鎮守府の日常   作:弥識

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えー前回、『なんかのスイッチが入って筆が進む気がする』発言をしました筆者です。
うん、なんていうかね……『気がした』だけでしたよ。ハイ。
と言うかね、よしんばスイッチが本当に入っていたとしてもね、『仕事の忙しさ』に変化があるわけではないんですよねー(泣)
コンスタントに書けるようになりたいものです。

さて、最近の艦これ事情で、取り敢えず一言。

何でくまりんこ一回出たらたくさん出るようになるん……?一人目が出て、更に一週間で二人も来るとか……今までの引きはどこ行ったの?
いや、嬉しいけどさ、いっぱいくまりんこ来ても、艦隊の空きが少ないから正直こまりんこなのよ。

そんなわけで後編です。
ちょっと某艦娘のキャラ崩壊が強めな気もするんですが、日頃の発言聞いてると、『実はそれほどでもないんじゃね?』と思えてきます。不思議。
では、どうぞ。


【千代田改二】妹達の憂鬱:後編【改造記念】

○小料理屋『鳳翔』―――

 

「だからー、私が扶桑姉さまを思う気持ちは純粋なモノなの!それをやれ百合だのネガレズだの……!」

「あぁソレわかる!家族を想うことの何処が『不埒』なんだって話よね!」

「そう!私の姉さまへの想いは純粋なの!ピュアなの!」

「その通り!山城良い事言った!私達は純粋なの!ピュアなの!」

「千代田!」

「山城!」

 

「「二人は!」」

 

 

「「ピュアキュア~~!」」

 

 

 

『いえ~~い♪!!』とそのまま満面の笑みでハイタッチをかます『姉スキー』が二人。

 

 

 

「……どないしよう、千代田が何時になく『あかんこと』になっとる」

 

その様子を乾いた笑顔で見つめるのは、龍驤達だ。

なんていうか、色々と見ていられない。怒られないだろうか、『各所』に。

時刻は現在フタマルマルマル(20:00)……そう、龍驤達が入店してから一時間も経っていないと言うのに、千代田達は完全に『出来上がって』しまった。

呑んだ量だが、千代田はすでに『五杯目』である。山城は何時から飲んでいるのかは知らないが、恐らく似たようなものだろう。

因みに店主の『鳳翔』は、矢継ぎ早に注文される飲み物の準備でてんてこ舞いだ。

 

「いやもうホント、えらい事になっちゃったねぇ」

「いやいや、誰のせいやと思ってんの?」

 

あははと笑う伊勢に向かって、龍驤がジト目で問う。

元はと言えば、伊勢が彼女達を引き留めたのがいけなかったのだ。

 

いや、もっと元を質せばどこぞの『神林LOVE』が『貴方と居れば、コンビニ弁当も素敵なランチ』とか言ったのがいけないのだが、キリがないのでやめよう。

ともかく、あそこでサッサと退散していれば、こんな事にはならなかったというのに。

 

と、そこまで考えて、ふと龍驤は伊勢の目がとても遠くを見ている事に気づく。

 

「さっきさ、『二人は~』ってくだりあったじゃん」

「あぁ、さっきの……」

「実はさ、あのくだり……二回目なんだよね」

「えっ」

「それでさ、千代田のポジにさ、私が居たんだよね」

「……あっ(察し)」

「そんでさ、その一部始終を鳳翔さんにばっちり見られてさ」

「……うわぁ」

「その後にさ、鳳翔さんに『あらあら、伊勢はピュアなのね』とか言われてさ……」

「……よぉ頑張ったな、伊勢?」

「あ、やめて、その優しさが逆に心に刺さる」

 

そんな心温まる(?)会話で伊勢を労いつつ、龍驤はふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。

 

「そういえば、山城と伊勢の二人『だけ』って、結構珍しい組み合わせやね。何かあったん?」

 

山城には姉の『扶桑』、伊勢には妹の『日向』がそれぞれいる。

姉妹同士、もしくは四人でいる所を見る事はあれど、今回のような『片割れ同士』の組み合わせは珍しい。

 

「んー?いや、たまたま演習で山城と一緒だったのさ。んで、演習終わって部屋で寛いでたら急に呼び出されてさ。山城に」

「山城に?」

「そ。山城から『姉さまには聞かれたくない話がある』って言われて、日向は日向で最上の所に行ってたから、私達二人で来たってわけ」

「……山城が扶桑に聞かれたくない話?珍しいな」

 

山城の『シスコン』っぷりは鎮守府内で有名だ。

ある種の『依存』すら思わさせる慕い様に、若干の『危さ』を感じるほどである。

その山城が姉の扶桑に話せない事。一体何の話なんだろうか?

