とある死後の風紀委員   作:エヌミ観測手

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ギルド降下作戦はカットしました。
ではどうぞ


第9話天使エリア侵入作戦

オペレーショントルネードから数日後、戦線本部に黒子と音無はいた、そこで岩沢が新曲を披露しているからだ、彼女の奏でる美しい音色が部屋中に響き渡る。

音無{すごいな。}黒子{陽動部隊のリーダーと聞いてましたがギターが上手ですわね・・・。}

ただただ2人も感心する、やがて引き終えた岩沢がゆりに話しかける。

岩沢「どう?」

ゆり「なぜ新曲がバラードなの?」

岩沢「いけない?」

ゆり「陽動にはね・・・。」

岩沢「わかったこれはボツにする。」

ゆりは気に入らなかったらしく、いすの背もたれに体重を預け横を向く。

音無「そもそも陽動って何だ?」

ゆり「あなたこの前聞いてなかったの、彼女たちは校内で大人気のロックバンド、ガールズデッドモンスター通称ガルデモよ、校内にファンクラブもあるわ。」

黒子「NPCはミーハーなのですね、聞こえてきた歓声からすると熱狂的なようですし。」

音無「その人気バンドが陽動部隊というのは?」

ゆり「あたしたちはミッションを行う際はNPCたちに危険が及ばないようにしなければならないわ

時にはその場から遠ざけたり、1箇所に集めたりしてね。」

黒子「なるほど彼女たちの人気を利用してるわけですのね、先ほどの新曲披露は注目されそうですわね、ということは・・・。」

ゆり「察しが早くて助かるわ、我々は3日後に天使エリア侵入作戦を行うわ。」

音無「天使エリア侵入?」

黒子「天使の生活空間に侵入ってことですの、破壊工作とか情報収集が目的ですの?」

ゆり「ホントに黒子ちゃんすごいわね、実は今回で2回目の作戦なのよ、目的は天使エリアで神に関する情報を引き出すのよ、前回は失敗したけど・・・。」

高松「前回入るのは簡単でしたが、入った後が問題でしたね。」

日向「中枢はコンピューター制御だったからな、ゆりっぺ考えはあるのか?」

ゆり「心配ないわ 我が戦線、最大の弱点アホを露呈して、失敗に終わった前回と違って

今回彼を投入するわ。」

音黒「「リーダーがアホっていうなよ。」」と2人は落胆する。

ゆりはいすから立ち上がり、横にずれるといすの後ろから眼鏡をかけた小柄の男子生徒が現れた。

一同「「「「おお!?」」」」

ゆり「天才ハッカー、ハンドルネーム竹山君よ、彼に作戦に参加してもらいリベンジを果たす。」

竹山「僕の事はクライストとお呼びください。」

黒子「ハンドルネームがクライストで、本名が竹山ですわよね・・・。」

音無「俺もそう思う。」

とあきれる2人、音無がゆりに質問する。

音無「一度やって失敗したんだろ、侵入したことは天使にばれなかったのか?」

黒子「もし気づかれていたら、以前より警戒されてるのではないでしょうか?」

ゆり「その点は心配要らないわ、陽動部隊に重大な役割をしてもらうの、岩沢さんお願いね。」

岩沢「わかった、練習があるからもう行ってもいいか?」

ゆり「ええ、いいわよ。」

その後作戦内容の説明が終わり、解散の流れになったが黒子と音無は日向に呼び止められた。

日向「2人とも後で武器庫に来てくれってさ、ギルドのやつが弾薬と新しい武器を持ってきてるらしい、場所はわかるよな、そこで日下部ってやつに声をかければいいからさ。」

音黒「「ギルド?」」

黒子「武器庫はトルネード作戦の翌日に行ったところですわね。」

日向「ああ、そういや2人ともギルドは知らないんだっけ?」

音無「ギルドって言うのは?」

日向「俺たちの使う武器は地下にある武器製造拠点で仲間たちが作ってるんだ、俺たちはギルドって呼んでる。」

音無「天使に見つからないように地下にあるわけか。」

黒子「本格的ですわね、今に始まった事ではないですが。」

その後、2人は武器庫へ行き日下部という男子から拳銃の予備マガジンを受け取り

新しい武器として音無はガリルを手渡され、黒子はMP5Kを受け取りその場を後にする。

 

