とある死後の風紀委員   作:エヌミ観測手

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第18話死んだ世界戦線の岐路

日下部と美山とユイの3人が卒業してから数日後、音無は学習棟の自販機でKEYコーヒーを飲んで

いた、実は次に誰を卒業させるべきか、今日かなでと相談する約束をしておりここで待ち合わせ

時間通りにかなでは現れたのだが突如かなでに職員室に来るようにと校内放送の呼び出しがあり

仕方なく待ち合わせ場所に来たかなではその足で職員室へと向かった。

かなでの去り際に音無は職員室近くの空き教室で用事が済んだ後にまた会う約束をして一旦別れ、

自販機前で時間を潰していた。

 

音無「おっと、そろそろ移動しておくか・・・。」

 

あれから10分ほど経ったので、かなでは用事も済んで待ち合わせ場所に来てるだろうと

思い音無は空き缶をゴミ箱に捨てて待ち合わせ場所へ向かう。

 

音無{そういや、今日は黒子と会ってないな・・・。}

 

歩きながらそんなことを考える音無、卒業させる手伝いを申し出てくれた黒子だったが最近は

単独行動が多いらしい、以前はあんなに一緒に行動する事が多かったのにと音無は寂しがった。

そうこうしてるうちに音無は渡り廊下に差し掛かった。

 

音無「さて次は誰にすっか・・・。」

 

???「よっ!!!」

 

音無「わっ日向!?」

 

???「音無さん。」

 

音無「な・直井!?」

 

渡り廊下を歩いてる途中で柱の影から日向と直井に声を掛けられる音無、声を掛けられるまで

全く気づくことが出来なかったので少し驚いていた、それをよそに日向と直井はお互いの顔を

見るなり・・・。

 

日向「おおっ!!!」

 

直井「なっ!!!」

 

日向「お前ここで何してんだよ、俺と音無の邪魔すんな!!!」

 

直井「ふっ、邪魔なのは貴様の方だ愚か者め、神である僕こそが音無さんに相応しい。」

 

音無「おい、お前ら・・・。」

 

顔を合わせるなり喧嘩を始めた2人、音無は止めようとするが・・・。

 

日向「大体お前、俺達が何をしようとしてるか分かってんのか?」

 

直井「分かっている、消していくんだろ1人ずつ・・・そうだな手始めに貴様から消すか。」

 

日向「!!!」

 

直井「僕の目を見るんだ、貴様はトイレットペーパーだ、トイレットペーパーのように

   潔く消えていくんだ・・・。」

 

音無の制止に構わず言い争っていた2人だったが、直井が日向に催眠術を掛け始める、日向は

直井の目を直視してしまい、徐々に催眠術に・・・。

 

音無「こらこら、2人ともやめろ!!!」

 

日向「う~~~ん・・・。」

 

音無「日向大丈夫か!?」

 

音無が2人の間に割って入って喧嘩を止める、日向は催眠術に掛かりかけた為かその場に

蹲ってしまった、慌てて音無が日向に駆け寄り介抱する。

 

直井「僕がそいつに代わってお手伝いしますよ。」

 

音無「お前ら俺のやろうとしてる事をちゃんと分かってるのか?」

 

日向「まあ、何となくだけど?」

 

直井「1人ずつ消していくんですよね?」

 

音無{駄目だこいつら、俺のやる事を正しく理解してないな・・・。}

 

直井と日向が音無を手伝おうとしてるのはわかっていたが、やはりちゃんと理解していなかった。

そこで音無は2人にきちんと説明した上で協力してもらうことにした。

 

音無「あのな、俺がやろうとしてるのは・・・。」

 

説明しようと口を開いた音無は直井に視線を向けたが、直井の背後に違和感を感じた。

 

音無「・・・!?」

 

日向「・・・!?」

 

直井「あれ、どうかしました?」

 

音無と日向は直井の背後に霧状の物体が現れるのを目の当たりにし言葉を失った、直井は

まだその存在に気づいていないようだ・・・。

 

日向「お前また何かしたのか・・・?」

 

直井「はあ?一体何のことだ・・・僕は何も・・・うわっ!!!」

 

そう言いかけた直後に霧状の物体が直井を襲った、霧状の物体は直井を飲み込むように包んだ。

 

音無「何だ!?敵かこいつ!!!」

 

日向「撃って良いのか!!!」

 

目の前の出来事に怯む音無と日向、音無はどうしていいかわからず、日向は咄嗟にS&WのM645

を取り出しその霧状の何かに狙いを定めるが射線上に直井が居るので発砲できない・・・。

 

直井「何かが・・・何かが入ってきます音無さん!!!」

 

音無「くそっ!!!」

 

このままでは危ないと思い音無は一か八か霧状の物体に飲み込まれかけている直井に体当たりした

その衝撃で直井は地面を転がった、その拍子に直井から霧状の物体を引き離す事に成功する。

引き離された霧状の物体は今度は音無目掛けて突進してくるが・・・。

 

日向「気をつけろ、撃つぞ!!!」

 

パンパンと霧状の物体に弾丸を叩き込む日向、音無もすかさずグロック17を取り出す。

 

日向「こいつ死ぬのかよ!!!」

 

音無「とにかく撃つしかないだろ!!!」

 

弾倉を交換しながら疑問に思う日向、音無はその間火力が途切れないように援護射撃した。

霧状の物体は2人の銃撃により徐々に小さくなっていき、このまま倒せるかと思ったその時

 

???「お2人とも伏せてくださいまし!!!」

 

音日「「!!!」」

 

突如女子生徒の声が辺りに響き、音無と日向は言われたとおりにバッと地面に伏せる。

 

???「消えなさい!!!」

 

ババババババと銃声が辺りに響くが地面に伏せてる音無たちは状況が全く掴めない。

 

???「お2人とも、もう大丈夫ですわよ。」

 

しばらくして声の主はもう安全だと音無たちに告げたので立ち上がった2人は声の主を確認する。

 

音無「黒子だったのか、助けられたみたいだな・・・。」

 

黒子「お怪我はありませんの?」

 

日向「ああ、無傷だよ、助かったぜ、ありがとな。」

 

2人に伏せるように言ったのは黒子だった、手にしたG36Cのマガジン交換を行いながら

音無たちに話しかけている。

 

日向「俺達2人だけでも何とかなりそうだったけど、無理は禁物か・・・。」

 

