今回も真面目半分、ほのぼの半分です。
予告していた提督無双はもうちょっと先かな?では、どうぞ。
「さて、作戦完了で艦隊帰投……っと。お前等、お疲れさん」
「お疲れ様、天龍ちゃん。貴方達もお疲れ様」
「はい、天龍さん達もお疲れ様です」
此処は舞鶴鎮守府。つい先程遠征任務を終え、帰還したのは軽巡『天龍』率いる水雷船隊だ。
因みに、旗艦は天龍、随伴艦は姉妹艦の『龍田』に白露型駆逐艦の『白露』『時雨』『村雨』『夕立』である。
「作戦報告書は俺から提督に出しておく。お前等は先に補給にいってな」
「私も一緒に行こうか?」
「報告書出すだけだから問題ねぇよ。悪いが、先にこいつ等連れて補給に行っててくれ」
「了解、天龍ちゃん」
「分かりました。それでは、お先に失礼します」
龍田に倣い、そういって頭を下げたのは、一番艦の『白露』だ。やはりネームシップだからか、皆のまとめ役らしい。続けて他の面々も挨拶をする。
ついでに幾つかの連絡をした後、龍田が駆逐艦達を引き連れて補給に向かうのを目で追いつつ、天龍は提督執務室に向かうことにした。
「最近遠征ばっかりだよなー。あー、前線行きてぇ…」
手を頭の後ろで組みつつ、一人呟く。歩くたびに腰に挿した自慢の愛剣が音を立てる。
思えば、コイツを使ったのも随分前だ。
つい最近まで、天龍が所属する艦隊は南西諸島『沖ノ島海域』を攻略していた。
戦艦や正規空母を中心とした艦隊編成で挑んでいた為、軽巡である天龍にはほぼ出番がなかったが、まぁ仕方がない。
そして多大なる労力と時間を費やしながらも、先日ついに海域を攻略する事に成功した。
一隻も沈むことなく攻略に成功したものの、やはり多くの大破・中破艦を出してしまった。
結果多くの資源も費やす事となり、現在は遠征を中心に資材の回復に努めている。
今日も今日とて、天龍をはじめとした軽巡艦娘達が交代で旗艦となって、遠征任務を行っていた。
「もう直ぐだと思うんだけどな……」
そう呟きながら、以前提督に言われた言葉を思い出す。
『詳しい時期はまだ不明だが、この先、必ずお前達軽巡の力を借りる事になる』
確か、南西諸島の攻略がある程度進み、沖ノ島に手を付けるか付けないか…といった辺りの頃だ。
諸々の事情で入渠(及び謹慎)していた天龍の様子を見に来た提督が、そんな事を言っていたのだ。
「アイツが意味もなく先のことを言うとは思えねぇからな」
そう、彼の艦隊運用は、常に先を見据えて行われている。
一体何手先の未来を見ているのか、直情タイプの天龍には想像も出来ない。
ともかく、彼がそう言うのなら、自分は力を蓄えつつ『その時』を待てば良い。
特に大きな疑問や不満を抱かず、素直にそう思える程度には彼を信頼していた。
実は最近、新人の駆逐艦娘を育てるのもちょっと楽しくなってきたのだ。
出来ない事が出来た時の『天龍さん、ありがとうございます!』って言葉が胸にグッと来る。
因みにそれを妹の『龍田』に話したら、『いよいよ先生みたいになってきたわね~』と言われた。だからせめて『教官』と言えと。
まぁ、駆逐艦娘は割と幼い容姿の奴らが多いし、傍から見たらそう見えなくも…ないのか?