 

その時、龍驤の『扶桑』の単語に反応したのか、山城が目が一気に険しくなる。

 

「大体、姉さまも姉さまよ!」

 

だんっ!と手に持つグラスをカウンターに叩きつけつつそう叫ぶ。

 

「折角の姉妹水入らずだったのに、口を開けば『提督』、『提督』って!」

 

姉さまのばかー!と突っ伏す山城を、千代田が宥める。

 

「伊勢ぇ……」

「情けない声出さないでよ龍驤……仕方ないじゃん、山城なんだもん」

「いや、わかるけども、『山城だから』って理由もどうかと思うで?」

「要は通じればいいの」

「何だかなぁ……」

 

伊勢の言葉に、龍驤は乾いた笑いを漏らす。

蓋を開ければ、何のことはない。山城の不機嫌の理由も、千代田とどっこいだったのだ。

 

今日の秘書艦は千歳だった。結果、扶桑は暇を貰ったわけで。

勿論非番ではないが、それでも秘書艦をしている時よりは時間がある。

山城としては、久しぶりに姉妹水入らずの時間を過ごそうと思っていたのだろう。

 

ところがどっこい。

 

所謂『神林LOVE勢』の筆頭とも言われているのが、他でもない山城のお姉さま……つまり、扶桑さんな訳で。

 

扶桑のほうが龍驤より古株な為、具体的に二人の間でどんなやり取りがあったのか全て把握している訳ではない。

それでも、扶桑の『神林への想い』が並々ならぬモノであることを龍驤は知っている。

 

「そら大好きな姉の恋慕の愚痴を、大好きな姉にできる訳ないわなぁ……」

 

山城の心情を察しつつ、龍驤はそう呟く。

というか、そこで姉に物申す事が出来たらそもそもストレスは溜まらない。

 

長門と陸奥の姉妹が良い例だ。長門も『神林LOVE勢』の一人だが、妹の陸奥はそんな長門の様子を何処か楽しんでいるように見える。

……まぁ、陸奥のからかいが『過ぎて』長門が暴走し、鎮守府が『えらいこと』になりかけた、という事件もあったのだが……兎も角。

 

少なくとも千代田や山城には、陸奥のような『余裕』を求める事は出来なさそうだ。

 

『しかし、どないしたモンかなぁこの状況』

 

改めてこの状況に頭を抱える龍驤。

正直な話、千代田達にいま一つ共感出来ないのだ。

何しろ龍驤には『姉妹艦』がいない。自分にはそこまで思える相手がいないのだ。

先程千代田に言われた『龍驤には分からない』と言うのも、間違いではない。

そんな自分が在り来たりな言葉を掛けても、千代田達には逆効果だ。

 

かと言って、そこまで神林を慕っている訳でもないので(ある程度好感を抱いているのも確かだが)扶桑達がそこまで神林を慕う理由も説明がし辛い。

いっそ『伊勢に全部任せて帰ろうか』とすら思ったが、それはそれで気が引ける。

『我ながら損な性格やな』とも思いつつ、さてどうしたものかと考えていたら、頼もしい援軍が現れた。

 

「本当に、貴方達はお姉さんが大好きなのね」

「鳳翔さん……」

 

千代田達の座るカウンターに、小鉢を置きつつ微笑むのはこの店の主でもある鳳翔だ。

 

「ご、ごめんなさい、お店で騒いじゃって……」

 

慌てて謝る千代田に対して、問題ない、と手を振る鳳翔。

 

「大丈夫よ、少し前に『貸切』の看板を立てて置いたから」

「い、いつの間に……?」

「二回目の『二人は~』の辺りかしら?だから、アレを見たのは私達だけよ?」

「あ、あはは……」

 

今になって恥ずかしくなって来たのか、苦笑いを浮かべる千代田。

 

「でも、良いわね。そういう相手が居るって」

「あ……」

 

鳳翔が何気なく呟いた言葉に、千代田達の表情が曇る。それに気づいた鳳翔が小さく笑った。

 

「気にしないで?確かに私には姉妹艦が居ないけれど、私には貴女達が居るから」

 

そう言って穏やかに微笑む鳳翔を見て、千代田と山城は思わず涙腺が緩みそうになる。

 

「「お、お母さん……!」」

「いや、そこは『お姉さん』辺りで止めてほしいのだけれど……」

 

