残り少ないので一気にいこうと思ってましたが
流石に期間が開きすぎたので現在の分だけでも。
セイバーとライダーが残った最後の戦いの朝。
セイバーは刀と花火の準備をして立ち上がる。
セイバーのマスターはゴルフクラブを振り回して生き生きとしている。
ライダーとライダーのマスターはスパーリングの相手をしてお互いの体を解して戦いに備える。
全力で戦うための準備を惜しまない、最後の戦いの場所にお互いの陣営は真剣そのものの面持ちで向かっていく。
互いが向かうのは初めて共闘した場所でありこの聖杯戦争において激戦を繰り広げた河原。
先に来たのはどちらなどと言う事はなくお互いが向かい合う形で同時にその場所に来ていた。
そして向かい合いながら言葉を先に発したのはライダーであった。
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「俺とお前が残ったのか、セイバー」
俺は目の前の相手に向かって言葉を発する、正直な所まだ実感が沸いていない。
俺は警戒しながら問いかける、その問いかけに対してにセイバーは真剣な面持ちで答えてきた。
「その通りだ、ライダー」
普段とは違う雰囲気ににやりとしながらその言葉をかみ締める、こいつは俺が体の調子を整えている間に他のサーヴァントをあの手この手で倒したってわけか。
「初めてだ、この戦いで真っ向から勝負をするのはな」
刀を抜いてセイバーが構える、俺もそれに合わせて構える、確かに真っ向勝負ってものはお互いしなかったな。
バーサーカーの時なんか四人がかりだったし、策を張ったら真っ向勝負なんてできなくなっちまう。
「そうか、最後だからそっちも本気ってわけか」
こっちは距離をとって刀の一撃を避ける準備をする、拳を使う奴が刀と真正面から戦っても勝ち目なんて薄すぎるからな。
ここは一撃を避けてからカウンターを叩き込んで主導権を握りにいかせて貰うぜ。
「そういう訳だ、行くぜ!!」
踏み込んできて一気に決着を付けるかのような一撃を放ってくる、こっちの目が速度に慣れない間にやろうなんてせっかちな奴だぜ。
「ちっ!!」
俺は何とかしてその一撃を避ける事を考える、なりふり構ってはいられない。
もし距離がもう少し詰まっていたらと思うと冷や汗が流れ落ちる。
「おぉ!!」
転がってそのまま後退していく、距離が欲しかったからこれが最善の選択なのだろう。
しかし本当に今のは危なかったな。
「残念だった、もう少し反応が遅ければよかったのに」
セイバーが顔をしかめてこっちへ言ってくる、確かにあと一瞬でも遅れていたらあの一撃で決着か致命傷を負わされていただろう。
「お前の攻撃は速いがこっちも避けるのは得意でね」
そう言うが正直ぎりぎりだった、令呪を使ってこなかったり目くらましをしてこなかったおかげだろう。
もしくは警戒して構えておいたおかげで備えられたからだ。
「思う事だが本当に面倒な相手だな、避けられる程度の速度もあって、食らっても頑丈だし逆転できる火力があるんだから」
セイバーが構えてじりじりと間合いをつめながらこっちの目を見て言ってくる、何とか速度だけでも上げて少しでも武装によるアドバンテージを消さないといけない。
「とりあえず頑丈な体に感謝して足を速くして、やってみるかね」
セイバーへの対抗策としてスキルを使って攻撃に備える。
耐久力なら自信が有る、深く斬られない限りはさほどのダメージはないだろう。
しかしセイバーが持つ刀の特殊な力次第では俺に耐久力があった所でさほど意味を成さないかもしれない。
それだけが今気がかりな事だ。
「身体能力の強化をされたら楽に攻撃を通せないな、やりようは有る」
突きで体のあらゆる箇所を問わずに狙ってくるセイバー、速い動きで翻弄されて速い攻撃で畳み掛けられる。
身体強化をした所でセイバーの方が速いのだろう、長所を活かしたとんでもない攻撃の数だ。
「ちっ!!」
蜂の巣にされそうなほど激しい突きの連打を腕を盾にして防ぎ距離をとってやり過ごす、こっちが一撃をセイバーの体に当てたらそれだけで勝負が決まるのだがそうは簡単にいかない。
セイバーは攻撃を一度繰り出した後に下がっていく、それを繰り返して自分の距離を保ち続けている。
これは厄介な状況だ、こちらが躍起になって突っ込んだらカウンターで手痛い斬撃が見舞われるだろう。
「ワン子ちゃんは後ろにいるから被害は出ないけどまずいかもな……」
セイバーの目くらましを考えたり相手のマスターの眼を見たらワン子ちゃんと俺を分けさせる事は十分に考えられる。
そうなったらかなり面倒な事になっちまう、これなら今の間に令呪を使って万全な状態にしておいたほうがいい。
「ワン子ちゃん命じてくれ、『私を守れ』ってな!!」
瞬間移動で駆けつけるんじゃなくて恒久的な願いの分、効果は薄まるがこの一戦の間だけなら守り続ける事は不可能ではないだろう。
「うん、分かったわ!!
