とある死後の風紀委員   作:エヌミ観測手

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今回で最終回になります。


第22話LOAD GAME

黒子「はっ!!!」

 

死後の世界から旅立ったはずの黒子は意識を取り戻した。

 

黒子{ここは・・・?」

 

目を覚ました黒子はとりあえず体を起こして周囲を見回すと・・・。

 

黒子「こ、ここは学園都市ですわ!、何故わたくしはここに居るのでしょう・・・?」

 

自分が居るのは学園都市にあるどこかの公園のようだ、周りには風力発電用の風車が見える。

 

黒子{死後の世界から旅立った者は転生するというのは間違いだったのでしょうか・・・。}

 

???「う~ん・・・。」

 

黒子「どなたかいらっしゃいますの!?」

 

死後の世界から消えれば新たな人生が待っている、そう思ってこれまで行動してきた黒子だったが

もしかしたらその考えは間違いだったのだろうかと悩んでいた黒子の耳に呻き声が入ってきた。

 

上条「あれ?俺は一体・・・。」

 

黒子「上条さん、あなた上条当麻さんですわよね!!!」

 

上条「うわっ!その声は白井か、びっくりさせるな!」

 

黒子「申し訳ありませんわ、つい興奮しましたの・・・。」

 

呻き声を上げて、半覚醒状態で起き上がった上条を見た黒子は思わず大声で本人であるか確認

した為、それに驚いた上条に怒られてしまった・・・。

 

上条「それよりも、上条さんの記憶が正しければここは学園都市だよな?」

 

黒子「そうですわね、今は夜なのでどこの学区に居るのかはよく分かりませんが・・・。」

 

上条「・・・多分ここは第7学区の丘の上公園だな、向こうを見てみろよ。」

 

新たな人生に旅立ったはずの2人が居るのは、なんと生前暮らしていた学園都市だった

今は夜なのだろうか、周囲は闇に包まれていて人通りもまったくない・・・。

 

黒子「・・・あの建物はセブンスミストですわ、夜はあんな風にライトアップされますのね。」

 

上条「あのさ、これって転生した事になるのか? 何か生まれ変わったというより復活?

   生き返っただけじゃないのか・・・?」

 

黒子「おかしいですわね、わたくし達は転生というよりは死後の世界から移動しただけのように

   思えますわ、今着ているのもクラスSSSの制服ですし、卒業証書を入れた筒もありますの

   それに生前の記憶と死後の世界での記憶、両方の記憶が頭に残っていますわ・・・。」

 

上条「死後の世界の記憶・・・、あれ?俺って最初は生まれ変わる事を拒絶した気がするが

   何か記憶が変だなぁ、俺って白井の説得に素直に応じたんでしたっけ・・・?」

 

黒子「上条さん、どうかされましたの?」

 

現在居る場所が分からなかった黒子は上条の指差した方向にあった建物を見て現在地を特定できた

ここは自分達にとって馴染み深い第7学区だった、場所が分かった為か黒子は別の疑問に関して

考える事にした、自分の体に目を落とすとクラスSSSの夏服用セーラー服を着ており、更に傍には

卒業証書を入れた筒も転がっていた、そして上条の方も黒子と同様に夏服を着用していて、

証書を入れた筒も傍に落ちていた、黒子が現状で把握した判断材料を元に推測しようとしたが

突如上条の様子がおかしくなったのでそちらを気に掛ける事にした・・・。

 

黒子「・・・ところで上条さん、死後の世界から旅立つ決心はつきまして?」

 

上条「だからさっきから言ってるように、俺は嘘をついていた、生まれ変われる権・・・、あれ

   この台詞を言ったのは初めてじゃないような・・・?」

 

黒子{個人差があると考えるべきでしょうか?確かに高松さんと共通する部分も有りますが

   相違点もありますの、プログラムによりNPCになった上条さんと影に魂を食われてNPCに

   なった高松さん、お2人はNPCに変換されてしまいましたが、その方法が違っている以上

   人間への戻り方や戻る早さはそれぞれ違うという事でしょうか・・・?}

 

上条「?どうなってんだ、記憶がごちゃごちゃになってやがる、俺は自分で消えようとしたのか

   それとも白井に強要されたのか・・・、なぁ白井、俺おかしくなっちまったのか!!!」

 

黒子「とりあえずNPC化について説明いたしますのでお聞き下さいな。」

 

