魔法少女は今日も歩く   作:魔法使いK

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ただいま。久しぶりだから文字数少ないけどごめんね。
まただよ。
俺はもしかすると三ヶ月エタる呪いにかかってるのかもしれないな。
まあね、色々あったんだよ。受験勉強をしていたはずかね、気付けば就職になっていて?免許必要だから?誕生日の三月の後に取りに合宿に行って?気付けば四月ですよ(半ギレ)
ほんとに、もう四月かぁ…………。たまげたなぁ。
最近あった良いことなんざReゼロと幼女戦記の書籍版を買ったこと位かねぇ……。


第7話

 あるいは本当に、何もかもを無くすとはどう言う事だろうか。

 何もかもを失うとは、どう言う事だろうか。

 大切な記憶も。美麗字句に飾った誇りも。己を象る思いさえも。

 全てを暗闇よりなお酷い無為に帰すと言うのはどういう事だろうか。

 

 ────死ぬとはどう言う事だろうか。

 

 少なくとも笑って済ます事では無いだろう。

 泣き、怒り、喜び、笑う。喜怒哀楽。そのどれもが違うようにもさえ思える。

 たとえ死んだこと無い者がそれを語ることがどれほど無意味であっても。それを知る者がたった一人であろうとも。

 それを知りたがるのは人の故だろう。

 だが、少なくとも言える事がある。

 まとな事では無い。まともでは無いのだ。

 それは。

 それが。

 それを。

 知っていると言う事は。知っていると言うのは少なくとも普通では無い。

 想像してみて欲しい。

 例えば君が休日に喫茶店に行ったとしよう。美味しい珈琲でも啜って、有意義な休日を堪能した君は古本屋にでも行ってみようなんて思うわけだ。

 すると突然君の隣に黒のワゴン車が張り付いたと思えば、君は黒い服を着た男達に拉致されてしまった!

 その後君は様々な紆余曲折を経て家に帰宅した(どう帰るかは君の想像に任せるとしよう。男達を倒して帰るも、特殊部隊に救出されるも。何せこれは想像の話なのだから)。

 

 さて、尋ねよう。

 

 その君は今までの君と同じかい?

 いや、隠さなくていい。

 そうだろう。そうだろう。違うだろう。

 少なくとも次の日からは帰りに不審な車に気を付ける君にはなっただろう。

 つまりだ。言ってしまえば死を目前にすればこんなにも下らない。下らないこんな事でさえも人を容易く変える事は出来るのだ。

 変化が下らない? 何を! それは変化であることに違いは無いだろうに!

 もっと俗に言ってしまえば人なんて失恋一つで人間不信になるものだ。

 それが死なんて知ってしまえば、もう!

 ここまて語れば十分だろう。

 やっとわかって頂けただろうか? 理解して頂けただろうか? 

 

 死んだ事のある人間なんて録なもんじゃないと。

 

 誰かが言った。

「人が死を恐れるのはその現象にではない。その孤独故にだ」

 成る程、至言だろう。

 平素ではそれが真理だろう。誰も死後に生きる事など想像だにしまい。どの動物が自らが死んだ後に思う事を考えると言うのか。

 孤独は恐ろしいからな。

 

 だが彼女は違う。彼は違う。

 

 彼こそが地獄を歩いた生ける死者そのものなのである。

 彼女こそが願わくして死と言う名の怪物の正体に気付いてしまった哀れな少女なのである。

 二律背反の愚者とはアレの事なのである。怪物と人間。合わさった異形、それがアレである。

 

 知ってるか、彼女を縛る呪いを。

 

『死にたくない』

 

 言葉にすると陳腐なそれが。それこそが彼女を追い詰める。憐れなクレアが望むのはいみじくも古き先達と同じ、不死である。

 

 知ってるか、彼の身の切望を。

 

『願うならば速やかにこの生の終わりを』

 

