とある死後の風紀委員   作:エヌミ観測手

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ここからオリジナル展開となり、両方の作品の設定と要素を
この話に組み込んでいきますがあくまで私の解釈によるものですので
原作と違う点もあるかと思われますがご了承ください。


第21話最後の1人

卒業式で音無とかなでより先に旅立った黒子がなぜ死後の世界にまだ居るのかというと

ある目的の為だった、屋上から消えた黒子は天上学園のあちこちにテレポートで移動し

何かを探していた・・・。

 

黒子{こちらにもいらっしゃいませんわね、探し物というのは探してない時には

   簡単に見つかるのに探している時に限って見つからないものですわね・・・。}

 

学園の隅から隅まで目的の物を探す黒子、しかしいくら探してもお目当ての物は影も形もない

闇雲に探し回るのはやはり無謀だったのだろうか・・・?

 

???「ぎゃあああ、ふ、不幸だーーー!!!」

 

黒子「あっ!この声は!!!」

 

探し方を変えようかと思った黒子の耳に男の声が入り込んだ、声のする方向を見ると・・・。

 

NPC男子?「何て事でせうか、先生に頼まれたプリントは散らばるし、制服に至っては見るも

      無残に破れてしまっているとは不幸だ、しかもこれで制服は4着目ですよ・・・。」

 

どうやら声の主は階段の踊り場で転び運んでいたプリントの山を派手にぶちまけてしまい

更には着ていた制服が階段の手摺に引っかかって破れてしまったので途方に暮れていたようだ。

 

黒子「とうとう、見つけましたわ・・・。」

 

男子生徒の騒動を聞きつけた黒子が階段に駆けつけ男子生徒を目にして発した第一声がこれだ。

 

NPC男子?「あ、あの俺に何か御用ですか・・・?」

 

階段でプリントを拾っていた男子は気配に気づいて踊り場から階段の上に居る黒子を見上げた。

 

黒子「わたくしも落ちたプリントを拾うのをお手伝いしますわ。」

 

NPC男子?「マジで!?いや~ありがとうございます、感謝感激ですよ。」

 

とりあえず黒子は階段の踊り場へ降りて行きプリント拾いを行った、その間男子生徒は

「あなたは女神の様だ。」や「ホント助かるぜ。」など感謝の言葉を黒子に言い続けていた。

 

 

 

数分後2人の姿は職員室に在った、もっとも黒子は廊下で職員室に入った男子生徒を待っていた

やがて職員室の扉が開いて中から肩を落として落胆する男子が廊下に出てきた。

 

NPC男子?「はぁ、届けるのは間に合ったけど制服の件で怒られるとは・・・、とほほ。」

 

黒子「あまり気を落とさないでくださいな、もう用は済みましたの?」

 

NPC男子?「ああ、おかげで授業の前に届けられましたよ、ありがとう。」

 

黒子「大したことではありませんわ、それよりもこの後お時間を頂いてもよろしくて?」

 

NPC男子?「時間?別に構わないけど・・・。」

 

助けた男子は職員室に届け物があり時間も押していて急いだ為に階段で転んだ、悪い事は

重なって制服の上着やズボンが破れてあまりにもみすぼらしい格好だ、上着はともかくズボンに

まで被害が及んでいるのはどういう事だろうか、その後用事が済んだ男子生徒は黒子を校舎の外

へと連れ出した・・・。

 

 

 

数分後、学習棟近くの自販機の前に2人は居た。

 

NPC男子?「本当にお礼はKEYコーヒーでいいのか?」

 

黒子「ええ、わたくしの好物ですので。」

 

NPC男子?「ふ~ん、女子って紅茶とかが好きなんだと思っていましたよ。」

 

黒子「そんな事ありませんわ。」

 

NPC男子?「時間をくれって言ってたけど、俺に用事があるのか?」

 

男子生徒は助けてくれたお礼に飲み物を驕ってくれたので受け取った黒子は早速飲み始めようと

したが、男子生徒から質問されたので口に近づけていた缶を下ろして男子を見つめた。

 

