姫ノ湯始めました   作:成宮

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遅くなった理由を言い訳した時点で負けだと思う。

楽しみにしている方がいらっしゃれば、本当にすみません


打ちひしがれて

華陀。

五斗米道の歴史上でも比類なき才能を有し、若くして五斗米道(ゴットヴェイドォー)の継承者に最も近いものと目されてる。しかし若さ故に精神面が未熟であり、五斗米道を率いるには足りないものも多いと指摘され、現在、病の人を救うため、そして継承者としての修行といった理由によって各地を放浪している。

彼はもう助からないと絶望していた者、医者に匙を投げられた者、数えきれないほどの人々を救い、多くの人々は彼をこう讃えた。

 

『医者王』と。

 

この医者王と称される青年は現在。

 

自らの無力さに打ちひしがれていた。

 

 

華陀は全速力で森の中を駆けまわった。

発端は1人の少女を拾ったところから始まる。

ちょうど舌が乾き、水を求めて川へ近づいたところ、河原に1人の少女が倒れているところを発見した。息も荒く、顔を赤く染め、背中には大きな切り傷、一目見て危険な状態だと悟り急ぎ治療を開始した。

鍼により体内にいた病魔は消え去り、背中の傷は縫合、失った血液と体力の回復を促進させる鍼をうち、ひとまずの危機は過ぎ去ったかに思われた。

突如として大雨が振り出さなければ。

 

いかにゴットヴェイドォーが優れていようとも、対処の仕様がない。病魔を消し去ることはできようとも、気で身体を活性化させようにも、弱った身体はすぐ様動けるようにはならない。ゆっくりとした休息に加え、十分な栄養が必要なのである。

 

次々と降る雨が少女の体温を奪い取る。あまりのタイミングの悪さにしばし呆然としたが彼はすぐさま行動を開始した。

そっと少女を背におぶると急ぎかけ出す。河原には雨風を防ぐ場所などなかったからだ。

彼はすぐさま森の中へと駆け込んだ。けれども雨は彼の行動をあざ笑うかのようにより強く、激しく降り注ぐ。ぬかるんだ悪路を走っているにもかかわらず軸があまり振れない姿は、彼が医療だけでなく身体的にもかなり鍛えていることが伺えた。

 

しかしいかに彼が懸命に走ろうとも、背中の少女はその生命をじりじりと失っていく。少しでも雨風を防げるように、と自らの服を少女に着させることも考えたが、袖のない、布面積の少ない服を掛けてどうするというのか。自らのポリシーを貫いた結果がこれとはひどく笑えない。

 

少しでも早く少女を休めることが出来る場所へ、せめて自分のできることをするために彼は必死に走り続けた。

 

 

 

 

「ん・・」

 

豪雨、と言っても差し支えないほどの雨が降りしきる。ここに来て初めての雨がこれとはさすがに少し憂鬱だった。幸い、ここは造りもしっかりしているし、手入れも行き届いているのか特に雨漏りの心配もしなくて済んだ。

 

「んにぃ・・・・・」

 

ランニングもこの雨の中を走ろうと思えないし、洗濯は乾かない。朝食は食べたばかりで今から昼食の準備をする気にもなれず、急ぎ掃除をしなければならないほど汚れてはいない。

だから俺の太ももを枕にして寝ている桂花を起こす理由なんてなかったのだった。

 

筆談、という手段を得て、彼女は俺と喋りまくった。

彼女の生い立ち、好きなもの、どうでもいいこと。ここに来た経緯含めて、これまでの鬱憤を晴らすかのように文字を書き続けた。

その内容にも驚いたが、だんだんと綺麗に、わかりやすくなる彼女のひらがなを見て、自分との頭の出来の違いにショックを受けていたのは内緒だ。

そしてようやく満足し話し終え、解散と思ったところ問題が起きた。彼女は、食事、トイレ、挙句お風呂にすら共についてこようとしたのだ。そして拒絶しようとすると涙目である。折れてしまうのは致し方無いだろう。そして案の定、寝る際にも同じ布団で寝ることになったわけである。お風呂の時と同様に、定位置はここだと言わんばかりに横になった俺の腕の中に潜り込み、唖然としている俺をよそに寝息を立て始めたのだった。