 死についてなんて考えたくも無い。

 それに対する彼の結論がこれである。本末転倒と言うべきか、語るにおぞましいそれが。どうしようもない、救い難い以前に救いようが無いそれが彼の望みである。

 孤独よりなお恐ろしいそれが死と知ってしまった不幸よ。

 ひとえに死を熱望する狂気が彼である。

 

 お前に想像できるか。

 

 朝、目が覚めて生きてることをひそかに喜ぶ事を。

 食事をし、食べ物を噛み締める事で自らの実在を証明する事を。

 星の重力に引かれながらただ生を確認する様な日々を。

 眠りにつくとき、子供の様に怯えながらただ意識を研ぎ澄ませる夜を。

 それだけしてなお、全てを打ち砕くかの様に嘯かれる。死とはどの様なモノかを鮮明に、執拗に言い聞かせる彼の声を。

 トラウマなんて一言で済ませて堪るものか。

 何が平凡だ、普通だ、ありふれただ。笑わせるな。

 そんな物はとっくに死を目前に淡く崩れさったさ。

 哀れ丹崎・真。

 彼の平凡性などとうの昔に失なわれて久しい。少なくとも彼のそれは死を受け止めるだけに全てが費やされてる。

 全て理解しようとしたけれど。まともに戻ろうとはしたけれど。救いを求めはしたけれど。

 

 その結果。これだ。これである。

 

 故が魔女。

 故がクレア・ティアーヌ。

 

 ただ恐るべきはこの全てが彼女の深層で行われてると言う事か。

 ただ静かにゆっくりと彼女は壊れて言ってる。それが無意識か意識してかは置いといて。

 

 ああ、哀れな転生者に愛を。

 幸多からん事を願う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 では本題に入ろう。

 

 明朗簡潔な問い掛けに。

 尋ねるのは一つ。そして一人に。

 物語の彼よ。この脇役たる君よ。憐れな無力な君よ。魔女の前の英雄よ。

 分不相応な願いをしたな。

 大きく出たな。

 傲慢とすら言っていいぞ、その願い。

 なにせ少女を縛るのは運命だ。誉れある英雄の運命だぞ。お前如きになんとかなると思っているのか。

 ならば救って見せろ。全てを打ち砕くと言ったのならば砕いて見せろ。

 そこまで吐けるのならばもう一人位大丈夫だろう。

 無理とは言わせんぞ未来の英雄。

 救って見せろ魔女を。クレア・ティアーヌを。織田道・梓を。彼女の見る死に打ち勝って見せろ。

 

 

 それでは聞くぞ。

 

 

 

 

 

 

 お前に彼女が救えるか?

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 時は数十分前に遡る。

 彼と彼女が在り来たりなエロハプニングにまみれている前。

 錬金術師マリナ・エルクエルと剣の君ハイネ・グラスティアがとある任務の為に合流し、とあるテーマパークに潜入したその前。

 全ての役者が話の起承転結すら守らず決着を知らず知らず(片方は知ってるが)着けようとするその前に話は遡る。

 言うなれば話をただの2コンビの戦いと言うそれに落とさない為のスパイスだ。ただの伏線回収だ。

 詰まらない闘争にさす、ちょっとした悪意のエッセンスである。

 

 彼はテーマパークの中心にいた。

 

 どこかで見たようなキャラクターの銅像のある噴水広場。涼しくも寒いそこの噴水の縁に彼は腰掛けていた。

 冬とは言え客足の衰える事の無いテーマーパークと言えど寒いものは寒い。常に動かねば寒さで体がかたまってしまうと思う程なのだから噴水に腰掛けての読書など如何に少数であるかがわかると言うものだろう。