NPC男子?「そんなに見つめられると照れるんですが・・・。」

 

黒子「・・・実はわたくし、あなたにお話がありますの。」

 

NPC男子?「話ってなんでせうか?」

 

黒子「上条当麻さん、あなたはこの世界に疑問をお持ちですか?」

 

上条「あれ、俺は名乗った憶えはないんだけど、それにこの世界に疑問を持っているかって

   言われても質問の意味が分からないんですが・・・?」

 

男子生徒を見つめていた黒子は唐突に話を切り出したかと思うと男子の名前を言い当てた

NPCと思われていた男子生徒もとい上条当麻は黒子に不信感を抱きながらも返事をした・・・。

 

黒子「あなたの名前は上条当麻さん、15歳の高校一年生で間違いありませんわね?」

 

上条「ああ、天上学園普通科の高一だけど・・・、俺は君の名前は知っていたけど話しするほど

   親しくはなかったぜ、君は飛び級した13歳の高校一年生で雲の上の存在だったからな。」

 

黒子{成るほどそういう設定になってましたのね、しかしようやく見つける事が出来ましたわ

   後はNPCから人間に戻すだけですの、それが終わればわたくしもこの方と一緒に・・・。}

 

死後の世界から消えたはずの黒子が何故まだ残っていたのか?

その理由は時計の針を戻してから説明しなければならない、それは3日前の影との最終決戦の時。

 

 

 

ギルド連絡通路B20ではゆりが先行したのでT字路もとい十字路で音無達は左右から迫る影達と

戦っていた、約10分間戦い続けているが・・・。

 

日向「くそっ、まだ湧いてくるのかよ!!!」

 

音無「倒しても倒してもゴキブリみたいに湧いてくるんじゃ埒が明かない!」

 

パンパンパンと銃声が鳴り響く中で音無と日向は悪態をついた、影達が無尽蔵に現れるからだ。

 

黒子「リロードしますの!」

 

かなで「行ってくるわ、下がって。」

 

一方音無達の反対側では黒子とかなでが戦っていた、G36cのマガジン交換を行う黒子を

援護する為かなでが影達に飛びかかるが・・・。

 

かなで「まだ出てくるの・・・。」

 

黒子「いい加減にしてくださいまし!!!」

 

かなでが影達に飛びかかった直後に爆発が起きて影達が消えたのだがその奥から新たな影達が

現れた、こういった状況がもう十分間続いている、このままではゆりに追いつけない・・・。

 

音無「この両側の通路の確保はもう諦めよう!」

 

日向「え、脱出経路を確保しねぇとまずくないか?」

 

黒子「いいえこのまま戦闘を続けていたらいずれ弾がなくなりますの、敵の進行方向を一箇所に

   絞って迎え撃つほうが弾を節約できて影も狭い通路で身動きが取りにくくなりますわ!」

 

音無「よし、後退するぞ!!!」

 

こう着状態の続く中、音無は十字路左右の通路のこれ以上の確保は困難だと判断した、日向は

反論するが黒子も賛同したので、音無達はゆりが進んだ穴に一旦後退して今後の事を相談した。

 

日向「これで影は一方向からしか攻めてこなくなったが俺達は袋のネズミみたいなもんだ

   この先が行き止まりじゃなきゃいいが・・・。」

 

音無「ゆりが行ってから大分時間が経つが、あいつは無事かな・・・?」

 

黒子「そう言われてみると銃声が聞こえてきませんわ、ゆりさんはどうなったのでしょう?」

 

先行したゆりの安否は現在不明だ、今まで激しい戦闘を繰り広げていたので気にかける余裕が

なかったが、後退した今は考える余裕も十分にあった・・・。

 

黒子「・・・わたくしが先行し、ゆりさんの様子を見て参りますわ。」

 

音無「頼んだぜ、黒子。」

 

日向「黒子無理はするなよ、俺達はここで影を食い止める。」

 

黒子「皆さん、幸運を!」

 

