鎮守府の日常   作:弥識

23 / 72
皆さんお久しぶりです。
……なんていうかね、三月めっちゃ忙しい。泣きたい。

今回から暫らく『本編を進める』と言うか、『状況を少し動かし』ます。
『基本ほのぼの』が本作のスタンスですが、シリアスが多めになるかもです。
では、どうぞ。


嵐、来りて

―――あの時の自分は、『空っぽ』だったと思う。

 

仲間を失い、敵を失い、家族……は随分前に失っていたか。

『戦う事が自分の全て』だと思っていた。

それが生きる理由だった。

それすら見失ったとき、最早何もかもがどうでも良くなっていた。

 

 

誰も居ない僻地で世捨て人の様な余生を送ろうと思っていた。

それが、『取り遺された者』に相応しい最後だと感じていた。

そんな時、まるで嵐のように、『あいつ』はやって来た。

 

 

 

 

『やぁ、君が【伝説の死神】君かな?』

……だったら、どうした?

『いや、随分と【空っぽ】な神様だと思ってさ。死の神って言うより、死んだ神って感じだよね』

……それで、その【死んだ神】に何の用だ。

『まぁまぁ、とりあえず堅い話は置いといてさ、折角だから名前を教えてよ、【死神】君?』

……神林だ。神林貴仁(かんばやし たかひと)。

『貴仁か……じゃぁタカ君だね!』

……なんだそれは?

『アレ、【たっくん】の方が良かった?』

……なんでも良い。もう一度聞く。俺に何の用だ。

『もうちょっとお話しても良かったんだけど……まぁいいか』

『いやさ、君にもう一度【表舞台】に立ってもらおうと思ってね』

……何だと?

『あ、しまった、自己紹介がまだだったよね。私の名前は【――ぉく?】』

……ん?

 

 

―――いとく、ていとく。

 

 

 

 

「提督!」

「!」

「提督、艦隊が帰投しました」

「あぁ、そうか。分かった、直ぐに行く」

 

秘書艦である扶桑の声で目が覚める。まわりを見回せば、そこは鎮守府の休憩室だ。

軽く仮眠を取る心算が、どうやら随分と寝入ってしまったらしい。

 

「大丈夫ですか?随分とお疲れのようですが……」

「いや、問題ない」

 

心配そうな扶桑に、軽く手を振って応える。

 

神林の様に日頃から鍛えている人間なら、数十分も寝れば疲労は十分に取れるものだ。

勿論完全に回復するわけではないので疲労は蓄積されていく。

それでも、一日に一時間も寝る事が出来れば、一週間は問題なく戦えた。

むしろ戦場において『一日六時間以上寝ないと満足に戦えない』では話にならないのだ。

 

 

『それにしても、また随分と懐かしい事を思い出したもんだ』

どうやら、まだ夢の残滓が残っているらしい。

これも、近いうちに『あいつ』が来るからだろうか。

何というか、面白くない話である。

 

「……提督?」

「さて、艦隊が戻ったんだったな。行こう、下手に待たせて拗ねられても困る」

「……了解しました」

 

扶桑の問い掛ける様な視線に、意図的に話題を逸らす。

 

 

扶桑は何時に無く物思いに耽る神林を訝しく思ったが、残念ながら彼女には人の心を読む力は無い。

やはり自分達は彼のことを良く知らないのだなと改めて思う。立っている位置が、近いようで遠かった。

その事に歯痒さを憶えるも、其処に踏み込むようなある種の『大胆さ』を彼女は持ってはいなかった。

 

 

「HEY!提督ぅー。戦果Resultがあがったヨー!」

 

執務室に戻ると、第二艦隊旗艦の金剛が待ち構えていた。

 

「もー、待ちくたびれたよ。一体何処行ってたのさー」

「珍しいですね、執務室に居ないなんて」

 

横から掛けられた声に目を向けると、ソファに北上と青葉、それに響がいた。皆、艦隊のメンバーだ。

 

「あぁ、ちょっと休憩室にな」

「……司令官、もしかして疲れてるのかい?」

 

神林の言葉に、響が眉を顰める。金剛や青葉達も似たような表情だ。

 

「いや、最近大きな作戦が無いからな。少し気が緩んでるのかもしれん」

 