様子のおかしくなった上条を見ても黒子は慌てずにまるで誘っているような言い方で卒業する前

にも話していた「死後の世界から卒業しよう」という会話を行った、そう言われた上条は

最初の時のように断ろうとしたが自分の言った言葉に違和感を感じて自問自答し困惑し始めた、

その様子を見ても黒子は慌てず冷静に上条の事を分析して、次に何を説明するのかを考えた

そして黒子はNPCになってしまった高松の事を話し始めた、上条に高松の身に起こった事や

その後どうやって人間に戻ったのかを説明した、実はゆりが眠っている3日間の間戦線メンバーは

高松を正気に戻そうと様々な事を試していた、その結果本人の過去を聞かせてその時抱えていた

思いや感情を本人に感じてもらうのがNPCから人間に戻す方法であると突き止めた。

 

黒子「人間がNPC化していたのは元々Angel Playerのプログラマーが愛した女性が先に卒業

   してしまい、再び彼女に会えることを信じて死後の世界に1人残って永遠に近い時間

   待ち続けたものの、自分の正気を保てなくなったので自身をNPC化するプログラムを組み

   影を生み出したのが発端ですの、しかし自身をNPC化しただけでは終わりませんでしたの、

   もしも死後の世界にまた愛が芽生えたとしたら、プログラマーの様な思いをする方がまた

   出てくるかもしれない、プログラマーは正気でいられなくなる前に自分を封印しましたが、

   同じように愛を覚えた方がまた現れたら

   その方は自分をNPC化せずにあの世界を永遠の楽園に作り変えるかもしれない・・・。」

 

上条「そうさせない為に影は人間をNPCに変えていたのか?」

 

黒子「はいですの。」

 

上条「じゃあ、俺も影によってNPCになっていたのか?」

 

黒子「恐らく違うと思いますわ、上条さんはわたくしよりも先にあの世界に迷い込んでいたので

   わたくしが来る以前に影が発生していたのなら話は別ですが、わたくしが見た限りだと

   先ほどお話した高松さんとは違う方法で上条さんはNPCになったのだと思いますわ・・・

   実はプログラマーが自身をNPC化するプログラミングとは別に作った設定がありまして

   上条さんは影によってではなくそのプログラムによってNPCになったと考えられますの。」

 

上条「偶然設定されたっていうのはどういうプログラムだ、そしてNPCになったお前の仲間と

   俺はどう違っていたんだ?」

 

黒子「高松さんの場合は影に魂を食われてしまった為か、人間に戻すのに時間が掛かりましたわ

   完全に人間に戻ったと判断するのに2日ほど掛かりましたの・・・、あと作られた設定とは

   (この世界にいる理不尽な人生を送った全ての魂もNPC化する)という物らしいですわ。」

 

上条「その高松って奴と俺の違いは人間に戻る早さと影ではなくプログラムでNPCになった

   この2つだよな・・・。」

 

黒子「そうなりますわね。」

   

上条「とりあえずその事については何となくだが分かった。」

 

黒子「NPC化についてはある程度ご理解頂けたと思いますので次は上条さんの記憶に関しての

   違和感をお話しますが、あくまでわたくしの推測ですのでその点はご了承くださいな。」

 

高松の事を話しながら上条にNPC化やAngel Playerのプログラマーが行ったプログラミングの事

を説明する黒子、所々で上条が質問しそれに答えた黒子、一通りの説明はしたので

今度は上条が感じていた違和感について話し始めた・・・。

 

黒子「上条さんが感じる違和感は生前の記憶と死後の世界の記憶の混同が原因ですわ。」

 

上条「記憶の混同・・・。」

 

黒子「愛を覚えた人間がNPCに変換される過程で生前の記憶は曖昧になってしまう、

   そして人間に戻る際はそれを呼び覚ませるのでNPCになっていた際の記憶と

   生前の記憶の区別が出来ず、無意識の内に混同させてしまいますのよ・・・、

   高松さんの場合は生前の記憶を本人が自覚するだけでも2日近く掛かりましたわ。」

 

上条「俺の場合は困惑しながらも生前の事をほぼ正確に思い出していた・・・。」

 

黒子「まぁ断片的に思い出してるようにも見えましたが、人間に戻った後は死後の世界での

   記憶については殆ど口に出さなかったので、ご自身で区別できていたと思いますわ。」

 

上条「違和感に関しては納得できたから別の事を聞きたいんだが・・・。」

 

黒子「何でしょうか?」

 