心配されていたゆりの安否確認を黒子が行うと志願し先へと進んだ、音無達は残って影と戦う。

 

黒子「・・・あちらに見えるのは扉が開いた部屋のようですわ、遠くからだと部屋の中は暗くて

   中がどうなっているのかは不明ですが、ゆりさんはあの部屋に入っていったのでしょうか

となるとあの中で影を発生させている何かが在るという事になりますわ。」

 

ゆりの後を追いかけてたどり着いたのは扉が開かれたままの第二コンピュータ室だった

とりあえず黒子はこの部屋で何が待ち受けているのか分からないので、まずは中の様子を

探ってみる事にして、こっそり部屋に近づいて聞き耳を立ててみた・・・。

 

???「よくたどりここまで着けましたね・・・。」

 

黒子{!?中から殿方の声が聞こえてきますわ。}

 

ゆり「バカにしないでくれる、ドアのプレートに堂々と書かれていたじゃない。」

 

???「ここは学校ですからね・・・。」

 

ゆり「ずいぶんと律儀なのね、こそこそとパソコンを盗んだ人とは思えないわ・・・、

   いや盗んだパソコンでこんな馬鹿げた事をやっている以上、まともじゃないのは当然ね。」

 

黒子{・・・ゆりさんの声も聞こえてきますわね、どうやら危機的状況ではなさそうですわ

   とりあえずこのまま様子を伺いましょう・・・。}

 

部屋の中ではどうやらゆりが何者かと会話しているようだ、黒子は盗み聞きするような形で

しばらく様子を見る事にした・・・。

 

???「いいえ、僕はこの世界のルールに従ってるだけですよ・・・。」

 

ゆり「ルール?この世界の神が定めた・・・?」

 

???「・・・神、果たして存在するか否か哲学的なテーマですね・・・でも僕にはその答え

    を追求する術はありません、決められた事に従い行動するだけです・・・。」

 

ゆり「・・・あなたもプログラミングで動いているという訳ね。」

 

???「お察しの通りですよ・・・。」

 

黒子{プログラムで動いている?}

 

最初は部屋に突入するつもりでいた黒子だったが、聞こえてくる会話はこの世界の根幹に関係する

事のようだ、つい好奇心からか話を聞き漏らすまいと突入する事などすっかり忘れてしまった。

 

ゆり「あなたにそうやってプログラミングしたのは誰なの?」

 

???「名前を言っても分からないでしょう、遠い昔の人ですから・・・。」

 

ゆり「・・・Angel Player、このソフトは一体何なの?」

 

???「見ての通りこの世界のマテリアルを作成、改変できるソフトです・・・。」

 

黒子{立華さんが使っていたパソコンにインストールされていたソフトにまさかそんな秘密が

   あったとは、でも立華さんはあのソフトで超人的な能力を開発していましたわね・・・。}

 

以前黒子はAngel Playerの力をかなでの部屋で短時間だが目の当たりにしていた・・・、

その時は天使エリア侵入と言っておきながら実際は女子部屋の不法侵入という戦線の作戦に

呆れていて、よく見ていなかったがこの会話が事実だとするとこの世界を自由に改変できる

Angel Playerというプログラムはもはや・・・。

 

黒子{・・・神に等しい力ですわね、Angel Playerは、しかしこれを使えば影を消す事など

   簡単に出来ますわ、ゆりさんが単独行動を取っていたのはこれを探す為でしたのね・・・

   口では戦線の方々を守る事は出来ないと仰って皆さんを逃がしましたが、リーダーとして

   の責務を最後まで果たそうと頑張っていた、やはりゆりさんは凄い方ですわね・・・。}

 

危険を承知でゆりが確かめたかった事とは戦線メンバー達を助ける為の事だった、

理想のリーダーとは間違いなくゆりのような者の事だろうと改めて黒子はゆりに感心した。

 

ゆり「なぜそんな事ができるの?」

 

???「さあ、僕が開発したわけではないので・・・でもあなた達だって土から武器を

    作り出している、同じ事じゃないですか・・・。」

 