黒子「前の敵に気を取られすぎですわ、お2人の背後にあの物体が迫ってましたのに・・・。」

 

音無「俺達が相手してた奴とは別に新たな敵が現れていたのか!?」

 

日向「マジかよ、全然気づかなかった・・・。」

 

黒子「音無さんも日向さんも全く気づいていない様子でしたので、わたくしが背後の敵を

   倒そうと判断したのは正解でしたわね・・・。」

 

音無はてっきり自分達が相手にしていた霧状の物体を駆けつけた黒子が倒したと思っていたが

日向と音無の背後に新たな霧状の物体が出現し音無たちに迫っていたとは夢にも思わなかった。

 

音無「そういや、黒子は今日はどこにいたんだ?」

 

黒子「音無さん、わたくしを探していたという事は何か御用だったのでしょうか?」

 

音無「今日お前を見かけなかったから俺はかなでと例の計画の相談をしようと思ってな。」

 

黒子「そうでしたの、わたくしは焼却炉の近くで考え事をしておりましたわ・・・。」

 

 

 

 

時間は数十分前に戻る、場所は焼却炉前、黒子は音無とかなでの計画とは違うことを考えていた

ちなみにその時渡り廊下の方では音無が日向と直井の喧嘩を止めようとしていた。

 

黒子{無事に日下部さんたちを卒業させられましたが、NPCの中には美山さんの様にNPCの振り

   をしてる方がまだいるのでしょうか? だとするとあの方も同じようにNPCの振りを

   しているという事でしょうか・・・?}

 

1人で考え込む黒子、その疑問を解消するにはまだ判断材料が足りないので

結論は先延ばしにするしかない、この死後の世界に関しては黒子は知らない事の方が多い。

 

黒子{あの方の性格を考えると言ってもわたくしはあの方と親しいわけではなかったので

   今まであった出来事から推測すると良くも悪くも優しい性格で人を疑いそうにない

   でしょうから、案外この状況をすんなりと受け入れているのかもしれませんわね。}

 

黒子「そういえば、今朝は遅い時間に学食へ行ったので音無さんや立華さんにお会いしてませんわ

   次に誰を卒業させるかをまだ決めてないので、相談しなけれ・・・。」

 

パンパンとどこからか銃声が聞こえたので黒子はテレポートでG36Cを出現させて身構えた。

 

黒子「何事ですの!?まさかわたくしが狙われた?」

 

黒子{しかし銃声は少し離れた場所から聞こえたような・・・?} 

 

周囲を警戒する黒子、自分が狙われたのではと思い、辺りを見回すが狙いは自分じゃないようだ

とすると誰かが危機的状況に陥ってる事になる、そういうことなら自分の取るべき行動は・・・。

 

黒子「まだ銃声は聞こえますわ、とにかく救援に参りましょう。」

 

そう言って黒子は走り出した、まもなく銃声が鳴り響く現場に到着するとそこでは音無と日向が

戦闘中だった。

 

黒子{音無さんと日向さん、あの2人は一体何と戦ってますの!?}

 

黒子「!!!あ・あの煙みたいな物は何ですの・・・?」

 

現場に到着した黒子は音無たちが対峙している霧状の物体に一瞬足が竦んだが、勇気を振り絞り

2人を援護しようとしたが、2人の背後に伸びている影からまたも霧状の物体が現れた、しかも。

 

黒子{あの煙今度は2体も現れましたわ!?しかも音無さん達は気づいていないようですわ!}

 

2人の背後に突如現れた霧状の物体は音無たちに背後から音もなく忍び寄っていた、

まだその存在に気づいていない音無と日向を助ける為に黒子は2人に向かって・・・。

 

黒子「お2人とも伏せてくださいまし!!!」と新たに現れた2つの霧状の物体に銃を向けた。

 

 

 

 

場面は再び渡り廊下に戻る、そういう経緯で駆けつけたことを2人に説明した黒子。

 

日向「成る程、そういう事だったのか。」

 

黒子「あれは何でしたの、煙みたいでしたが新たな敵ですの?」

 

音無「いや、あれが何だったのか、俺達もわからないんだ・・・。」

 

日向「直井の影から現れたから直井の仕業かと思ったんだがあいつの様子からすると

   違うみたいだしな、そういや直井の奴大丈夫か?」

 

黒子「直井副会長?ああ、そこに倒れていますわね。」

 

音無「おっと忘れていた、おい直井平気か?」

 

霧状の物体から助け出す為に直井に体当たりしたがそのまま直井の存在を忘れていた

音無が直井に近づき怪我をしてないか確認している間、黒子と日向は先ほどの敵の事を考える。

 

黒子「人の影から出現してましたが、直井さんが出したわけじゃないとすると・・・?」

 

日向「分身のときみたいな無意識での出現とも違う気がするな、こいつは・・・。」

 

黒子「言葉通り影みたいですわね、この化け物。」

 

日向「こいつの事をそう呼ぶか、だが天使や分身と違って無差別に攻撃してくるみたいだ。」

 

黒子「少なくても天使や分身はわたくしたちに正しい学校生活を送らせるという目的があり、

   その事でこちらが従わなかったときに実力行使に至るわけですが・・・。」

 

日向「分身は冷酷だったが、この影みたいに理由もなく無差別には攻撃しなかったしな・・・。」

 

霧状の物体を影と呼ぶ事にした2人、まったく見当がつかない文字通り影のような新たな脅威

に悩んでいた2人だったが音無が直井を介抱しているので黒子や日向も手伝うことにした。

 

 

 

 

校舎棟の屋上からその光景を一部始終目撃していた人物がいた、それはオペレーターの遊佐だ

無線のインカムで本部のゆりに影のことを報告している。

 

遊佐「音無さん日向さん後から駆けつけた黒子さんの3名により撃破し全員無事でした。」

 

ゆり「一気に3体も出現するとは、天使の新たなスキルと考えるところだけど・・・。」

 

遊佐「不自然過ぎますか?」

 

ゆり「・・・戦線メンバー総員に通達、これより単独行動を一切禁止する、最低でも2人1組

   で行動し、影を新たな敵性勢力と見なして対応する、常に警戒を厳とする事。」

 

遊佐「了解、全戦線メンバーに伝達します、ゆりっぺさんはどうされるんですか?」

 

本部に居たゆりが指示を出した後、席をはずそうとすると無線越しに遊佐から問いかけられた。

 