上条「俺は最初あの世界から旅立つのを拒否していたけど、いつの間にかお前の言うとおりに

   従っていたのは、上条さんがお人好しで白井さんに逆らい続ける事が出来なかったという

   わけではありませんよね・・・?」

 

黒子「・・・やっぱり上条さんは授業や勉強に集中するのが苦手なタイプですの・・・?」

 

記憶に関しての上条が感じている違和感について説明していたが、学校の授業に似た真面目な

時間が続いた為かそれに耐え切れずに上条が音を上げて別の質問をしたので黒子は落胆した。

 

上条「悪かったな集中力がなくて、どうせ上条さんは補習の常連ですよ・・・。」

 

黒子「自虐的になるのはそこまでですわ、そういえばわたくし、あなたに謝らなければ

   ならないことがありますの・・・。」

 

上条「俺は何もされてないと思うけど・・・?」

 

黒子「これから死後の世界ですんなりとわたくしの申し出を受け入れた理由をお教えしますわ

   それともう1つ先ほどのNPCから人間への戻り方の説明時に抜けた部分がありましたので

   それについても説明しますわ。」

 

自分の事を自虐的に卑下する上条に呆れながらも黒子は新しい質問とNPCから人間へと戻る現象

の説明時に言い忘れた事があったのでその両方の事について話し始めた・・・。

 

黒子「上条さんがわたくしの申し出を受け入れたのはその時あなたがNPCから人間へと

   戻りかけてる途中で、あなたの意識が受け身の状態だったからですわ・・・。」

 

上条「は、受け身・・・?」

 

黒子「はい、あの世界でNPCはあそこが死後の世界だと思っておりませんわ、その為か

   NPC達は基本的に受け身で物事に対してあまり疑問を持たない傾向にありますのよ、

   しかしNPCにもそれぞれ個性があり、性格も十人十色でしたが、割合としては

   大人しい性格の方が圧倒的に多いですわ。」

 

上条「それだとNPCの時の俺は大人しい性格だったかもしれないけど、あの後NPCから人間に

   俺は戻れたんだろ、そしたらその時に性格も一緒に戻ってないとおかしくないか?」

 

黒子「高松さんの事を説明した際に「完全に人間に戻ったと判断するのに」と申し上げましたが

   実はこの方を戻す為にわたくし達が様々な事をしている時、本人は完全に従順でしたわ、

   元々の性格が大人しい方だったので、わたくしはその不審点に中々気づきませんでしたが

   仲間に指摘されてから高松さんを観察するとまるで操り人形であるかのようにこちらの

   言う事には「はい。」や「そうですね。」等の肯定する言葉しか話しませんでしたわ、

   挙句の果てには仲間が冗談で言った「ワンと3回鳴けよ!」の命令を言葉通りに・・・。」

 

上条「その先は聞かない方が良さそうだな・・・、つまり俺も自覚してなかっただけで

   最初は断っていたお前の誘いを、性格の所為で徐々に受け入れていたってことか?」

 

黒子「はい、NPCになった人間はすぐには元の状態に戻れないようですの、その為しばらくの間

   その方の意識は受け身のまま・・・、恐らくこれはNPCになっていた時の後遺症の様な物

   だと思われますわ、わたくしはそれを利用してあなたを丸め込みましたの・・・。」

 

上条「もしかして、お前の謝りたかった事って・・・。」

 

黒子「わたくしは上条さんが人間に戻るのを望んでましたが、生前の記憶の所為であの世界から

   旅立つ事を上条さんが拒み始めていたのでわたくしはあなたの気持ちを無視するような形

   で強引に卒業させてしまい申し訳ありません・・・。」

 

上条「慌てていたのはその為か。」

 

黒子「死後の世界に疑問を持つということはNPCから人間へと戻り始めている良い兆候でもあり

   あの世界に留まる意思が生まれるかもしれない危険信号でもありましたの・・・。」 

 

何故死後の世界から去ることを拒んでいた上条が白井の申し出に応じたかというとNPCの時の

後遺症を利用されたからだ、そしてNPCから人間へは段階的に戻っていくという現象も詳しく

説明された、そして黒子が謝りたかった事とはあまり事情を飲み込めていない上条を言葉巧みに

強制的に卒業させた事だったのだ、そう説明した後に黒子は深々と頭を下げて謝罪した・・・。

 

上条「わかったから、頭を上げてくれ。」

 

黒子「・・・はいですの。」

 

上条「済んだ事は仕方ない、とりあえず俺の抱えていた疑問は払拭できたが、

もう1つ重要な事があるからそれについて聞いてもいいか?」

 