もう少し厳しくして威厳を…いや、それで泣かれたりしても地味に傷付くし…主に俺の心が。
そんな事を真面目に考える『天龍先生』であった。
「提督ー、遠征終わったぜ…って、扶桑、提督は?」
執務室に顔を出したものの、そこに居たのは先日入渠が終わったばかりの秘書艦『扶桑』だけだった。
「お疲れ様天龍。提督なら今は会議中よ」
この艦隊を率いている神林提督は、現在『沖ノ島海域攻略成功』の報告及び『次の作戦海域の確認』の為会議中だ。
「何だ、いねぇのか。どうすっかな…」
「まだ暫らく掛かると思うけど…ここで待つ?」
扶桑の問いに「ふむ…」と天龍は考える。
ここで待っていても良いが、自分はまだ補給すら終えていない。そして提督が帰ってくるにはまだ時間が掛かる。
そして彼女は性格上、『一箇所で大人しく待ってる』という行動が苦手。となると行動は一つ。
「いや、補給もまだ終わってねぇし、また来るわ。補給終わった後に探しても良いしな」
「了解。お疲れ様」
その後、扶桑と二言三言交わした後、天龍は補給に向かうことにした。
会議を終えた神林提督は、手元のファイルに改めて目を通しつつ自身の執務室に向かっていた。
ファイルには次に攻略予定の『西方海域』の情報が記されている。
そして西方攻略作戦の第一弾として、『ジャム島海域』の攻略作戦が指示されているのだが、作戦内容に大きく『対潜警戒を厳とせよ』とあった。
『やはり潜水艦が出てきたか……』
『南西諸島』までの海域に出現した事はなかったが、深海棲艦の中にも『艦種:潜水艦』が居る、という噂は以前からあった。
つまり、この海域では潜水艦対策を主体とした艦隊編成が必要になるのだろう。
火力と耐久力だけ考えればよかった『沖ノ島』とは勝手が違う。というか、戦艦や正規空母は潜水艦対策がほぼ無いのだ。
さて、現在『対潜水艦』に有効とされている艦種は『駆逐艦』と『軽巡』とされている。性能も考えて、軸になるのは『軽巡』か。
『軽空母』も潜水艦に攻撃可能だが、やはり主軸は『軽巡』と考えて良いだろう。
かといって、単純に軽巡を六隻組ませて向かわせれば良い、という訳にはいかない。敵が潜水艦だけとは限らないからだ。
極端な話、敵艦隊に『正規空母』や『戦艦』が一隻いるだけで最悪こちらの艦隊が壊滅する。軽巡だけでは制空権を取れないし、戦艦を沈めるのも一苦労だ。
従って、高速艦のみの編成で機動・回避力を維持しつつ、軽巡だけでは対応しきれない敵がいた場合も想定した艦隊編成をとるべきだろう。
そうなってくると、高速戦艦である『金剛型』や重巡、軽空母も編成の視野に入れたい。
重巡は『高雄型』や『青葉型』が育ってきているので問題ない。
軽空母は先日『龍驤』が近代化改造を終え、『千歳型』の千代田も軽空母に改造してある。恐らく大丈夫だろう。
旗艦は金剛か霧島辺りに任せれば問題ないとして、肝心なのは軽巡の選抜だ。
我が艦隊も順調に艦娘を増やし、層そのものは厚くなってきているが、性能・経験共に豊富な軽巡はそう居ない。
ウチでその条件に該当するのは『長良型の五十鈴』に『球磨型の北上』、あぁそれと―――
「お、いたいた。おーい、提督ー!」
後から聞こえてきた声に思考を中断して目を向ける。
「噂をすれば何とやら……か」
「は?何の話だ?」
「独り言だ、気にするな」
小走りで近づいてきた天龍を見て呟く。事情を知らない天龍は首を傾げていたが、深く追求する気はないらしい。
「まぁいいや。ホラ、作戦終了で艦隊帰投だ」
「あぁ、ご苦労だったな」
天龍が差し出した遠征任務の報告書を受け取り目を通す。流石に慣れたもので、そこには『任務成功』と記されていた。
「流石だな。白露型の調子はどうだ?」
「まぁ、問題ねぇんじゃねぇか?もうちょっと経験を積めば、鎮守府海域位ならあいつ等だけで問題なく廻れるぜ」
