鎮守府の日常   作:弥識

15 / 72
皆さん、お久しぶりです。更新に一ヶ月以上も掛かってしまいました…ようやくむっちゃんがメインのお話です。

少々小難しい話が出てきますが、コレが『提督:神林貴仁』の考え方だと捉えていただけるかと。

※前作『後書き』にも書きましたが、前作の内容を鑑み、前作を『閑話』とし、改めて『中編』と『後編』を更新させて頂きます。

では、どうぞ。


陸奥の場合:中編

舞鶴鎮守府の朝は早い。

現在、神林提督が率いる艦隊は『南西諸島海域』を攻略中だ。

鎮守府近海とは違い、強力な深海棲艦も出現する海域だ。十分に対策を立てておく必要がある。

艦隊の整備や装備の開発など、たとえ出撃しなくてもやるべきことはたくさんあるのだ。

 

 

「…おはようございます。提督」

「あぁ、おはよう。さて、早速だが仕事に掛かろうか」

 

ぎこちない陸奥の挨拶に苦笑しながら、此方も挨拶を返す。

本日付で提督の秘書艦に任命された彼女と、諸々の仕事を開始する。今日の仕事は主に書類整理等の事務仕事だ。

本来秘書艦とは第一艦隊旗艦なのだから、仕事が執務室での事務仕事のみ…ということはないが、諸々の事情で第一艦隊が出撃することはない。というか、出来ない。

 

「さて、今日の予定は?」

 

提督の問いに、手元にある書類を捲りつつ応える。

 

「近海の哨戒任務と、遠征が幾つか。どちらも第二・第三艦隊で消化可能ね」

「工廠は?」

「建造の予定は無し。装備開発の申請は幾つか来てるわ。後で確認して頂戴。」

「わかった。他には?」

「他には…あ、本営から視察が来るみたいよ。時刻は昼過ぎ…って所かしら」

「あぁ、そう云えば前に通達が来てたな。全く、タイミングが良いんだか悪いんだか」

「さぁ、どうかしらね。…大きなものは、こんな所かしら」

「ふむ…第一艦隊の様子はどうだ?」

 

提督の問いに、さらに書類を捲り、あくまで事務的に応える。

 

「…扶桑・山城が大破。赤城・飛龍が中破ね。小破で済んだねえさ…長門と金剛はともかく、他は暫く出せないみたいよ」

「…全く、手酷くやられたもんだ」

 

先日の『沖ノ島海域』における戦闘を思い出す。ため息がでた。

先程の発言の通りだ。本当に、手酷くやられたという言葉しか出てこない。

 

此方の編成は扶桑・山城・長門・金剛・赤城・飛龍の六隻だった。勿論、六隻とも近代化改造は終えている。

改造された戦艦四隻と正規空母が二隻。現在で実現できる限りの高耐久・高火力編成だ。

 

別に慢心していたわけではない。

現在攻略可能な海域の中でも特に『難関』とされている『沖ノ島海域』だ。

彼もこの海域を簡単に突破できるとは思っていなかったし、扶桑達第一艦隊に無理な進攻をさせるつもりもなかった。

 

諸々の事情と、艦隊士気への影響を鑑み彼女達には伝えていなかったが、今回の作戦では『一先ず敵主力艦隊の情報さえ掴めれば良し』とさえ思っていた。

 

…思っていたのだが。

 

「流石に、堪えるな、この結果は」

「…何か言った?」

「すまん、独り言だ。気にするな」

 

陸奥が手を止めて此方を見ていた。どうも思考が口から漏れていたらしい。

そう、と呟いて仕事を再開する彼女を見つつ、心の中で自身を戒める。艦隊を指揮する者が無闇に弱音を吐いては、艦隊の士気に関わる。

 

改めて、手元の第一艦隊の戦闘及び被害報告書に目を通す。

 

途中までは特に問題はなかった。道中、重巡や軽巡の上位艦が出てきたが、流石は戦艦と正規空母。小破程度の損害は出しつつも、危なげなく退けたのだが。

敵主力艦隊に、とんでもないのがいた。

 