ゆり「あたしは思い当たる事があるのでそこに当たることにするわ・・・。」

 

 

 

 

ピンポンパンポーンと校内放送のメロディーが聞こえ、焼却炉前に集まっていた音無、日向

黒子、直井の4人は反応する。

 

放送〈生徒会長の立華かなでさん、至急生徒会室にお越しください。〉

 

日向「あれ、この声ゆりッぺの声じゃん。」

 

黒子「どうして立華さんを呼んでいるのでしょう?」

 

日向「やばい、このままだと俺達のやろうとしてることに気づくかもしれない。」

 

音無「確かにそれはまずい。」

 

黒子「生徒会室に参りましょう。」

 

 

 

生徒会室に場面は変わる。

 

ゆり「あなたたち何でここにいるのよ?」

 

音無「傍聴するためだ。」

 

黒子「緊急時に備えて待機してますの。」

 

直井「生徒会副会長の僕が許可しました。」

 

ゆり「生徒会室じゃない場所に呼ぶんだったわ・・・。」

 

生徒会室の中にゆり、かなで、音無、日向、黒子、直井の6人が一堂に会していた。

 

ゆり「単刀直入に聞くけど、影はどういうことなの?」

 

立華「知らない・・・。」

 

早速ゆりは本題である影についてかなでに尋ねたがかなでは影の事を知らないようだ。

 

ゆり「あなたがプログラミングしたのでないなら、バグの可能性があるわね・・・、

   最近プログラミングしたのはいつ?」

 

かなで「一昨日よ。」

 

ゆり「タイミングは合ってるわね、部屋に入ってパソコンを調べさせてもらってもいい?」

 

かなで「いいわ。」

 

てっきりかなでがプログラミングした物と思っていたが違うらしい、ならばその際発生したバグ

という事になるのでAngel Playerを調べてその事実があるかどうか確認する必要があるので

ゆりは天使の部屋に入室する許可をかなでに求めた、かなでが了承したので無線で連絡する。

 

ゆり「竹山君お願い。」

 

無線「了解、後僕の事はク・・・。」

 

と無線で指示したが返答の途中で無線を切った、竹山が調べる間 ゆりはかなでに質問する。

 

ゆり「どんなプログラミングをしたか教えてもらってもいい?」

 

かなで「羽を作った。」

 

ゆり「羽?まさか空を飛べるようにしたの?」

 

かなで「いいえ、羽は飾り。」

 

ゆり「飾り?」

 

かなで「その方が天使らしいからって・・・。」

 

ゆり「らしい?誰かに言われたの?」

 

音無{このままだとかなでは誤魔化さずに言ってしまうかもしれない・・・。}

 

ゆりの質問に淡々と答えるかなでだったがここで本人の不器用な部分が出てしまった・・・。

このまま続けるとぼろが出るかもしれないと音無は焦るが思わぬ所から助け舟が出される。

 

直井「僕が提案したんです、生徒会長に箔をつけるために。」

 

ゆり「箔?」

 

直井「生徒会長に羽をつければ箔がつきます。」

 

ゆり「・・・。」

 

何故か直井がかなでの羽に関しての疑問に答えた、ゆりは不審に思いながらも納得したようだ。

 

ゆり「それにしても冷酷さを微塵も感じないわ、まるで以前のままのような・・・。」

 

直井「いえ冷酷です、現に僕は毎日刺されています。」

 

ゆり「え、毎日刺されているの・・・?」

 

次に感じたゆりのかなでが冷酷には見えない件についても直井が言葉巧みに説明する。

実は直井がかなでをフォローするたびに音無たちに向かってゆりには見えないよう自分の背中に

隠しながら握りこぶしを作って親指だけを立てて、いわゆるGOODのポーズを取っていたのだが

それを見せられ続けていた音無、日向、黒子の3人は・・・。

 

日向{アホだ、こいつ・・・。}

 

黒子{音無さん、後でちゃんと直井副会長を褒めてあげませんと・・・。}

 

音無{はぁ、俺はあいつの親じゃないんだぞ・・・。}

 

と三者三様に呆れていた、そこへ竹山から無線連絡が入った。

 

無線「ゆりっぺさん取れますか、応答してください」

 

ゆり「竹山君、どうだった?」

 

無線「バグは確認できませんでした、今回のプログラミングは装飾目的という単純な物なので

   人を襲うようなバグが発生しようがないです、それと僕の事は・・・。」

 

ゆり「じゃあ他のプログラミング、例えばハンドソニックとかはどうなの?」

 

無線「・・・パッシブにオーバードライブ、ハンドソニックやディストーション

   これも以前と同じですね・・・形状は一部違いますが・・・。」

 

ゆり「そう・・・。」

 

無線「どうしますか?」

 

天使エリアからの竹山の報告ではバグは発見できなかったようだ、いつものように竹山の口調

をゆりが遮っても竹山の反論はなかった、緊迫した状況であるためだろうか。

そしてゆりは何か考え事をしているような眼差しでかなでを見つめた、これを見た音無は・・・。

 

音無{消させる気か、これじゃ苦労が水の泡だ・・・。}

 

・ァン・・・この時、聞き取りづらいほど小さい銃声が響いた。

 

日向「!?おい、今銃声が聞こえなかったか?」

 

このままだとゆりは竹山に能力を消すよう命令するはずだ、

これでは苦労が水の泡になってしまうと焦る音無だったが、日向が突如変なことを言い出した。

 

ゆり「銃声?聞き間違いじゃないの。」

 

それを聞かされたゆりは日向の勘違いだろうと判断し、否定したが・・・。

パァンと今度は鮮明に響く銃声、今度は生徒会室に居る全員にはっきりと聞こえた。

 

全員「「「「「「!!!」」」」」」

 

日向「外から聞こえたぞ!」

 

黒子「グラウンドからということですわね!」

 

慌ててグラウンドの様子を確認する為に生徒会室からベランダに飛び出した日向、黒子

音無、直井の4人は信じられない光景を目の当たりにする・・・。

 

日向「おい、あそこ見ろよ!!!」

 

音無「あの怪物!!!」

 

黒子「戦線メンバー数人を取り囲むほど現れているとは・・・。」

 