黒子「ええ。」

 

上条「何で死んだはずの俺達がここにいるんだ?」

 

死後の世界に関しての上条の疑問は解決したので、上条は死んだはずの自分達が

何故学園都市に存在してるのかを黒子に尋ねた。

 

 

 

上条が聞きたかった重要な事とは、死後の世界から新しい人生へ向かって旅立ったはずの

自分たちが生前暮らしていた学園都市に生前の記憶と死後の世界の記憶の両方を持った状態で

なおかつ顔や性格や肉体も全くと言っていいほど同じ姿で現れたのかという事だった・・・。

 

黒子「・・・わたくしも何故こうなったか分かりませんわ・・・。」

 

上条「転生するってのは母親から赤ん坊として生まれるのが普通だろ?」

 

黒子「そのはずですわ、0歳から人生が始まらなければなりませんのに

   13歳からだとスタートではなく・・・再スタートですもの。」

 

流石にこの問いかけに対して黒子は明確な答えなど持ち合わせてはおらず

黒子自身もこの状況に戸惑っていた・・・。

 

上条「とりあえずこの事に関して考えるのは後回しにしてさ、これからどうするかを考えないか

   世間的には上条さん達は死んだ人間なんだろう、死んだ人間が生きてるのを知られたら

   大騒ぎになるだろう・・・。」

 

黒子「下手をすると騒ぎになる前にまた死ぬ事になるかもしれませんわね・・・。」

 

余りにも難しい質問をしたなと思った上条はこの疑問の詮索は後にして、これからの事を

考えて、今後どうしたらいいかを黒子と一緒に考え始めた・・・。

 

上条「確かお前の話だと、俺は第10学区の墓地に葬られてるんだろう?」

 

黒子「はい、恐らくわたくしもそこに葬られてるでしょう・・・。」

 

上条「これじゃ俺達はゾンビって言われちまうな。」

 

黒子「学園都市はオカルトや超常現象などを科学的に解明するのがモットーですから

   死んだはずのわたくし達の存在が公になったら、わたくし達は・・・。」

 

上条「俺達の存在は都市伝説になってもおかしくないからな、語り草になる程度で済むのか

   あるいは研究材料にされるか・・・、ていうかここで暮らしている学生達はそういう

   対象に元々なってるんだよな。」

 

そう、ここ学園都市はオカルトや超常現象を否定する科学主義だ、生き返った人間という

非常識な存在である2人は学園都市の科学を以ってしても解明は難しいだろうし、2人が

生きていると知られたらどんな事が待ち受けているか・・・。

 

上条「あれ?、ていうかお前の遺骨は両親の所に行ってるんじゃないのか、何で第10学区に

   納骨されたって思うんだ・・・!?ああっ悪い、俺は・・・。」

 

黒子「わたくしは置き去りではありませんわ、上条さんどうか誤解なさらないで下さいまし。」

 

第10学区の墓地は置き去りなど遺骨の引き取り手のない死者達が葬られる場所だ、その事で

疑問を持って上条は問いかけたが悪い事を聞いてしまったと慌てたが黒子はそれを否定した。

 

黒子「簡単ですわ、前にもお話したようにわたくしは悪事を暴く為の独断専行による

   単独捜査の最中に犯人達に見つかって口封じのために殺されましたの・・・。」

 

上条「口封じのために殺されたなら、お前が生きている事がばれたらまずいじゃないか!」

 

何故黒子は自分が第10学区に埋葬されたと思ったのかというと統括理事の悪事を目撃した為

口封じで殺された以上、遺体に関しても死ぬ直前にDNAや脳細胞の一部が摘出されていたので

その事が発覚しないように徹底的に証拠になる物が残らないように処理されるはず・・・、

そんな怪しい死体は間違っても遺族の元へは渡らないだろう。

 

黒子「結局真実は闇に葬られてしまい・・・。」

 

上条「死者だけが真実を知っている・・・だっけ?」 

 

死後の世界から卒業できた2人だったが、しかし黒子に待ち受けている学園都市からの処分は

考えるまでもない物だろう、間違いなく黒子は・・・。

 

上条「・・・なぁ白井、アンチスキルに俺達の身元を明かして保護してもらうのはどうだろう。」

 

黒子「上条さん、それは賢明な判断とは思えませんわ、いくらアンチスキルといえども上層部

   の命令には逆らえないはずですわ・・・でも上条さんだけなら助かりますわね・・・。」

 

