『川神聖杯戦争』   作:勿忘草

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名前どおりの回です。
次回はバトル回を予定しています。


『準備期間』

同盟が生まれた翌日。

(オレ)は瞼を擦りながら朝も速くから川原へと歩いていく。

その理由は再びあの馬鹿がこの(オレ)を速く起こしたからだ。

 

「とりあえずこの河原を結界にしよう」

「結構広い範囲じゃねえのか」

 

そう言ってあの馬鹿なキャスターは術式を展開し始める。

風間が何かしら言っているが(オレ)には関係ない。

次々と結界が組み上げられているのが分かる。

前回よりも敷地を大きく、更に時間をかけて強大にするつもりなのだろう。

 

「しかしサーヴァントでもここまで酷いものとは……」

「やかましいぞ、塵芥……ところで、キャスター」

 

女の言葉など無視して(オレ)は欠伸をしている、当然怒りも含めてだ。

昨日に続いてまたこのような真似をされて黙っているほど甘くは無い。

 

「どうしたんだ、アサシン?」

 

一心不乱に構築している阿呆が振り向いてこの(オレ)に声をかける。

 

「何故昨日よりも早い時間にこの(オレ)を叩き起こした、流石に見過ごさんぞ…」

 

(オレ)は掌を向けてこいつに衝撃波を放とうとする。

しかし次の瞬間キャスターの奴がこんなことを言ってきた。

 

「一刻を争うからな、仕方ない」

「まあ、あいつが言うのも最もだぜ、昨日でさえ辛かったからな」

 

真剣な目でこちらに言ってくる。

風間は(オレ)の言葉に賛成する。

まあ、あの女がいつ襲来してくるかは分からんからな。

 

だが次の言葉は(オレ)を侮っているかのような言葉でもあった。

 

「流石に放って行動して無防備な状態を晒させるわけにはいかないよ」

 

確かに(オレ)は朝に弱い、それは認める。

だがその程度でこの(オレ)が負けるわけが無いだろう。

そう思うと(オレ)は苛立った声でキャスターに言葉を放っていた。

 

「まあ、キャスターの言うとおり二人とも熟睡をしておりましたからね」

「女、いいからとりあえず黙れ

キャスター……まさか(オレ)が負けると思っているのか?」

 

(オレ)が怒りの声を上げると苦笑いする、そして一拍置いてからキャスターは返答をしてきた。

 

「流石にあのバーサーカーを考えたらすぐ首を縦に振れる自信がないな、あれ以外なら首を縦に振るけど」

「つまりバーサーカー以外には勝てるって思っているみたいだ、誇れって!!」

 

こいつ……正直にも程がある。

風間も機嫌を取るような言い方だが別にそういうものを求めていたわけではない。

あの女を例えに出してしまうのは仕方が無い、互いに面倒な奴と最初に当たった

 

からな。

あの時は(オレ)が助けなければこいつは助かっていない。

つまりそう考えれば本来ならば同盟などではなく(オレ)の為に跪き忠誠を誓うべきだろうに。

 

「そうか、だがこんな朝早くからやる必要は有ったのか?」

 

(オレ)は疑問に思った事を聞く、別に時間によって気力が増えるような事は無い。

それならばお互いがきちんと行動できる時間帯にいけば良い話ではないか。

 

「前回は朝早くから構築したのに襲来されたんだよ」

 

成る程な……、つまりそれより速くに構築して少しでも強固にしておこうというわけか。

 

「あれは酷かった……時間的には速かったのですが見事に壊されましたからね」

「次は負けられんがどういった方法だ?」

 

(オレ)はどういった構図を立てているのかを聞いてみる、流石に何も考えてないとは言わんだろう。

 

「今度は最初から気づかれるような物ではなく俺の仕草で発動させるようにした

他人も普通に入れるから疑いはしないだろうし、発動していないから壊される心配も無い」

 

ふむふむ、それはいい考えだ。

初めから怪しさ丸出しなど『見つけて下さい』と言っているようなものだ。

そんな事をするのは馬鹿だな、そして貴様は前回それをやっていたから馬鹿というわけだ。

 

「しかし、それでもあのバーサーカーに勝つには爆発する小型結界が必要だけどな」

 

そう言って笑うキャスター。

逃げる前提でなくても確かに攻撃手段は必要だからな。

まあ、(オレ)は奴から逃げてなどいない、奴を逃がしてやったのだがな。

 

「あの女に勝って高らかに笑ってやろうではないか」

 

(オレ)はその事思をい浮かべて一言呟く。

あんなにも真剣にあがく滑稽な姿を見れば少しばかり感心する。

それに(オレ)は寛大だからな、多少の事は目を瞑ってやろうではないか。

無論あまりにも度が過ぎればあの女よりも前に散らしてやるがな。

 

あの女の命を今度こそ散らしてみせる。

できる限り無様に、惨めに(オレ)を楽しませられるように。

あの顔が歪み、四肢も無残に傷つき這い蹲った時にその頭を踏みつけてやる。

(オレ)はその瞬間が早く来る事を願い笑みを浮かべるのでだった。

 

.

.