令呪によってあなたに命じる、『私を守って』!!」
ワン子ちゃんの言葉を聞いて俺の体に何かしらの力が芽生えたような、漲ってくる感覚があった、これで残り二画。
最後の戦いとしては問題のない切り方だろう、セイバーの奴は一体どう対応してくるんだ?
俺は眼差しを向けたまま、思案していた。
「守りを固めてきたか、もっとガツガツ攻めてくると思っていたんだけどな」
セイバーが一旦動きを止めてこっちの出方を伺いながら言葉を発する、確かに今まで攻めて攻めて攻めまくるような戦いをしてきたからな。
相手がよっぽどとんでもない奴でもない限りこのスタンスを崩すつもりはねーよ。
「お前に不用意に突っ込んでいこうにもその前に不安要素は取り除かないとな
お前なら隙を見てワン子ちゃんを襲撃するなんて余裕だろ?」
俺はセイバーに対して問いかける、過剰なほど警戒心を持っておかねーといつとんでもないものがくるか分からない。
「警戒しすぎだぜ、ライダー、相手にばれてるやり方で勝てるわけがないだろ」
セイバーは構えたままこちらに答えを返してくる、こんなに警戒しているんだから柔軟に攻めてくるというわけか。
どちらにしても面倒なんじゃねーか、こっちも使わない頭捻って対応するしかないのかよ。
俺は頭をかいてワン子ちゃんを守りながらの戦いに向けて気を引き締めるのだった。
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「まさか守りに入ってくるなんて予想外だったな」
オレは刀を構えて内心思った事を口に出す、ライダーの戦闘スタイルから考えればあの場は突っ込んでくる。
オレはそこを花火で目くらましをしてその隙にライダーの後ろを取る予定だった。
あいつ自身が頑丈でなおかつ身体能力の差が顕著に出てくる、そんな相手なら真っ向勝負を挑むにしても小細工は必要だ。
警戒しすぎとは言ったが今までの行動のせいだろう、今回はライダーがマスターと近いから後ろを取らない限り攻撃はできない。
しかも令呪で万全の状態にされたから自動的にライダーを延々と攻撃しなければならなくなった。
「結構厄介な場面ではあるが……そこまで悲観するようなものじゃないな」
逆にあいつはマスターから必要以上の距離をとる事はできなくなったというわけだ、それならばマスターをあの場所に釘付けにさえしたら機動力は大きく失われる。
「マスター、あっちのマスターの相手を頼めないかな?」
ここで一手を打たなかったら意味がない、今まで通りの方法で一気に勝ちを引き寄せよう。
真っ向勝負は真っ向勝負だ、オレとライダーという一点においては。
それ以外の蚊帳の外で行われた戦いで支障をきたしたとしてもオレは言葉を裏切ってはいないのだから問題はない。
「任されたぜ、やってやるよ!!」
マスターはゴルフクラブを振り回してライダーのマスターに向かう為に足へ力を込める、これでオレはライダーに専念できる。
「さて、ライダーの宝具をどう打開するかだが……
やっぱりヒビいっている場所を狙っていくのが一番やりやすいかもな」
ただ単純に延々と斬りつけるだけではライダーに決定的な損傷を与えるのは苦労する、まだ耐久力が低かったり筋力が乏しかったらいくらでもやりようはあるんだが。
まあ、今のところは大きく動こうにもマスターの同行が確実だから単独ではまだまだやりようはあるだろう。
「とりあえず視覚を奪うのが最優先だな、そら!!」
火をつけて何とかマスターをセイバーのマスターへ近づけるように誘導する、段階を踏んでいきながら少しずつ勝ちの方向へ手繰り寄せていかないといけない。
優勢な状態をこちらが保っても攻め所を逸したら瞬く間にライダーが引き寄せてくるだろう、そう考えると背筋に冷たいものが走ってくる。
「本当に厄介な奴を最後に残してしまったぜ!!」
その背筋に感じた寒気を心のどこかに追いやって笑いながらライダーへ花火を放ってそれと同時に駆け出す。
煙が目の前を覆っていく中、ライダーの気配を感じ取る。
こちらの足音と同時にじゃりじゃりと音を立ててこちらを探ってきている、突っ込んできてもこっちの斬撃をカウンターで叩き込める距離だ。
どうやって煙を克服して優位に立つのか、オレのペースをどのように突き崩すのか、それが今一番興味深く考える事で最も警戒しなければならない事。
「はあっ!!」
「なっ!?」
ライダーの拳が一瞬見える、勘だけでこいつはこんな的確に殴ってきたのかよ!?