「それは重畳。頼もしい限りだ」
天龍の評価を聞きつつ今後の運用を考える。
「でも、アンタの目指すものはもっと先にあるんだろ?」
「……行く行くはな」
そういって、自身の持っていた資料を手渡す。一応機密文書だが、以前扶桑にも見せているし、まぁ問題ないだろう。
「何々……『駆逐艦のみの高速艦隊でキス島に突入』?オイオイ、ちょっと荷が重すぎやしねぇか?」
天龍に渡したのは『北方海域:キス島撤退作戦』の資料だ。
彼女の言う通り、駆逐艦のみの編成でキス島に残された守備隊を収容、海域から離脱する撤退戦だ。
「お前達軽巡を混ぜれたらまた違うんだろうが……」
「例えそうだったとしても、正直キツイぜ。こりゃ……」
資料を見つつ天龍が唸る。
此方が駆逐艦しか出せれないといって、向こうもそれに併せてくれるとは限らない。
軽巡、重巡位ならまだしも、正規空母や戦艦が出てきたら目も当てられない。
「兎に角、陣形と足の速さで被弾を抑えつつ、夜戦で戦略的勝利をもぎ取る……が目標だな」
「まぁ、それしかねぇな。だが今のあいつ等じゃ……」
「正直無理だろうな。だからお前達の育成がカギになってくる」
「任せとけ。キッチリ仕上げてやるよ。……まぁそれは良いんだが」
「何か要望でも?」
何処となくソワソワしている天龍に尋ねる。コレは……何と言うか、『散歩を待ちわびる犬』の様な―――
「―――何か失礼な事考えてねぇか?」
「気のせいだ」
だから腰に下げた剣の柄に伸びた手を下ろしなさい。
「まぁ良いや。分かんだろ?実戦だよ、実戦」
「それは戦線に出たいという意味と思って良いな?」
「勿論だ。最近遠征ばっかじゃねぇか。溜まってんだよ。色々」
鞘をカチャカチャと鳴らしながらそう愚痴る天竜に苦笑する。
我が艦隊の中でも、彼女はかなり好戦的な部類に入る。
以前『色々』と揉めて、暫らくは大人しくしてくれていたが、それでも随分我慢していたのだろう。
「アンタが『あの時』言ってた言葉…信じて良いんだろ?」
「あぁ、随分待たせてしまったな」
そういって、もう一つのファイルを渡す。
「んー?……こりゃ……良いな。笑いが止まらねぇ」
不満そうにしていた天龍の顔が、好戦的な笑みに変わる。
其処に記載されていたのは勿論『ジャム島攻略戦』の資料である。
「勿論俺は攻略隊に入ってるんだよな?」
「あぁ、そのつもりだ。少なくとも部隊の半分……三隻は軽巡に入ってもらう」
「良いねぇ、こういうのを待ってたんだよ」
「兎に角今は敵潜水艦の情報が欲しい。準備が出来次第、お前達には『威力捜索』に出てもらう事になる」
威力捜索とは、敵勢力と実際に砲火を交え、相手の強さを実際に推し量る索敵行為だ。
つまり、『最低限手におえる』強さの相手をぶつける必要がある。
その場合、『戦闘慣れ』し尚且つ『好戦的』な天龍は正に適役と言えた。
「……たまんねぇな。早くぶっ放してぇ」
「……あくまで最初は索敵だからな?」
「分かってるよ、龍田との約束もあるし、無理はしねぇ。でも別に俺達で倒しちまっても構わねぇんだろう?」
何故だろう。少々心配になってきた。
「まぁ無理をしないというのであれば―――」
「これはこれは、神林貴仁少佐じゃないか。……いや、今は中佐だったか?」
「……あぁ?」
構わない、と言おうとした所を男の軽薄な声で遮られる。声のした方向へ意識を向ける天龍は既に喧嘩腰だ。
「これはこれは……えっと、中…村だったかな?いや、中島だったか…中西?」
声の主を認識しつつ、顔と名前が一致しない神林は小声で呟きながら記憶を探る。
確か『中』から始まる名前だった筈だ、…多分。
「もう中ナントカでいいんじゃねぇか?」
首を捻る神林に対し、呆れたように応える天龍。先程、喧嘩腰になった自分が馬鹿馬鹿しく思えてくる。
何で艦娘の名前は直ぐに憶える癖に、同僚の名前は駄目なんだろうな?
