リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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やっちまった

 

「は☆な★せ☆」

 

「い★や☆や★」

 

 

額に青筋を立てながらはやてがロープをさらに硬く縛る

その後ろでは苦笑いしながら立ち尽くす機動六課の面々、とは言っても隊長陣とFWの新人達の事なのだが……

 

「さ~て、なんでアホ毛が抜かれてて暴走しとるんかは知らんけどとにかく、理由聞かせてもらおうか~」

 

「我は何も悪い事はしておらぬ!!目の前に洗練された『美』があったのならそれに触れ、評価するのは当然であろう!!」

 

「だからってなんでフェイトちゃんの胸を揉むんやーーーー!!」

 

はやての絶叫が部隊長室に響き渡りそれを聞いてフェイトが赤面する

なのはやFW陣は以前として苦笑いでありヴィータは呆れ、エリオに関しては何故かグッタリしていたりもする

 

「ただ見ているだけではつまらぬ、やはり『美』に触れ、その美しさを身を持って実感しなければ我の気が収まらぬ!!」

 

「だったら私のを揉めばいいやん!!」

 

「貧乳」

 

「なんやてぇぇぇぇ!!」

 

ウガーーーとはやてがまた叫ぶ

事の始まりはちょうど数十分前、ケントが六課に転移してきたすぐ後だ、ケントに振り回されそうになったエリオはすぐにストラーダを使ってケント・コルテットが六課に来ている事と様子がおかしい事を身近な人物達、隊長陣やFW陣に連絡、ぶっちゃけ人手が欲しかったのだが……

そして一番近くにいたフェイトが様子を見にケントに近付き………

 

 

出会い頭に胸を揉まれた

 

 

当然純粋な彼女がそんな事に対応出来る筈がない、それに相手は自分の好きな人だったりもする

本気で『嫌』というわけでも無く突然の事に対応が出来ない、その間もケントは胸を揉みながらよく分からない感想を言っていく

そしてそれを見つけたはやてがバインドで捕縛、暴れるケントを後から来たFW陣に持ってこさせてグルグル巻きというわけだ

 

そうして連れて来たのは部隊長室、コルテットにも連絡を入れすぐに迎えをよこすと言って来たのだが……問題は今のケントだ

 

「はぁ、このまま帰すって事は出来へんよな~」

 

「はやてちゃん、ケントさんどうしちゃったの?」

 

なのはが不思議そうにはやてに尋ねる、聞かれたはやては一度だけ天を仰いだ後にポツポツと話し始める

 

「う~ん、もう十年ぐらい前になるんかな~、この中でも知ってるのはおるやろ?『コルテット長男ご乱心』って」

 

「あっ、はい、聞いたことあります、なんでもコスプレをして町を練り歩いたとか」

 

「私も聞いた事あるかな……裁判がちょうど終わったんだよね」

 

ティアナとフェイトが手を上げる、ほとんどは知らないようだが………

 

「そうそう、あの時は色々な意味で大変やったんよ~、半ケツのゴスロリ服でいきなり『妻になってくれ!!』やからな~、いつもの男前な顔はなんかすごい美人やったしテンションは妙に高いし、性格がいつもの真逆やったからな~」

 

「半ケツ………」

 

「ゴスロリ………」

 

何故だろうか、みんなのケントを見る目が少し冷たくなった感じがする

 

「あの時はまだ九歳やからあの色々な行動も許せたけど……もう、な~、大抵の人は身長で『子供の仕業』とか言って許してくれるやろうけどぜったい正気に戻ったら塞ぎ込んでまうし、早めに治したるのがいいな~」

 

「その時はどうやって治したんですか?」

 

「アホ毛を再生させるんよ」

 

そう言って口にガムテープが貼られているケントに近づく、立場的には大問題なのだがこの際仕方が無い、ケント自身だってこれ以上暴走するのは嫌だろう

 

「こうやってアホ毛を立たせれば」

 

はやてがケントの毛の一部を掴む、ケントに近づく時にカッターシャツのボタンを少し外して少し色っぽくしたのは気のせいだろうか?

