魔法少女なのは・イリヤ   作:rain-c

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題名の案が中々でない。そして駄文。過去最高の駄文。


想いそれぞれ

 美遊を妹に迎えるという一大イベントをこなし、朝食を済ませた俺とイリヤは新しい兄妹である美遊を引きつれて、高町家を目指し歩いていた。時刻は午前十一時を少し回ったところ、美遊の歓迎会も兼ねた豪華な朝食のせいで、まだ満腹感が残っており、腹ごなしの意味合いも強かったりする。

 午後から行くという選択肢もあったが、午後になるとなのはちゃんの動きが読めない。今なら昼も近いので、きっとなのはちゃんは家にいるはずと、希望的観測をして高町家へと向かっている。

 比較的早い再開になるが、もともと今日もなのはちゃんに会うつもりではあったし、昨夜問題を起こしてしまったので俺は可及的速やかになのはちゃんに会い、しばらく会えないことを伝えなければならなかった。なのでイリヤの、新しい家族をなのはちゃんに紹介したい!という提案はまさに渡りに船だ。うまく美遊を紹介でき、イリヤ、なのはちゃん、美遊の三人が仲良くなったら、二人になのはちゃんの寂しさを紛らわす役を任せられるかもしれない。

 

「わたしが行く必要はあるの?」

 

「絶対に必要なことなんだよ。避けては通れない道なんだから」

 

「いや、確かに自己紹介は初対面なら避けては通れない道ではあるけどさ。その使い方を聞くと俺はイリヤの将来が不安になるよ」

 

 イリヤの残念な言葉の使い方も気になるが、美遊の見た目に反した無関心さも気になる。俺は原作を知ってて耐性があり、精神年齢が高いからそこまで気にならないが、同年代に馴染めるかが心配だ。ちなみに、イリヤとなのはちゃんについてはあまり心配していない。前者は持ち前の無邪気さと、家族だから気にしないだろうし、後者は精神年齢が俺程ではないが高いからな。

 

「むー」

 

「むくれるなって今度一緒に勉強しような」

 

 俺のツッコミにむくれるイリヤの頭を撫でてやると、わたし不満ですって顔と、撫でられて嬉しいのか、少しばかりにやけた顔が混ざった複雑な表情を浮かべる。どこぞの不気味な泡のように、顔の真ん中から表情が別れているわけではないが、言葉の使い方以上に、イリヤの表情筋の動きが気になってしまう。

 

「美遊も折角家族になったんだ。仲良くしようぜ?」

 

「……家族」

 

「血の繋がりはないけどね!」

 

 五歳という年齢を考えれば仕方の無いことなんだが、イリヤよ。身も蓋もないことを言うんじゃありません。ほら、ちょっとほぐれた美遊の顔が元に戻ってるよ。

 

「でも、血の繋がりなんて関係ないよね」

 

「どういうこと?」

 

 続いたイリヤの言葉に美遊が疑問の声を上げる。イリヤは不思議そうな表情をする美遊に満面の笑みを見せると、美遊の疑問に答えるためであろう再び口を開いた。

 

「血の繋がりなんて些細なことだよ。だってわたしは家族だと思ってるし、今の生活が幸せだもん。美遊ちゃんが来たから、今まで以上に楽しくなるよ。ねっ、お兄ちゃん?」

 

 それは見る者すべてを魅了するかのような笑み。一瞬だが不覚にも残念美少女系のイリヤ相手に心臓の鼓動が跳ね上がってしまった。

 

「そうだな」

 

 イリヤの眩しい笑顔から顔を逸らし、照れ隠しに、頭をクシャクシャと撫でつつ美遊へと視線をやる。イリヤが髪がー!とか言っているが、多少髪型か乱れようと自慢の妹であることにかわりはないので、無視しとく。美遊はイリヤの言葉に何かを思うところがあったのだろう。思案顔だ。はっきり言って五歳児のする表情ではない。

 彼女といい昨日知り合ったなのはちゃんといい俺の周りの少女達は無駄に精神年齢が高い。俺が本当の五歳児だった頃は、幼稚園にあった汽車型の遊具からいかに格好よく飛び降りれるかだとか、ザリガニをどうしたら多く釣れるかなんてことに情熱を燃やしていたよ。

 

「あなたも同じ考えなの?」

 

 考えが纏まったのか、顔を上げる美遊。

 呼び方はあなたか。今朝会ったばかりだから、お兄ちゃんと呼べとは言わないが、せめて名前で呼んで欲しい。

 俺の名前憶えてるよな?