ゆり{結局同じルールに則ってた訳ね・・・。}

 

黒子{・・・土から作り出すのと同じと言うのは流石に無理があるのでは・・・、

   Angel Playerは分身や高速移動等の超人的な能力が作れるチートみたいな物ですわ。}

 

Angel Playerの力は反則だろうと黒子は思うがよく考えると土から武器を作り出すというのも

常識で考えればありえない事で、きっと生前の世界だったら反則だろと言われるに違いない。

 

ゆり「・・・じゃあ時間がないから本題に入るわよ、あなたはこの世界に何が起きたらこうする

   様にプログラミングされてるの・・・?」

 

???「僕にはプログラミングの内容は分かりません・・・。」

 

ゆり「では言葉を変えるわ、あなたにとってこの世界に何が起きたの?」

 

黒子{!?やはりこの殿方が影を発生させていた犯人?、一体何の目的があってこんな事を?}

 

聞き耳を立ててから大分時間が経った所で、ようやくゆりが犯人に対して問い詰めた

それを聞いた黒子は思わず身構えた、状況次第では犯人がゆりに襲い掛かるかもしれないからだ

手にしたG36cの半透明マガジンに目を落とし、黒子は残弾確認を行ってセレクターをフルオート

に切り替えた・・・。

 

黒子{薬室の弾も合わせて合計31発、準備万端ですわ、少しでも変な素振を見せてみなさいな

   あっという間に蜂の巣にして差し上げますわ・・・。}

   

???「・・・この世界に愛が芽生えました・・・。」

 

ゆり「あ、愛?」

 

黒子{!?はっ、あ。愛?、愛というのはLOVEの愛ですの・・・!?}

 

戦闘体勢で犯人の出方を伺っていた黒子は犯人の思いがけない言葉を聞いて思わず動揺した。

 

???「そう、愛です・・・それがあってはならないこの世界では・・・。」

 

ゆり{そうか、この世界で愛を覚えたのならすぐに消えるはずだ、じゃあ愛が芽生えると

   この世界はどうなる・・・?}

 

???「愛が芽生えるとここは永遠の楽園に変わってしまう、しかしこの世界はそうなっては

    いけない、なぜならここは卒業していくべき場所だからです・・・。」

 

ゆり「過去にそう思った人がいたのね・・・。」

 

黒子{日下部さん達は来世でお互いを探しあうと約束し旅立ちましたが・・・

   もしかしたら日下部さん達とは違って、来世でまた会えるとは思わずに

   この世界から旅立とうと思わない方もいらっしゃるかもしれませんわね

   少なくともここに残っていればずっと一緒に居られますし病気や怪我も

   ましてや老いることのないこの世界で愛し合えるのは理想かもしれませんわね

   この世界から旅立ったとしても再び来世で会えるとは限らないですわ・・・。}

 

この世界の本質はあくまでも不幸な魂を救済し新たな人生へ向かわせる為の世界だ・・・、

報われない人生を送った者はこの世界で思い残しや後悔を解消し卒業していかなければならない

その事を再認識させられた黒子はこの世界から旅立つのが正しいと皆に説明したが、あくまで

どの道を選ぶのかは個人の自由だ、黒子は皆に報われた気持ちを知って欲しい思って行動したが

もしかしたら自分は彼らの意思を無視し彼らに卒業するように強制しただけではないのかと

後悔と罪悪感に苛まれた。

 

???「ただ、誰かの為に生きて報われた人生を送った者が記憶喪失でこの世界に迷い込む

    事が稀にあるのです、その時にそういうバグが発生するんです・・・。」

 

ゆり「そしてその人がAngel Prayerのプログラマー・・・。」

 

???「驚きました、ご名答です。」

 

黒子{・・・わたくしと音無さんは間違った事をしてしまったのでしょうか・・・。}

 

ゆり「その人はこの世界でのバグに気づき修正を施した、影を使ってのNPC化、つまり初期化。」

 

???「連続正解です。」

 

ゆり「じゃあNPCの中には私達のような人が他にも居るの?」

 

