「ケ、ケント・コルテット!?」
「なんで彼がここに!?」
病院内から驚きの声が次々と上がる………あまり騒ぎ立てるなよ、すっごいうっとおしいから………
「で、彼女の容体は?」
「は、はい!!主にリンカーコアの~」
対応して来た医師が彼女の説明をする
………腹の部分がかなり抉られたらしいな、巨大な刃物でグサリッてか?
そんでもって直接的にリンカーコアを内部から攻撃され、ほぼ原型を保っていない
意識不明の重体であり、体もおかしい程衰弱していた為危険な状態、助かっても歩く事はまず不可能……ね……
ったく、いくら『世界の修正力』が動いても無理なもんは無理なんだぞ?
よく原作ではここから這い上がって来たもんだ、俺には到底無理だな
まぁ……まずは………
「あ~、今手術中だろ?案内しろ」
「は、はい、ですがコルテットの技術を最大限に活用しましてもまだ……」
「いいからいいから」
なされるがままに案内してくれる医師
周りの付き人が止めてくるが……少し黙ってくれ
「ケント様!?何故この様な所に!?」
「ん?ああ、爺か……いやなに、現場の指揮を高めようと思ってね」
「いけませぬケント様!!今も何処から狙われているかわかりませぬぞ!!」
「………はぁ」
爺の気持ちも分かる、てか医師免許ももたない俺がここに来たって役にたたない事ぐらい知っている
でも……なぁ……
「.……………」
「……………」
俺の腕を掴んで離さないはやて
二年間でよく歩ける様になったもんだ
はっきり言って強く掴まれてるので動きにくいのだが……離す気は無いらしい
彼女も直ぐになのはの元へ駆けつけたい筈なのだが……俺が行かない限りはここから動かないと思う
と、いうのは人間、大切な人が傷ついた事を理解したくないからだ、なのはのいる場所に近づけば近づく程、《彼女が死ぬかもしれない》という現実を受け入れなければならない
それが怖いのだろう……
だが、離れて欲しいのは事実
だって………膨らみかけの胸が……その、ずっと当たってる訳で………
………駄目だ駄目だ、雑念は退散
医師を急かして案内させる、爺も最初は止めたが……後からは諦めたのか何も言わなくなった
少しづつ近づく手術室……はやてが少し躊躇っているのが分かる………
角の向こう側……直感で分かる、あそこだ
そう、曲がろうとしたのだが
「主!!」
「シグ……ナム?」
後ろから声、振り向いて見るとバリアジャケット姿のシグナム………はやてよ、お前誰にも言わずに俺の所に来たのか?
むっちゃ『探してました』感がするんだけど
「はやて!!」
「はやてちゃん!?」
シグナムの声に気づいたのか、追って出てきた守護騎士達……
さらにそれに便乗する形で出てくる原作キャラ……クロノは……いないらしい……
まああいつは直ぐに抜け出して駆けつけれる事が立場上出来ないからな、今はいてくれた方が助かったけど……
てか、挟まれちまったじゃねーか、後ろは守護騎士で前は原作キャラ……それに反応してか俺の付き人達が迎撃体制に入ってるし……相手は女子供だぞ?そんなにマジになんなよ
いや、でもハニートラップ仕掛けて来たのってみんなシグナムみたいな体型の人だったよな、『友達になりたい』とか言って近づいて来たのも原作キャラと同じぐらいの年齢の奴ばっかだし……案外間違った反応じゃないのか?
「あ~あ~、そんなに硬くなるなっつーの、あいつらは大丈夫だ」
「ですが」
「えっと……ケント君でしたっけ?」
代表?してシャマルが前に出る
……確か直接会った事があるのはシャマルだけだったよな、覚えていたのか?
「あの、なんではやてちゃんが?」
「ああ、それは………」
いきさつを簡潔に話す………こうやって話してみるとけっこう恥ずかしいもんだな
だって泣き付かれたんだぜ?こんな可愛い子に……
そんな姿は好きな男に見せろっつーの、原作キャラはみんな可愛いから学校でも人気高いだろ
学年でも一人二人はイケメンもいる筈だしな
全く、今回はしょうがなかったとは言え……俺にはやてはつり合わないし……
「あの………」
「ん、どうした?」
「なのはは……助かりますよね……」
金髪の子が前に出る、その目には……涙
全く、愛されてんな~主人公、マジでお互いを大切に思っている友達じゃなきゃ泣くなんて無理だぞ、羨ましいにも程がある
俺には、俺の為に泣いてくれる友だちなんていないからな
「ああ、大丈夫、それぐらい出来ないとなんの為の技術だか?」
「ホントに?」
「ホントだ」
そう、その為の技術だろ?
いくつもの実験をして、いくつもの子供の血を浴びた……技術だろ?
こんな時に役に立たなくてどうすんだ……
さて……
「爺、少し話がある」
「なんでございましょうか?」
「俺の……力のカラクリについてだ」
その日、ケント・コルテットのレアスキルに『皇帝特権』が管理局から認められ
免許を持たない少年が、死の淵にいた少女をその手で救い出したのは、世に大きく知られる事となる