 

「まあな」

 

「圭もイリヤも変わってる」

 

 どうやら俺とイリヤの名前は憶えてもらえていたようだ。少しは関心をもってもらえていたらしい。原作を思えば、一安心といったところか。関心が無かったら、行動を共にする事の多い人の名前を憶えない子だしな。

 

「俺から見りゃ美遊も相当変わってるよ」

 

「お兄ちゃんは確かに変わってる。というか、変だけど、わたしは変わってないからね。普通だよ」

 

 俺を生贄に普通発言をするイリヤ。しかし、悲しいことにイリヤは確実に変わってる組だ。後数年経てば立派な魔法少女となる運命なのだから。

 

「そうだな」

 

「もー!本当だからね!」

 

 数年後に思いを馳せ、少しばかり顔がニヤついてしまいイリヤがむくれてしまった。ポカポカと俺のことを叩くことに夢中なイリヤは、きっと気づいてないだろう。俺とイリヤの戯れ合う姿を見て、美遊が薄っすらとだが笑みを浮かべたのを。

 

「ま、楽しくやろうや」

 

 俺の言葉に美遊は無言で頷いた。

 

◇◇◇

 

 俺がイリヤと美遊を伴って訪れた高町家には昨日無かったものがあった。その物体を見てから、俺の中で警鐘が鳴り響いていた。高町家の前にあったのは一台のタクシーだ。近づいていくにつれ後部座席に座る人影が見えてきた。一人は、なのはちゃんと同じ髪の色の長い髪の女性。こちらは何の問題も無い。外見から判断するにきっと桃子さんだろう。問題はもう一人の方だ。ぱっと見た感じでは高町恭弥さん。だが、桃子さんが腕を組んでいることから考えると恭弥さんとは考えにくい。昨日あれだけ荒れていた恭也さんが次の日に母親とどこかへ出掛け、腕を組んでタクシーで帰宅。

 うん。どう考えてもない。嫌な予感しかしない。ここは戦略的撤退が吉だな。

 

「イリヤ。悪い、俺ちょっと用事思い出したから帰るわ。なのはちゃんにはよろしく言っといてくれ」

 

「えーなんで?それに用事って何?折角美遊も連れて来たんだから用事なんて放っておこうよ!」

 

「あー!圭くんにイリヤちゃんだー!」

 

 俺の逃げの一手は身内の義理の妹と、高町家より出てきた少女により粉砕された。俺の最後の希望はどこだ。駆け寄ってくるなのはちゃん。タクシーから降りた桃子さんともう一人がなのはちゃんを目で追い、こちらへと視線を向けた。恭也さんと瓜二つの髪型をした男性の方は驚いた表情を浮かべる。しかし、男性はすぐにその表情を引っ込めた。負っていた傷や、治癒力の高さから只者ではないと睨んではいたのだが、やはり要注意人物という認識で間違いないな。深夜に突如現れ傷を治し、さらには目の前から文字通り消えた人間と不意に再会した時に俺は彼、高町士郎さんと同じ反応をとれる自信はまったくない。俺がもし士郎さんと同じ反応をとれたとしたら、ただ単に思考停止状態に陥っただけと言い切れる自信がある。

 

「お父さんが退院したの!」

 

「なのはちゃん良かったね!」

 

 手と手を取り合いくるくる回る二人。俺と美遊は置いてけぼりだ。というか、二人の回転速度が徐々に上がっていっているので物理的にも干渉しずらくなっていっている。止まるまで放置でいいか。

 

「圭くん、イリヤちゃん。いらっしゃい。今日はお友達も連れてきてくれたの?わたしは高町桃子よ」

 

 イリヤとなのはちゃんが回り始めた辺りから、こちらに向けて歩いてきていた桃子さんが到着。俺と美遊に話かけてきたのだが、愛想なんて言葉は知らないとばかりに、美遊は無言。

 

「こんにちは。桃子さん。この子は友達ではなく家族です。美遊、自己紹介できるか?」

 

「……衛宮、美遊」

 

 間に入らなければ会話が終わりそうな気配がしたので、早々に介入するも、美遊が行ったのは名前だけを告げる簡潔な自己紹介。こういうところに精神年齢の高さは関係ないらしい。これは美遊の性格によるところが大きいかもしれない。

 

「ふふ、よろしくね。美遊ちゃん」

 

「も、もうだめ」

 

「目が回ってるのー」

 