心配そうな彼女達に、苦笑しながら応える。

大規模な進攻作戦が終了して早数ヶ月。現在は特に大きな作戦も無い。

着任当初こそ日々の仕事に忙殺されていたが、流石に年単位で同じ事を続けていれば、自然と慣れてくるものだ。

それに、最近は優秀な秘書艦がある程度の事をやってくれる為、彼の負担はかなり軽減されている。

 

「まぁ、確かに『充電期間』って感じはありますよね」

 

神林の言葉に、青葉も同意する。

『常在戦場』の精神も大事だが、だからと言って常に気を張りすぎていても、いずれ神経が擦り切れてしまう。

ある程度は心のゆとりを持つことも大切だ。

 

その後、彼女達と出撃の報告を交えた雑談をしていると、執務室の扉がノックされた。

 

『提督、いるか?』

「長門か、どうした?」

 

ドアの向こうから聞こえてきた声は長門のものだった。

神林の許可を得た長門が中に入ってくる。

 

「提督に手紙が届いてたぞ。速達も混じっていたから、直ぐに渡した方が良いと思ってな」

 

そう言って、長門がソファの近くを通った時、北上が何かに気付く。

 

「アレ、長門……もしかして香水つけてる?珍しいね」

「そういえば、何か甘い香りが……」

 

北上の指摘に、青葉も頷く。

 

 

 

他の艦隊ではどうなのかは知らないが、神林艦隊に置ける艦娘達の風紀は、割と緩い。

化粧をしている艦娘もいるし、鎮守府近郊には『そういった物』を扱っている店も多い。

 

深海棲艦と日々戦っているので忘れがちだが、彼女たちは艦『娘』……つまり、年頃の少女達な訳で。

一度出撃してしまえば、潮の香りだけではなく、油や硝煙で『それどころ』ではなくなってしまう。

それならせめて、鎮守府に居るときぐらい…と思っている艦娘も多い。

 

ある意味艦隊の士気に関わってくるこの問題に対し、神林は『その辺りはまぁ良識の範囲内で』というスタンスをとった。

神林本人としてはも、それで艦隊の士気が上がるのであれば問題ないだろうと思っていた。

(※尤も、純粋にそう言うことに頓着が無いので、秘書艦に丸投げしただけなのだが)

 

 

閑話休題。

 

 

 

そんなわけで、香水等を嗜む艦娘も居るのだが、これまでに長門がそのような物をつけている事が無かったので、北上は意外に思ったのだ。

 

「ん?あぁ、コレは私ではないぞ。どうも手紙の中に、香水を振り掛けたものが在るみたいだな」

「なんだ、そう言うことか」

 

長門が手紙の束を示しながら応えると、北上が納得したように頷く。

 

「手紙に香水……なんだか恋文みたいですねぇ」

「「「「………はい?」」」」

 

と、青葉が何気無く呟いた途端、そこに居た青葉以外の艦娘達の動きが『びきり』と止まる。

若干空気が冷たくなったのは気のせいだと信じたい。

 

「……そう言うものなのか?」

「え、や、いや、何となく思っただけですよ?」

 

抑揚の無い声で問う長門に対し、青葉はしどろもどろに答える。

一方、扶桑・金剛・北上・響は表情筋を固定したまま、思考を高速回転させる。

 

恋文。ラブレター。内容はまぁ『そう言うこと』だろう。……誰宛?

鎮守府に届く郵便物は、長門の持つ束のように宛名ごとに纏められている。つまり、誰宛なのかは一目瞭然。

そして、彼女達は一つの疑問にたどり着く。

 

 

 

―――さて、『誰から』の手紙なのかしら。

 

 

 

 

「モー!『Love letterは許さない』って言ったのにぃ!提督ぅ、一体どう言う事デー……って、提督?」

 

いち早く立ち直った金剛が机をバンバンと叩きながら神林に詰め寄るが、彼の『顔』を見て喉まで出かかった言葉を飲み込む。何故なら、

 

 

 

―――神林の顔から、一切の感情が消えていたからだ。

 

 

 

「え、えっと……提督?」

「…………」

 

尋常ではない神林の様子に、北上が恐る恐る尋ねるが、反応は無い。

そういえば、香水のくだりから彼が一言も言葉を発していないことに、今更ながら気が付いた。

 

「あの……提督?」

 