上条「俺は自分だけ助かろうって気はないからな、絶対お前を見殺しにしない!」

 

黒子「流石にわたくしも1度死んだ以上、自分を犠牲にして人を助けるという考えが

   間違っているのを痛感させられました、今のは失言ですわ、ごめんなさい・・・。」

   

上条「わかってるならいい、それに犯人達からしたらお前から話を聞いた俺も口封じの為

   には殺しておきたいだろうからもうすでに俺達は運命共同体なんだよ・・・。」

 

アンチスキルに保護してもらおうかと上条が考えるが、そうすると統括理事の不正を知っている

黒子の存在が気づかれるので統括理事は保身の為に間違いなく黒子を消すだろう・・・、しかし

上条だけなら助けられるかもと言った黒子に上条は「人を犠牲にしてまで自分だけ助かる」

なんて行動はお断りだと一喝した、それに対して黒子は自分も1度死んだ身である以上それが

正しくないのは身に染みて分かった事だ、自分勝手な事でもう自分の命は投げ出さないと上条に

言った、いずれにしても黒子の話を聞いた上条も犯人達からすれば目の上の瘤だろう・・・。

 

黒子「二人一緒に助かるにはどうすればいいのでしょう?」

 

上条「待てよ、黄泉川先生なら何とかしてくれるかもしれない、うちの学校の体育教師で

   その人はアンチスキルなんだよ、あの先生ならきっと力になってくれるはずだ。」

 

黒子「上条さんは黄泉川先生の事をご存知ですの? 確かにあの方でしたら何とかしてくれる

   かもしれませんわね、どの道ここで話し合っていても埒が明かないのは確かですし。」

 

上条「一か八かそれに賭けようぜ。」

 

黒子「わたくし達は本当に一か八かの賭けに出るしかないのでしょうか・・・?」

 

上条が自分の学校の体育教師でアンチスキルの黄泉川なら力になってくれるんじゃないかと提案

し、黄泉川なら何とかしてくれるかもしれないと黒子も賛成するがそれだけでは不安は消えない

賭けに出る以外に道は残っていないのかと黒子は悩んだ・・・。

 

上条「何か俺達に交渉材料でもあればいいんだけどな・・・。」

 

黒子「交渉材料・・・?ああそうですわ、わたくし達には切り札がありますわ!!!」

 

何気なく発した上条の言葉で黒子の脳裏に蘇る物があった。

 

上条「何だよ、その切り札って?」

 

黒子「これの事ですわ!」

 

切り札とは何の事だと言う上条に黒子は能力を使って自分の手にテレポートでその切り札を

呼び寄せた・・・。

 

上条「これはデジカメか、これが俺達の運命を左右する交渉材料になるのか・・・?」

 

黒子「ええ、これは統括理事の1人が人身売買を行っている外部の犯罪組織と接触し

   会合を行っている現場を写真と動画で押さえたカメラですの。」

 

切り札とは会合場所の天井裏からその様子を秘密裏に撮影していたデジカメだった・・・。

 

上条「これで犯人達が捕まれば俺達は大手を振って生きていけるな!」

 

黒子「確かにわたくし達が狙われる事はなくなりますわね・・・。」

 

上条「浮かない顔だけど、どうかしたのか?」

 

このカメラに撮られた写真と動画は証拠になるだろう、統括理事の悪事は白日の下に晒されて

理事とその一味は逮捕されて自分たちが狙われる事はなくなると喜ぶ上条とは対照的に黒子は

何故か喜ばなかった・・・、どうかしたのかと上条は尋ねた。

 

黒子「上条さん、わたくし達は世間的には死んでしまった過去の人間である以上

   友人や家族だってわたくし達を受け入れてくれるかわかりませんのよ・・・。」

 

上条「確かにそうだが・・・。」

 

自分たちが殺されるかもしれないという危機を乗り越えた2人だったが、今後の事を考えなければ

ならない、果たして1度死んだ自分達を家族や友人達は受け入れてくれるだろうか・・・。

 

上条「・・・なぁ白井、まずは最寄のアンチスキル詰め所か巡回中のパトカーを見つけないか

   俺達は時間も忘れてすっかり話し込んでいたらしい、東の空を見てみろよ・・・。」

 

黒子「あ、あれは・・・。」

 

この先の事を考えて塞ぎこむ黒子に上条が東の方角を見るよう促し、黒子が目を向けると・・・。

 

