リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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再戦

 

「よっと」

 

『破壊(クラッシュ)』を使って地面を壊す

範囲の固定が難しかったが……何とか成功だな

後ろを見る、護衛はいない、ちゃんと書き置きしてきたから大丈夫だろ

ったく、あいつら追尾だけは一級品だな、撒くのにどれだけ苦労した事か

さて………

 

「よいしょ」

 

衝撃を受けない様に上手く着地する

薄暗い、地下なのにテロのせいで電気が通ってないからか?

まぁ所々に転々としているのだが……

 

「行くか」

 

取り敢えずアホ毛が反応する方向へ走る

出来れば魔力は取っておきたいからな、AMFが展開されている今の状況なら尚更だ

アホ毛の事か?まぁ直感による補正だよ、うん

『ブロッソム先生』シリーズであっただろ?

こういう『行き先』を知りたい時にはアホ毛がどこを指しているかを辿ればいい

 

『公開意見陳述会』がいつもの様に始まっておよそ数時間、外に大きな動きがあった

なんでもシステム自体に侵入されて乗っ取られ、更には大量のガジェット……デバイスを持ち込めない陳述会での局員などただの紙同然だろう

今回、ネリアについてはコルテットに置いてきた、実際に管理局で正式な位を持つのは俺だけだ、ネリアの分も頼めば作ってくれるのだろうが生憎とそんな事にまで局の負担を上げさせたくない、コルテットには爺を中心に頼んだので恐らく大丈夫だろう

俺がリスクを犯してでもこの会に参加した理由は一つ、転生者関連の事でだ

原作賛成派だろうと、管理局アンチであろうとこの節目となる大きなイベントに参加してこない筈がない、サンドロスが殺された事でもう『傍観者』でないことは分かりきっているのだから

 

しかし、問題はある

転生者の情報が欲しいと思ってもそれが手に入る可能性は百パーセントではない、地上本部、機動六課、その他諸々、

色々な所で事件が現在進行形で起きている、俺の体は一つ、

その中で転生者がいる場所が分かっているわけじゃない

だからこそ、情報で妥協し、一番確実な場所を狙う

 

ピョコピョコ弾むアホ毛を尻目に長ったらしい道をただただ走る、てかここなんだよ、非難経路か?

原作でのなのは、フェイトもここに来てた筈だし……地上本部にはよく分からん事が多い

 

「……多分、ここの筈……」

 

トットと足を止める

地下の中でも何故かある広間、それでもやっぱり機動性重視の奴にはキツイかな、それと比べて広範囲に攻撃出来る奴にとっては絶好の場所

 

「上も本格的に始まったな……」

 

自分の上の階から微かだが戦闘音が聞こえてくる、やっぱ苦戦してるっぽいな、四番のせいで警備システムが乗っ取られてるんだから当然か、情報も敵の数も伝わっていないだろうから

 

はぁ、とまた溜息をついてから片手に持つ水を飲む、途中にあったので拝借させてもらった、水ぐらい別にいいだろ?

空になったペットボトルを投げ捨て、後ろからギュインギュインと音を鳴らす主を待つ、こう考えてみたらあいつとは初対面なんだよな、俺の事を知っているかどうか心配だ

 

「あ、あなたは!?」

 

「ん、こんにちは~」

 

アハハ~と軽く挨拶、こういうテロの時って見慣れない奴、怪しい奴は全部敵に見えるのが道理なんだよな、ここで怪しまれて得はないし、てか損しかないし……ん?いきなり笑ながら手を振るって結構怪しくないか?

 

「えっと、えっと、ケント・コルテット少将で間違いないですよ……ね?」

 

「ん、知ってんの?」

 

「あ、ハイ、六課後見人の一人でもありますし、その、妹からも時々話で聞くので……」

 

そういや今こいつって六課に手伝いに行ってるんだよな、娘二人して危険な事件に巻き込まれる部隊に所属しているお父さんってどんな気持ちなんだろうか………ゲンヤさん、だったか?

原作では数少ない『いい人』であり男性、これはいいとして二次創作ではレジアスや三提督からも一目置かれてるんだが……ホントかねぇ?

言い方は悪いがたかが一局員、更には非魔導師にそこまで期待はしないと思うのだが、というかこんな立場である俺さえ聞いた事ないし

おっと、話が逸れた、まぁ彼がいい人である事は確実なんだけど今俺の前にいる女性、名前は『ギンガ・ナカジマ』

妹と合わされば挑戦者達のプロジェクトが始動しそうな名前なのだがそこは省略、公開意見陳述会という場で、俺がこの人と合う、という事は俺がどのルートに進んだかお分かりだろう

そう………

 

「破壊(クラッシュ)!!」

 

「危ない!!」

 

ギンガが反応して俺を助けようと動くがそれより先に俺が飛んで来た『クナイ』を全て破壊する

当然、クナイによって斬り裂かれると思っていたギンガは目を丸くしてるし投げた本人は「チッ」と舌打ちして再びクナイを展開する

 

目線の先には煌びやかに光る銀髪に黒の眼帯、ピチピチのアンダースーツを着た幼児体型の戦闘機人

ついこの前俺を戦闘不能に追い込んだ奴、よくオリ主がこのイベントの前にこいつと接触してフラグ立ててこいつが改心し、ハーレムに加わる、とかよくあった感じがするがそんな簡単に終わるなら苦労しない、てかこいつ、忘れがちだが人殺しなんだぞ?ゼストこいつに殺されたんだぞ?

