次回は長めのバトルの予定です。
ランサーとセイバーの交渉と時を同じくしてある家の部屋では男が溜息をついていた。
「ハアッ……」
気の貯蔵量が半分減った俺はかなり考えさせられる事になっていた、キャスターを倒した事で仇討ちにくる奴らがいるかもしれない。
「三人がかりだったとしたら、節約だとか言ってられないし困ったな」
気の貯蔵は少し戻っているがこれだけでは心もとない、あの場面ではなくあと一拍置いていたら良かったと後悔する。
「しかもあの場にはランサーが居なかったしなあ…」
あの場に居なかった存在に頭を悩ませる、完全に無傷の状態の『三騎士』が残っているのだ、戦えば確実に消耗するだろう。
「考えれば考えるほど本当に辛いな、あのキャスターの奴が大人しく負けてくれたらよかったのに……」
頬をかいて俺は呟く、幾らなんでも令呪を全部使っての足止めとか普通なら有り得ないだろ。
「まあまあ、今は休養の時だね
家に放火とかする非常識な奴が居なかったら篭城が一番楽だしね」
燕姉がそんな事を言ってくる、流石にそこまでする奴はいないだろうけど万が一という事態も考えて欲しい。
誰も彼もが常識人ではない、タガの外れた奴が紛れ込んでいてもおかしくはない、あのキャスターだってそんな奴だろう。
結界で丸ごとこの家を囲んで爆発させる事で俺達を炙り出すなんて真似をしてもアイツだったら違和感を感じない、むしろ当然とさえ思える。
「ただ背筋が冷たくなる事だけは否めないね、流石に脱落者が出たからかな」
良く見ると燕姉の手には汗が滲んでいた、自分の秘密兵器の手入れをしているのを見たら自分が前線に出る可能性も視野に入れているんだろう。
「しかしそれ使ったってあいつらに効くのかな、キャスターみたいに令呪使われたら意味なさそうだし」
俺は疑問を口にする、なんせあんなものを見たんだからな。
『最弱』と言われていたくせにあんなにも粘られるんだ、『最優』と『最速』が令呪で強くなると考えたら気が気じゃない。
「そこは相手に悟らせずに上手くやれば良いの
無策と無謀は相手に任せてこっちは賢く立ち回って楽して勝つ様にすればいいんだよ、前の失敗は次の成功の為の投資と思えば痛くないしね」
「結局は悟らせないように疲弊した奴狙いか……」
考えを聞いて感心すると同時に溜息をつく、前線で勝負をする事ができないのは窮屈なんだよな。
ケース・バイ・ケースで白兵戦の方がやりやすい奴なら白兵戦に切り替えるとかいう形でいきたいものだ。
狙撃だけではなく白兵戦もそれなりにできるから出てくる贅沢な悩みだけど、そういった確実な勝ち方を考えても罰は当たらないだろう。
「勝ちたければ正確に動いて敵を倒せるようにならなくちゃ、悩みなんてものを持ち込む必要はないんだよ、それが理由で負けたらやっぱり未練が残るでしょ?
確実な一手っていうのは万全な状況、石橋を叩いて渡るほど慎重になって耐え忍んでここぞと言う時に打つものだよ」
俺の溜息について言ってくる燕姉、きっと心の中は読まれているのだろう。
その意見は間違っていない、その考えは戦いの上でとても素晴らしい。
しかし俺にとってやはり悩みや感情というものは重要だ、それを無視する事なんて出来ない、未練が残るにせよ人間味を持ったままでいたい。
「まあ、今までの様には溜める事は出来ないから前線に出る可能性は無いとはいえないね」
そうだよな、やっぱり攻めてきてもおかしくないよなー、あいつらとの勝負で使い切らないなんて難しいだろうなー。
この後の戦いの事を考えて、気力を節約する為にはどうやって相手との勝負を優勢に持ち込むか、それが大きく鍵を握っている。
威嚇して牽制をするか、拠点攻撃をするか、色々な所を渡っていき相手の索敵を撹乱させて闇討ちするか、少し考えてもこれだけ出てくる。
そして標的を選ぶ場合に楽なのは今の所情報を持っている三人のサーヴァントだ、あいつらを優先的に狙えばいい。
「これから前線に出るならアサシンだな、あいつが脱落したら暗殺に気をつけないで済むようになる」
俺は一番楽でありながら残られたら厄介な奴に目を向ける、そしてそれ以外の実力者は潰しあっている所に乱入をして場をかき乱す事で上手に脱落させる狙いだ。
もし全員から狙われれば令呪を使ってでも逃走していく、もはやなりふり構っていられない、俺は気持ちを落ち着かせて相手を苦しめる事を延々と考えていた。
.