あ、興味がないからか。納得。
「そうだな。で、何の用かな?中ナントカ少佐」
「猿渡だ!猿渡!!誰だ中ナントカって!!それと私の階級は中佐だ!貴様より前に私は中佐になっている!」
顔を真っ赤にして怒る男。正解は『猿渡 武士(さるわたり たけし)』でした。残念。
「それは失礼した。で、何の用だ?猿渡中佐」
「……アンタ絶対悪いと思ってねぇだろ」
「馬鹿を言うな。きちんと謝罪しているだろう?」
「言葉だけの謝罪で問題ねぇなら世の中もうちょっと平和さ」
「そうか……全く、悲しい世の中だ」
神林の発言に呆れつつ天龍がぼやく。因みに猿渡提督は完全に蚊帳の外だが、天龍が気にすることではない。
「ふん、貴様が漸く沖の島を突破したと聞いてね。……しかし、有能な割には随分と手間取ったじゃないか?」
「それはどうも。私としては、大して有能であるという自覚はなくてね。相応だったのだろう」
「以前バシー島とオリョール海での評価を聞いたが?」
「あれは偶々運が良かっただけだ。それ程珍しい事じゃない。それはそうと……」
「何だ?」
「いや、『私より先に中佐になっている』といっていたから、もうそろそろ大佐になっていると思ったのだが……まぁ君は優秀だからな。直になれるさ、きっと」
『……おい、コイツの事知ってんのか?』
『いや、知らん』
『だと思ったよ……』
小声で訊ねてくる天龍にそう返す神林。
そもそも顔と名前が一致しないのに、そのような評価が出来る筈もない。
「は、貴様に言われるまでもない。その内大佐になってやるさ」
だが此方の会話など意に介せずそう応える猿渡提督。どうやら意図的な諧謔を理解する能力が低いらしい。
「しかし、相変わらず弱気な艦隊運用をしているようだな。聞いた話じゃ、『小破』でも撤退するとか?」
「…………」
またか、と天龍は思う。気付けば自身の拳を強く握り締めていた。
猿渡の言葉、そしてその顔には間違いなく『嘲り』が混じっている。恐らく、今回の来訪もそれが主目的なのだろう。
天龍の瞳に怒りの火が灯るが、しかし神林は慣れたもので、肩を竦めて応える。
「損の多い戦いは嫌いでね。それに大事な艦娘を失いたくない」
神林の言葉に、天龍の怒りが少し冷え、代わりに何だかむず痒い感情が湧いてくる。
相変わらず現金な、と自分でも思うが、仕方ない。自分を大切に想われて、不快に思う奴などいないからだ。
しかし猿渡は一層嘲笑の色を濃くした顔で続ける。
「相変わらずの腰抜けか。『屍を踏み越えて進む意思』を持たぬ癖に、良く将校など出来るものだ」
―――何だとこの野郎。
一瞬で沸点に達した天龍が前に出ようとするが、神林に制される。
「何だよ」と不満げに神林の顔を見上げるが、その目を見た途端に我に返る。
彼の瞳には、何時か見た『絶対零度の激情』が宿っていた。
「……『意思』ならあるさ」
「な、何だと?」
神林の視線に猿渡が怯むが、神林は目線を逸らす事なく続ける。
「私は将校だ。臨んでこの戦場に立っている。……それしか能がないからな」
「提督……?」
天龍の声は意図的に無視した。
「任務は必ず遂行する。敵兵だろうが深海棲艦だろうが、『任務』であれば何だって斃す。それが私の『意思』だ」
『勿論、貴様も例外ではない』とは言わないでおいた。言う価値もない。
「犠牲を強いる事もあるだろう……だが、この程度の任務、犠牲を強いるまでもない……それだけだ」
「……口では何とでも言える」
完全に神林の気迫に呑まれているが、それでもプライドがあるのか、何とか返した。
尤も、神林が口だけではなく『結果』を残している以上、負け惜しみでしかないのだが。
流石に分が悪いと思ったのか、猿渡がその場を去ろうとする。
最後に捨て台詞を吐こうと思ったのか、天龍を見つつ呟く。
―――それが特大の地雷だと気付かずに。
「大変だなぁ、こんな腰抜けの艦隊にいるなんて。何なら此方に来るか?丁度遠征に使える奴が欲しかったんだ」
そう言って天龍に手を伸ばそうとするが―――
バシッッ!!