 桃子さんがしゃがみ込み、美遊の頭を撫でようと手を伸ばしたところで、目を回したイリヤとなのはちゃんが、道路にお尻をつけ座りこむ。

 正直ホッとした。美遊なら手を避けたり、払ったり普通にしそうだもんな。

 

「あらあら。なのはもイリヤちゃんも元気ね」

 

「元気があるのはいい事じゃないか」

 

 口元に手を当て頬笑む桃子さんに、士郎さんが近づき笑う。

 桃子さんに近づいたことにより、必然的に俺との距離が縮んでしまった。

 

「うう。まだ気持ち悪いの」

 

「わたしもー」

 

 なのはちゃんとイリヤが、まるで呑みすぎたサラリーマンの如く地面と見つめあっていた。どうやらまだ目を回しているようだ。どんだけ勢いつけて回ってたんだか。

 

「士郎さん。退院したばかりで悪いんですが」

 

「ああ。大丈夫だよ。もう健康体だからね。任せてくれ」

 

 会話から察するに桃子さんが何かをお願いしたようだ。桃子さんが内容を一言も話していないのに、頼みごとを引き受ける士郎さん。羨ましい関係だ。俺も将来妻となる女性とはこのような関係になりたいものだ。

 

「じゃあ、圭くんと美遊ちゃんは先にわたしと中に入りましょう」

 

 返事をする前に、手を引かれてしまう。断る理由も浮かばず、俺と美遊は高町家の敷居を跨ぐことになった。俺の予定は狂う運命にあるのか本気で不安になる。

 

「あ、おかえり。お母さん。いらっしゃい。圭くん。その可愛い子は圭くんの彼女かな?」

 

「お邪魔してます。美由希さん。この子は妹の美遊です」

 

 桃子さんにリビングへ通された俺と美遊を見た美由希さんの第一声を否定し、正しい美遊との関係を伝えていると、桃子さんはキッチンへと消えていった。

 それにしても、美由希さん今日は平日なのに何で家に居るんだろう?士郎さんが退院するから休んだのだろうか。

 

「へー。美遊ちゃんっていうんだ。わたしは高町美由希。名前にみゆが着く者同士仲良くしようね。美遊ちゃん」

 

「別にいい」

 

 フレンドリーに接する美由希さんにたいし、美遊は無表情で美由希さんに返答し、俺の服を掴んだ。美由希さんには悪いが、俺の服を掴むぐらいには、心を許してくれているのが解り、少しばかり嬉しい。

 

「あらら。振られちゃったか。残念。美遊ちゃんは圭くんが好きなのね。圭くんはわたしと仲良くしてくれるよね?」

 

「どうでしょう。悩みどころですね」

 

「うう。まさか圭くんにまで振られちゃうなんて」

 

 少しばかり悪戯心をだし、悩む素振りを見せる。俺が悩む素振りを見せたのがショックだったのか、美由希さんはテーブルに伏せてしまった。悪いことしちゃったな。

 

「冗談ですよ美由希さん。つい美由希さんのことをからかいたくなって。こんな俺でも良ければ仲良くしましょう」

 

「本当に子供っぽくないなー。圭くんは。可愛くないのはこの口かな?うりうりー」

 

 年下に良いようにからかわれたのが悔しいのはわかるけど、だからって頬を引っ張らないでください美由紀さん。距離が近いし、胸を覆う白い物がチラチラ視界に入ってますから。枯れてはいないので、はっきり言って目の毒です。本人にはっきり指摘するなんてできないけどね。はっきり言えるのは心の中だけ。笑わば笑え。

 

「みひゅきさん。ひゃめてくだひゃい」

 

「ごめんごめん。ついテンション上がっちゃって」

 

 抗議の声をあげると、あっさりと美由希さんの手は頬から離された。

 

「いえ。さっきは俺も悪ノリしちゃったので、おあいこということで」

 

「そうだね」

 

「あー!お姉ちゃんズルいの!わたしも圭くんと美遊ちゃんとお話するの!」

 

「お兄ちゃんは年上好きだったの!?」

 

 美由希さんと笑いあっていると、士郎さんに担がれ高町家の末っ子と、我が家の長女が現れた。どうでもいいけど、語尾が被ってるぞ。

 

「おかえりなさい。お父さん」

 

「ただいま。心配かけたな」

 

 復活したイリヤとなのはちゃんを肩から下ろすと、士郎さんは美由希さんを安心させるためだろう。笑いかけた。

 