『此れまでの海域にも戦艦や空母は出てきたが…その上位艦まで出てくるとはな』

 

特に戦艦の上位艦(戦艦ル級・flagshipというらしい)に酷くやられた。結果、大破二隻、中破二隻と甚大な被害を受けた。

実際に戦った扶桑達曰く、『狙いが恐ろしく正確だった』らしい。

 

『通常艦とは比較にならない精確な砲撃…間違いなく電探を積んでいる。…厄介だな』

 

戦艦・正規空母を基幹とした艦隊同士で、正面から戦って負けたのだ。明らかに此方の力不足である。

しかし、だからといって他の戦法を取れるほど、此処の艦隊の層は厚くない。

暫くは、艦隊の強化に費やす事になりそうだ。…なりそうなのだが。

 

『先立つ物がなければな…どうにもならん』

 

そう、単に艦娘が傷ついただけではない。それに伴う問題も発生していた。

平時にすら資材を多く消費しがち(だからこその高性能なのだが)な戦艦や正規空母の修復には、輪をかけて大量の資材が必要となる。

早い話、今回の戦闘で壊滅的な被害を受けた第一艦隊の修復で、備蓄された資材が吹き飛んだのだ。

それはもう、びっくりするくらいにすっからかんである。

特に鋼材の消費が酷く、余りの減り方にちょっと笑えた。…不謹慎だが多めに見て欲しい。

 

定期的に資材の補給はされているが、その量は決して十分とはいえない。

提督によっては、私財(要するにポケットマネー)を使い、足りない鋼材等を工面する場合もある。

しかし、自分にはそんなコネも財産もないため、正直どうにもならない。

自身の頭で何度目かの『もし』を重ねるが、所詮は『もし』だ。ない袖は振れない。

 

『…まぁ、ないものねだりしても仕方がない。今は我慢の時だと思おう』

 

今回の件を前向きに捉えよう。

確かに我が艦隊は負けた。しかし敵の情報も手に入れた。次回に生かせば良い。それを踏まえた装備・編成を考える。

大破艦が出たときは流石に肝を冷やしたが、幸い轟沈艦は出ていない。

時間と資材を費やせば、幾らでも立て直せる。『沈まねば安い』し、『帰ればもう一度来れる』のだ。

 

資材の件も前向きに考える。…第一艦隊の損害を修復するだけの資材は何とかなったのだ。

どの道彼女達が艦隊に戻らなければ、海域攻略は不可能なのだから、そこは僥倖だと捉えよう。

後は第二・第三艦隊の面々で遠征をこなして資材を蓄えつつ、演習や改修で海域攻略に必要な火力を育てれば良い。

 

報告書に目を通しつつ、これから暫くの艦隊運営方針を頭に浮かべる。『出来るかどうか』ではない。『やらなければ負ける』のだ。

 

 

と、そこまで考えた所で、ふとコーヒーの香りに気付く。

見ると机の上にはコーヒーの入ったカップが一つ。入れたばかりなのだろう、湯気と共に芳醇な香りが鼻をくすぐる。

彼には勿論淹れた覚えなどない。そして彼以外でこの部屋にいるのは一人だけだ。

 

「…何?私の顔に何か付いてるの?」

 

そこには、不機嫌そうに盆を抱えた陸奥が立っていた。

 

 

 

 

 

―――第一艦隊が戦略的敗北。

その報告を聞いたとき、陸奥は耳を疑った。

仮にもビッグ7を冠する長門がいる(といっても率いているのは長門ではなく扶桑だが)艦隊がそう簡単に負けるとは思わなかった。

続いて『大破・中破艦は出ているものの轟沈艦は無し』との報告を聞き、最悪の結果は回避できたようだ、一先ず胸をなでおろす。

そしてボロボロになりながらも鎮守府に無事帰還した長門達を見て、ようやく胸に残っていた不安を消す事ができた。

 