「汚ぇ手で触んじゃねぇよクソが」
思い切り天龍に叩かれる。彼女はまるで汚物を見るような目をしていた。
一瞬何をされたのか分からなかった猿渡だが、次の瞬間、顔を真っ赤にして激昂する。
「こっの…!旧式艦の分際でェ!!」
そのまま腰にある鋭剣に手をかけようとする。天龍も『上等だ』と腰の愛剣に手を伸ばそうとするが、誰よりも早く動く影があった。
「……その辺にしておけ」
「なっ!?」
「提督!?」
そう、神林だ。彼は先ず天龍を視線だけで抑え、次に一瞬で猿渡に肉薄し、鋭剣の柄頭を押さえた。
自身の真横に来られるまで気付かなかった猿渡の目は驚愕に染まっている。
そんな猿渡を横目に見つつ、神林は低い声で告げる。
「此処で鋭剣(そんなもの)を抜くのなら……此方も手加減が出来なくなる」
更に肩越しに天龍を見つつ、声を掛ける。
「お前もだ……こんな所で、そんなものを振るうんじゃない」
―――俺に飛び掛ってきたときも、お前は拳で来ただろう?力を振るう相手を間違えるな。
言外にそう言われているように感じた天龍は、そのまま深呼吸をしつつ愛剣から手を離す。
「悪ぃ、提督。大人気なかった」
「未遂で済んだから問題ない。さてと、其方はどうするのかな?」
不貞腐れたような天龍の言葉に苦笑しつつ、隣の男に問う。
「くっ……!」
悔しそうに鋭剣の柄から手を離す。神林も手を離し、猿渡の正面に立つ。
そして、おもむろに天龍を引き寄せた。
「お、おい、提督!?」
突然の事に、天龍は目を白黒させる。
「言っておくが、コイツは私の大切な部下であり、『ジャム島海域』の攻略に必要な艦娘だ。貴様如きにはやれん」
「て、提督……」
突然の『大切』発言に天龍はしどろもどろだ。
いや、そう言われて嬉しくないといったら嘘になるが、それでももうちょっと心の準備とか…!
「こ、この……!腰抜けが調子に乗って……!」
未だに赤黒い顔をして唸る猿渡に、神林は呆れて溜息をつく。段々あしらうのも面倒になってきた。
この調子では、今後もコイツは自分に突っ掛かってくるだろう。
今回は天龍が我慢してくれたが、コイツ並に気が短い艦娘は他にも何人かいる。
今後そういった奴等や、逆に気が弱い艦娘と一緒に居るときに絡まれても厄介だ。
ここらで一つ、遺恨を断っておく必要があるか。
「其処まで言うのなら、勝負でもするか?」
「お、おい提督!?」
突然の言葉に、天龍は目を疑う。神林の目には、何時になく好戦的な光が宿っていた。
「ふん!臨むところだ!演習でもするか!?」
「こんな私闘に艦娘を巻き込めるか。サシでの『武力』で決着を着けよう」
「……いい度胸じゃないか腰抜け。勝負事は嫌いじゃなかったのか?」
そういって睨む猿渡を鼻で笑いつつ応える。
「無益な勝負は嫌いだ。だがまぁ、この場合は仕方ない」
「なんだ?保険か?今更負けるのが怖くなったか?」
此方の言いたい事を上手く受け取ってくれない相手に呆れながら訂正する。
「あぁ、言い方が悪かったな……『貴様如きに勝った所で得るものなど何もない』と言う意味で言ったんだ」
「こ、この…言わせておけば……!」
「日時や場所は此方で手配する。まぁ楽しみにしていろ」
そういって、神林は今まで滅多に見せた事のない獰猛な笑みで、相手を睨みつけた。
「死なない程度に、叩き潰してやる」
神林提督別人じゃないですかーやだー!
とか思った方。ご安心ください。仕様です。
以前『天龍田は語る』で天龍が語った様に、彼は元々物凄く『好戦的』な性格なんです。
普段は冷静に振舞ってるだけ。スイッチが入ればこんな感じです。因みに口調も変わります。『君』→『貴様』みたいな。
次回は閑話が入ります。
決闘のお膳立ての裏側や、ちょっとした伏線回収、それと神林の過去を知る新キャラを出す予定です。
秘書艦へのお伺いもしないといけません。会議室から執務室へ帰る前に、問題起こしてるからね!
提督無双は次々回の予定ですので。