 

ちょっと懐かれた、というレベルではない、恐ろしいまでの依存度である。そんな桂花の行動にある種の危険を感じていたのだった。

 

そしてその危険はすぐに顔を出す。朝、朝食の準備をしていると台所に慌てて駆け込んできた彼女は、そのまま俺に飛びついてきた。包丁を握っていたためとっさに両手を上げた為、その勢いを受け止めきれず倒れこむ。そして彼女はそのまま俺の胸に顔を埋めて泣いていた。

前日の様子から多少危惧してはいたが、実際にその様子を見て驚いた。ほんの少し、俺がいなかっただけでここまで狼狽してしまうとは。俺にできたことは、空いた手で、そっと頭を撫でることしかできなかった。

そんな彼女は今、幼子のように安心した表情で身を任せ、時折もぞもぞと動き、掛けられていた毛布をずらしている。

そんな桂花の髪を撫でる。柔らかい感覚とふわりと甘い香りが沸き立った。見ていてこちらも幸せになるようないい顔だが、そろそろいい加減ちょっと足がしびれて辛いところである。髪をなでたり、ほっぺたをぷにぷにしたり、じっくりと寝顔を眺めるなど、さすがに飽きてきた。

 

「この眠り姫様はどうしたらいいのかねぇ」

 

もう一度桂花に目を向けると首から下げたれた鈴とホイッスルが目に留まる。これは声が出ない桂花の為に俺がプレゼントしたものだ。

動くたびに綺麗な音をたてる鈴は、ここにいるよ、と自己主張を行う。競技用であるホイッスルは、思い切り吹けば旅館全体に音が響き渡るようなシロモノである。

どちらも声を出せない、呼びかけることのできない桂花に対して必要になると思った者だ。

桂花は歩行すると共に鳴る鈴に顔をしかめ、やれやれといったジェスチャーを行い目を伏せる。しかしそんな態度とは裏腹に、何度も何度も確認するようにわざと鳴らしていたのを俺はしっかりと目撃していたわけだが。

ホイッスルは、試しに吹いてあげた際、あまりの大音量に目を丸くして驚いてくれ、「吹いてみて」と手渡した時の顔を真赤にして吹くか、吹かないか惑う姿はとても眼福であった。恐る恐る口をつけて弱々しく吹く様もポイントが高い。

いずれにせよ、今つけているということはそれなりに気に入ってくれた、と信じたい。

あと基本的に「ちゃん」「さん」付けで人の名前を呼ぶ俺だが、桂花の強い希望により呼び捨てという形に収まった。涙目卑怯なり。

 

雨音をBGMに穏やかな午前を過ごす。実に贅沢な時間の使い方である。

しかしその穏やかな午前も突如として響き渡る暑苦しい叫び声によって強制終了させられる事となる。

 

「うおおおおお!誰か!いないのかぁぁぁぁ!」

 

その叫びに文字通り飛び起きた桂花は慌てて周りを見渡したあと、動じていない俺を見て落ち着きを取り戻した。暑苦しい叫び声なんて俺としては日常茶飯事だったため、今更動揺することなんてありえない。じじいの叫び声のほうがよっぽどうざい。

 

痺れかけた足に活を入れ立ち上がると、桂花も倣って立ち上がる。

 

「ちょっと見てくるよ。桂花はどうする?」

 

返事はわかりきっていたが一応聞いておく。というか聞いておかないとこの娘はへこむのだ。それはそれで可愛らしいのだが、罪悪感の方が勝った結果、些細な事でも確認をとるようにしている。

桂花はトレードマークになりつつあるネコ耳フードを被ると、そっと俺の服を摘んだ。

うおおおお、と玄関の方が騒がしいことになっていて、厄介なことになりそうな予感がぷんぷんするが、もうどうしようもない。

小動物のように可愛らしい桂花に僅かながら元気をもらい、渋々ながら玄関先へ向かったのだったが・・・

 

「すまん、俺は華陀という者だ。どうかこのとおりだ。この娘を休ませてくれ!」

 

いきなりまくし立てられ、俺と後ろの桂花は少し引いていたが、華陀という男の背中にいたぐったりとした少女を見て、事の深刻さを認識する。

冗談抜きでやばい。

 