気分が落ち着くと、今度はそんな無茶をさせた提督に腹が立った。

何処が優秀な提督か、蓋を開ければ負けているではないか。と憤り、執務室に抗議しようしたが、肝心の長門に止められた。

 

曰く、

 

同じような艦隊編成で、正面切った砲撃戦で押されていた。間違いなく私達の力不足だ。

確かにあそこで引かず、夜戦に踏み込んでいれば、あるいは勝てたかもしれない。

だが、間違いなく轟沈艦が出ていただろう。

そして、夜戦突入を良しとせず、撤退を命じたのは他ならぬ提督だ。

だから私達は一隻も欠けることなく鎮守府に帰還できた。

それを思えば、感謝こそすれ、あの人を非難する気持ちにはなれない。

 

 

そこまで言われては、陸奥も引き下がるしかなかった。

 

その後、第一艦隊の面々は大破した艦娘から順にドックに入渠することになった。

結果、現秘書艦である扶桑が予定外の長期入渠をすることになり、急遽『予定の前倒し』という形で陸奥が艦隊秘書官を勤める事になった。

 

正直、陸奥は神林提督を認めてはいなかった。

確かに、彼が艦娘を(真意はどうであれ)大切にしている事は判った。長門の主張も、同意出来なくもない。

自分でもコレが子供の意地みたいなものだ…と理解していたが、それでも胸の引っ掛りはそうそう取れるものではなかった。

だからこそ、長門の言ったとおり、秘書艦に就くことで彼の本質を見極めようと思っていた。

 

 

執務を開始早々、報告書を睨みながら黙り込んでしまった提督を前に、早速陸奥は手持ち無沙汰の状態になっていた。

まぁ、先日の第一艦隊の報告書を見ていればそんな顔になってしまうのも判らなくもない。

だが、目の前の損害をしっかり見極めるのは大切な事だ。

どうやら彼は自身の失策を認め、しかしそれを悲観する事なく、対応策を平行して考える人物であると感じた。

艦隊を指揮する者として、必要な素質は十二分に持っていえると言え、陸奥は彼の評価を少し上方修正した。

 

『…まぁ、ちょっとは秘書艦らしいことしないとね』

 

そう思い、黙り込んだ提督を尻目に給湯室に入り、コーヒーを淹れる準備をする。

扶桑は日本茶、金剛は紅茶だが、陸奥は専らコーヒー党だ。

 

因みに、姉の長門はコーヒーが苦手である。理由は推して知るべし。姉さん甘党だからね。

以前ブラックコーヒーを振舞ったら物凄い顔をされたので、それ以降彼女に出すのはカフェオレである。

…瓶のコーヒー牛乳とか喜ぶんじゃないだろうか。もしくは○ックスコーヒー辺り。今度試してみよう。

 

閑話休題。

 

 

手馴れた手つきでコーヒーを用意し、未だに難しい顔をして報告書と睨めっこしている提督の前に置く。

すると、コーヒーの香りに気付いたのか提督が顔を上げた。そのまま意外そうな顔でカップと陸奥の顔を見比べる。

 

「…何?私の顔に何か付いてるの?」

 

何となく居心地の悪さを感じた陸奥はぶっきら棒に問う。

 

「あ、いや…ありがとう」

 

何かを言おうして飲み込み、一先ず礼を言いつつコーヒーを口にする。

次の瞬間、神林提督は驚いたような顔をしていた。

そんな提督には目もくれず、自分の席に戻った陸奥は、同じく自分用に入れたコーヒーを口にする。

 

『うん、まぁこんなものよね』

 

自分の淹れたコーヒーにまずまずの点数をつける。

意外に思うかもしれないが、陸奥はコーヒーを淹れる事に関して一家言あった。

残念な事にこの給湯室には上等なコーヒーメーカーなどないが、それでも最低限『美味しい』と思えるコーヒーを淹れる事は可能だ。

正直提督がコーヒー嫌いだったらどうしようと思ったが、給湯室に置いてある辺り、彼もそれなりに嗜んでいるのだろう。

行く行くは自身がお気に入りの豆を此処にも置かせてもらおうか。…道具も懲りたい所だ。

コーヒーを飲みつつそんな事を考えていた所、執務室の扉がノックされる。

 

