リリカルな世界で苦労します   作:アカルト

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だから俺は

 

 

お化け屋敷というのはデートのありふれた、またお決まりのようなイベントであり、少女漫画、ライトノベルなどでもよく見かける

王道としては少女漫画ではがっこいい男の子が何の取り柄もない自分を守ってくれる、ライトノベルだったら一人の男子を巡っての争奪戦であったり色々……まぁそれでも、どちらのイベントでも共通して言えるのは『男は強い』だろうか?

何事でもそうだ、女の子がピンチの時に男の子が守る、そこでキュンときたり距離が近づいたりラッキースケベがあったり……ただあえてここで言おう、俺はそんな展開一切期待していない

とゆうか女の子、女性と言っても俺の周りにはたくましい女性しかいないし何よりもそういう場所へは行きたくない、もっと行ってしまえば男と女の立場が逆になる恐れがあるのだ

 

俺という人間はホラー系が大嫌いだ、それはもうホントに、てかグロい系全般が不可能

心霊系、ゾンビ系、映画もテレビもゲームも無理、自分は平和なRPGや格闘ゲームで充分なのです、バイオ○ザードとかでも無理なのです

あれだね、やっぱりポケ○ンやマ○オが一番だね、平和万歳!!

 

「それでは、お気をつけて」

 

「あ、はい」

 

「暗いね」

 

そして間違えて、というか不注意で入ってしまったここ

どうやら典型的なお化け屋敷とかではないらしく一種の乗り物に乗って移動するそうだ、つまりはアトラクション

定員は一つにつき四人までらしく前後、ちなみに俺たちは前で後ろにはカップルが乗っている

シートベルトを締めた事を確認されゆっくり進んで行く乗り物、こういうアトラクションだから怖くないのか?とか思うが舐めたらいけない、直感Aを

俺がホラー系が嫌いな理由の一つ、それはこの直感A

だいたい分かってしまうのだ、嫌な物や怖い物がどこで出てくるかが

皇帝特権でどうにかすればいいとか考えたが無理、てか何その技術?

皇帝特権は技術を一流にするスキルであって怖さを軽減させるスキルじゃない、こんなのクソ程にも役に立たない

 

乗り物が暗闇の中へ移動し、辺りは何も見えなくなる

……っあ

 

「……まぁ、いいか」

 

ある程度予想出来てた事だし大丈夫だろ、てかこんなところであの二時間が活躍したか、世の中何があるかわかんないな

その前に……

 

「ギヤァァァァァァ!!」

 

盛大に叫んだ

 

 

 

 

 

 

 

「意外な所に弱点ってあるんだね、無理しないで良かったのに」

 

「あそこでやめるなんて男じゃないだろ、それにしてもフェイトはこういうの慣れてたのか?よく分からなかったけど」

 

「一度来た事があったからね」

 

そうですか

 

アトラクションが終わって我慢出来ずにベンチに持たれかかる、体はまだ熱くて倒れてしまいそうだ

そんな俺の隣で座っているフェイトはさっきのアトラクションなどどこ吹く風という感じで別段怖い物でもなかったようだ、そんな物でギャーギャー騒いでいた俺はさぞ耳障りだっただろう

 

「と、いうわけで心霊関連での悩み相談は今後力になれないと思ってくれ」

 

「そんな相談するつもりはないんだけどな~、あ、でもケントにやってもらいたい事とかがあると時はそういう写真を持って行けばいいのかな?」

 

「合成は意味ないぞ、直感で分かるから」

 

「ある意味凄いねそれは」

 

本物か偽物かを見分けるのは簡単だ、見た瞬間どっちか分かる

じゃあそっち系の仕事就けるんじゃね?などと甘い考えをしてはいけない、殆どは偽物だがごくたまに本物も混じっている、本物が出てくるたびに絶叫していたら意味ないだろ

 

「それと……私達の後ろにいた二人、どこに行っちゃったんだろうね、降りる時にはいなかったけど」

 

「ああ、あの二人ね」

 

フェイトが話した後ろの二人、まぁカップルなのだが俺たちが降りる時にはもういなかった、というか途中から

どうやら待ち合わせ二時間で作っていた迎撃術式が発動したらしい、あのナンパ撃退用の

アトラクション中、しかも彼女の前でナンパ、という事はないだろうから恐らくテロリストやら殺し屋やらそこら辺の人間なのだろう、基本敵意とか向けられない限りは発動しないわけだし

まあ真っ暗闇、しかもアトラクション内で動きが制限させる場だったのだ、殺すにしろ誘拐するにしろやりやすい場である

それでも勘弁してほしいものだ、慣れたからと言っても今日しなくてもいいのに

 

「え、それっt「うわぁぁぁん」

 

……遊園地とか大勢の人が集まる場所でこういうのが起きるのなんて本当の漫画やらアニメだけだと思ってたけど違うらしい

迷子の迷子の子猫さん、盛大に泣いていらっしゃる

それが目の前で起こったのだ、優しすぎるフェイトはもちろんの事俺だって見て見ぬ振りをする程鬼じゃない、そんな事すりゃ後から罪悪感が塊となって押し寄せてきそうだ

でもなぁ、迷子なら迷子でいいんだけど……ちゃんと面倒見やがれあの野郎

 

「あれ?カレル?」

 

「ひぐっ、ふぁ、おねーちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「デュランダルの錆にしてやろうか」

 

「まずはカレルを見つけてくれてありがとう、そして色々と邪魔をしてすまない……だからその……威圧というか何と言うか、それをやめてほしいんだが」

 

黙れこの畜生が、俺がどんな思いをしてお化け屋敷に乗り込んだか分かるか?どれだけの勇気を振り絞ってフェイトを誘ったか分かるか?