扶桑も声を掛けるが、神林は全くと言って良いほど反応を示さない。

今、彼の耳にはすべての音が入っていなかった。

 

 

 

『……どういう事だ?』

 

 

周りの困惑を一切無視し、神林は頭を回転させる。

 

『嗅覚』というのは、『記憶』と密接な関わりがあるんだそうだ。

とある臭いを嗅ぐことで、それに連想した事柄を思い出す。

今の神林の状態が、まさしくそれだった。

 

―――俺は、この『香り』を知っている。

 

 

 

先程、彼女たちはコレを『香水』と言っていたが、正確には『お香』である。

確か、香炉の上に手紙を置くことにより、仄かに香る様にする……そんな手法だった気がする。

だが何故、この『香り』のついた手紙が自分の下に届くのか?

 

自分はこの『香り』を知っている。

より正確に言えば、『この香りを好んでいた者』を知っている。

その人物と会う度に、この香りを感じたものだ。

 

しかし、なぜ…………?

 

―――――『彼女』から手紙が届くことなど、もう在り得ないというのに。

 

『彼女』ではない……それは間違いない。では、誰だ。

 

そして一人の人物にたどり着く。

確かに、『あいつ』なら『彼女』の好きだった『香り』を知っているだろう。

だが、だからこそ分からない。一体―――

 

 

「……どういうつもりだ」

「……!?」

 

空気が凍るかと思うほど硬質な声が、神林の口から洩れる。

不幸にも、丁度彼の前に居た金剛はその空気に完全に呑まれ、軽く涙目である。

 

「ちょ、提督?」

「ど、どうしたんですか?」

 

神林が纏う空気に、扶桑達も戸惑いを隠せない。

 

「……長門」

「っ!……何だ?」

 

急に矛先を向けられた長門が無意識に直立不動の態勢をとる。

それでもパニックにならなかったのは、彼の側に居た期間が長いからか。

 

「……手紙を」

「あ、あぁ……これだ」

「ありがとう」

 

長門から手紙を受け取り、素早く検分する。

幾つか重要そうな書簡もあったが、今は取り敢えず無視する。

そして程なくして、目当ての手紙は見つかった。

 

「それが例の手紙かい?でも、それって……」

「……鎮守府から届く、親書ですよね?コレは……横須賀からですか?」

 

封筒からは先程の『香り』が確かに漂よっているが、間違いなく『横須賀』の判が押されている。

つまり、送り主は横須賀鎮守府に所属している『誰か』。

しかし神林の交友関係に明るくない(大半の原因は彼が話していないからだが)艦娘たちは、それが誰なのか分からない。

 

対する神林は、送り主の見当がついているのか、そのまま封を開く。

 

「あの…席を外した方がよろしいですか?」

 

手紙の内容だけに、扶桑が気を使って席を立とうとするが、神林が制止した。

 

「お前たちはここに居ても構わない…というか、この手紙は恋文じゃないぞ」

「え、でも、青葉が…」

「ちょ、青葉のせいですか!?」

 

響の言葉に、青葉が慌てる。

確かに、青葉は『まるで恋文みたい』とは言った。

だが、実際にそれが『恋文』だとは誰も言っていないのだ。

 

「なんだ、青葉の勘違いか……」

「えぇ…青葉のせいじゃないのにぃ…」

 

北上の言い様に、涙目で抗議する青葉。

金剛や扶桑達も、神林の言葉にどこか安心したような顔をしている。

 

そんな艦娘達を横目に見つつ、神林は手紙に目を向けた。

 

 

 

 

―――拝啓

 

愛しの艦娘達が敵艦共を千切っては投げ千切っては投げする所を見て『あらあらうふふ』と笑う今日この頃。お元気ですか?

 

提督の仕事には慣れましたか?ちゃんと、秘書艦のおっぱい揉んだりしてますか?私はしてます。

因みに、私ははどちらかと言うと小さいほうが好みで、いや、別に私の胸がアレだから親近感が沸くとかそう言う訳でなく―――

 

 

 

 

一先ず文面から目を離す。

眉間を抑え、小さくため息をついた。

 

「……提督?どうかしましたか?」

「いや……なんでもない」

 

顔を上げた先で、なんとなく目が合った扶桑に訝しがられるがごまかす。

 

……まさか、最初の一文で手紙を破り捨てたくなるとは思わなかった。

いや、きっと、此処から大切な話になるのだ。多分。きっと。むしろそうでなかったらこの場で燃やす。

 

 

 

 

 

―――さて、舞鶴の古賀さん辺りからもう聞いているかもしれませんが、査察についてです。

日程が、来る○月×日の木曜日~に決まりましたので、予定の調整をお願いします。

貴方に逢えるのを楽しみにしています。それでは、舞鶴で。 敬具

 

 

追伸:この手紙は○○分後に消滅する様な事はありませんから、大事にしまっておくように。何なら家宝にしても良いのよ?