『失礼します。提督はお見えになられますか?』

 

扉の向こうから声が聞こえる。

 

「あぁ、入って来い」

 

カップを置きつつ、提督が応える。

しかし、一向にドアが開く気配がない。

 

「「……?」」

 

陸奥と二人で顔を見合わせる。

一先ず陸奥がドアに近づくと、ドアの向こうからまた声が聞こえた。

 

『す、すみません~…ドア、開けてもらっても良いですかね…』

「……?」

 

提督に目を向けると、肯定の意を向けられたのでドアを開けた。

そして陸奥の目に飛び込んできたのは…

 

「箱?」

 

二つのダンボールの箱だ。高さは陸奥の胸の辺りである。

 

「あ、ありがとうございます」

 

箱が喋った…訳ではなく、良く見ると箱の向こうから覗く青い髪。

 

「その声は…五月雨か?」

「はい!五月雨です!」

 

提督の声にダンボール…もとい駆逐艦の五月雨が応える。

 

「そうか…で、その箱は?」

「えっと、提督にお届け物だそうです」

「俺に?」

「はい、ちょっと失礼しますね」

 

そういって、トコトコと箱を机の前まで運ぼうとする。

しかし、小柄な五月雨が抱えているのは大きなダンボール二箱。

そして先程も言ったとおり、前から見えるのは箱の陰から出ている彼女の髪だけ。つまり、明らかに前が見えていない。

更にこの『五月雨』と言う駆逐艦、何事にも一生懸命なのだが、どうもその思いが空回りするきらいがある。

 

―――まぁ、要するにドジっ子の典型なのだ。

 

そんな彼女が無事に箱を此処まで運べたのはある意味奇跡に近く、案の定絨毯に足をとられ…

 

「あっ…!」

「危ない!」

 

そのままバランスを崩し、箱を落としそうになるが、隣で見ていた陸奥が咄嗟に箱を支る。

結果、箱はその場に留まり、その側面に五月雨は強かに顔をぶつけた。

 

「きゃ…ぶぇ!」

 

まるでカエルを握りつぶしたような、少女らしからぬ声が執務室に響く。

 

「…だ、大丈夫?」

「ふぁ…ふぁい」

「もう、一先ずそこに箱を置きなさい」

「はい…」

 

少々呆れながらも、陸奥は五月雨が床に箱を下ろすのを手伝う。

そのまま屈み込んで顔を抑えている五月雨の顔に自身の手を添え、怪我がないかを確かめる。顔は女の命なのだ。

 

「ん…ちょっと赤いけど、血は出てないわね」

「あ、ありがとうございます…」

 

結構強めにぶつけていたが、大きな怪我は無いようで陸奥は胸を撫で下ろす。

対する五月雨は転んだ恥ずかしさやら、艦隊でも屈指の美人である陸奥の顔が目の前にあるやらで顔が赤い理由が変わりそうになる。

傍から見れば某塔が立ちそうになるが、生憎それを指摘する者はいない。

 

「大丈夫か?五月雨」

「え、あ、はい!五月雨は大丈夫です!陸奥さん、ありがとうございました」

 

提督に声を掛けられ、慌てて立ち上がる。危ない、ソッチの道に奔る所だった。

 

「で、俺に荷物か?」

「はい、送り主は…あ、此処に書いてありますね」

 

そういって、箱の上に貼ってある伝票を見せる。

それを見た提督は、何処か納得したような顔をした。

 

「提督?」

「ん、いや、昔世話になった所からの荷物だ。そういえば、『折を見て送る』と言っていたな」

「ってことは、提督の私物…ですか?」

「そうなるな。…確か、『他にも色々一緒に送る』とか言っていたから、一応中を確認しておくか」

 

そう言って、机を離れ、箱の中を検める。

流石に生ものが入っていることは無いと思うが、食品の有無くらいは見ておいた方が良さそうだ。

 

すると、やはり何本かの酒瓶と、幾つかの食品が出てきた。

 