「ほら、その娘をよこせ。桂花、悪いけどこの男に拭くものを頼む」

 

「すまない」

 

少女を抱っこしてその身体の冷たさに驚く。

全身は川に飛び込んだようにずぶ濡れになっていた。

すぐさま囲炉裏のある部屋に飛び込んだ俺は一度そっと彼女を座布団に寝かせ、慌てて拭くものを持ってきてくれた桂花にお礼を言いつつ服を脱がしていく。

雨で濡れた服はその華奢な身体に纏わりつき、また水分を吸って肌に張り付き、ずっしりと重かったが、幸いにも軽装だった為に難なく脱がすことができた。

その横では桂花が囲炉裏に火をくべ、部屋を暖めていく。そこでタオルを頭に被った華陀が追いついた。

 

「すまん、遅くなった」

 

「おう、お前も服を脱いで暖まっとけ」

 

「いや、俺も手伝う。部屋を暖めればいいんだな。任せておけ。うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 

「うるせぇぇぇ!!」「ピイイイイイイ!」

 

突然叫びだした男に向かって濡れて重くなったタオルが跳ぶ。

べちゃ、という音とともに顔面にタオルが当たった男は、下を向いて体操座りで静かになった。

 

桂花という頼りになる助手のお陰で僅かな時間でひと安心できるところまでいくことができた。言わなくても次にやりたいことの準備をしていてくれる、阿吽の呼吸とはこういう感じなのだろうか。まぁ桂花が合わせてくれただけ、というのもないとも言えないが。そんな桂花がいつの間にか用意していてくれていたお茶を3人ですすりながらホット一息をつく。

華陀が連れてきた少女も桂花と俺によって全身丁寧に拭かれ、布団の中で規則正しい寝息を立てている。冷えきっていた身体も少し赤みがさす程度まで暖められていた。

身体を拭いている時に見た少女の身体は無数の傷が刻まれていた。中でも背中に大きく刻まれたものは死んでいてもおかしくないと思わせるものだった。が、綺麗に縫合され、あまり目立たなくなっていた。

彼の言葉が真実ならば、ではあるが華陀と名乗っていても遜色のない見事な技術であった。

 

「君たちのおかげで助かった。俺にできることがあればなんでも言ってくれ!」

 

穏やかな雰囲気の中、華陀が頭を下げた。その姿は嫌味なものなどなく、真っ直ぐなとても気持ちのよいものだった。ちょっとウザイが。

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。俺は北郷一刀。こっちの娘は荀攸。その、彼女はあんたの連れなのか?」

 

すうすうと寝息を立てている少女を見る。

友人か、もしくは恋人か。似ていないので兄妹ということはないと思う。

 

「いいや、俺もたまたま見つけたんだ。まったく、ひどい状態だったぞ。さすがにゴットヴェイドォーの力を持ってしても死者を蘇らせることはできないからな」

 

「いやいやいや」

 

そんなことできたら既に医術ではなくネクロマンサーの所業だ。しかし死ぬ一歩手前ならば何とか出来るのか、ゴットヴェイドォー?

発音がなんか変だけどたぶん五斗米道だよな?それに本来の五斗米道ってそんなんだったっけ?

まぁこの程度のことで悩むようなことではない。そう、この世界では常識に囚われてはいけないのだ。

 

「そうだ、華佗さんに頼みがあるんだ」

 

「華佗と呼び捨てでかまわない。それで頼みとは?」

 

「なら俺も一刀で。華佗って医者だよな?できれば桂花、荀攸のことを診て貰いたいんだ」

 

俺の背後に控えていた桂花を見る。先程までのてきぱきとした動きとは裏腹に、華佗を警戒しているような素振りを見せる。何故に?

 

「ああそれは構わないが・・・何故俺は警戒されているんだ?」

 

「いや、まぁ、色々と事情があるんじゃないかな?」

 

「何故お前が疑問形なんだ・・・」

 

華佗がやれやれと溜息をつく。わからないものはわからないんだからしょうがないじゃないか。

すっと桂花のほうから一枚の紙が差し出される。

 

『おとこきらい』

 

「まじで」

 

な、なんということでしょうか。衝撃の事実発覚である。

俺も一応男なのだが。もしや男としてカウントされていない?!もしや出会って速攻お兄ちゃんとかお父さんポジションに定着してたとか?!