実際俺も死にはしなかったけど被害者の一人だし……

 

「タイプ0を回収しに来たのだが……まさかお前までいるとはな」

 

「残念だったね、ニ対一、逃げるか?逃がしはしないけど」

 

俺がこいつと接触した理由は二つ

 

一つ目、転生者に対する情報だ

ぶっちゃけ陳述会に来たはいいものの転生者と確実に接触出来るかと聞かれればそうでもない、いや、むしろ低い

六課、ギンガ、もしかしたらこのイベントには参加せず隠れているかもしれないし局員に紛れているのかもしれない

そうなればより確実に敵の正体を探る、そうなれば相手を知っているであろう奴を捕獲するのが一番

俺を含めた『転生者』によって確実にこの世界自体に変化は起こる、俺が一番顕著だろう、なんせ世界の財政を一身に背負う大会社が現れたのだから

今回、転生者がStsまで関わっていない理由は恐らく管理局アンチの為、そうなればスカリエッティという存在を忘れない

転生した時の特典と奴の頭脳、それにマッドに対し『俺』という存在が持つレアスキルが自分が持つ特典と同等な物、などと吹き込めば奴は動く、マッドなど所詮そんな存在だ

それでマッドが俺を欲しがっている理由は出来る、となれば戦闘機人の中でも比較的人気キャラ、チンクと接触する確率は高い

転生者など余程鈍感でもない限り原作キャラとの開墾はしたい筈だしな、それに向こう側に着く転生者は大体戦闘機人のハーレム作り、プラス原作後、洗脳した局側原作キャラのハーレムか?

う~ん、まぁこれはどうでもいい、所詮『成功したら』だ、失敗させれば何の心配もない

まぁこの理由でチンクが転生者の素性を知っている確率が高いと判断

『転生者』という単語は知らなくても戦闘機人でない味方と聞けばいけると思う

 

二つ目、なぜチンクなのか

まぁ上でも上げた理由もあるのだがぶっちゃけフェイト達と六課に戻るルートの方が戦闘機人と沢山会える、そうも思うだろう

三番もいた筈だしあの双子もいた筈だ、ルーテシアもいたしゼストもいた、特にゼストなどはどちらかと言うと話が分かる奴だしスカに対して直接味方、と言うわけでもないので少しの話し合いでいける可能性だってある

ただ……一つ問題点をあげるとすればタイミングを掴めない

どこでフェイトが足止めをくらったのかもわからないし六課に戻るとしてももぬけの殻だった場合意味がない、それにサンドロスが出て来た場合即アウトだ

ここにもサンドロスが出てくる可能性はあったのだが……どうやらいないようだ

もし出てきたのならば柱の一本ぐらいを破壊し、瓦礫を溺れさせて足止め、がここでは出来るからな

そんでもって戦闘を行っているであろうフェイトと合流、戦闘機人を捕縛、まぁ長々と話したがこんな理由だ

そんなわけで………

 

「さて、久しぶりだな、あの時の仕打ち、返させてもらえるか?」

 

「………」

 

無言でクナイを構えるチンク、どうやら向こうもやる気らしい

後ろでギンガも構えるが……え~と

 

「下がってて、ちょいこいつには因縁があってね」

 

「で、ですが人数は多い方が!?」

 

「いいからいいから」

 

最初に述べたようにこの場所では圧倒的に相性悪いからな、お前とチンク

どちらかというと防御系魔法嫌いで機動力で攻撃を避け、隙をついて力押しってタイプだろ?

それを考えると狭い場所でチンクとは無理、爆発自体威力高いし範囲広いし……外だったら逆なんだけどね、チンクもドバドバとクナイ投げれるわけじゃないから

 

それに比べ俺は……前回みたいに『被害を留める』とかを気にしなくていいからな、相性は良くもないが……よし……

 

 

ダッ!!

 

 

右足を踏み込んで一気に駆ける

チンクは五本のクナイを投影、こちらに向かって放射する

それを俺は………

 

 

デュランダルを左下から右上へ、クナイを滑らせるように上へと方向転換させる

 

 

その光景に目を見開くチンク、当然だ、爆発物に探知されないよう、剣の刀身でずらしたのだ、一流の芸当、正しく神業

だけど残念だったな、今の俺は……一流だ

 

肩にデュランダルを担ぐ様な形で一気に距離を詰める

チンクが防御魔法を発動するが……残念

 

 

 

「花散る天幕(ロサ・イクテゥス)!!」

 

 

それすらも、斬ってやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて」

 

茫然自失とした目で天井を見上げるチンクに近寄る

彼女も敗北を悟ったのだろう、これ以上抗おうともせずに起き上がる、こう見ると案外潔いのかもしれない

 

「ハハ、一瞬か、先日お前を倒した出来事、あれは一体なんだったのだ?」

 

「周りの状況、圧倒的に俺が不利だったの目に見えてただろ?」

 

フッ、と笑うチンク、ったく

 

「私の完敗、降参だ」

 

「案外潔いな」

 

「あれだけの力の差があったんだ、今から逃げた所で意味はないだろう?」

 

「そういうものか?」

 

「そういうものだ」

 

そういうものらしい

 

「えっと……少将?」

 

「ん、ああ、お疲れさん」

 

戸惑いながら駆け寄ってきたギンガ

まぁ彼女自体どう対応したらいいか分からないもんな、実質的将官の面前だし

 

「取り敢えずこの子の護送しよ、バインドかけてくれる?」

 

「あっ、ハイ」

 

言われるがままにバインドをかけるギンガ

彼女に対しても抵抗する気はなさそうだ、大人しくお縄にかかるチンク、と、ここで彼女が口を開く

 

「それにしても驚いた、まさかお前がここにいるとはな」

 

「まぁな、陳述会にいたから当然だ、偶々ここを探索してただけ」

 

「そうか、なら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コルテットに対する襲撃は、無駄になったのか」

 

 

 

 

 

 

思考が、停止した

 

 

 

 


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