 

数秒間アホ毛をそのままの体制で維持し、アホ毛を離す

 

 

ふにゃあ

 

 

「…………あれ?」

 

アホ毛は……立たない

何度も何度も挑戦するが立たない、その間も口を縛られているケントはロープをどうにして外そうと暴れる

 

「お、おかしいな~、こうやったら治る筈やのに」

 

「治らないね」

 

「治らないですね」

 

「治らねーな」

 

「治らないようです」

 

「治らないわね~」

 

「ワンッ!!」

 

周りに味方はいないらしい

 

「え、えぇ、ちょっとまちい、だったらどうやって元にもどすん!?」

 

「え~と、八神部隊長、十年前は他に誰がいたんですか?」

 

普段は頭が悪いスバルがはやてに問いかける

他にケントの事を知っている人間がいるならはやてには無い知識を与えてくれるかもしれない

 

「十年前にはたしか……クロノ君にカリムにロッサやったかなーー、シスターシャッハは逃げてたし。…ん?ちょっと待ってよ……あの時確か……」

 

顎に手を乗せて考えるはやて、周りはその様子をじっと見守る

 

「……あの時は確かクロノ君がアホ毛を『凍らした』んやったかな……そうやって『固定』してた気がする」

 

「だったら同じく方法で」

 

「アーテム・デス・アイセス?」

 

「ケント死んじゃうよ」

 

いくら氷結魔法がそれしか無いにしても死んでしまう

 

「うぬ、やはり悩みはつきぬな、我であれば相談に乗るぞ」

 

「ありがとな~、じゃあ……って何時の間に抜け出しとんねん!?」

 

「うぬ、手強いロープだったが我の敵ではない、少し本気を出せばそれで終わりぞ……っておお」

 

「くっ、外した」

 

はやてがすかさずバインドを仕掛けるがケントはそれを難なくかわす、周りは知らないがケントの直感は今だ健在だ

 

「危ないではないかはやてよ、あまり反抗するならばいくら我でも怒らないといけなくなるぞ?」

 

「あんたをあんまり野放しにしたら色々とたいへんやねん!!みんな!!もう一度捕まえるで!!」

 

その声を聞いて周りの皆が動く、そして空中に展開されるのは

 

「ひ、卑怯ではないか!!こんなにも大量のバインドを避けろなど不可能だ!!」

 

「卑怯もなんもない!!というわけでリイン!!思いっきりやったって!!」

 

「はいです!!失礼しますよケントさん!!『凍てつく足枷』!!」

 

リインの声と共に現れるのは氷の柱

ケントの真下から現れたそれはケントを捕らえようとするが大量のバインドが設置された中ケントは避ける

 

バインドに触れないように一歩、体制をフラつかせながら一歩……そして…

 

「うおっ!!」

 

「えっ?」

 

フェイトの胸にダイブした 

 

「…………………」

 

「…………………」

 

『…………………』

 

静寂が空間を支配する

はっきり言って気まずい、フェイト然り周り然り

 

「…………フェイト」

 

「えっ!?きゃっ、はうっ」

 

ケントが低い声を上げたかと思うとフェイトの肩に手をおく

彼女の鼻にクシャクシャと何かが当たる、よくよくみるとそこには見慣れた毛が……気のせいだろうか、少し電気を浴びてるような気が……

 

「えっと、こんなのでよかったですか?」

 

みんなの目線が一人に集まる、そこにはエリオ

ストラーダの先からは微量の電気が流れており、それがケントのアホ毛を形成している

 

ケントはフェイトの肩に手をおいたまま胸に埋れた顔を上げる、そして一言

 

 

 

「すみませんでしたぁぁぁぁぁ!!」

 

 

苦労は絶えないらしい

 

 


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