 

『かずとはすき』

 

「えと、ありがとう?」

 

続いて出された二枚目。やばい、なんかすごい照れる。

桂花もフードを被り下を向いている。わずかに見える頬が赤いことから書いた本人も相当恥ずかしかったのだろうか。あーくそ、可愛いなぁ。

 

「ふむ、治したいのは男嫌いか?だとするとどうしたものか・・・」

 

そんな初々しいカップルのような二人をよそに、マイペースに華佗が考えこむ。

 

「違う違う、彼女声が出ないんだ」

 

いずれそこも治さなければならない気がするが、それよりもこっちのほうが深刻だ。

昔は普通に話せていた、ということは怪我か、病気か、はたまた精神的なものか。

 

「ほら桂花」

 

桂花を抱きしめる。されるがままに腕の中に収まった。

 

「とりあえず診てもらうだけ診てもらおう。意外と簡単に治るかもしれないし」

 

「ああ、ゴットヴェイドォーに治せない病など存在しない!」

 

不安そうに見上げる桂花に向けて、少しでも気持ちが楽になるように言葉を紡ぐ。華佗も自信を持って断言してくれる。なおも揺れる瞳に対し、俺の本音も積み重ねた。

 

「俺、桂花の声聴きたい。俺の名前を、呼んで欲しいよ」

 

桂花の不安そうだった瞳が、頷きとともに閉じられた。

 

 

 

 

 

 

「--------!!!」

 

「えっと桂花、もうやめようよ?」

 

ブンブン。

 

「いや、でもその、ね?」

 

うるうる。

 

「いや、そこで顔真っ赤にして上目遣いとか卑怯だから!てかなんでそんな期待を持った目でこっちみてるの?!」

 

「あー、お邪魔だったか?」

 

「あ、華佗ちょうどいい所に。って逃げんなマジで違うから!」

 

 

 

 

「すまないな、看病を任せてしまって」

 

「もうそっちはいいのか?」

 

「ああ、少し疲れていただけだからな」

 

あの後、食事をとった華佗は眠りについた。

華佗によれば、ゴットヴェイドォーは気を用いることによって病魔を退治する秘術らしい。ぶっちゃけわけがわからない。

華佗もあの娘を助けるためにかなり無茶をしていたようだ。気を消耗しすぎたらしく桂花の診察を後回しにするほど疲れていたにもかかわらず、「彼女は俺の患者だ、最後まで看病するのは俺の義務だ!」と暑苦しく語り出したので、少々乱暴に黙らせた。病人の前でたびだび騒がしくなるのは本当に医者としてどうかと思う。離れでもあればそこでゆっくりと休ませてやりたいのだが、ない物ねだりしても仕方がない。

俺からの暴力と桂花からの冷たい視線により渋々看病を交代し休むことを宣言した華佗は、尋常じゃない量の食事をとった後、深い眠りについていた。そこら辺はしっかりと割りきれるらしい。

その様子を見届けた後、俺と桂花は将棋を打ちながら看病を行なっていた。スヤスヤと眠る女の子の寝顔を見るのは忍びないが、あれほどの怪我を負っていたのだ、いつ容態が急変してもいいように誰かが見て置かなければいけない。

じゃあ遊んでるなよ、といわれるかもしれないがぶっちゃけ暇なんだもん。

朱里ちゃんと雛里ちゃんと違い、一局目から敗北を喫するということはなかったが、明らかに手を抜かれていたのが解ってしまった。なんというか、打たされている感が拭えないのだ。なぜについさっきルールを知ったばかりの俺よりも幼い娘に接待プレイをされているのだろう、まだ全力で叩き潰されたほうがいっそ清々しかったのに。

 

『さすがかずと』

 