上条「くさい台詞だけどさ、明けない夜はないんだよ、どんな夜にだって朝は来るんだ

   悩んでいても始まらない、とりあえず行動しようぜ。」

 

黒子「クスッ、歯の浮くような台詞を平然と言えるなんて、上条さんには羞恥心という物が

   ありませんのねwww」

 

上条「白井、お前って奴は!人がせっかく元気付けようとしてるのに、分かってますよ

   どうやったって上条さんは気の聞いた台詞なんて言えないんだ・・・。」

 

黒子「そうですわね、考えるよりもまずは行動ですわ、確か丘の上公園の近くに銀行があり

   そこに面する道路がパトカーの巡回ルートになっていますのでそこへ参りましょう!」

 

どこかで聞いたような台詞で黒子を励まそうとした上条だったが、それはあまりにもくさい台詞

だったので、思わず黒子は吹き出してしまったがどうやらこれで吹っ切れたらしい、

笑顔になって上条の提案を受けアンチスキルの車を探し出し自分達を保護してもらう事にした。

 

 

 

それから数日後学園都市の街頭ビジョンではニュース番組が放送されていた。

 

アナウンサー「では次のニュースです、流通を担当する統括理事が外部の人身売買組織と

       接触し取引を行っていた問題で統括理事会はこの理事を解任しその身柄を

       アンチスキルに引き渡したとの事です、アンチスキルはこの理事の取調べを

       行い、余罪について引き続き調べを進めていく方針であると発表しました。」

 

ニュースでは黒子が捕まえようとしていた統括理事が逮捕されたと報じられていた

その街頭ビジョンに面した道路を一台のアンチスキルのパトカーが走っており、車内には。

 

黄泉川「あの男を捕らえた後は芋づる式に共犯者だけじゃなく外部の犯罪組織まで

    捕まえる事ができたじゃん、大手柄を立てた君たちはすごいじゃん。」

 

黒子「それは何よりですわ、これで学園都市に無理やり連れて来られて置き去りになる

   子供たちが少なくなるでしょう、悪は滅びるものですわ・・・。」

 

上条「まぁ、これでしばらく平和に過ごせるのは間違いないっすね。」

 

パトカーの車内ではアンチスキルの黄泉川が運転しながら、上条と黒子の2人に捕まえた理事に

関する事を話し、後部座席に座る黒子達はその話に耳を傾けていた・・・。

 

黄泉川「・・・死んだはずの君達とこうして話せるのが未だに信じられないじゃん

    でもこれは夢じゃなく現実なんだもんな、私は君達の葬儀にも参列したから

    最初見た時は幽霊かと思ったじゃんよ・・・。」

 

黒子「ここは学園都市ですわ、そんな非科学的なことはありえませんの。」

 

上条「それに俺達は実際に死んだんですよ、その後復活しましたが・・・。」

 

パトカーを運転する黄泉川はまだこの事が信じられず、未だに自分は夢の中にでも

居るんじゃないかまたはこの2人は幽霊じゃないかと疑うが、それを後部座席の2人が否定する

ここに至るまでの経緯を振り返ってみよう、公園を出た2人は車道を走るパトカーを見つけた。

 

黄泉川「!?、か、上条に、白井か、どうして君たちが・・・。」

 

上条「よ、黄泉川先生!!!」

 

黒子「アンチスキルを探していて最初に会えたのが黄泉川先生とは幸運ですわね。」

 

車道を走っていたパトカーは2人を見るなり慌てて止まり、運転席から黄泉川愛穂がドアを

開けて出てきた、その表情は明らかに動揺している。

 

黄泉川「あれ?私はおかしくなったのか、しっかりしないと生徒達に笑われるじゃん。」

 

黒子「やはりこうなりますわね・・・。」

 

上条「黄泉川先生とりあえず説明しますので俺達を保護してもらえませんか?」

 

混乱する黄泉川だったが上条達を保護し、自身が所属するアンチスキル第73活動支部へと

戻っていき、上条達から死後の世界の事や統括理事の悪事に関する事を聞かされた・・・。

 

黄泉川「死後の世界というものが実在しているとは・・・、とりあえず君達の身の安全は

    私が保証するじゃん、じゃあそのデジカメは証拠物件として信頼できる仲間に渡して

    解析するから一旦預かるじゃん、この事はすぐに統括理事会に報告するけど、身内の

    不祥事とはいえこの事を隠蔽するのは難しいし理事達はそれぞれ対立していたり

    するから、揉み消される事はないはずだ、その点は安心して欲しいじゃんよ。」

 