.
その様にアーチャーが頭の中で考えを巡らせる中、ある場所では不穏な空気が流れていた。
「貴様ごときがこの
「いや、だってせっかく助かった命を無意味に捨てようなんてのはナンセンスって奴だ」
助かっていようと動かないのは死んでいるのと変わらない、だからこそすぐにあいつらを倒そうとしているのだ、何故それが分からない?
「あいつが消えたにせよ、このままでいるなど
あの狐達に恐怖して放置すればするだけ面倒なことになるのだと何故分からん?
だったら先に襲撃をしなくてはならないのだ、例え多少の傷を負っていてもな」
王の意見は普通なら無謀とも言える、しかしそれでもあの狐を放置すれば再びあのような襲撃が来る、ならば多少の無茶をしてでもあいつを弱らせる、もしくはその首を取る。
「それで無駄死にならどうするんだよ、あいつだって浮かばれないぜ」
奴の事を考えて無茶をするななど言うのは片腹痛い。
あいつなら勝てる可能性があるなら無茶をするのが当たり前だと大笑いするであろう、なぜならあいつは阿呆の極みであったからな。
お互いが睨みあい少しずつ空気が熱を持ち始める、熱気は少しずつ
こういう食い違う中でも言ってはならない言葉がある。
「言っておいてやるが
いいぞ、来るがいい、足が多少使えずともお前を倒すぐらいは出来るぞ。
「言ってわからねえなら…そうするか?」
そう言ってライダーも構える、なかなかの気迫を持っているな、これはますます面白い。
始めるか、あとで謝ってももはや許さんぞ。
そう思い、笑みを浮かべて衝撃波を出そうとした次の瞬間女の声が聞こえた。
「私たちが使っていた本拠地で暴れるのはやめてもらう、流石に見過ごせないと知りなさい」
まさに今放つ所だったと言うのに女が水を差す、やる気を無くす様な真似はやめてもらいたいものだ。
女がそんな事を言うとライダーは苦い顔をして構えを解いて出口へと向かっていく。
「逃げるのか、随分と腰抜けのようだな」
構えを解いたのを見て
そのまま終わるのは気分が良くない、その為
「俺は女を困らせる趣味はねえ
だからここではやらねえし、俺はもうここを使わない、別の本拠地でも探すさ」
しかしその挑発に対する答えはいかにもこいつらしいものであった、これでは無理だと思い
そう言ってライダーの奴は
別の本拠地と言ってもおおよそ川神院であろうよ、これであいつの首を取るのは一筋縄ではいかなくなったな。
しかし連絡を取れなくしたためあいつともう一人の男との繋がりも多少は消した。これは一石二鳥とも言える。
例え意見が食い違ってお互いがこのような状況になっても
その結果として
こいつらの力を借りる必要もお互いが協力を快く出来ないのならばいらないからな、あのバーサーカーの時が偶然だっただけの話だ。
「では
そう言って
抑えようとしてもその喜びが漏れていく、そして少々離れた後に哄笑を響かせて喜びを爆発させていたのであった。
今回でバーサーカー戦で一緒に戦ったメンバーが離散しました。
次回は戦いを書いて少しずつ終わりに近づけられれば良いなと思っています。
何かご指摘する点が有りましたらメッセでお願いします。