二人の口から漏れた呟きに、鳳翔が苦笑する。

確かに、鳳翔は『お艦』だの『全ての空母の母』だのと言われているが、流石にこの見た目の娘に『母』と呼ばれるのには思うところがある。

 

「て言うか山城は空母じゃないじゃん」

「艦載機を運用してる『航空』戦艦だから良いの」

「あぁ、さいですか……」

 

伊勢の突っ込みにしれっと応える山城。

というか、史実的にこの中で一番『年上』なのは山城なのだが、それを指摘すると今以上に面倒な事になる気がしたので、触れない事にした。

 

「大好きな人を取られちゃって、寂しい?」

「そういう訳じゃ……!ない、と、思いますけど。多分」

 

鳳翔の問いかけに、思わず強く否定しそうになる山城だが、結局最後まで言えなかった。

結局、そういう事なんだろうな、と思う。

子供じゃあるまいし……とも思うが、それでも、そんな事はないと強く言い切ることは出来なかった。

 

「私は……千歳お姉が変な男に引っかかるのが心配なだけです」

「あら、提督はとても素敵な方だと思うけど?」

「う…………」

 

鳳翔の言葉に、千代田は黙り込んでしまう。

 

 

 

そう、そこが問題なのだ。

変な男に引っかかる方が、まだ良かった。

それこそ、荒療治に出てでも、千歳からそいつを引き離すことが出来た。相手が『嫌な奴』だったら。

 

だが、『あの人』は違う。

 

何となく、理解できてしまう。賛成できてしまう。―――お似合いだと、思えてしまう。

そう感じてしまえるほど、『神林貴仁』という男性は素敵な人だった。

 

彼は、優しい。彼は、強い。彼は、一緒に居ると、安心できるのだ。

 

以前、千代田を旗艦とした艦隊で、とある海域を攻略することになった。

出撃する前に、千代田は執務室で神林にこう言われた。

 

『艦隊編成の都合で、君以外の航空母艦を入れることが出来ない』

『要するに、今回の作戦に於ける我が艦隊の航空戦力は君頼み、という事になるわけだ』

『相手側にも、航空戦力はいるだろう』

『だから、君の力で艦隊の皆を護って欲しい』

『苦労だと思うが、頼む』

 

―――期待されているのが、頼りにされているのが、純粋に嬉しかった。

 

 

暫くして、千代田は『改ニ』への近代化改造を施すことになる。

『千代田航・改ニ』となった彼女に、滅多に見せないような穏やかな顔で、彼はこう言った。

 

『おめでとう、これで君は、名実ともに我が艦隊で最高峰の軽空母となった』

『今まで、本当に良くやってくれた。ありがとう』

『勿論、これからの活躍にも期待しているぞ?』

『改めて、よろしく頼む』

 

―――これまでの事を認めてくれたのが、これからも必要とされているのが、素直に嬉しかった。

 

誤解の無い様に言っておくが、千代田は神林に対して、特別な感情を抱いていない。

勿論、ある程度は彼に『好意』と言うか、『敬意』みたいなモノを感じてはいる。

だが精々『尊敬できる上官』程度のものだ。

神林に対して『恋慕』の情を抱けれるのかと問われれば、ハッキリ言って答えは『NO』だ。

 

だが、千歳は違うのだろう。

それこそ、彼と二人で過ごす時間が何より『特別』だと感じられる程に。

そこまで考えて、千代田は自分の目頭が熱くなるのを感じた。

 

『ダメな妹だな。私』

 

其処まで理解しておいて、今の状況を素直に喜べない。

大好きな姉の幸せを誰よりも願っているのに、幸せそうな姉を素直に祝えない。

自分以外の誰かが、千歳を幸せにしている事実を、面白くないと思ってしまっている。

 

でも、それでも―――

 

「私には……千歳お姉しかいないのに……!」

 

気付けば、千代田は大粒の涙をボロボロと流しながら、喉の奥から搾り出すような声でそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

「提督は、どうなんかな?」

「え?」

 

ふと聞こえた呟きに、千代田が顔を上げる。声の主は、龍驤だ。

 

「龍驤、それってどういう意味?」

 

伊勢の問いに、龍驤は彼女たちを見回しながら応える。

 

「千代田には、千歳がおる。山城には扶桑、伊勢には日向がおるやろ?」

「ウチの場合は……まぁ、姉妹艦はおらへんケド、千代田達の事は姉妹みたいに思っとるし、鳳翔さんにも良くしてもらってる。ウチにとって、頼りになる姉さんみたいなもんや」