???「はい、2人居ます。」

 

ゆり「可哀想に・・・。」

 

自分の行動は本当に正しかったのかと自問自答する黒子の耳にゆり達の会話は殆ど入らない。

 

黒子{・・・そうですわ、間違っていると自分が思った時点で正しい事も間違いになってしまう

   わたくし自身は正しいと思わなければいけないのに一体何を迷っていたのでしょう・・・

   こんな事ではダメですわ、しっかりしなくては! わたくしはもう迷いませんわ!!!}

 

一瞬迷ってしまった黒子だったが、自分が正しいと思って行動した事だ、自分が信じなくて

どうすると自分に言い聞かせて奮い立った、引き続き部屋の様子を探る・・・。

 

 

???「そのうちの1人はプログラマーです。」

 

ゆり「!!!」   

 

???「彼は待ち続けました、愛を知り1人この世界を去っていった彼女を・・・。」

 

ゆり「そんなもう一度出会える可能性なんてないのに・・・。」

 

???「天文学的な数字ですが、ゼロではありません、しかし彼女を待つ時間はあまりにも

    長すぎて彼は正気を保てなくなったので自分をNPC化するプログラムを組んだ。」

 

ゆり「そっちが先なんじゃないの、そして同じ事が二度と起きないように世界に適応させた。」

 

???「可能性は否定できませんね・・・。」

 

黒子{確かに自分をNPC化してしまえば楽になれますの、ゆりさんの推理通りかもしれませんわ

   しかしそうだとすると何故あの方はNPCになっていたのでしょうか・・・?}

 

決意を新たに引き続き2人の会話を盗み聞きする黒子、プログラマーは自分がおかしくなる前に

自らをNPC化したという事実に黒子は一部納得しながらも、どうしても分からない事があったので

その答えを探す為にも謎の人物の次の言葉を待った・・・。

 

ゆり「1人はプログラマーだとして、もう1人は?」

 

???「彼はプログラマーが自身をNPC化する際に偶然プログラミングされた(この世界にいる

    理不尽な人生を送った全ての魂もNPC化する)という設定の為、運悪くこの世界に来た

    ばかりで何も分からない状態なのに不幸にもNPCになってしまった・・・。」

 

黒子{・・・とうとう突き止めましたわ、上条当麻さんの事を・・・。}

 

そう、黒子がこの死後の世界に留まっていたのは上条当麻を探してNPCから人間に戻して

この世界から一緒に卒業する為だった、再び場面は学習棟自販機前に戻る・・・。

 

 

 

上条「あの~もしもし?」

 

黒子「あら、これは失礼いたしましたわ。」

 

上条「さっきのこの世界に疑問があるかってのを聞くために俺に話しかけたのか?」

 

考え事をしていた黒子は上条の呼びかけにすぐ気づかなかった。

 

黒子「ええそうですわ、ここは死後の世界ですのでいつまでもここに居るのは良くない事ですの

   上条さん、わたくしと一緒にここから卒業致しましょう。」

 

上条「ちょっと待て、ちょっと待ってよ、ちょっと待ってくださいの三段活用

   いきなり何を言ってるんだ、お前はこの学校が死後の世界だって言うのかよ

   そんなのドラマか小説の話だろ、全く意味が分からねぇよ・・・。」

 

黒子{やはり上条さんもNPCから人間に戻す必要がありますわね・・・。}

 

ここは死後の世界だから一緒に卒業しようという発言なんてNPCからしたら頭がおかしい奴か

妄想と現実の区別がついてない奴、もしくは中二病にかかった奴の妄言としか捉われないだろう

黒子はゆりが眠っている3日間の間にNPCになった高松に行った事を上条当麻にも試してみた。

 

黒子「上条さん、わたくしの目を見ながら今からお話しすることをよ~くお聞きくださいな。」

 

上条「それに付き合えばいいのか、分かりましたよ・・・。」

 