4人が目にしたのはグラウンドで数人の戦線メンバーを包囲する影の集団だった

散発的に銃声が聞こえるので戦線メンバーはまだやられていないようだが明らかに

不利な状況だ、このままでは犠牲者が出てしまうだろう・・・、意を決して音無はベランダに

後から出てきたかなでにこう告げた。

 

音無「かなで頼む!」

 

かなで「・・・。」コクリと無言で頷いたかなでは欄干に足を掛けて勢いよく飛んだ。

 

そしてバサァという音と共にかなでの背中から白い翼が現れた・・・。

 

音無「・・・。」

 

日向「・・・。」

 

直井「・・・。」

 

黒子「ほ、本当の天使の様ですわ・・・。」

 

天使のように神秘的なかなでの様子に男子3人は言葉を失い、黒子は思わず天使と呟いてしまった

その直後生徒会室から勢いよく飛び出し、ベランダから飛び降りる人影があった。

 

日向「ゆ、ゆりっぺ!」

 

その人影はゆりだった、ゆりは建物1階にある昇降口屋根に一旦飛び降りその後地面へと

着地しグラウンドへM9を取り出し走っていった。

 

音無「よっしゃ俺も行くぞ!」

 

黒子「わたくしもテレポートで!」

 

ゆりに続けと言わんばかりに音無もゆりのように飛び降り、黒子はテレポートで移動する。

 

日向「おい、あいつらまじかよ・・・。」

 

直井「フッ、貴様のような愚民はそこで手をこまねいているがいい。」

 

日向「バカにするなよ、俺は階段を使う!」そして日向と直井は校舎の階段に向かっていった。

 

グラウンドで影に包囲されていたのは椎名とTKだった、椎名はクナイや短刀で戦っていた

一方のTKは華麗にダンスを踊るようなステップで影の攻撃をかわしながら戦う。

 

ゆり「このっ、クッ!!!」

 

手当たり次第に影を攻撃するゆりだったが、影に隙を突かれ捕まりかけるが・・・。

 

音無「大丈夫かゆり!」

 

ゆり「音無君ありがとう!」

 

影に腕を捕まれたゆりだったが音無がその影を攻撃しゆりが解放される、そんな2人の背後に

4体の影が迫っていたが・・・。

 

黒子「音無さん達には手出しさせませんわよ!!!」

 

ババババババと5,56mm弾の圧倒的な火力で4体の影を消し去る黒子、しかしフルオートで

撃った為に弾切れを起こしてしまう・・・。

 

黒子「装填しますわ・・・。」

 

日向「ならカバーしてやんよ!!!」

 

と日向が影たちに制圧射撃を加え黒子の弾倉交換を援護する。

 

日向「黒子、指きりバーストしろ、断続的に撃つんだ!!!」

 

黒子「わかりましたわ、セレクターを切り替えますの!!!」

 

アドバイスを受けて黒子はG36Cの射撃モードを3点バーストに切り替える。

 

かなで「・・・。」

 

熱く声を掛け合う黒子や日向たちとは対照的にかなでの戦い方は無表情で淡々としていた。

 

ゆり「みんなこのまま押し切るわよ・・・。」

 

劣勢だった戦線メンバーだが、戦況を巻き返し始めたのでこの勢いなら影たちを殲滅できそうだと

ゆりは残敵の確認をしようと辺りを見回した時ある光景を目にする。

 

NPC1「う、うわあああ。」

 

NPC2「!!!」

 

ゆり「あれは影!!!」

 

グラウンドで体育の授業中だったのだろうかジャージ姿のNPC達のうちの1人が突如影に変異した

それを目にし動揺するゆりだったがそれよりも影に集中せねばと戦いに戻った・・・。

数十分後最後の影を椎名が消し去り戦線メンバー達は息を切らせ体力を消耗しながらも全員無事

に生き残る事ができた。

 

音無「みんな無事か?」

 

日向「何とかな・・・。」

 

黒子「あの化け物は影と呼ぶにふさわしい不気味さでしたわ・・・。」

 

椎名「これは悪夢か・・・?」

 

戦線メンバーそれぞれがそれぞれ思っていたことを口に出す中、ゆりは思いつめた表情で口を開く

 

ゆり「この世界に長く居すぎたのかしら・・・?」

 

音無「ゆり、どういうことだ?」

 

黒子「お2人とも何を話してますの?」

 

ゆり「ほら、TVゲームであるじゃない、永久プレイ阻止の為の無敵のボス・・・。」

 

音無「それ笑えないな・・・。」

 

黒子「わたくし達はゲームプレイヤーになる側ですのに

   操作されるゲームキャラになるというのは確かに笑えませんわね・・・。」

 

ゆりの出した推測に音無は素直に悪態をつき、黒子は皮肉めいた答えを返した。

 

ゆり「それにしても彼女が共闘してくれるなんて、まるで味方みたいだわ。」

 

藤巻「おーい、おーい、大変だ!高松がやられた・・・。」

 

かなでが一緒に戦った事に疑問を持つゆり、そんな戦線メンバー達の元へ藤巻が悪い知らせを

持って駆けつけてきた。

 

 

 

 

夕方近くに戦線メンバーは学習棟の渡り廊下に集まっていた。

 

日向「あいつの眼鏡だ、高松が眼鏡を落とすだなんて・・・。」

 

大山「僕が一緒に居たんだけど、ジュースを買いに行く為に少し目を離したんだ

   戻ってくると高松君がちょうど黒い影に飲み込まれているところだったんだ・・・。」

 

音無「飲み込まれる?」

 

大山「いや食われるって言った方がいいかも、僕は助けようとしたんだけど殆ど手遅れで・・・。」

 

日向「高松が抵抗も出来ずに眼鏡を落とすなんてやばいぜ、それでどうなったんだ・・・?」

 

大山「最後は地面に飲み込まれていった・・・。」

 

日向「地面に?」

 

悪い知らせとは高松が影によってやられてしまった事だ、現場となったのは渡り廊下。

高松が襲われたときに一緒に居たのは大山だった、その時の事を思い出したのか

震えながら大山はそのときの状況を話す。

 

黒子「そういえばさっきもここで影に遭遇しましたわ、出現する条件は場所が関係している

   可能性が出てきましたわね・・・。」

 

音無「確かにここに影は現れたが、そうだとするとグラウンドに現れたのは何故だ?」

 

日向「お前ら、結論が早すぎねぇか?」

 

ゆり「あまりにもイレギュラー過ぎるわ・・・。」

 

黒子と音無が判断材料が少ない中で推理しようとするが日向がそれを制した

この状況にゆりはこの死後の世界でこれまでになかったことである為頭を悩ませるしかなかった。

そんな中で音無と黒子はふとこんな事を考える・・・。

 

音無{一体どうなっている、俺達の思惑とは別の力が働き始めているとしか思えない

   俺のやろうとしてることは間違っていないはずなのに何故なんだ・・・?}

 

黒子{この世界に長く留まりすぎたからというゆりさんの推測は違う気がしますわ・・・。

   もしそうだとしたら何故このタイミングで影が出現し始めたでしょう・・・?