 

第二連絡橋下

パァンパァンと銃声が響く、音無と黒子は射撃練習を行っていた。

音無「最初どうなるかと思ってたけど、あいつらいいやつだよな。」

黒子「第一印象は最悪でしたが今はそうでもありませんわね、このまま仲間として

一緒にいられそうですわね。」

音無「なんか、溶け込んじゃってるよな俺たち。」

黒子「ええ、このままこの世界に居続ける事になりそうですわね・・・。」

音無「忘れていた記憶を思い出せたら、どうなるんだろう。」

黒子「音無さんはご自分の苗字しか思い出せてないんでしたね、わたくしは名前と自分の能力

を思い出せましたが、あなたは・・・。」

と申し訳なさそうに黒子が俯くのを見て、雰囲気を変えようと話す。

音無「そういえばさっきの日下部ってやつイケメンだったな、モデルとかやっても違和感ねぇよ。」

黒子「確かに10人中10人がイケメンって答えますわね、あの容姿なら。」

音無「ギルドって手先が器用なやつが多いらしい、あいつもそうだとしたら女子にモテまくるだろう、かっこいいだけじゃないからな、お前はああいうのはタイプじゃないのか?」

黒子「殿方のタイプ、う~んわかりませんわね、色恋沙汰はわたくしにはさっぱりですわ。」

音無「お前だって、まだ子供っぽいけどさ、すごく可愛いと思うぜ。」

黒子「な!!!」

音無「成長すれば、美人になるぜ。」

黒子「と・とにかく射撃練習に戻りませんこと、わたくし新技を習得しましたの。」

音無に恋愛話を持ちかけられ、居心地の悪くなった黒子は話題を変える。

音無「新技?」

黒子「見ていてくださいまし、まずは普通に撃ちますの。」

パァンパァンと撃ち始める黒子、音無はそれを眺める。

やがてパァン、カチャと装弾数17発撃ち終わったベレッタPX4はスライドがストップする。

普通ならここで撃ち終えたマガジンを抜き、別のマガジンを差込み装填するのだが。

黒子「・・・。」

マガジンキャッチボタンを押し、空のマガジンを抜く動作をする黒子だが、

カチャと空のマガジンを戻してしまいスライドも戻した。

音無「お前、それじゃ・・・。」と音無が言おうとすると。

パァンと黒子は空だったはずのマガジンから弾を撃ち出す。

音無「どうなってんだ!?」

黒子「仕組みはこうですの、空のマガジンをテレポートしたあと別のマガジンを手に持った状態

でテレポートしそのまま装填しますわ、これなら最小限の動作でリロードが終わりますの。」

音無「グリップにマガジン差込口がある拳銃ならではの技ってわけだな、すげえ。」

黒子「この前の作戦の後に色々自分の能力を試してみましたの、それで編み出せましたの。」

音無「もう、ホントすごいしか出てこないよ・・・。」

黒子「一旦休憩にいたしましょう、飲み物でも買いに行きませんこと?」

音無「そうだな、もうやめにするか。」

2人はその場を後にし、学習棟の自販機へ向かう。

 

 