 

 

 

 

 

何というか、半分以上要らない内容なんじゃないだろうか。

というか、『ちゃんと』ってなんだ『ちゃんと』って。提督の仕事みたいに言うな。

 

心の底から破り捨てたいと思ったが、追伸で書いてくるぐらいだから取っておかないと絶対に面倒な事になる、気がする。

いや、取っておいても面倒な気もするが、そっちの方がまだマシ、と思う事にしよう。

 

さて、査察の日程が○月×日の木曜……ん?

 

「扶桑?」

「は、はい、何でしょう?」

 

優秀な秘書艦に問いかける。

何だろう。現在進行形で、面倒な事になっている気がするのだ。

 

「今日は、何日だったかな?」

「今日……ですか?○月×日ですが」

「……木曜日か?」

「えぇ、そうですね。……あの、どうかされましたか?」

 

改めて、手紙の消印を見る。

押されているのは数日前の日付。『まぁ、この日付に出したのなら今日届くだろうな』という日数である。

つまり、何が言いたいのかと言うと。

 

 

 

「―――確信犯かあの野郎」

「え、や、あの、提督?」

 

いよいよ様子のおかしい彼の挙動に、周りは狼狽える事しかできない。

そんな彼女達の動揺には目も繰れず、神林は立ち上がった。

 

 

時計を見る。時刻は昼前。良し、まだ時間はあるはずだ。

急いで準備をしなくては。

 

 

「あ、あの、提督、突然何を?」

 

扶桑の問いを無視し、執務室の棚を開ける。

其処には神林の私物が入っていた。

 

「…………」

 

腕を捲り、其処にあるモノを装着し、隣の箱に入っているモノを『装填』していく。

 

「えっと、提督、それは……ナイフ、ですよね?」

「……そうだが。スマン、今ちょっと準備に忙しい」

 

青葉の問いに、手元から目を離さずに応える。

 

神林が今装着しているのは『装填式』の『スローイングナイフ』だ。

『以前居た処』でも愛用していた特製品で、軽く手首を曲げると『次のナイフ』が手元に出て来るようになっている。

 

「じゅ、準備ッテ!?」

「あ、明らかに戦闘準備じゃないか!?」

「え、もしかしてさっきの手紙って『敵襲の予告状』だったりしたの!?」

「……司令官、響達も準備した方がいいかい?」

「こんな状況でもブレないですね響さん!青葉ビックリです…って、そうじゃなくて!」

 

最早訳の分からない神林の行動に、艦娘達が詰め寄る。

そんな彼女達の視線を背に、それでも手元から目を離さずに、神林は告げる。

 

「いや、お前達はそのままで構わない。……と言うか、『あいつ』の相手はお前達では無理だ」

 

神林の言葉に、彼女達は絶句する。

 

―――え、なに?

―――艦娘が相手にならない?

―――そんな存在が舞鶴に?

―――なにそれ怖い。

 

 

彼女達の混乱がピークに達したその時である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、司令官さん!大変なのです!島風さんが!!」

 

 

執務室に、相当焦った顔の電が飛び込んできた。

 

 

 

「……くそ、遅かったか」

 

その様子にすべてを察した神林が、力なく呟いた。

 

 

 

 

 

皆さん、こんにちわ。私、島風と言います。

舞鶴鎮守府の『神林艦隊』に所属しています。

足の速さには自信があります。『速きこと、島風の如し』とはよく言ったもので。

さて、そんな私なんですが―――

 

 

「もーーー!やーめーてーよー!!!」

「ふひひ、愛いのう、愛いのう!ココか?ココがええのんか!?」

 

 

―――現在、変態女に捕まっています。

 

 