   仮に長く居たのが原因だとしたら今までに何か予兆のようなものがあったはずですわ。}

 

考えても考えても答えは出てこなかった、消えた高松は一体どこに行ったのか・・・。

 

 

 

 

そして翌日、学習棟のとある教室にゆりたちは居た、そしてそこには・・・。

 

日向「高松!お前、心配したんだぞ・・・。」

 

高松「心配?何のことですか?」

 

教室の中に昨日影に襲われて行方の分からなかった高松の姿があった、しかし一般生徒の制服を

着用し眼鏡も掛けていなかった、そして様子もおかしかった・・・。

 

日向「お前昨日影の化け物に食われたそうだが大丈夫なのか!?」

 

高松「?影の化け物、何を言ってるのか分からないんですが・・・。」

 

黒子「・・・高松さん、あなたは高松さんでいらっしゃいますわよね?」

 

様子のおかしい高松と言葉を交わす日向が興奮している様子なので一旦黒子が間に入って

高松の身に何が起きたか聞き出そうとする。

 

高松「はいそうですが・・・。」

 

黒子「日向さん、ここはわたくしに任せてくださいな。」

 

日向「え、わかった・・・。」

 

黒子「あなたは昨日影に襲われましたの、そして地面に飲み込まれてしまいましたの 

   昨日の事はちゃんと覚えていますの?」

 

高松「昨日は放課後になったら真っ直ぐ寮に帰り、消灯時間に寝ましたよ。」

 

日向「おい高松、冗談だろう・・・。」

 

ゆり「・・・。」

 

黒子の問いかけにすらすらと答えていく高松それも影に襲われた事などまるでなかったかのように

そのやり取りを見ていたゆりの頭にある可能性が浮上する・・・。

 

日向「そういやお前、何でその制服着てるんだ?」

 

高松「・・・その制服といわれても衣替えはまだ先ですよ。」

 

日向「その制服を着てることもあれだが、何で教室に居るんだ?」

 

高松「ここは学校ですよ、授業を受ける為にここに居ます。」

 

黒子「高松さん、このままですとあなたは消えてしまいますわよ・・・。」

 

高松「消える?消えるって何が消えるんですか?」

 

一般生徒の制服を着て教室に居るのは何故だという質問に常識的に答える高松

それもまるで自分が死後の世界でなく普通の学校に居るような口振りで・・・

この時黒子は高松の正面に立っていたのだが高松の目に違和感を覚えていた。

 

黒子{・・・この目は本気でわたくし達が何を言っているのかわからないという

   思いが詰まった目ですわね・・・そして目の奥に何か文字のような物が

   浮き上がっては消えているように見えますわね・・・。}

 

高松の目を見てこう思う黒子、何の根拠もないが明らかに何かがおかしいと自分の勘が

告げていた、しばらく沈黙していたゆりだったがここで口を開いた・・・。

 

ゆり「黒子ちゃん、日向君、もう十分よ、行きましょう・・・。」

 

日向「おいこのままでいいのかよ?」

 

高松「すいませんがもうすぐ授業ですので・・・。」

 

黒子「わかりましたわ、お時間を取らせてしまい申し訳ありませんでした。」

 

もう十分だといい足早に教室を去っていくゆり、最初は戸惑っていたメンバー達もしぶしぶ

後に続く、大山が最後まで迷っていたがゆりに促された為教室を後にした、高松は机から教科書

やノートを取り出して何事もなかったかのように授業の用意を続ける・・・。

 

 

 

 

学習棟の階段に戦線メンバーは集まっていた、ここでゆりが結論を述べる。

 

ゆり「あのやり取りでわかったわ、恐らく高松君はNPCになってしまったのよ・・・。」

 

「「「え!!!」」」ゆりの推測に驚く一同。

 

日向「ちょっと待てよ、そりゃどういうことだ?」

 

大山「NPCになったという事は魂がないってことでしょ、じゃあ高松君の魂はどこに?」

 

黒子「影に魂を食われたと考えられますわね・・・。」

 

ゆり「その通り。」

 

高松の魂はどこに消えてしまったのか、その答えは影に食われてしまったのだ・・・。

そして魂を失った為高松は毎日授業を受けるNPCとなってしまった。

 

日向「それじゃあいつはここで永遠に授業を受け続けるのか?」

 

ゆり「そういうことになるわね・・・。」

 

日向「死ぬよりもひでぇ、あいつはここに永遠に閉じ込められちまったのかよ・・・。」

 

黒子「・・・。」

 

日向「くそっ!!!」

 

あまりにもひどい事実にやり場のない怒りを壁にぶつける日向、他の皆も一様にこの事実に

対して戸惑いの表情を見せている・・・。

 

藤巻「生きてた時も理不尽だったのに、ここでもそんな目に遭わなきゃならねぇのかよ・・・。」

 

大山「まだ天使に消されるほうが救いがあるね・・・。」

 

椎名「しかも影は増殖を始めているようだが・・・。」

 

黒子「ゆりさんどうしますの?」

 

ゆり「・・・。」

 

この事態にどうしたらいいのか分からない面々はリーダーのゆりに指示を仰ぐ・・・。

険しい表情で考え込むゆりはその夜、体育館に全戦線メンバーを集めた。

 

ゆり「この世界に異変が起き始めているのは遊佐さんの説明したとおりよ、天使とは違う新たな

   脅威の出現、これを影と呼ぶわ、影は天使と全く違う存在よ、神出鬼没で無差別に攻撃する

   影に食われた者は高松君のように魂を失いNPCとなってしまう・・・。

   その影は無制限に増殖中で原因も不明、対抗手段も無いに等しい、遊佐さんが告げたように

   各自が集団行動でお互いを守り合うしかないわ・・・。」

 

黒子{校庭で料理を振舞っていた時も戦線メンバーは多いと思いましたが・・・。

   あの時は数十人程でしたが、今夜体育館に集まってるのは百数十人ぐらいでしょうか?