黒子「ではお願いしますわ・・・。」

 

上条「あの~黄泉川先生、上条さん達は元の生活に戻りたいんですがそれは可能ですか?」

 

統括理事の悪事の証拠のデジカメを黒子から受け取り黄泉川は必ず2人を守ると約束した

最大懸案事項は解決できそうなので上条はこれから自分たちがどうしたいかを黄泉川に伝え

判断を仰いだ後、黄泉川は2人に向かって語り始めた。

 

黄泉川「・・・君たち2人が死んだ後、君達の周囲の人達は絶望の淵に叩き落された・・・。」

 

上黒「「・・・。」」

 

真剣な表情で黄泉川は2人が死んだ後の事を話し始めた、美琴はショックで入院し初春は自分を

責めて悩んだ挙句自殺しかけたので佐天と婚后達で止めた事、上条が死んだ事で1年7組は一切

バカ騒ぎをしなくなり以前とは打って変わり黄泉川がつまらないと思うほど真面目なクラスに

変わった事、インデックスがイギリスに帰国した事、2人の死はこんなにも残された者の日常を

激変させてしまったのだ・・・。

 

黄泉川「御坂は先週退院したじゃん、常盤台の教員の話によると少しずつだが以前の明るさを

    取り戻し始めているそうじゃん、初春についてもまだジャッジメントには復帰してない

    が、佐天達と一緒に出かけられるぐらいに立ち直ったみたいじゃん。」

 

黒子「初春、お姉さま、佐天さん、婚后さん、泡浮さん、湾内さん・・・。」

 

黄泉川「以前は月詠先生のクラスに保健体育の授業で行くのが私の密かな楽しみだったじゃん

    でも今となっては真面目で全く面白みのないクラスになってしまったじゃん・・・、

    バカ騒ぎをしていると上条がまだ居るように錯覚してしまうそうだ、それで騒ぎが

    収まった後に上条はもう居ないという現実に引き戻されるのが辛かったそうだ

    バカ騒ぎをしなくなった結果、こうなってしまったじゃんよ・・・。」

 

上条「インデックス、小萌先生、吹寄、姫神、土御門、青ピ、皆すまねぇ・・・。」

 

2人の死は残された者達にとって辛い以外の何者でもないだろう、黄泉川の話を聞いた黒子と上条

は申し訳ない事をしたなと罪悪感に苛まれた・・・。

 

黄泉川「皆やっと君達がいない事を受け入れて、それぞれ前に進み始めたじゃん

    そういった中で君達が生きていると知ったらどうなるのか予想できない・・・、

    喜ぶ者も居ると思うけど全員がそう受け止めてくれるとは限らないじゃん。」

 

黒子「どんな顔で会えばいいのでしょうか、皆に会うのが怖いですわ・・・。」

 

上条「・・・じゃあこういうのはどうですか?」

 

死んだと思っていた友人が生き返りましたと言って目の前に現れたらどう思われるだろうか?

大切な人を失って悲しみのどん底に突き落とされてしまい、やっと立ち直り始めていたのに

本人は生前の姿でピンピンしているのだ、タチの悪いドッキリだと責められて拒絶されるだろう

黒子の頭に浮かぶのは悲観的な事ばかりだ・・・、そんな中で上条は何か案を思いついた・・・。

 

黄泉川「・・・統括理事の悪事を暴く為に捜査していた白井黒子は証拠を押さえたものの

    動きを知った理事からの追求を逃れる為と理事の手によって白井周辺の人物にも

    危害が及ぶ可能性があったので、白井黒子は自分を死んだ事にしていた・・・、

    上条当麻は第三次世界大戦で世界的に知られその存在が危険視されてしまい、

    暗部組織に狙われ始めたので身の安全を守る為に白井と同様に死んだ事にしていた

    中々いい考えだと思うじゃん、逆転の発想じゃんね。」

 

上条「この言い訳なら皆を納得させられると思います、どうでせうか?」

 

黒子「上条さんにしては冴えてますわね、確かにわたくし達の性格からしたら

   おかしくない行動ですもの、皆さんを守る為に死を装っていた・・・。」

 

黄泉川「更にアンチスキルの私が説明する事によりあたかも事実であるかのようにできる

    おバカと思っていた上条にも頭が良くてつまらない所もあったとはやっぱり面白い

    生徒じゃん、うちのクラスに転入して欲しいくらいじゃん。」

 

