『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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今回で聖杯戦争2日目終了です。
次回からはもう少し戦いを大きくしたいです。


『逃亡を見つめるは虎の双眸』

これは別の所の戦いである。

川神百代の襲来からある程度の時間が経過していた。

 

「この……女ッ、なめてんじゃねえぞ、クソがぁッ!!」

 

俺は女に向かって攻撃をする。

さっきまで男とやりあっていたせいで疲れが全身に回ってくる。

 

「いい女だがこいつは少々いただけないぜ」

 

男の方も俺と一緒になって女へ向かっていく。

お互いにそれほど深刻なダメージは受けていない。

だがそれも時間の問題だ。

 

「どうしたどうした、二人がかりでこんなものか!!」

 

俺達の攻撃を受け止めて笑いやがる。

舐め腐った態度しやがってッ、だったらやってやらぁッ!!

 

「喰らえってんだッ!『リング』ゥ!!」

 

さっきの男とは違っていきなりぶっ放す。

小難しい事なんざやめだ。

そのむかつく笑顔を歪ませてやんよッ!!

 

「これは釈迦堂さんの……くっ!!」

 

後ろに下がって『リング』をやり過ごす。

そんなんで俺から逃げると思ってんじゃねぇぞッ!!

 

「倒れろやァ!!」

 

腹に一撃をぶち込む。

良い感覚だ、腹の中身が持ち上がって手応えがある。

 

「もう一丁ぉぉおっ!、歯ァ食いしばれよっとぉおッ!!」

 

こめかみに蹴りを放って蹴り飛ばす。

勝手に乱入したんだからしっかり痛い目にあってもらわねえとな、割りにあわねぇんだよ。

 

「くそっ、星ごろ……、がっ!!」

「撃たせる訳が……ねぇだろうがよォ!!」

 

大技を撃つ暇も与えてやらねえ。

こっちが不利になるような真似なんざするかってんだ。

 

「川神流奥義『致死蛍』!!」

 

女がかなりの数の光弾を放ってきやがる。

それを捌いていこうとした瞬間俺の手を女が掴んでいた。

 

「貰った、川神流奥義『人間爆弾』!!」

 

そしてそのまま手を掴んだ状態で女が爆発する。

当然俺も巻き込まれる。

吹き飛ばされて一気に戦況が変わる。

自爆して自分は回復ってただの範囲攻撃じゃねえかよ。

 

「さて……まだ終わってないぞ」

 

女が良い笑顔でこちらを見てくる。

当然構えは崩さずに力を漲らせている状態だ。

こっちは痛くもない技を喰らっているんだ、まだまだやれるぜ。

俺も構えて次の攻撃に備える。

 

それはそうとあの男はさっきから何やってんだ?

そう思って振り向くと男は距離をとって、面倒だというような面してやがった。

そしていきなり虚空に手をかざして何か呟き始めていた。

 

.

.

 

「これ以上は付き合ってらんねーわ」

 

俺は宝具の開放をして逃げることを決意する。

正直お兄さんは見捨てたいんだけど……あの綺麗なお姉さんはほっとけない。

残念だけど主従関係だから両方助けなきゃならない。

それにだ、仮にお姉さんが泣いたら目覚めが悪くなっちまう……フェミニストなんだ俺は。

 

「『唸れよエンジン、廻れよ車輪、振り切るは女王が如く優雅な姿なり

その紅き美貌にて眼を奪え、怪物も青ざめる速度にて震え上がらせよ

今、此処に馳せ参じろ『紅の女王(レッドクイーン)』!!』」

 

俺がそういうと何処からともなくバイクが現れる。

今日も調子が良さそうじゃないか、女王様。

なお、その間にお兄さんは川神百代と戦っていた。

ほぼ互角に渡り合っている時点で色々とおかしい。

一体もう何が何だかわからない。

何? あのお兄さん川神の血筋でも引いてるのか?

 

 

「まっ、逃げちまえば良いんだけどね」

 

そう言ってエンジンをふかす。

よし、良い音だ。

あっという間に準備ができる。

予想通り今日も女王様は絶好調、フィーリングも最高だ。

あとは振り切れたら万々歳ってとこだ。

 

「乗れ、ワン子ちゃん!!」

 

その言葉を聞いたワン子ちゃんは急いで乗った。

流石に緊急事態だと感じ取ったんだろう、良い判断だね、花丸あげても良い。

 

「あんたも逃げたほうがいいぜ、乗りな」

 

お姉さんにも呼びかける。

こんな事態なのだから、さっきまで敵だったとかそういうのは関係無し。

それに美女をほっとくなんて選択肢は俺の中にはない。

 

「あんたの言う事なんて聞くもんかい、放って置いておくれよ」

 

俺はその言葉に対して悪い笑みを浮かべる。

拒絶の言葉なんかで俺を止める事なんて出来ねえよ、実力行使させてもらうぜ。

 

「乗らないなら無理やり乗せる、弾丸ツアーに一名様追加でご案内だ!!」

 

お姉さんを抱えるように持ち上げてバイクの後ろに乗せる。

肌触りもGOODだね。

こりゃあますます良い女だ。

 

「離しな、変な所触ろうとすんじゃないよ!!」

 

お姉さんが暴れる。

そんなに暴れるとそれを理由に色々と触っちゃうぞー。

もがくお姉さんなんかどこ吹く風だ。

俺はお兄さんに大声で呼びかけた。

 