黒子{やはり上条さんの目にも何か文字のようなものが見えますわね、高松さんの時のやり方

   が通用すると良いのですが・・・、とりあえずやってみるしかありませんわ。}

 

真剣な眼差しで上条の目を見ながら話し始める黒子に上条は半信半疑ながらも黒子に目を合わせ

ながら黒子の言葉を待った、黒子は自分が知っている限りの上条当麻の事と死後の世界の事を

本人に聞かせ始めた、学園都市の事、通っていた高校の事、御坂美琴の事、上条とよく一緒に居た

イギリス清教シスターのインデックスの事、そしてこの死後の世界の事を上条当麻に聞かせた、

最初上条は何の事だか分からないと言うような顔をしていたが徐々に上条の目の中に浮かぶ文字が

消え始め上条も訝しげな表情から確信を得た真剣な表情に変わっていき、ついには・・・。

 

上条「・・・そうか俺はロシアのベツヘレムの星で戦って最後は海に落ちて死んだんだ・・・。」

 

黒子「思い出せたようですわね・・・。」

 

NPCになっていた上条当麻は無事に人間へ戻ることが出来た。

 

上条「白井もここに居るって事はお前も理不尽な死を・・・?」

 

黒子「・・・ええ、わたくしは・・・。」

 

上条の質問に黒子は自分の最期を伝えた、あまりにも自分勝手で周囲を顧みず強さを求めた事

心配してくれる友人は多かったのに彼女達の忠告に耳を貸さなかったこと、挙句の果てに1人で

統括理事の悪事の証拠を掴もうと無謀なことをして惨めに死んだ事を上条に話した・・・。

 

上条「・・・まさか御坂がそんな事になっていたとは、そうなったのは俺にも責任があるな

   インデックスだけじゃなく御坂まで、白井には償いきれない事をしちまったな・・・、

   いや白井だけじゃないな、俺の知り合い全員に対してもだ、俺は最低だな・・・。」

 

黒子「この世界でそういった後悔や思い残しは解決できますので大丈夫ですわ。」

 

上条「そうか、こんな不幸な俺にも救いはあったんだ・・・。」

 

黒子の過去を聞いて黒子が強さを求める原因になった御坂美琴の変貌に自分が関係していた事に

胸を痛めて黒子に謝罪し、同時に上条は自分の知り合い全員に対しても罪悪感を感じ後悔した

そんな上条を黒子は励まして本題に入った。

 

黒子「上条さん、一緒にこの世界から卒業しましょう。」

 

上条「生まれ変われるって事だよな、新しい人生か・・・。」

 

自分の目的だった上条当麻と一緒にこの世界からの卒業を黒子は上条に話した。

 

黒子「確かに不安なのは分かりますわ、ですからわたく・・・。」

 

上条「俺は嘘をついていた、生まれ変われる権利なんてない!!!」

 

不安がってる上条を安心させようと黒子が声を掛けようとすると突如上条が大声でそれを断った。

 

黒子「・・・嘘をついていたというのはどういう事ですの?」

 

上条「実は俺は・・・。」

 

嘘をついていたとは何の事だろうと黒子は上条に問いかけると、上条は自分の過去を話し始めた

幼少期から疫病神と謂れのない差別を受けてきた上条はいつも1人でいた・・・、周りからは

陰口や悪口を言われ、挙句の果てには刺されたり暴力を受けるなど悲惨な少年時代を過ごした

学園都市に入った後はそういった事は少なくなった、やがて成長し高一になった上条当麻の前に

イギリス清教から逃げてきたインデックスが現れた・・・、この事が上条の運命を大きく変える

インデックスを助ける為に首輪を破壊した直後上条は光の羽からインデックスを守る為に自身の

記憶を失ってしまった・・・、そして病室に見舞いに来たインデックスを悲しませない為に嘘を

ついたのだと黒子に告白した・・・。

 

上条「俺はその子を傷つけたくなくて嘘をついた・・・。」

 

黒子「そうでしたの・・・、でもその方を思っての事でしょう。」

 

上条「違う、その子に離れて欲しくないっていう自分勝手な思いで嘘をついた。」

 

