「陳述会での警備増量?どうしてまたそんな」
「あ~、やっぱり不安なんですよ、俺然りコルテット然り、この頃はガジェットの動きも活発ですからね~、前みたいな事が二度も起こったら地上本部の不信感にも繋がる、なので『地上本部の為に』少しお願いをしに来たのです」
設けられたソファに座りながら対面する俺達
目の前にはいかつい髭を生やしたオッサン、隣にはこれまたどちらかというと『ドS』、といった感じの眼鏡秘書、大概の男はこいつに足蹴りさせる事を望むんだろうな、俺にそっち系の趣味は無いからわからん
「フム、ですが陳述会に回す局員の数が多すぎて地上の警備が手薄になるのも事実、地上に暮らす人々の事を考えるとこちらにしてもこれ以上人員を割きたくないのも事実」
「人員不足、ね、まっ、それは昔から変わらないか」
特に地上本部はね、大概の『エリート』と呼ばれる奴らは本局に行くからな、なんだかんだ言って俺も『本局所属の少将』だし
オッサンから見れば嫌な立場だよな~、コルテットから見放されたら管理局はやっていけないしアインへリアルを完成させたのは実質コルテットだし
だからと言って俺は地上本部の人間ではなくライバル視してる本局の人間だし……うわ~、俺って相当嫌な奴?
「今年だけですよ、ガジェットの主犯が見つかればどうって事ない事ですし、何かあってからでは遅いですよ?いくら自分がコルテットの中で立場が高いにしても組織を支えているのは俺ではないですから、最終的には下の意見です」
「評判が悪くなれば庇えない……と、困った事ですね」
脅し、効いてるか?
まぁ事実は事実なのでしょうがない、いくら俺が地上を庇ったところでコルテットを動かしているのは俺ではない、俺だけが意見が違ってあとの大多数が地上を見限ればそれで終わりだ
難しい選択、ていうかこいつってマッドと繋がってるんだったっけ?
目的は……覚えてない、そもそもこいつが何をしたかったのかさえ記憶にないからな、前世における俺の中ではただのうるさいオッサン程度の認識だったし
「……出来る限りの検討はしてみましょう。結果が出しだいコルテットに報告させてもらいます」
「ありがとうございます。よい結果、期待してますよ」
う~ん、こいつは陳述会でテロが起こる事に関しては知っているのだろうか
もしそうだとしたらいくら警備を増強させたとしてもその『穴』を伝えてしまうから意味無いんだよな、てか一番手っ取り早いのはデバイス持ち込み不可っていう規則をある程度まで緩和するのがいいのに……
内部でテロが起こったらどうやって対処するんだ?持ち物検査?的な物に自信はあっても技術なんて日々進歩していくもんなんだぜ?
実際に俺が持っていたステルスデバイス見抜けなかった訳だし……
それにしても嫌な会談だったな~、殆ど俺の権力を使った脅しだし
もしそういった『立場』が無かったら言い負かされてるね、絶対
キャリアの違い、年季の違い、形だけの局員の俺とそれに対して人生かけてる奴、どう考えたって勝てないだろ
どうせ俺がこうやって会談を開いた理由もカリムの予言関連だなんてお見通しの筈だ、俺も一応後見人ですからね~
本局と協力している事で強い権限を持つ聖王教会、バックに本局のお偉いさん方や俺がいる機動六課、どちらも相当お嫌いだった記憶があるからあえて出さなかったんだけど……どうかねぇ
「ん~、見送りはいいよ、護衛もいるし」
「わかりました、では」
ビシッと敬礼して頭を下げる眼鏡秘書
あのオヤジの種からどうしたらこんな美人が生まれてくるんだ?生命の誕生とは不思議なものだ
それはそうと地上本部の一室を後にして廊下を歩く、陳述会まで後少し……いよいよStsも大詰めか……
う~ん、せっかく家から出たんだし……どうするか、このまま帰るのもなんだよな~
……六課行ってみるか?ヴィヴィオがいる筈だ
基本はやては連絡さえいれれば何時でも来ていいと言ってたからな、少し気分転換がてらに
それと六課FW陣がどれほどの実力なのかもちゃんと見ときたいというのもあるし、陳述会間近、訓練もしてるだろうしな
そうときまれば早速行くか……ネリア、また脱走してないだろうな……