「でも……じゃあ、神林提督には、誰がおるんやろな?」

 

龍驤の問いに、彼女達は考える。

 

「確か……提督には兄弟は居ないのよね」

「そうね、何時だったか、そんな事を言っていたわ」

「でも、流石に故郷には家族が居るんじゃない?」

 

神林の過去を知るものは少ない。だが、それでも『木の又から産まれてきた』なんてことは無いはずだ。

彼も人である以上、父や母は居るはずだ。それに、故郷だって。

 

「……提督に、家族はいないわ」

「…………え?」

 

龍驤の問いに答えたのは、鳳翔だった。

 

「いないって……鳳翔さん、どういう事なん?」

「いないというのは説明不足ね……。正確に言うと、『本人が覚えていない』……だそうよ」

「覚えて……いない?」

「えぇ、提督がそう仰っていたわ」

「そんな大事な事、こんな席で話していいの……?まぁ、聞いたのはこっちだけどさ」

「以前提督に聞いたとき、『別に隠しているわけじゃないから、聞かれたのであれば答えて構わない』とも仰っていたから……」

「……確かに、周りに言い回るモノでもないとは思いますけど……」

「ともかく、どういうことなん?」

 

コレはあくまで、提督が覚えている限りの事なのだけれど、と前置きして、鳳翔は続ける。

 

「彼の一番古い記憶は、瓦礫の山の真ん中で、たった一人で佇んでいる所だったらしいわ」

「瓦礫の……山?」

「大きな災害にでも……遭ったんやろか?」

「それすらも曖昧みたいだけれど……ともかく、彼は最初から独りだった」

「でも、それなら、『神林貴仁』って名前は?」

「そのあと『とある施設』に送られて、それからさらに彼の『育ての親』となった方に引き取られた……『神林貴仁』と言う名前は、その時頂いたものだって、仰っていたわ」

「そ、その『育ての親』は?」

「随分前に亡くなったそうよ。そもそも、提督とその方との関係は『育預(はぐくみ)』……相続権のない養子のようなものだったから、その方とは『家族』ですらなかったみたいね」

「そんな……!」

「ちょ、ちょっと待ってや!提督の前おった部隊は、壊滅しとんのやろ?」

「えぇ、そう聞いているわ。そして『神林』の姓を持っているのはあの方だけ。……提督は、ずっと……そうずっと……独りだった」

 

鳳翔の言葉に、千代田たちは絶句する。

 

自分がどこから来たのかも分からず、自分の『始まり』を知る者もいない。両親も、育ての親も、共に戦った戦友も。彼の前から居なくなった。

 

 

 

 

―――それは、想像を絶する『孤独』だ。

 

 

 

 

「そっか。そういう事だったんだ」

「……千代田?」

 

一人、納得がいったように頷く千代田を、龍驤が心配そうに伺う。

 

「分かったんだ。何で千歳お姉が、あの人に惹かれたのか」

 

 

そう、どうして姉が、あの人に惹かれたのか。

あの人も、『喪う痛みを知っている』……いや、『知りすぎた』人だったのだ。

 

あの人の側に居ると感じる気持ちは、無意識下でのある種の『シンパシー』だったのではないか。

 

自分達『艦娘』も、『喪った』者達だから。

何の事はない。彼も、自分達と『同類』だったから―――

 

「でも、それだけ……やないと思うで?」

「それだけじゃない、って?」

 

龍驤の言葉に、千代田は首を傾げる。

 

「その理屈やったら、千代田も山城も、提督にぞっこんな筈や。でも、違うやろ?」

「まぁ、確かにそうかもしれないけど……」

「恋に理屈を求めちゃダメよ、千代田」

 

煮え切らない顔の千代田に、鳳翔が優しく諭す。

 

「恋っていうのは、頭で考えてするモノじゃないの。心で感じてするモノなのよ?」

「心、で?」

 

鳳翔の言葉に、千代田は自身の胸に手を当てる。

 

「……そういうの、私には……まだ良く分からないです」

「私も、よく分からないわ」

 

そう溢す千代田と山城に、鳳翔が小さく笑う。

 

「ゆっくり育てていけばいいのよ。そういう気持ちをね。焦る必要はないわ」

 

そう諭す鳳翔に、千代田は問う。

 

「私達にも……出来るでしょうか?」

 

千代田の言葉に一瞬きょとんとした後、小さく笑いながら鳳翔は頷く。

 

「出来るわよ。貴女達はとても素敵だから。私が保証するわ」

 