「うちのイリヤがご迷惑をお掛けしました」

 

「ええっ!?わたし迷惑なんてかけてないよー」

 

「それはない」

 

 俺の言葉を否定するイリヤと、イリヤの否定を否定する美遊。俺と美由希さんの会話中は空気と化していたのに、イリヤにはツッコミをいれるらしい。

 

「入院していた俺がいうことじゃないけど、元気なことはいいことだよ」

 

 まさかの士郎さんによる自虐ネタに、苦笑いが浮かぶ。

 

「もう、士郎さんたら」

 

 お茶をお盆に載せ桃子さんが登場。簡単に士郎さんに自己紹介を済ませた後、士郎さん、美由希さんの二人はテーブルで、俺たち幼児組は数が多いので、ソファーに腰掛けお茶を頂く。桃子さんは昼食の準備があるからと、キッチンに戻っていった。

 

「なんで父さんが居るんだ?」

 

 お茶を飲みながら和みつつ、なのはちゃんとイリヤの話を美遊と共に聞き役に徹してから二十分ほどたった頃、リビングに恭也さんが現れた。服装は昨日と同じで、髪は寝癖でボサボサだけど昨日会った時より顔色はいい。恭也さんの様子から察するに、昨日魔術で眠らせてから今まで寝ていたっぽい。

 眠りの森(スリーピングフォレスト )はそこまで強い魔術ではない。魔術抵抗が高い者なら簡単に弾かれるし、恭也さんのように魔術を知らない一般人でも一時間も経てば目が覚めるはず。単純に恭弥さん自体が相当疲れていたのだろう。半日以上寝てしまうぐらい体に負担をかけるなんてどんな無理な修行をしたんだか。

 

「見ての通り傷が治ったから退院したんだ。恭弥。お前の様子は母さんに聞いた。心配かけたことは済まないと思う。だが、御神の剣は護るための刃だ。護るという意味を履き違えるな」

 

「父さんは、俺の考え方が間違ってるっていうのか!?俺はただ父さんの代わりに家族を護ろうとしただけだ!」

 

 士郎さんの言葉を強く否定する恭也さん。この話題は俺たちが聞いていてもいいものなのだろうか?

 

「この話は終わりだ。恭也。今はわからなくてもいい。しばらく剣を置け。いつかお前にも解る時が来る」

 

「……わかった」

 

 これ以上話をする気はないとばかりに士郎さんから発せられるプレッシャー。反論は無駄だと判断した恭也さんは少しの間をあけ、不満気に返事を返すとそのまま家を出て行ってしまった。なのはちゃんと美由希さんは心配気な様子でその姿を目で追い、イリヤは何が起きたのか理解できてない様子で顎に指をあて可愛らしく首を傾げている。美遊はもちろん無関心。

 俺にも経験があるので恭也さんが出て行った気持ちは理解できる。自分が正しいと思っていたことが信頼していた人によって否定される。とてつもなく辛いことだ。経験があるならアドバイスでもしろと思う人もいるかも知れないが、この先どうするかは恭也さん次第。俺が恭弥さんにしてやれることはない。

 

「すまないね。空気を悪くしてしまった」

 

 謝る士郎さん。間違いを正すのは早い方が良いと思うので、俺としては別に構わない。欲を言えばやっちまったと、申し訳なさそうに頬を掻くなら、なのはちゃんやイリヤが居るのに配慮してほしかった。

 

「いえ。必要なことだと理解していますから」

 

 もともと也弥さんを止めて欲しくて士郎さんを治療したのだ。ここは目的を達成できたのを素直に喜んでおくか。

 

「ありがとう。それと君とも話があるんだ。少しだけ男同士で話さないかい?」

 

「えっ、あ、はい。いいですよ」

 

 返答の声がうわずってしまった。完璧に油断してた。まさかこのタイミングでぶち込んでくるとは。予想外だったよ。話をせずに終わるとは思っていなかったけど、今まで会話的に恭也さんについて何かしらフォローを入れてからこっちにくると思っていたのに。

 

「場所を移そう。道場でいいかな?えっと……」

 

 言葉に詰まる士郎さん。そういえば士郎さんにはきちんと自己紹介していなかったな。

 

「圭です。衛宮圭」

 

「圭くん、付いて来てくれるかな?」

 

「わかりました」

 