   死んだ世界戦線って本当にすごいですわね・・・。}

 

体育館に集められた死んだ世界戦線のメンバーの数に驚く黒子、ガルデモを始めとする陽動部隊

教師NPCを引き止める妨害班、ギルドと武器庫要員を合わせるとこんな膨大な人数になるのだ

 

ゆり「さて、こうした危機に瀕する中でこの死んだ世界戦線に別の思想を持つ者達が現れ

   戦線を新たな道へ導こうとしている・・・。」

 

戦線一同「「「「「「「ええ!?」」」」」」」

 

この世界で起きている状況の説明、そして今後の戦線の取る対策を話していたゆりが

唐突に音無達が進めている計画について言及した為、戦線メンバー達に動揺が広がる。

 

音黒「「!!!」」

 

そしてその計画を実行している音無と黒子も驚くなか、ゆりは話を続ける。

 

ゆり「その道は現在のこの世界における危機回避の1つにもなるわ、なのでそちらの代表として

   音無君そして黒子ちゃんも皆にその思いを語ってもらえるかしら?」

 

その言葉の直後戦線メンバーの視線が2人に注がれる、気まずい2人の背中を直井と日向が・・・。

 

直井「ばれてましたね・・・。」

 

日向「音無、黒子行けよ!」

 

日向に背中を押された2人はステージに進んで戦線メンバーに語り始めたここは若者達の魂を

救済する世界だと強い思い残しや後悔例え罪悪感を抱えていてもちゃんと報われる事ができると

必死に説明する、2人の言葉に俯きながらも納得する者もいれば明らかに戸惑いを隠せない者

中には涙を流す者もいた、そして・・・。

 

戦線男子A「いい加減な事を言うな!!!」

 

戦線男子B「そんな都合のいい話なんてあるか!!!」

 

黒子「そんな事ありませんわ、お願いですのでわたく・・・。」

 

戦線男子C「そんなのは嘘だ!!!」

 

そう、中には音無たちの考えに賛同せず反発する者やそして怒りを露にする者もいた、しかし。

 

日向「嘘じゃねぇよ、ちゃんとあったんだ。」

 

戦線一同「「「「「「「ええ?」」」」」」」

 

日向「ユイは報われた、俺みたいな人間の屑のまま死んだ奴でもこの世界でユイにそれを与えて

   救ってやることができた・・・。」

 

後ろから日向が音無たちの元に自分が救ったユイの事と生前の日向が犯した過ちを話しながら

歩み寄った・・・日向は戦線メンバー達に音無の考えは正しいと伝える。

 

戦線一同「「「「「「「・・・。」」」」」」」

 

直井「僕もです・・・。」

 

戦線一同「「「「「「「!?」」」」」」」

 

直井「僕は神ですが、それでも音無さんだけが僕に人の心を取り戻させてくれた・・・、

   立った一言掛けてくれた労いの言葉と僕を認めてくれた熱い抱擁で・・・。」

 

間を置いてから日向に続き直井も前に進み出た、かつて誰にも必要とされずに寂しさと絶望から

他人を見下す性格になったが自分を認めてくれてそして必要としてくれた音無の事を話す直井。

もう戦線メンバー達の中で反対意見を出すものは居なかった、機は熟したと思いゆりは告げる。

 

ゆり「どの道を選ぶかは皆に任せるわ・・・。」

 

戦線男子D「ゆりっぺはどうするんだ?」

 

ゆり「私はいつだって勝手だったわ、あなた達も守れそうにないし

   私がしたいようにするだけよ・・・。」

 

戦線一同「「「「そんなぁ・・・。」」」」

 

ゆり「各自よく考えるように、以上解散・・・。」

 

音無と黒子の考えは戦線メンバー全員に伝わった、今後の進退は各個人が決める事だ

死んだ世界戦線は岐路に立たされた、そしてメンバー達はそれぞれ悩み考えた上で

それぞれ道を選ばなければならない・・・。

 

そして戦線メンバー達は体育館を後にしたが音無,黒子,日向,直井の4人が最後まで残っていた

 

ゆり「あなたたち、ちょっと来てくれない?」とゆりに呼び止められた。

 

呼ばれた4人は焼却炉まで来た、そこにはかなでが1人佇んでいた・・・。

ゆりは周囲に目を配り、本題を切り出した。

 

ゆり「まずはその子にお願いがあるわ、その子を影の迎撃に当たらせなさい。」

 

音無「かなでを・・・どうしてだ?」

 

ゆり「頭を使って行動させるより何も考えさせずに戦わせるほうが向いてるわよ

   私が見ていた限りでは。」

 

音無「えっ見られてたのかよ・・・。」

 

黒子「まあ、あの時はグラウンドで戦っている最中とはいえ、立華さんは目立ちましたから

   仕方ありませんわね、しかしゆりさんがわたくしの行動もお見通しだったのは

   驚きましたわ・・・。」

 

日向「まあゆりっぺの目はそう簡単に欺けないって事だ。」

 

ゆりが焼却炉前に音無達を呼んだのはかなでと共闘する事を伝える為だった、恐らくは

他の戦線メンバーへの配慮としてあまり目立ちたくなかったのだろう。

 

音無「かなで1人で戦わせるのは反対だ、俺達の仲間なんだから一緒に戦うべきだ。」

 

ゆり「他のメンバーだってあなたの仲間よ、彼らを守るにはあの子の力が必要よ

   我々戦線と長きに渡り戦ってきた、彼女の圧倒的な力がね・・・。」

 

音無「確かに天使だけにすりゃ適任だな・・・。」

 

黒子「わたくしもゆりさんの意見に賛成ですわ、音無さんの気持ちも分かりますが

   分散して戦ったほうが効率的ですもの、影は神出鬼没に出現する以上、立華

   さんは機動力と高い戦闘力を持っているので戦力として申し分ないですわ

   そしてゆりさん「まずはその子にお願いが」と最初に仰いましたがそうなると

   他にも考えがあると言う事ですの・・・。」

 

ゆり「もう1つのお願いは黒子ちゃんあなたの力を見込んでのことよ。」

 

黒子「わたくしは何をすればいいんですの?」

 