 

あれから一日経って朝早くからオレ達は大きな工場の中に居た。

何故ならばライダーとの同盟を組んだのだ、それで勝つ為にお互いの戦い方を活かす方法を考える必要がある。

そのため工場で会議をしつつお互いの動きを見たりしていた。

 

ちなみにランサーについては痺れが取れていたことも有って戦うのはやめておいた。

そしてランサー自身が聖杯戦争に対して全く思い入れが無い事から危険度としては低く見積もっている。

ライダーとの同盟で倒せる以上はそこまで大きな問題でもないだろう。

 

「しかしこのサーヴァント、偉く気前がいいぜ、態々見せてくれるんだもんな!!」

「本当だ、オレに宝具を見せるなんてしていいのか?」

 

マスターは宝具を見て興奮している。

オレは純粋な疑問から目の前のライダーに質問をする。

一度双眼鏡で見たが迫力が凄い。

それだからこそ易々と見せて良いのかと思った。

 

「ライダーが見せるって言ってるなら私は止めないわ」

「構わねぇよ、あの川神百代にも既に見られてる

それに……いつかは全員に見せるかもしれねぇことだ」

 

ライダーのマスターは俺たちが見ることに嫌な気持ちは無かったのだろう。

ライダーも別に見られて困るはずが無いと言っている。

 

宝具の名前は『紅の女王(レッドクイーン)』というらしく、目に優しくない紅色の大きなモンスターバイクだ。

それにライダーが跨って瞬く間に加速をしていく。

けたたましい音を立てて工場を軽く一周したあとに降りてこちらへ振り向く。

 

「なんかお姉様から逃げた時より速くなってない?」

「マジだ、女王様の乗り心地があの時と違うんだが……どんな手品を使った?」

 

ライダーとライダーのマスターが驚いた顔で言ってくる、やはり気づいたか。

オレは共に戦う相手を援護する事ができる。

今は真剣な戦いではないから効果は薄いがそれなりに成果はあったようだ。

 

「いや、別にこれといった仕掛けは無いよ、でも感じはどうだった?」

 

良い方に傾いているはずだが一応聞いてみる。

悪いほうに傾いているならば付け入る隙が出来ておいしいからな。

 

「感じは良くなっているが、これって俺だけが受ける恩恵なのか?」

 

それは違う。

共に戦う相手だから一人だけの強化ではなく大勢の強化も可能だ。

とは言っても一緒に戦ってくれる相手がいるかが問題点になるんだけどな。

 

「とりあえずはこれで速度を生かした戦法が取れるのが一つだ」

 

オレはスキルを使って戦法の一つを挙げる。

当然穴はあって常時宝具を展開するには気力が必要になる。

タイミングを間違えれば途中で殴り合いに近い真似をしなくてはならない。

結構シビアなものだ。

 

「もしくは俺の身体ブーストとそっちのスキルを重ねて接近戦に持ち込むか」

 

ライダーがスキル名を明かしてこちらに提案する。

しかしこちらも穴があり制限時間付きの爆弾を抱えるようなものらしい。

ならば却下するしかない。

 

「やっぱ俺が単騎で援護を待つよりか、ツーマンセルで行ったほうが良いかも知れねぇな」

 

ライダーが顎に手を当ててそんな事を言う。

確実性はそちらの方があるだろう、どちらが欠ければバランスは崩れてオレの脱落も確定する。

ライダーを囮にしようと思ったがここは仕方ない、いざとなれば令呪で逃げてしまえば良いや。

 

「それでいくのは良いけどお互いの息が合っていないからそこを重点的にしないとな」

 

そう言ってオレはほくそ笑む、当然だがこの提案は建前だ。

こういった事をした中でライダーの弱点を見つけ出す。

ランサーと戦った当事者の話を聞きだせれたら更に最高だ。

勝つためには建前をいえる度胸、切り捨てる非情さだ。

 

「そうだな、そこが上手く出来なきゃ一泡吹かせる事も出来ねえや」

 

ライダーはそれを快諾する。

馬鹿な奴だと思ってはいけない、相手もこちらの事を探らない訳ではないのだ。

時々こちらを見る目が鋭くなるから油断が出来ない。

 

「まあ、それも嫌だし……コンビネーションが出来るようにするか」

 

そう言ってお互いが想定した上で川神百代を倒す為に動いてみる。

しかしどうあがいても勝てる図が思い浮かばない。

気弾や瞬間回復、更に基礎的な能力の差。

どれをとっても並のサーヴァントより性質(たち)が悪い。

 

「これは骨が折れる作業だな」

 

勝つ為に頭をフル回転しなくてはいけない。

他の奴らに任せようにも限られてくる。

 

オレはこの強大な相手に対して重くため息をつくのであった。

 

.

.

 

一つの同盟は淡々と作業に没頭して勝とうと言う熱を上げる。

一つの同盟は強大な敵を如何に倒すかと苦心する。

ただ彼らは知らなかった。

その熱と苦心が最大に高まる、今から二日後とてつもない戦いが起こる事を……




次回から少しバトル回が多くなると思います。
何かご指摘などがありましたらメッセでお願いします。

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