「やはりな…というか、酒瓶詰めすぎだろ…一応此処は軍の設備だぞ?」

 

尤も、送り主は軍属ではないので、『そんなの知るか』と言ってきそうだが。

 

「提督、コレは何ですか?」

「ん?それは…こんなもんまで送ってきたのか」

 

陸奥と共に、提督の背中越しに荷解きの様子を見ていた五月雨が提督に声を掛ける。

それを見た提督の目が驚いたように見開かれ、呆れとも驚きとも取れる声をあげた。

 

そこにあったのは物々しい木製の箱。見たところそこまで古いものでは無さそうだが、なにやら妙な雰囲気を帯びている。

その箱を手に取って見詰る提督。その目に宿る感情は、付き合いの長い五月雨にも読み取れなかった。

 

「…提督?」

「どうした五月雨?」

 

恐る恐る訊ねる五月雨に、いつもの調子で応える。その目には先程の色はない。

 

「え、あの、えっと…そ、その中身をお尋ねしても?」

「大した物は入ってないよ」

 

そういって、箱を開ける。

 

中に入っていたのは、幾つかの手紙に、そしてにコレは腕章…部隊章だろうか?それと装飾の入った小さな箱。さらに…

 

「ナイフ…ですか?」

 

最初は短刀か何かかと思ったが、握り手の形からして恐らくナイフなのだろう。

皮製の鞘に収められたそれは、軍用ナイフにしては少し細長い。刃渡りは20cm以上有りそうだ。

 

「厳密には違うが…まぁ、そう思ってくれれば良い」

 

さらに、装飾の入った箱を開ける。

 

「それは…勲章、ですよね」

 

箱の中に入っていたのは勲章。随分大きく、一目でとても価値のあるものだと判る。

 

「あぁ、前にいた部隊でもらったものだな」

「何故しまっておいでになるのです?」

「コレは昔居た部隊で貰った物だからな…海軍の物ではない。だから付けて置く意味もないよ」

「……」

 

本当にそうだろうか。

勲章とはある意味軍人の『誇り』のようなものだと五月雨は思っていた。

事実、この鎮守府内にいる上級将校の何人かは常に身に着けている者もいる。

海軍だろうが陸軍だろうが、勲章の価値に―――

 

「ところで五月雨」

「は、はい!」

 

思考の海に沈みかけていた五月雨を、提督の声が呼び戻す。

 

「箱の中に、どうも焼き菓子の類も入っていたようだ」

「あ、そうですね。わぁ、随分沢山あるみたいですよ」

「執務室に置いといても良いんだが、折角の貰い物だ。鎮守府の談話室辺りに持って行ってくれ」

「え、良いんですか?」

「あぁ、構わない。そうだな…ある程度お茶請けとしてあれば良いから…」

 

そういって、幾つか焼き菓子を分けつつ大きな袋を五月雨に渡す。

 

「こんなもんか。すまない、持っていってくれるか?」

「分かりました。では、失礼しますね」

 

焼き菓子の袋を手にした五月雨が、執務室を後にする。

 

「さて…何か聞きたいことでもあるのか?陸奥」

 

広げた荷物を片付けつつ、此方に目を向けていた陸奥に声を掛ける。

彼女は勲章云々の辺りから静かに此方を見ていたのだ。

 

「…聞いたら、話してくれるの?」

「…さぁ、どうだろうな」

 

陸奥の言葉に、肩を竦める。

 

「…別にないわよ」

「そうか」

「誰にだって話したくないことの一つや二つ有るでしょ?私もそうだし」

「そうだな」

「話したくなったらで良いわよ。…私もそうだから」

「…そうか」

 

さぁ仕事を続けましょ、と陸奥が言い、この場はそのまま流すことにした。

 




いやはや、文を書くってのは難しいですねぇ。
でも書かずにはいられない。難儀なものです。

五月雨ちゃんの方が若干目立ってる気がするのは気のせいです。多分。きっと。

後編は、出来るだけ近いうちに更新しますのでよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。