ゆり「黒子ちゃん、テスト妨害の時はあなたの力を悪用しようとしたけれど今回は違うわ

   あなたのテレポート能力は機動力が高いので複数個所で同時多発した不測の事態に

   臨機応変に対応できる、黒子ちゃんには遊撃戦力として戦ってもらいたいの・・・。」

 

日向「なるほど、他に適任者はいないな・・・。」

 

黒子「ゆりさん、わたくしはこの戦線に命を捧げる覚悟がありますので喜んでその役目

   を引き受けますの!!!」

 

ゆり「ええ、まだ戦線メンバーの中には決心がつかずに留まる者も多いはずよ、黒子ちゃん

   ありがとう、そして音無君・・・。」

 

音無「お、俺にも話があるのかよ。」

 

死んだ世界戦線の仲間達の中には去っていく決心がつかず迷う者もいるだろう・・・。

そんな彼らの為にかなでと黒子2人の力を使う事とその役割を説明しゆりは2人に協力を仰いだ

かなでは無言で頷き、黒子は力強く承諾した、そしてゆりは音無にも何か話すことがある様子だ

名前を呼ばれた音無は自分にどんな役目があるのかと緊張しながらゆりの言葉を待った・・・。

 

ゆり「音無君、あなたさっき「天使だけにすりゃ適任」と言ったけど彼女は天使じゃないわよ。」

 

音無「え、今なんて言った!?」

 

ゆり「その子は天使じゃないわ、私達と同じ人間よ、まさか気づいてなかったの・・・?」

 

音日「「えええ!!!」」

 

何を言われるかと思ったらかなでは天使じゃないとのゆりの発言に音無は驚いた、日向も同様に

驚いていた、そして直井も平静を装っているが足が震えており明らかに動揺している・・・。

 

黒子{やっぱりそうでしたのね、天使というには立華さんはあまりにも人間的な部分が

   多かったのでもしかしたらと思っておりましたが・・・。} 

 

そんな中で黒子とゆりだけが冷静だった、慌てて音無がかなでに問い詰める。

 

音無「お前って天使じゃないのかよ!!!」

 

かなで「あたしは天使じゃないと最初に言ったはずだけど?」

 

音無「・・・ああ、ホントだ!!!」

 

初めて死後の世界に来たときにかなでと会話した際に確かにそう言っていたなと思い出し

恥ずかしさのあまり頭を抱える音無、そうなるとある疑問がわいてくる・・・それは・・・。

 

音無「じゃあ何でかなではここに居る?生徒会長をしていたのにどうして消えなかったんだ?」

 

黒子「音無さんそれは・・・。」

 

ゆり「彼女なりのこの世界に居る理由があるからでしょ。」

 

音無「かなでも抱えているものがあるんだな、こいつが終わったらそいつも解消しないと

   いけないな・・・。」

 

そうその疑問とはかなでは消えることなくこの世界に居た理由だ、ゆりはかなでも理不尽な人生

を歩んできた不幸な魂だったからと指摘する、音無はかなでに共感を覚えて思わず頭をなでる。

 

音無「ところでゆりはどうするんだ?」

 

ゆり「確かめたい事があるのよ。」

 

黒子「影と戦われるおつもりですの?」

 

音無「1人じゃ危険だ!!!」

 

そういえばゆりはこの後どうするのか音無が尋ねるとゆりは調べたい事があると告げる。

 

ゆり「仕方ないわ、皆には選ぶ権利がある以上あたしの用事に巻き込むわけにいかないわ。」

 

黒子「ゆりさんに賛同する方もいらっしゃるはずですわ。」

 

音無「そうだ、俺も一緒に・・・。」

 

ゆり「考える時間は必要よ、大事な事だから、あなた達の気持ちは嬉しいけれど・・・。」

 

音無「そりゃそうだけど・・・。」

 

この世界に留まり続ければ影と戦う事になる、あまりにも危険なのでゆりを止めようと

黒子と音無は説得するがゆりはそれを拒んだ。

 

ゆり「戻ってきたときに皆が居なくなってこの世界から無事に去っていったならあなた達

   のおかげだと思っておくわ・・・。」

 

音無「そんな、俺は待っている・・・。」

 

黒子「ゆりさんを見捨てられませんわ、わたくしもお待ちしておりますの!」

 

ゆりは音無達のおかげでこの世界で過去の記憶に苦しみ続けたメンバー達を救済する道に

導く事が出来た事に感謝する、しかしゆりはまだこの世界に留まるつもりのようだ・・・。

 

ゆり「そんなのん気にしてたら影にやられるわよ、あなたたちも早く去るべきよ

   あたしのことは気にしないで・・・。」

 

日向「・・・気にするよ、いきなり何を言ってるんだよ・・・俺達2人で始まった戦線だ

   長い間苦楽を共にしてきた仲じゃないか、だから俺はお前を置いていかない・・・

   終わるときも一緒だ・・・俺もお前を待っているからさ・・・。」

 

ゆり「日向君、相変わらずあなたはバカね、感情論では何も解決しないのに・・・。」

 

思っていた以上にゆりを思ってこの世界に残ると申し出てくれたメンバーの多さに嬉しいと

感じるゆりだったが、そこへ・・・。

 

戦線男子E「敵襲、敵襲だ!!!」

 

ゆり「かなでちゃん、黒子ちゃんお願い。」

 

かなで「ハンドソニックバージョン5。」

 

黒子「了解ですの、武器庫で装備を整えて参りますので失礼しますわ!!!」

 

影が出現したらしく戦線男子が警戒を呼びかけていた、ゆりは黒子とかなでに戦闘指示を

出した、かなではハンドソニックを出現させ、黒子はテレポートで武器庫へ向かった。

 

ゆり「じゃあ、会えたらまた会いましょう・・・。」と走り出すゆりだったが・・・。

 

日向「ゆりっぺ!!!」

 

と日向にあだ名を呼ばれて立ち止まった。

 

ゆり「酷いあだ名、でもそのおかげで皆が慕ってくれたのよね・・・ありがとう!!!」

 

元々はゆりの名前が日向の母親と同じで嫌だという事から日向が名づけたあだ名はやがて

戦線みんながリーダーに親しみを込めて呼ぶようになったのでゆりは最初は嫌だったが

段々そのあだ名が気に入っていった、感謝の言葉を延べM9を取り出してゆりは走っていった

残された音無、日向、直井は小さくなっていくその背中を見送る事しか出来なかった・・・。

 