黒子「・・・嘘にはいい嘘と悪い嘘の2種類がありますわ、悪い嘘は相手を傷つけるだけですが

   いい嘘というのは相手を思ってつく嘘ですの、上条さんがついたのはいい嘘ですわ。」

 

インデックスを悲しませない為に嘘をついた、しかし実態は上条が彼女を失いたくないという

自分本位な思いで決して善意ではないと否定するがそれを聞いた黒子はそんなことはないと慰めた

 

上条「だからお前は俺に構わずに卒業しろよ・・・。」

 

黒子「・・・あなたが残るというのであればわたくしも一緒に残りますわ。」

 

上条「そういうのは卑怯だろう・・・、そう言われたら卒業するしかねぇだろ。」

 

黒子「嘘をつくなんて誰にでもあることですわ、わたくしだって嘘をつく事ぐらいありますわ。」

 

上条「分かった、もう分かったから・・・。」

 

卒業させようと必死に説得する黒子に上条は降参し卒業する事に承諾した。

 

黒子「では、まずは破れた制服の代わりをお持ちしますのでお待ちください。」

 

上条「ああ。」

 

テレポートで黒子が一瞬消える、数秒後黒子が元の場所に現れた。

 

黒子「とりあえず、クラスSSSの制服をいくつかお持ちしましたのでサイズの合う制服を

   選んでくださいな。」

 

上条「さっき話していた死んだ世界戦線って団体の制服か、どれどれ・・・。」」

 

制服を受け取った上条は早速着替え始めた、その間黒子は顔を背け着替え終わるのを待った。

 

上条「もういいぞ。」

 

黒子「あら、それは夏服ですわね、それしか着られませんでしたの?」

 

上条「お前だって半袖じゃん。」

 

着替え終わった上条の声を聞いて黒子が顔を向けると半袖のワイシャツにネクタイをゆるく締めた

クラスSSSの夏服を着た上条の姿があった、それを見た黒子は思わず疑問を口にするが自分も

半袖のセーラー服なので上条からもつっこまれた。

 

黒子「さてこれから卒業式と行きたい所ですが、わたくしと上条さん2人だけですので

   色々と手順を短縮し卒業証書授与だけを行いますわ。」

 

上条「まぁそうなるよな・・・。」

 

制服を着替えたところで、頃合いを見計らっていた黒子が卒業式を行うと宣言した

しかし2人しか居ないので体育館に移動してまた卒業式を行うのは無理があった為

手順を省略し卒業証書授与だけをこの場で執り行う事にした・・・。

 

黒子「卒業証書授与、上条当麻!」 

 

上条「はいっ!」

 

黒子「あなたは本校だけでなく学外においても自らの危険を顧みずに人の為に尽くしました

   ことをここに証します。」

 

校長役は黒子が引き受け上条は礼式通りに黒子から証書を受け取った。

 

黒子「卒業おめでとうございますわ。」

 

上条「ありがとうございます。」

 

黒子「・・・では、上条さんそろそろこの世界から旅立ちましょう・・・。」

 

上条「・・・俺の為に色々してくれてありがとう。」

 

卒業証書授与が終わって黒子は上条に一緒に旅立とうと告げた、上条にもう迷う気持ちはない。

 

黒子「上条さんからお先にどうぞ、わたくしはあなたを見届けてから参りますわ。」

 

上条「じゃあ上条さんは先に行きます・・・。」

 

そう言った直後その場から上条当麻の姿が消えた、無事にこの世界から旅立てたようだ。

 

黒子「ではわたくしも参りますわ、常盤台中学1年白井黒子、死んだ世界戦線の実働部隊

   の一員としての役目を終え、この死後の世界から新たな人生に向かって旅立ちますわ

   今までありがとうございました、これにて失礼致しますわ、それでは御機嫌よう!!!」

 

深々と頭を下げて黒子はお嬢様らしく優雅にそして力強くこの世界に別れを告げて消えていった。

   

 

   

   

 

 




次で最終回になります。

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