 黒塗りのカソックの上から白いコートを羽織り。聖書を読むそれは模範的なクリスチャンのそれだろう。

 例えその聖書が異端のそれであろうと。

 敬虔な信徒である事に変わりは無いだろう。

 しかしながら薄幸そうな整った顔立ちに憂いを浮かばせながら聖書を読むその姿は美しき天使の様に。あるいは堕天使ルシファーの様に一枚の絵となることは事実だ。

 それに場所が悪かった。

 何もこんな所でクリスチャンがいるなど誰も想像だにしないだろう。

 結果。

 彼は尋常では無いほどの視線を集めていた。

「見て……綺麗」

「うわー、いいなー、格好いいなぁー。ねぇ、ちょっと話し掛けてみない?」

「やめようよ、なんか邪魔したら悪いしさ」

 通りすがりの女子達が言葉を落としていく。

 彼を取り巻いている今の光景と言ったら。これが後十個かそこらは周りにあると言えばわかるだろう。

 そんな彼の用事と言えば簡単なものである。

「────協定違反の魔女の抹殺か。簡単に言ってくれる、そう簡単に殺れたら魔女など言わぬよ」

 そう。

 これから数分後に某タカミチ君と文字通り乳繰り合う我等が主人公殿である。

 見事なフラグの確立におめでとうの言葉しかでないが、見事に笑えない事になったものだ。

 今一度状況を把握して、整理してみよう。整理する程の事でも無いが。

 某タカミチ君を狙う(正確にはキャラ崩壊真っ最中の姫巫女だが)メガロメセンブリアの追手と現地の魔術師コンビである錬金術師マリナ・エルクエルと剣の君ハイネ・グラスティア。

 

 ──────そして我等が主人公を狙う現地魔術師組織全て。

 

 は? と思ったあなた。実に正しい反応だ。

 だが魔術師の協定を舐めすぎである。

 少なくとも魔術師にとって約束とは命より重いものであるし、彼女と彼等の仲は御世辞にも良いとは言えない。

 彼等の協定など簡単で簡潔な物なのだ。

 

『不干渉』

 

 この一言に尽きる。

 こう言えば何をと言われてしまうかも知れないがそもそも魔術師は戦闘をする人々では無いのである。

 例え彼の指の一振りでこの場の人間全てが即死に至ろうと。

 戦士では無いのだ。

 その数少ない例外と言えば、タカミチ少年と剣の君ハイネ・グラスティア位だろうか。

 今の所では。

 まあそんな彼等の冷えきった理論の固まりである脳が下した対魔女戦のマニュアルはある種当然の物だった。

 圧殺。

 文字通りの人的資源に任せての圧倒的な攻勢。

 素人であろうと無かろうと鼻で笑うしか無いそれが三年前の惨劇から彼等が学んだ最善だ。

 いたずらに頭を使い。知を振るい。圧倒的な力に惨敗した。

 そんな完結した個に対する人間の友情の力とでも皮肉を言えばいいのだろうか。

 だが少なくとも今現在全ての魔術結社とは言わずとも、『オルクライス教団』団員全てがこのテーマパークに潜伏している。

 おめでとう。

 おめでとうクレア・ティアーヌ。最早地獄は避けられまい。なに、シビリアではいつもの事だろう?

 

「始めよう、────我等の聖戦を」

 

 ぱたりと閉じられた聖書と同時に響く爆裂音。

 宙を舞う血肉。突き刺さる骨。雨の様に降り注ぐ血流はまるで誰かの涙のようで。

 全てが死んだ。

 同時にテーマパーク各地に響く爆裂音。

 どかん、ぼかん、とどこか滑稽ささえ感じる音が人を蹂躙する。

 さぁ舞台は整った。なに、何時も通りだ。

 

 始めようじゃあないか、魔術師の闘争を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 結論から言おう。彼女達が遊園地を楽しむ時間は十分として無かった。彼女達が楽しんだのは入る前の遊園地の空気だけである。

 なんの事は無い。

 その後に待つのはいつも通り。闘争に続いての闘争。

 

 血を血で洗う骨肉の死戦である。

 

 

 

 


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