学習棟B棟の自販機で飲み物を買う2人、音無はKEYコーヒーで黒子はミネラルウォーターだ。

音無「ん?」

黒子「どうされましたの?」

コーヒーを飲んでた音無は何かを見つけ、校舎内へ入ってゆき、黒子も後に続く。

???「んしょ、これで最後・・・。」

音無と黒子は壁の掲示板にポスターのようなものを貼ってる女子生徒に出会った。

音無「これが例の派手な陽動か。」

???「ひうっ!!!」と女子生徒は短い悲鳴をあげる。

音無「悪い、脅かしちゃったか。」

黒子「熱心にポスターを貼っていて、気づかなかったみたいですわね。」

???「ああ、あなたたちは!!!」

音無「知ってるのか俺たちのこと?」

???「もちろんですよ、期待の新人さんですよね・・・。」

音無「俺が?」

???「いえ、そっちの女の子のことですけど。」

音無「うん、やっぱりそうだよな、俺は何を期待したんだろ。」

黒子「音無さん気を落とさないでくださいな、わたくしが言うのは変ですけど。」

???「超能力持ってるとかって、すごいっすね。」

黒子「ええと、初めてお会いしますわね、あなたは?」

???「ユイっていいます、まだガルデモの下っ端ですけどよろしくお願いしまっす。」

黒子「こちらこそわたくしは黒子と申しますの。」

音無「俺は音無だ、貼ってあるポスターに体育館占拠ってあるが大丈夫なのかよ。」

ユイ「そりゃあ、やばいっすよ、前代未聞です、ゲリラライブじゃなくて告知ライブですから

当日は先生が邪魔するかもですし、何が起こるかわかりませんよ。」

音無「ゆりが言ってたのはこの事か。」

黒子「ずいぶんお好きですのね、ガルデモを。」

ユイ「大好きっすよ、ああ見えて・・・。」

熱くガルデモのことを話し出すユイ、いやな予感がした黒子は音無の手を取ると

黒子「ごきげんよう、ユイさん」音無「黒子、ってうわ!?」ヒュンとテレポートで去ってしまう。

ユイ「それでですねっていない!!!」取り残されたユイはあちこち見渡す。

 

 

学習棟A棟の廊下

ヒュンとテレポート先の廊下に音無と黒子が着地する、突然の出来事に音無は黒子に文句を言う

音無「今のは一体、黒子お前の力かびっくりさせるなよ。」

黒子「申し訳ありませんわ、話が長くなりそうだったので早めにお暇いたしましたの。」

音無「自分だけじゃなく人も運べるのか、すごいな。」

黒子「初めてでしたが成功して何よりですわ。」

音無「俺を実験に付き合わせたのか!?」

黒子「結果的には・・・。」

音無「ふざけんなよ、まぁいいかここは校舎の2階か?」

黒子「ここはさっきいた校舎の隣の建物ですわね、おやこの音楽は?」

近くの教室から音楽が聞こえる、近づくとドアが開いていて、中の様子が見える。

音無「岩沢たちだ、練習中みたいだな。」

ガルデモメンバーがライブへ向けての練習を行っていた、曲はサビが終わるところのようだ。

ひさ子「悪い、すぐ張り替える。」

岩沢「じゃあ、休憩にしよう。」

メンバーの1人ひさ子のギターの弦が切れてしまったようだ。

岩沢「あ!?」

音黒「「ふふ。」」岩沢と目が合い微笑む2人

その後休憩に入った岩沢に2人が話しかける。

音無「すげぇ熱だった、みんなが夢中になるのがわかるよ。」

黒子「思わず見入ってしまいましたわ、すごかった。」

岩沢「ありがと。」

岩沢「そういや、あんたら2人は記憶がないんだってね。」

音黒「「ええ。」」

岩沢「そっか、そりゃ幸せだ、誰かの記憶は聞いた?」

黒子「記憶って生前の生きていたころの事ですの?」

音無「まだ誰からも聞いてないけど。」

岩沢「じゃあ、私の記憶を話してやるよ。」

記憶がない2人のために岩沢は自分の過去を話し始める。

ケンカばかりする両親のもとで自分の居場所もなくただ隅っこで震えながら自分の殻に

閉じこもる日々、どこにも逃げ場が無かった岩沢はある日サッドマシーンという自分と似た

境遇のボーカルが所属するロックバンドに出会う。

その曲を聴いた岩沢はボーカルが自分の代わりに叫んで不満をぶち壊し、抱え込んでたものを

吹き飛ばしてくれる、常識ぶってるやつが間違ってると孤独で泣いてる君が正しいのだと。

そのバンドとの出会いが岩沢を救ってくれた、それから岩沢は音楽で生きる決意をする。

バイトをして路上ライブを行いレコード会社のオーディションを受け続ける毎日を送る。

高校卒業と同時に家を出て、上京し音楽で食べていくんだと、そんな彼女だったがある日

バイト先で倒れてしまう、次に目覚めると病院のベッドの上だった。

脳梗塞による失語症で彼女は言葉を失った、原因は両親のケンカを止めようとして瓶で頭を殴られてしまった時の傷だ、結局そのまま岩沢は自身の運命を呪いながら、そこで死んでしまう。