「お兄さん逃げようぜ、マスターは回収してっからよ!!」

 

そう言うとお兄さんは苦い顔をしながら霊体化をする。

一瞬だけ川神百代の顔がこわばる。

ザマーみやがれ。

 

俺がハンドルを捻ると『紅の女王』が一気に加速をする。

勢いよく走っていき川神百代との距離を開ける。

俺達は紅の弾丸となっていた。

 

しかしこんなとこで諦める武神じゃない。

当然のように川神百代が追いかけてきた。

風を裂く音がもう一つ聞こえる。

少しづつ近づいてくるのが肌で感じられる。

この速度についてくるとか……これは流石に笑えない。

怪物だろうけど流石に度が過ぎるぞ。

そんな事を考えていたらお兄さんが実体に戻って何かを呟き始めた。

 

「『我は強き者、汝の気力を、汝の異能を強き眼差しで封じる者

汝に与えるは重みなり

汝重みにてわが眼前に跪け

汝畏まりて我に|慄<おのの>け

弱きは朽ちて強きは退く、我が眼光から逃れる事叶わず

『|強者の畏怖<プロヒビテッド・エリア>』!!』」

 

一気に川神百代の動きが鈍る。

それにあれだけ溢れていた気が感じられなくなってきた。

んー……恐らくお兄さんは川神百代の『気』を封じたんだな。

これならば問題なく振り切れる。

更に速度を俺は上げ始めていた。

 

「このままなら振り切れるな……しかしなんだかむず痒い感覚があんなぁ?」

 

なんか今視線を感じたんだが……気のせいかねえ?

一応感じた方向に視線を向ける。

気のせいならいいがちょっと薄気味悪りーな。

 

.

.

 

双眼鏡で見られていた事に気づいたのか一瞬こっちを見ていた。

 

「勘が良い奴だな、アイツ……」

 

相手の視線を感じてオレは言う。

 

「バイクって事はアイツって『ライダー』なんじゃね?」

「正解だ、マスター」

 

宝具を見て分かったのかマスターが呟く。

更に付け加えるので有ればあのもう一人の男の方は『ランサー』だ。

理由としては白兵戦の強さと速さから推理が出来た。

 

ちなみに当然の事だがマスターも双眼鏡を持っている。

 

それによって橋の方向を見てもらっていた。

『ライダー』と『ランサー』が逃げる際に大きな爆発音と煙が上がったのをマスターは確認していた。

あんな大規模な事をやる馬鹿が居るとは正直予想外だった。

しかしそのお陰で『ランサー』と『ライダー』以外に『キャスター』の存在が確認できた。

地味にこれは大きな事である。

 

「しかしまあ……仮定した場合あと一人今回闘いに参加していない奴が居るな」

 

きっと自分たち以外にもこういった傍観を決め込んだ相手は居た筈だ。

そう思って双眼鏡で色々くまなく見て居たら、予想通りノートを取っている男女が居た。

間違いなくアレは俺たちと同じ様に傍観をしていた証拠だ。

 

そうじゃなければあんなところで別の方面をジロジロを見るわけがない。

ましてや研究してますよといわんばかりの行為だったらバレバレだ。

おおよそ自分たちだけが傍観していると思っていたんだろう。

それは甘い考えだ。

お前らと同じ考えを持つ奴って言うのはきちんといる。

 

「情報を掠め取らなきゃ勝てるものも勝てなくなるぜ」

 

オレはそう言って微笑む。

戦って調べるのも悪くはないが正直それは博打だ。

そんな無茶は強い奴らに任せれば良い。

 

「で、これからどうすんだ?」

 

マスターがオレに聞いてくる。

そうだな、これからの予定としては……

 

「ランサーが一番まだやりやすいかもね」

 

白兵戦で気を使えるあたり凄いとは思うが弱点がある。

見ていて感じたが攻撃のペース配分が下手なのだ。

大技だって気弾の予備動作がなくても当てる方法があっただろう。

それに何処かしら余裕を出していたのが分かる。

最初にカウンターを取られそうになっていたのが良い例だ。

 

ライダーは普通に面倒だ。

速くなったり、攻撃の威力が上がったり、耐えれる様になっていたりと途中途中おかしなほどの動きを見せていた。

スキルによる一時的な増強なのか、手を抜いて戦ったりしていたのか?

川神百代との交戦では増強を上手く出来なかった所を見れば多分前者の方だろう。

 

それらを踏まえたらランサーの方が幾分かはやりやすい。

 

「そうか、マスターは亜巳姉だけど、別に亜巳姉を狙うわけじゃねえもんな

それならウチだってやってやるぜ!!」

 

マスターは元気よく言う。

まあ、確かにマスターを延々と狙うわけではない。

できるだけサーヴァントを効率よく倒すのが目的だからな。

 

「とりあえず今日の所は戻って……騒がしくなりそうだな、マスター」

 

オレはこの後の家の中を想像すると笑えてしまう。

只でさえ人が多いあの家に二人も増えるんだから。

まあ、サーヴァントが全員霊体化すれば一人だから問題ないか。

 

オレは頭をかきながら立ち上がってマスターと一緒に家に向かうのだった。




一応脱落者は居ません。
これから更なる激戦が書ければいいと思っています。
何かご指摘等ありましたらメッセ等でお願いします。

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