上条「2人ともどうせなら俺を褒めるだけにして下さいよ・・・。」

 

死を逆手に取った上条の発想は証人保護プログラムのようなものだった、2人は死んでいたが

それは偽装された死であったという事にする、正義感の強い2人であればこの様な行動は自然だ

それを聞いた黄泉川と黒子は憑き物が落ちたみたいに喜んでいたが、素直に評価されなかった

上条は複雑な気持ちでいた・・・。

 

 

 

再び場面はパトカーの中に戻る、そういった経緯があって理事が逮捕されたので上条と黒子は

これから黄泉川に連れられそれぞれ復学する為に学校へと向かっている・・・。

 

上条「まずはお前からだな、でも本当に上条さんも一緒に行かなきゃダメなのか?

   学び舎の園って男子禁制だろう、俺は無事に帰れるのか・・・。」

 

黒子「あらやはり殿方はケダモノですのね、いやらしいですわ・・・。」

 

黄泉川「上条、行動には気をつけるじゃん、いざという時は私が逮捕するじゃん・・・。」

 

上条「な、2人とも上条さんを苛めないでくださいよ!!!」

 

黄泉川「冗談じゃんよ、でも御坂から一発がつんと食らうのは覚悟しておくじゃん。」

 

黒子「お姉さまはあなたを助けにロシアへ行きましたのよ、あなただけが悪いというわけでは

   ありませんが、まぁ殺されない程度の痛い目には遭うかもしれませんわね・・・。」

 

上条「わかった、腹を括った。」

 

黄泉川「でも白井もうちの学校に付いて来るのは驚きじゃんね。」

 

黒子「わたくしが復学する為に体育館で常盤台生徒達の前で説明する際にお姉さまの為に

   上条さんが同席して下さいますのよ、でしたらわたくしも上条さんに付き添いますわ。」

 

2人が復学する際に全校生徒の前で死を偽装した経緯について説明を行う、まずは黒子の母校

常盤台からだ美琴の為に黒子は上条を伴って説明に臨む、同様に黒子も上条の高校へ説明へと

同行する・・・。

 

黄泉川「その制服のままでいいのか、元の制服くらいすぐに用意できたじゃん・・・。」

 

上条「俺も尋ねたんですが白井が・・・。」

 

黒子「わたくしはまだクラスSSSのメンバーですの、この制服は常盤台に正式に復学できた

   時に脱ぎますわ・・・、この制服には死んだ世界戦線の皆さんの思いが詰まってますの。」

 

黄泉川「そういう事なら好きにするといいじゃん、もうすぐ夏だし。」

 

上条「さていよいよだな・・・。」

 

実は黒子達が学園都市に現れたのは6月下旬で夏と言ってもいい季節だったのだ、2人とも

クラスSSSの半袖の制服を着ていた、そして車は最初の目的地学び舎の園のゲートに到着した。

 

黒子{・・・わたくしの人生は1度終わってゲームオーバーになってしまいましたが

   再びこの世界に現れ生きているこの状況、これではコンティニューだと悩みましたが

   ゲームにはセーブポイントという物がありわたくしはNEW GAMEではなく・・・、

   LOAD GAMEを選択したのですわ、もうゲームオーバーにはなりませんの、必ずわたくしは

   人生という名のゲームをクリアし天寿を全うするというエンディングを目指しますわ。}

 

黒子「ちょっとセンスがありませんわね・・・。」

 

心の中で死後の世界でのNPCや影をゲームに例えていた事があってか黒子もそれに倣い

自分の人生をゲーム用語で表現したが自分で思ったことなのに余りにも似合わなかったので

思わず小さい声でぼやいてしまう。

 

黄泉川「さぁ、到着じゃん。」

 

上条「白井、行こうぜ。」

 

黒子「ええ、では参りましょう・・・。」

 

目的地の常盤台中学の職員駐車場で車は止まり、黄泉川と上条と黒子の3人は車を降りた。

そして黒子達の姿は常盤台中学の学び舎へと消えていった

この学園都市で彼らの人生は楽しくもあり騒がしく続いていく事だろう・・・。

 

THE END

 

   

   

 

 

     

 

 

 

 

 

    

 

 

    

 

 

 

 

 

       

       

 

 

 

 

  

   

   

   

 

 

 

   

 

 

 




矛盾点は解決できたと思います、この作品が私の二次創作作品の処女作となります
最後まで読んでいただきありがとうございました。


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