風を感じながら何とかして避ける、冷や汗が首を伝うがこの反応は流石に仕方のないことだ。
その拳を驚きながらも避けるとその伸び切った腕が無防備過ぎる、この場面で狙わずに一体どこで狙うというのか。
無言で腕に向かって鋭い突きを放つ、強烈な一撃を放つ腕を壊してオレが優位な状況へ持っていく、無言なのはもし声で方向を特定されてはたまったもんじゃないからな。
「俺の勘からして……そこだあっ!!」
突きを放った直後にライダーの声が聞こえて大振りな拳が迫ってくる、何でこうも的確に攻撃の方向があたるのだろうか?
とてつもない運がこの状況を生んでいるというのならそれは仕方ない、しかしもはやオレの突きは止まらない、そんな隙だらけの攻撃なんて避けながらこのまま壊してやるぜ。
……隙だらけの大振りだと?
「まさかっ!?」
よく見るとバランスを崩しながら攻撃してるじゃないか、こいつの狙いはオレに当てることじゃない、この攻撃を避けるためにあえてこんな大振りの攻撃を選択しやがったんだ。
そう考えている間にも勢いのついたライダーの拳はオレの顔を通りすぎていき、そのまま大きくバランスを崩していき、転がりながらオレの一撃を最小限の被害に収めていた。
「あれだけのピンチをあんな方法で回避したか、やってくれるな」
掠っただけというあまりにも割に合わない収穫、せめて肩口を負傷するぐらいはして欲しかったな。
「よく言うぜ、無傷だってのにそれ以上望んだらお互い贅沢いってるようなもんじゃねえか」
ライダーが笑いながらがらオレの目を見てくる、マスター同士は向こうで戦いあっている、薙刀とゴルフクラブなんて変な取り合わせではあるがかなり白熱しているようだった。
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「はあっ!!」
私は勢いよく薙刀を振り下ろす、相手はゴルフクラブで受け止めたかと思ったら薙刀に絡めてきていた、この動きの目的を見抜いた私はすぐに行動へ移していた。
「武器を奪っていくつもりね、そうはいかないわ!!」
一気に後ろに下がって射程から逃れる、そうでもしないとあのゴルフクラブ捌きは厄介だ。
いつ薙刀を絡め取られてもおかしくないほどの捌き方だ、警戒していかないといけない。
「甘いんだよ、『天使の様な悪魔の蹴り』!!」
ゴルフクラブでの攻撃ではなく鋭い蹴りが側頭部に飛んでくる、名前こそ長いものの速度はかなりのものだ。
避けようにも距離が距離だったから私はその蹴りを薙刀で受け止めてやり過ごす、しかし襲ってきた衝撃は想像以上のものだった。
「ぐっ!!」
細い足からは想像の付かない威力で僅かに横薙ぎに飛ばされる、幸い頭にダメージはなかったもののこのマスターは強い、そう私は感じてもう一度構えを取って相手をしっかりと見据える。
「見てても来なきゃ何の意味もねーんだぜ?」
セイバーのマスターが笑いながら私にそう言ってくる、不用意に突っ込んだら武器を奪ってくるんだから慎重にならなくちゃいけない。
しかしじっと見合うこの感覚にむず痒さでも感じたのかセイバーのマスターは苛立った顔でこっちへ攻撃を仕掛けてくるのだった。
「もう一丁くらいな!!」
セイバーのマスターは頭に攻撃を繰り出してきていた。
同じ場所への連続の攻撃と大振りな一撃の為、さっきとは全然違って冷静に対処する事ができていた。
さらにここでこっちが攻勢に転じる。
「狙いは筒抜けだし大振りすぎるのよ、その隙に…川神流『』!!」
技を繰り出す、相手の攻撃が終わった所で放っているから相手の反応は遅れている、これならば間違いなく相手の体に当たるだろう。
「ぐあっ!!」
大振りの隙を狙われた分、セイバーのマスターは避けきる事ができずに肩口に攻撃が当たって僅かに飛んでいく、残念な事に技が上手くできなかったのか、思ったような事にはならなかった。
そう思っていた所セイバーのマスターが体勢を立て直す、その時に私を睨みつける目は怒りに満ちていて仕返しする気満々のものだった。
「ぜってえにてめーの頭をこいつで叩いてやるからな……」
そういって何かしらのものを口に入れていく、目に力が異様に宿っていくのは寒気がした。
「ヒャッハー、エンド・オブ・ワールドだぜぇ!!」
そう言ったセイバーのマスターは構えてぎらぎらとした視線でこっちに向かっていた、私はそれに対抗をするために構えて腕や足に力をこめるのだった。
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お互いのマスターまでもが白熱しあう最終決戦。
今の所どちらも決定的な機会を掴めてはいない。
どちらが口火を切って勝利の糸を手繰り寄せるのか、この戦いにおける優勢か劣勢の天秤がどちらに傾くのか。
それはきっとあと少しの僅かな呼び水があれば答えは出るだろう。
四者四様に構えて攻撃をする為に駆けて行く、再び戦いが始まるのだった。
前中後編です。
とりあえずあらすじでも言いましたが現在終わっている前編と中編の部分を。