時折褒めるようなメモを見せてくる桂花についイラッとしてしまい、「桂花も疲れただろう?」と口八丁で丸め込み、疲れが取れるからとマッサージを敢行。

ちょっとした罰ゲーム感覚でちょっと痛いツボを押していたのだが。始めは痛みに身を捩り、逃げ出そうと身体を動かしていたんだが、しばらくするとおとなしくなっていき、だんだんと桂花の呼吸が荒くなり、顔を真赤にし始めた。そこでやめておけばいいものを、俺はてっきり痛みに慣れ、血行が良くなってきて来たんだと勘違い。実際は恐ろしいものを目覚めさせてしまったと知ったのはいい加減疲れてきて、終わりを宣言したところであった。

つい先程までうつむき見えなかった顔が上げられ、俺の目に飛び込んできた表情は、まさかの女の顔だった。

華佗がタイミングよく割ってはいってくれなかったら今頃どうなっていたことか。

まぁ勿論俺から手出しをするようなことなんてないのであしからず。

 

そんな桂花はこちらをジト目で睨みつけている最中である。

 

「いやしかしいつの間に移動したんだ?しばらく探しまわってしまったぞ?」

 

そんな微妙な空気も気にせず華佗が妙なことを言い出した。

 

「は?どういうことだ?」

 

「どうもこうも、いつの間にか離れの方に移動していたんだ。病人を動かすのはあまり感心しないぞ」

 

俺と桂花は思わず顔を見合わせた。かわいい。

桂花は廊下へ、俺は外への障子を開けるとつい二時間前にみたものとは異なる景色が広がっていた。

 

「おいおいおいおい」

 

桂花もぺたりとその場にへたり込む。その顔は少し青ざめていた。

つまり俺達は全く移動していないにもかかわらず、いつの間にか離れに移動していた、ということだろうか。なにそれ怖い。

ドッキリとかそいういレベルではない、まさに怪現象。

 

「まぁここなら母屋の方から離れているし、俺がゴットヴェイドォーの技を使っても五月蝿いと一刀たちに怒られなくて済むな」

 

華佗はのんきなことを言っていた。知らないのは幸せなことである。

そんな華佗の一言からふとある仮説が思い浮かぶ。

 

ーーーまさか俺が離れがどうのこうの思ったから?

 

そう思ったが慌てて首を振った。この件は深く追求しないほうがいい気がする。

ただでさえここはわけがわからないのだ。藪をつついて漢女が出てきたとあってはシャレにならない。

 

「すまない気にしないでくれ。桂花も深く考えず気にするな、いやいっそ忘れたほうがいい」

 

未だ青い顔をしている桂花の頭に手を載せ、くしゃくしゃっと乱暴に撫でる。乱暴に撫でられたからか、少し機嫌が悪そうにこちらを見ていたが顔色が少し戻っていたので無問題であろう。

 

「それで彼女の様子は?」

 

華佗はゆっくりと腰を下ろした。俺と桂花も続けて腰を下ろす。

 

「いや寝たまんま。あまりにも意識が戻らないとちょっとまずいな」

 

「最悪俺の鍼で強制的に目覚めさせることもできる。ただ自然に起きないということは身体が栄養よりも休息を求めているということだろう。筋肉のツキ方、身体の状態からみても日頃から相当無茶としていたんだろう。もしかしたらそのツケが一気に噴き出しているのかもしれない」

 

そんなところまで診ている華佗に感心していると、華陀から見えない位置に桂花がメモを差し出した。

 

『あいつへんたい』

 

疑問符ではなく、断定。女性から見てみれば自分の身体を隅々まで把握されてしまうのは、少々気持ち悪いのかもしれない。デキる男がゆえに、哀れなり。

 

「すまない一刀。頼みがあるんだ」

 

哀れな男から、意を決した様子もなく頼みごとが持ちかけられる。

 

「その娘がしっかりと回復するまで、俺に看病させてほしい。頼む、ここにいさせてくれないだろうか」

 

もとより追い出すつもりもなし、桂花を診てもらうということで借りもある。

俺はその頼みごとを即座に了承したのだった。

 




ここまで呼んでいただいた方々に感謝をーーー

ネタを考えてはボツにする日々でした

最近考えたネタは
『玄野計が進撃の巨人の世界に転送されたそうです』
どっちもかなり前に漫画喫茶でちょろっと読んだだけなのに流行に吊られて妄想してしまうって
本当にどうなのよ俺

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