岩沢の過去を聞いた2人は言葉が出なかった。

岩沢「私はマシなほうだよ、最悪なのはゆりだね。」

ひさ子「岩沢~そろそろ始めよう。」

と最後にゆりのことを付け加えて話が終わり、岩沢はひさ子に呼ばれそちらへ向かう

岩沢「記憶無しコンビ、天使エリア侵入頼んだよ。」と言い残し岩沢は教室に戻る。

残された2人はそれぞれ考える。

音無{人生の理不尽を呪った目というのはあのことだろう、彼女にも陰惨な過去があった。}

黒子{ここにいる方々は消えるのが怖いわけではなく、人生の理不尽に抗ってますのね。}

音黒{自分の理不尽な人生を受け入れずに、神に抗おうとしている・・・。}

そんな思いを抱えたまま、2人は作戦に臨む。

ガルデモが告知どおり体育館でライブを行ってる間、ゆりたちは天使エリア侵入を試みる。

少数人数での作戦だ、天使エリアの扉の前で黒子がテレポートを行う、カチャリと中から

鍵の開く音を確認し、日向と松下が突入する、日松「「クリア。」」安全を確認し、残りのメンバーも中に入る音無が最後だ、しかしその顔はあきれた様子だ、先にテレポートで突入した黒子も同様にあきれた顔だ、そして音無が部屋の明かりを着ける。

一同「「「!!!」」」、音無「これのどこが天使エリアだ、ただの女子部屋だよ!!!」

黒子「コンピューターで制御って、デスクトップPCが一台あるだけですわ!!!」

部屋が明るくなり、驚く一同とあきれる記憶無しコンビが女子寮の天使の部屋にいた。

音無「俺、おまえらのこと見直してたんだぞ・・・。」

黒子「ただあきれるばかりですわ・・・。」

ゆり「2人とも静に。」

竹山「ではパスワードの解析をはじめます。」

ただあきれるしかない2人をよそにゆりたちは作業を始める。

しばらくは待つしかないようだ、音無と黒子も待つ事にする。

 

 

無線「ゆりっぺさんこちら遊佐です、天使を確認しました。」

ゆり「そう、そっちは上手く行ってるようね。」

無線「今のところは。」

しばらくして無線が入ったオペレーターの遊佐からだ、竹山は順調にデータを引き出してる。

しかし次に入った無線で事態は急変する。

無線「こちら遊佐です、陽動班取り押さえられました、天使も離れてます。」

ゆり「ちっ、竹山君まだ終わらないの!?」

竹山「クライストと呼んでください、あと20分は掛かります。」

ゆり「ここまでね、引き上げましょう。」

日向「せっかく、上手くいきそうだったのにあきらめるしかないのかよ。」

音無「作戦中止か、さっさと帰ろうぜ。」

黒子「待ってください!?、何か聞こえません?」

撤収準備に入るメンバーだったが校内スピーカーから音楽が流れ始める。

ゆり「竹山君!?」

竹山「クライストとお呼びください、ラストスパート行きます!!!」

黒子「この曲は・・・。」

音無「ボツになった新曲、これは岩沢の歌声だ・・・。」

岩沢の歌声が響く中作戦は継続し、そして岩沢の歌声が聞こえなくなる頃に完了した。

 

 

学習棟付近の自販機

黒子と音無は先ほどの戦線本部での報告を思い出していた。

天使がゆりたちと同じく自分で能力を開発していた事、図らずも土から武器を作り出すように。

その事実から推測される最悪の予想に関して、ゆりは言及しなかったが黒子と音無はそれがわかった

黒子「神が本当にいるのだとしたら、なぜそんな事をする必要がありますの?」

音無「自分で力を作らなくちゃいけないのは、そうする必要があるからだよな、神が力を授けるならそんなことしなくてもいいはずだ。」

黒子「もしかしたらいないのかもしれませんわね、神自体が・・・。」

音無「なぁ、黒子。」

黒子「はい。」

音無「岩沢は誰かに消されたんじゃなくて、自分で消えたってゆりが言ってた。」

黒子「そういってましたわね、自分で納得してしまったと、天使の言いなりになって

正しい学校生活を送るだけが消える条件じゃない。」

音無「そうだな消える条件は1つじゃなかった、満足しても消える。」

黒子「岩沢さんは笑顔だったそうですわ。」

音無「消える瞬間?」

黒子「ええ。」

音無「そうか。」

そのやり取りの後2人は自販機で買った飲み物を飲んだ。

 

 

 

 




今回は修正してUPし直したりしましたので、読んでくださる方を
混乱させかねない状態でした、申し訳ないです。

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