「ひゃう!ちょ、貴女ドコさわって……」

「ん~?ドコって……言っちゃっていいのかな?」

「え、な、それは……うぅ……」

「ふふふ、耳まで真っ赤なその恥ずかしがってる貴方の顔……素敵よ?」

「こ、この私が逃げられないなんてぇ……」

「この『触って下さい』と言わんばかりの腰から脚にかけての滑らかなライン、申し訳程度に秘められた鼠蹊部……たまりませんな!」

「ちょ、ちょっとそこは……!だ、誰か……」

「そしてこの初々しい反応……まったく、駆逐艦は最高だz『そこまでだこの変態女』ってあっぶね!!」

 

 

島風がいよいよ『貞操の危機』を感じ始めたその時。総てを凍りつかせるような声が響いた。

 

次の瞬間、hshsと下卑た顔で島風の匂いを嗅いでいた変態が勢いよく顔を逸らし、数瞬前まで顔があった空間をナイフが通り過ぎる。

 

声の出所に島風が目を向けると、彼女が今一番逢いたかった人物が目に入る。

 

「提督!!」

 

そう、他でもない神林提督である。丁度何かを投げたような体勢をしている所から、恐らくナイフを投げたのも彼なのだろう。

 

「大丈夫か?島風」

「もう提督、おっそーい!」

 

咄嗟の回避で体勢が崩れた変態の魔の手を振り切り、そのまま脱兎のごとく神林の後ろに回り込んだ。

 

「あらら、もう時間切れか」

「相変わらず手癖の悪い奴だな」

「提督、何なのコイツ!」

 

神林の背中越しに、警戒心に満ちた視線を向ける島風。

対する『彼女』は涼しい顔だ。……慣れているのか?それはそれでどうかと思うが。

 

「提督、此処に居たのか!?」

「もー、いきなり執務室飛び出してどうしのさ…って、誰?そいつ」

 

暫くして、執務室を飛び出した神林を追って、艦娘達が合流する。

自然、目の前の『闖入者』に視線が集まるが、当の『彼女』は何処かそれを楽しんでさえ見える。

 

「あ、自己紹介がまだだったね、私の名前は―――」

 

『何処かで聞いたような台詞だな』と思い、『あぁ、そういえばその時の夢を見たんだった』と思い出す。

思えば、あの時からコイツとの関係が始まったのだ。そう、まるで―――

 

 

「私の名前は『宮林冴香(みやばやし さえか)』、タカ君の『【元】婚約者』だよ!よっろしくぅ!」

 

そう言って、『バチコーン☆』と擬音が聞こえてきそうな横チェキをかます黒髪の残念美女。

 

「「「「「「……はい?」」」」」」

 

とうとう思考の許容範囲を超えてしまった艦娘達は、要領の得ない呟きを呟いた後、

 

「「「「「「……提督(司令官)?どういう事(ですか)(だ)(デース)(です)(なの)(だい)?」」」」」」

 

そのままぐるり、と顔だけを神林に向けて問う。何というか、ちょっとした衝撃映像だ。

 

「……取り敢えず、ちゃんと説明するから落ち着け」

 

対する神林は本日何度目かの頭痛に眉間を押さえつつ応える。

ふと冴香を見ると、物凄く面白そうなものを見る目をしていた。

 

『ふふふ、随分慕われてるみたいじゃん?』

『……やっぱり確信犯かこの野郎』

 

そんなアイコンタクトを彼女と交わすと、それすら面白くなさそうな顔をしている者が何名か。

 

『古賀さん、やはり俺の予感は良く当たるみたいです』

 

何時ぞやに交わした古賀との会話を思い出す。そう、コイツはまるで嵐のようにやってきて―――

 

 

 

―――何時も決まって『厄介事』を持ってくる。

 

そんな事を考えながら、ため息を一つ。

全く、今日だけで後何回つく事になるのやら。

 

この後に来るであろう『厄介事』を思い、軽く現実逃避をする神林だった。




いやはや、更新が随分遅れてしまいました。
何というか、『作品執筆における中だるみ』とでも言うんでしょうか、文章が全くまとまらず。
読み返してみて、色々修正したくなるんだろうなぁ(;ω;)

さて、某へんtじゃなかった女性提督の設定をちょっと盛りました。
詳しいことは次回以降で。
また、番外編もしくは活動報告で、主人公を始めとしたオリキャラの紹介をする予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。