そう言って、千代田と山城の頭をなでる鳳翔。その様子はまるで娘と母のようで。

 

「「お、お母さん……!」」

「いやだから、そこは『お姉さん』辺りで止めてくれないかしら」

 

思わずそう呟いた千代田と山城に苦笑する鳳翔。

 

「さて!湿っぽい話はコレ位にしようや。鳳翔さん、お代わりええかな?」

「そだね、飲もう!あ鳳翔さん、私もお代わりいい?」

「はいはい、ちょっと待ってて下さいね」

 

龍驤と伊勢の言葉を合図に、改めてグラスを掲げる。

 

「折角だし、何か乾杯しよか?」

「お、良いねえ。じゃ、山城、よろしく!」

「え!?わ、私なの!?」

「ん?出てこない?んじゃぁ千代田!」

「え!?あ、えっと……じゃ、じゃあ、『私達の未来の恋に……』」

 

「「「私達の未来の恋に!」」」

 

 

「「「「かんぱーい!!」」」」

 

 

かちゃん、と鳴るグラスの音。

時刻はフタヒトマルマル(21:00)、夜はまだまだこれからだ。

再び賑やかになる『小料理屋:鳳翔』

最早、先程までの沈んだ空気はどこにもない。

 

今日も今日とて、鎮守府は概ね穏やかであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、終れれば良かったのだが。

 

 

 

 

「そういえばさ、鳳翔さんは好きな人っているの?」

 

ぴくっ。

 

「え!?わ、私ですか!?」

「あ、そのリアクションは心当たりがあると見たで!」

 

ぴくぴくっ。

 

「鳳翔さんて、どんな人が好みなん?」

「え、そ、そうですね……凛々しくて、頼りがいがあってふとした時に優しい人、かしら」

「フムフム、凛々しくて、たまに優しい人……って、それって提督みたいじゃない?」

 

ぴくぴくぴくっ。

 

「え、いや、それは……その////」

「うっそ、鳳翔さんも『LOVE勢』だったの?」

「コレはまた、強力なライバル登場やなぁ千歳達……って、千代田?」

「そうだねぇ面白くなってきたねぇ……って、山城?」

「「…………」」

 

先程から二人が喋って居ないことに今更ながら気付く龍驤と伊勢。

 

 

……もしかして、私達、地雷踏んだ?

 

 

 

「「…………お」」

「お?」

 

 

 

 

「「お母さんの裏切り者ーーーーー!!」」

 

 

 

 

「えぇ!?」

「うん、その発想は正直なかったわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○翌日

 

「提督!貴方が『お義兄さん』になるなんて、絶対に認めないわよ!」

「そうよ!『お義父さん』だなんて、絶対に呼ばないんだから!」

「……いきなり何の話だ」

「ちょ、ちょっと山城、何を言ってるの!?」

「そ、そうよ千代田……私と提督はそんな……って、『お義父さん』?」

 

という会話が朝から執務室で響き、それを引き金に、

 

 

「成程、『義兄さん』……そういう考え方もあるのね。その辺どう思う長門?」

「えぇ!?いや、私はそんな、その、提督とそんな関係になりたい訳じゃ……///」

「いや、別に『誰と』なんて言ってないけど。っていうか、この期に及んでまだそんな事言ってるのね……」

 

 

「フム、提督のハートを掴めば、金剛姉妹にお兄さんが出来るわけですネー」

「……弟になるかもしれませんよ?」

「What!?は、榛名!?それどういう事デース!?」

 

 

「パパ、か……」

「そこまでよ!響!それ以上いけないわ!」

「そうよ、貴女が『そっち側』に行っちゃったら、いよいよ収拾がつかなくなるの!」

「み、皆さん、とにかく落ち着くのです!」

 

 

「……つまり、島風と提督が家族になれば万事解決ね!」

「「「いや、その理屈はおかしい」」」

「おぅっ!?」

 

 

 

と、こんな具合に鎮守府内部が荒れに荒れ、艦隊運営もままならなかったとの事。

 

 

今日も今日とて、鎮守府は概ね(?)穏やかであった。




……私は何を書きたいと思ってたんだろうか?
一応、千代田がメインになってますよね、ね?

因みに、某ハイパーさんとフフ怖さんの出番は意図的に減らしました。

モチベーションの上下が激しいくて、書くペースがぐちゃぐちゃです。
もうちょっと精神的にゆとりが出来ればいいのですが……難しいもんです。

さて次回なんですが、もう一話だけ閑話が続きます。お楽しみに。

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