 

戦線本部でゆりは1人で用意したサブマシンガンのヴェクターのマガジンに45ACP弾を込めていた

そして頭の中ではグラウンドでの影の戦闘中に見たNPCが突如影に変異した事を考えていた。

 

ゆり{もしもかなでちゃんみたくNPCもプログラミングによって書き換えが可能だとすれば

   Angel Playerを使いNPCを影に変換しあたし達を襲わせて神様気取りのふざけた奴が

   この世界のどこかに居るはず、そうなると大量のPCが必要だわ、だとすればあそこに!}

 

NPC達も天使のようにAngel Playerによって影になったのではと推測したゆりは

パソコンを使って悪事を働いている者を見つければ影は消えると考えたのだ、そして犯人の居場所

の目星もついていた、ヴェクターにマガジンを差込んで装填したゆりはその場所へ向かった。

 

図書館内にある第1PCルームの中でカタカタとキーボードを打つ男性の姿があった。

 

ゆり「チェックメイトよ、手を上げてこっちを向きなさい。」

 

老人「お、チェックメイトとはチェスでもやっておったのか?」

 

意外と簡単に犯人を見つけることが出来たゆりはホールドアップするが

その犯人はゆったりとした口調の年配の男性だったのでその姿を見たゆりは驚いた。

 

老人「古いゲームも趣があっていいもじゃ、あんた若いのにいい趣味をお持ちじゃな・・・。」

 

驚くゆりをよそに男性はPCの電源を落として傍にあった鞄を持ってその場を立ち去ろうとした。

 

ゆり「待ちなさい、ここで何をしていたの?」

 

老人「何じゃわしのことか、ここで何をしていたかだって新しいPCの設置作業じゃよ。」

 

ゆり「それは何の為に?」

 

立ち去ろうとしていた男性を慌てて引き止めたゆりは男性がここで何をしていたか聞き出す。

 

老人「ふむ、高価なせいか最近PCがよく盗まれるんじゃ、すぐに補充しないと足りなくなる。」

 

ゆり「窃盗犯の目星はついていないの?」

 

老人「生徒かもしれんし教師の可能性もあるが今のところは分からんのう・・・。」

 

ゆり「そうわかったわ、引き止めてごめんなさい。」

 

老人「鍵を閉めるから出てくれんか、もう遅いしあんたも早く帰るべきじゃ。」

 

男性は学園に依頼された業者だった、盗まれて数が足りなくなったパソコンを夜の内に設置

していただけだったのだ、ゆりが外に出た後に男性は部屋のドアを施錠しその場を後にした。

男性が離れていったのを確認したゆりはヴェクターのストックでドアノブを叩き壊して

扉をこじ開けてPCルームの中を調べながら頭の中で推理する・・・。

 

ゆり{間違いないわその窃盗犯がこの世界で神様気取りで居るんだわ、盗んだパソコンで

   NPC達を書き換え始めてあたしたちを排除しようとしている、だけどどうやって

   捕まえればいいの?悠長に犯人探ししてる暇はないわ、パソコンは重いから

   そう簡単に盗めないから夜に忍び込んで台車で運んでいるのか、窓から下ろしてる

   可能性もあるわね、でも誰にも目撃されないのは不自然す・・・。}

 

歩いていたゆりは床に違和感を感じ足を止める、足元のタイルが不自然に汚れていて

手で押すと中が空洞になっているのか周りの床のタイルと音が違う、手にしたヴェクターで

試しに床に銃撃を加えてみるとそこには・・・。

 

ゆり「ビンゴ、秘密の入り口があった。」

 

床のタイルを銃撃で砕くとそこには取っての付いたハッチがあった、ゆりはハッチを開けライト

で中の様子を探った、中には下へ降りる為の梯子があって相当深いところまで続いているようだ。

 

ゆり「あれ、これってまさかギルド!!!」

 

なんと地下へ続く梯子の先はギルドだった、パソコン窃盗犯はギルドに潜伏してるのだった。

 

 

 

そしてゆりが犯人の潜伏先がギルドだと突き止めた頃、黒子は武器庫にテレポートで現れていた

 

戦線男子1「うおっ何だお前かびっくりさせるなよ・・・。」

 

黒子「あ、脅かしてしまいすみませんの。」

 

突如現れた黒子に驚く武器庫担当者だったが、知った顔なので安心したようだ。

 

黒子「あの、戦闘に備えて弾薬と装備を取りに来ましたの。」

 

戦線男子1「そうだったか、すまないがここは避難所として使う予定だからあまり多く武器

     や弾薬は渡せない・・・。」

 

そう言われ黒子が辺りを見回すと15~6人の戦線メンバーが武器庫内にいた、避難所と言ってた

のはこの世界を去る決心がまだつかない者が身を寄せる為だからだった、中には武器を手にして

ここの防衛をしている者も見受けられる、確かに拠点防衛の為には多くの銃や弾薬が必要だろう

 

黒子「・・・わかりましたわ、仕方ありませんものね。」

 

戦線男子1「ほらこれだ、他の奴よりは多めにしておいた、一発一発大事に撃ってくれ・・・。」

 

差し出されたのはG36Cの弾倉8本とMP5Kの弾倉14本、そして最近使ってなかったベレッタPX4

のマガジン30本ともう一挺のベレッタPX4だった・・・。

 

黒子「拳銃中心で戦うしかないようですわね、準備して下さってありがとうございます。」

 

戦線男子1「二丁拳銃で戦うのは悪い事ばかりじゃない、リロードが大変だが瞬間火力は高い

     多数の敵相手ならかなり有効なはずだ、それと空の弾倉をテレポートで武器庫に

     送ってくれれば可能な限り弾を込めておくからその事を忘れないでくれ。」

 

黒子「本当にありがとうございますの、とても心強いですわ。」

 

戦線男子1「武運を祈っている、俺達もぎりぎりまで踏ん張るからお前も負けるなよ!」

 

黒子「ええ、あなた方もどうかご無事で・・・、わたくし行って参りますわ!!!」

 

テレポートで消えた黒子は戦場へと赴いていった、大切なものを守る為に・・・。

 

 

 

 




今回はここまでです、矛盾点や誤字脱字はないと思います。
この作品を31人の方がお気に入り登録してくださって嬉しい限りです。
ありがとうございます。

追伸おかしな部分があったので修正しました・・・。

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