 足早にさる士郎さんを追い俺もリビングを出る。リビングを出る際、イリヤと美遊の様子を見るために一度振り返ったのだが、偶然美由希さんの表情が目に入り、何故士郎さんがこのタイミングで俺に話を振ったのか理解した。

 美由希さんから逃げるために利用したな士郎さん。

 

◇◇◇

 

 道場についた俺と士郎さんは、お互い正座で向かい合い座った。考えすぎかも知れないが、何かあったら確実にヤられる距離のため、落ち着かない。考えてみれば、俺は士郎さんの事をなのはちゃんの親としか認識していない。言ってしまえば、内面をまるで知らないのだ。なのはちゃんの親だから、優しい人だろうと予想し治療したのだが、こう沈黙が続くと早計だったかなと、不安になる。

 

「君には怪我を治してもらったり、なのはの手助けをしてもらったりと本当に世話になった。ありがとう」

 

 鬼が出るか蛇が出るかと恐る恐る士郎さんの行動に注視していたが、どうやらやはり俺の考えすぎだったらしい。お礼の言葉を述べた士郎さんは、そのまま正座を崩さずに頭を下げた。土下座に近い格好なので、出来れば早めにやめていただきたい。

 

「士郎さん、頭を上げてください。年上の人に土下座に近い体勢をとられると落ち着きません。それに、士郎さんを治療したのは、俺のエゴです」

 

「エゴか。難しい言葉を知ってるね。確かに美由希の言うとおり、圭くんは本当に子供らしくないね」

 

「子供らしくない自覚はありますけど、そう何度も言われると少し傷つきますよ」

 

「あはは。すまないね。しかし、エゴだろうと俺は君のおかげで助かったんだ。お礼くらいは言わせて欲しいな」

 

 浮かべた表情は二人して苦笑。傍から見たらお礼を言われた側と、言った側だとはとても思えないだろうな。

 

「わかりました。お礼は素直に受け取っておきますね」

 

「ああ、そうしてくれると助かるよ。お礼も言えたことだし、一つだけ質問してもいいかな?」

 

 跳ね上がる心拍数。ついにきたか。これからが本題だろう。煙に巻けるように気合を入れないと。

 

「なんでしょう?」

 

「君はなのはのことをどう思っているんだい?」

 

「はっ?」

 

「君はなのはのことをどう思っているか聞かせて欲しいんだ」

 

 予想していなかった質問に一瞬思考が停止した。士郎さんは俺が聞き取ることに失敗したと思ったのか、言葉を微妙にかえてはいるが、内容的には同じ事を再度聞いてきた。士郎さんは今までで一番真剣な表情を浮かべている。残念ながら、ボケている訳ではないらしい。

 

「えっと、士郎さんからの質問は一つだけですよね?今のは数にはいれないんでしょうか?」

 

「いいや。俺が聞きたいのは、君がなのはについてどう思っているかだけだ。他にはないよ」

 

 普通、治療した方法やら、俺が何者なのかなどを尋ねるとこだと思う。まあ、俺としても昨夜のことを追求されないのは好都合だ。ここは士郎さんの質問に答えておこう。

 

「最初はほっとけなかった子ですかね。今は友達だと思います」

 

「ほう。つまり君はなのはに一目惚れをし、話しかけたと?」

 

 ギラリと光る士郎さんの双眸。その目はやばいって狩人の目にしか見えません。それと俺の言葉に脚色して剣呑な空気を出さないで頂きたい。確かに可愛いとは思うし、将来惚れる可能性がないとは言い切れないけれど、今のところは恋愛感情ではないと自信を持って言えますので。

 

「違いますよ。単純にほっとけなかっただけです。それに最初になのはちゃんの様子がおかしいことに気づいたのはイリヤですから」

 

「そうか。安心したよ。折角の恩人を斬らなければいけないところだった。じゃあ、話も終わったことだし、戻ろうか」

 

 剣呑な空気を引っ込め、にこやかに話すと士郎さんはさっさと道場から出て行ってしまう。置き去りですか、そうですか。どっと疲れた俺は足取り重くリビングへと帰還し、なのはちゃん、イリヤ、美遊と合流。士郎さんの視線に怯えつつ、しばらく俺、イリヤ、なのはちゃんで会話を楽しんだ後、桃子さんの昼食の用意が済んだ為、高町家を後にした。その帰り道、また三人で来るってなのはちゃんに約束しておいたから!と胸を張って言ったイリヤに思わずでこピンをしたのは完全な余談だ。




文章力が欲しい。あまりもだが、とかだろうが多すぎる気がする。

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