リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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ネリア

 

「御早う御座います」

 

「ああ、おはよう」

 

いつもと変わらない朝、近くにいたメイドが俺を起こして来る

学校を卒業してから対して行く場所も無い俺は殆ど家の中で過ごす、まぁそう言ってもまだこの家、知らない場所の方が多いのだが……

顔を洗い、髪を整える

ただてさえ長い髪だ、それでもこのアホ毛だけは凛々しく堂々と立っているのは……どういう原理なのだろうか?

後ろで一つに縛り、服を着替える

それにしても少し長いな……やはりここはズバッと切ってもらうか……そうつぶやいたら周りのメイド達に全力で説得された。特別な思い入れでもあんのかね~

ドアを開けて食事に向かう、後ろからは家の中だと言うのに大名行列の様な列……もう知らん

で、いつも通りいきすぎた料理の待つ食堂へ………いや、今となっては逆に足りないぐらいなのだが……

 

どでかいテーブルの中心に座り、大皿を一つ丸々平らげている金髪の少女……ったく

 

「あ、おはようございますお兄様」

 

「おはよう『ネリア』、ご飯粒付いてるぞ」

 

「キャッ」

 

慌てて周りのメイドからタオルを貰うネリア

………さて、あれからの話をしよう

 

クロノの結婚式は無事終わり、そろそろクロノのエイミィさんが第一子をもうけるのではないかというこの頃

俺が保護したクローンは結婚式が終わった三日後に目を覚ましたのだが……その後が大変だった

まぁ暴れるわ暴れるわ、また自分が捕まったのではないかと誤解していたらしくその時そばにいたフェイトとガチの戦闘になった

結果はフェイトが無事拘束したのだが……それでも無傷ではない

しかし……いくら魔力量が人以上だとは言えデバイス無しであのフェイトとやりあえるなんてな……はやてとガチバトルしたら町の一つ吹っ飛ぶんじゃないか?

 

で、駆けつけた俺が事情を説明、フェイトが結界を張ってくれたから助かったがもし病院を破壊していたらいくら俺でも庇いきれなかった、養子にするにしても内部からの反発があっただろうし

 

そして彼女、自分がクローンだという事は認識しているらしい

そして……俺がオリジナルだという事も……

そこから彼女に研究所内の事を聞いた、なんでも『クローン』として成功したのは彼女一人で後の全員が死んでしまっているらしいのだ

原因は不明、なんでも制作途中になんらかの『拒絶』を実験体が示し命を授かる前に使い物にならなくなったとか……彼女が生き延びたのは本当の偶然

拒絶というのは……もしかしたら俺が『転生者』だからなのかもしれないな…、

世界の修正力というかなんというか……彼女も一度は制作途中で死にかけているらしいし……

 

で、やはりたった一つの成功例である彼女には実験の日々、研究目的は俺が持つ『破壊』と『皇帝特権』の完全なるコピー

だが……それに関しては失敗だった、彼女にあったのはその莫大な魔力、それだけならばまだ使い道はあるのだがあいにく、そこで研究されていたのは俺のレアスキルについて、魔力の研究に関しては専門外

なので研究所通しの引き渡しの時に……自らにかかっていたリミッターをその魔力で強引に破壊して脱走……辛かっただろうに……

基本そういうリミッターは力尽くで解こうとするとそれに対しての防衛プログラムが施してある、それが非人道的な研究の実験台ならなおさらだ

 

激痛と苦しみの中で何とかその場から逃げ出した彼女を待っていたのは銃弾の雨、体をぶつけ、いたるところに怪我を負いながらも逃げ、足を撃たれた事で人としての本能、いわゆる『火事場の馬鹿力』の様なものが働き周りを木っ端微塵に粉砕した

これが彼女の辿って来た道のりだ

 

体年齢は14歳、生まれてからはまだたったの二年、それでも一般常識は生まれた時から見についていたようだが……

プロジェクトFのちょっとした応用で生み出された彼女だが肝心の記憶の方は全くだと言う事、これも俺が転生者だからだろう

前世の記憶は俺の脳に保管されているのではなく『魂に埋め込まれている』という方が近いのだろう……これに関しては安心した

 

そして、次は俺

 

何だかんだ言っていたが、当然の事ながら『俺一人』で全てが上手くいくなんて思っていない

いきなり『こいつを妹にする』なんて言って瓜二つの少女を前に出すなんて出来ない、俺何者だよ………

なので………彼女が俺のクローンだと言う事を爺に説明した……かなり驚いていた爺だったが俺の話を信じ、行動してくれた

『彼女は皆と同じ様に育てたかった』、『コルテットの長女』として一般に公開、『養子』なんて違和感マックスな方法ではなく『元からいたコルテット』として彼女を迎えい 入れた

両親が口を挟む時間さえも与えないスピード解決、黒に限りなく近い両親だが泣く泣く認めてくれている事にただ願うしかない

 

そういう長ったらしい経緯もあって今では彼女は俺の妹として、コルテットの長女として生活している

当然、言い方が悪いが『仮初め』の長女である彼女に俺の様な発言力はないのだが………それでもやはり世間一般には衝撃を与えたな

 

詳しい中身を知らないカリムとはやては掴みかかってきたし……何だよ『禁断の恋』って

そんなもんしてねぇよ……俺なんかに恋人役が出来るならそれはもう狂喜乱舞するのだが……『俺』を見てくれる人間なんかこの世界どこ探してもいないしな……いや、今では俺と同じ立場にいるネリアは分かってくれると思うのだが………

 

あ、『ネリア』というのは妹の名前、女だしセイバーだからな……真名である『ネロ』と『アルトリア』から少しずつとって『ネリア』

名前をつけてあげた時の喜びようは半端なかったな……今までは『No.14』とかいう番号だったらしいし………

 

「食べないのですか?お兄様」

 

「ああ、食べるよ」

 

ネリアの一声で我に返る

ゆっくりとネリアの隣に座って料理を食べる……朝から肉っておかしくないか?

 

それにしても……よく食べるものだ……

ネリア、俺が持って生まれたセイバー特典やレアスキルは受け継がなかったが一部受け継いだ?ものもあるらしい……

これがその食欲、ガツガツ食べて行儀が悪い訳ではないのだが食べる量が俺の五倍はある、その小さな体の一体どこに収納しているんだ?

それにネリア、俺の様に『選定の剣』によって身長が止まる事もないからな……いつ抜かれる事やら……

 

「おかわりお願いします、お兄様はおかわりどうしますか?」

 

「やめとく、これで十分だ」

 

そして彼女、俺がオリジナルだと知っているのに俺に対して憎悪の気持ちなどは持っていないそうだ

彼女曰く『そんなのは別に関係ない』

そればかりか今では俺の事を『お兄様』と言ってくる始末……

 

ハッキリ言って憎悪の言葉を浴びせられて、恨まれる方が安心出来た

 

ここまで素直だと……言い方が悪いが気味が悪い

 

「ふぅ、ごちそうさまでした」

 

「ごちそうさまでした」

 

まぁ、素直な事には変わりがないのだ……今はしばらく様子見だな

 


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