいっていうからね。
たぶんまずいっていうと思ったんだけど、まさかおいしいとは予想外だったよ」
「たとえおいしいと思っても飲ませてはいかんわ‼」
健全な青少年の成長が妨げられるぞ!お酒は二十歳になってから!と叫ぶクラマにマツモは問う。
「あれ?なんでクラマそんな人間の知識があるの?」
「ナルトを育てるために必要なことをあの保母とかいう女から知ったからの。
こういうことをしてしまわないためにじゃ!」
胸を張り威張るクラマに、さらにマツモは問うた。
「子育ての知識だけ抜き出したの?」
「もちろんそうじゃ」
「本当に?」
「き、決まっておろう」
「他の記憶見てない?」
「と、と、と、当然じゃ」
「…恥ずかしい記憶」
質問されるたびに冷や汗が噴き出してきたクラマに、マツモがボソッとつぶやいた。
「‼」
「人間の…な話とか」
「…ぐ」
「あとは…で…の…な」
「それ以上言うでないわ‼」
再び噛みつくクラマに大笑いするマツモ。
そしてその隣で全く顔を赤くせず瓶を飲みきってしまったナルト。
新しい住居の初めての夜はにぎやかに更けていった。
「あ、でもナルトに飲ませたのはアルコール入ってない味だけ似せたやつだよ」
「よしマツモ表に出よう一発殴らせるんじゃ」
「クラマなんでおこってるの?」
「お主のためじゃ」
「?」
小話でした。
三代目は覚えていませんが、ループする間に何回も恐ろしい声で、
「サインしろ…サインしろ…」と脅迫する声が聞こえています。
すると言っても問答無用で何回もループしました。
いったい何だったんでしょうね?(笑)
そしてナルトが酒を飲んだ、と勘違いしたクラマの話。
逆にマツモに変なところをつつかれてしまいました。
実際には見てなくとも言われると見たような気分になってしまうことがあります。
いったい何のことでしょうね?(棒)