目の前にいるのは親友でもあり幼馴染の提督様、あれからカレルを見つけた事を連絡して合流、ちなみに俺達を見たエイミィさんは申し訳なさそうに頭を下げていた

だがそんな事子供達には関係無し、フェイトはカレル、リエラからしたら叔母さんに当たる人間なのだ、あんなに若いのに

そのせいで一緒に回ろ~みたいに泣きつかれて今現在フェイト、エイミィさん、カレルとリエラでアトラクションに並んでいる

そして俺等二人はその待ち、男二人でレストラン

……誰が好き好んで

 

「で、提督様のお仕事は大丈夫なのか、家族サービスしろと言ったのは俺だけどさ」

 

「ん、一昨日帰って来てね、短いけど少しの間休みをもらえたよ」

 

そーですかいあーですかい

 

「で、どうなんだ、調子は?」

 

「お前そんな事に興味あったか?」

 

「妹だぞ?」

 

その兄に詰め寄られてる気分にもなれ

 

「調子とかそんなんじゃねーよ、ただ楽しんでただけ」

 

「……はぁ、まあいい」

 

何故か呆れられる

 

「そういえばケントは母さんと会ったこと無かったよな……うん、どうせ暇なんだろ?」

 

「その暇で当然みたいな言い方やめろ、これでも色々してんだから」

 

……もうやる事ねーんだけど

そういえばと思ってデュランダルに入れているフォルダを弄る……空中に出て来たのはクソデッカいメモリーカード的な何か……てかこれだけデカイとバッテリーとか何かに見える

 

「ほれ、頼まれてたやつ」

 

「え、うおっ!?」

 

あまりの重量に驚いたのだろう、一度落としかけたのをお得意のバインドを使い空中にギリギリ固定する

ったく、俺の努力の結晶なんだから大切にしろよ

 

「管理局用のメインサーバーだよ、犯罪者さん達からしたら喉から手が出る程ほしいだろうな、プロテクトには自信ある」

 

「ちょっ、早すぎないか!?それにこんな場所で渡す事もないだろう!!」

 

お前のデュランダルの格納庫にでも仕舞っとけ

あと早いのは暇だから、暇人万歳ニート最強!!

 

「どんなのかは局に帰って解析すりゃ分かる、文句不満その他諸々あるならまた言ってくれ、その時はその時でまた弄るから」

 

「いやいや、それにこんなに小さいのか?管理局のメインサーバーになるんだぞ?」

 

「軽量化は技術力の象徴だからな、大丈夫、それを今の時代で再現しようとしたらスーパーコンピューターいくらあっても足りないから」

 

俺は鍵知ってる様なもんだから開けられるけど本気で相手どるなら黄金劇場使わないと無理かもな、そこまでのハッカーがいるとは考えづらいから大丈夫だとは思うけど

 

「時と場所を考えてほしかった」

 

「お前いつもどっか行ってるから次っていつになるか分からないし、渡せる時に渡しておくのが一番だろ」

 

「まぁ、そうなんだが」

 

そうだろう

 

 

目の前に出されているメロンソーダを口に含む、今からクロノ達と回るのか……まぁいいか、実際俺なんかはいつも暇なんだしまた勇気出して誘えばきっとOKしてくれるだろ、多分、うん、そう思いたい

取り合えず今日のところはそう割り切る、フェイトも俺も子供のお願いを無視したりは出来ないし……うん

 

「あっ、出て来たな」

 

「重ね重ねホントにすまん」

 

いやもういいんだよ、よく考えたらこっちも家族団欒を邪魔した様なもんなんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから色々なアトラクションに乗った、スライダーやらメリーゴーランドやら

基本二人の意思によるものだったがそれもそれで良かったと思う、今考えればどうせ俺なら最終的にジタバタしてダメダメだった可能性もあるし……そう考えれば二人にリードされたような形……もっと言えば助けられたのかもしれない

一つ残念だったのは遊園地の代名詞とも言える観覧車も一緒だったということか、まぁそれも割り切ろう、そうでもしないとやっていけない

 

もうすぐ日がくれる、夜には恒例のパレードがあるだろう

人が集まり始める、人間こういうのは前で見たいというのが当然であり少し早めに俺たちも陣取る

あと三十分もすればパレードは始まる、そんな時

 

「御免ね二人とも、お姉さん達ちょっと行かないといけない場所が出来ちゃったんだ」

 

「え~」

 

「え~」

 

二人が残念そうな声をあげる、というか俺も呆然だ

もちろんそんな場所などないし話し合わせたわけでもない、というかフェイトは子供好きであるため帰る時まで離れないとも思っていた

そうなんだが……

 

「ね、ケント」

 

「え、あ、うん」

 

反射的にそう答えてしまう

二人はまだ不満そうな顔をしているがお姉さんがいうならしょうがない、といった感じなのだろうか

その様子を見てエイミィさんが説得してくれる

隣にいるクロノは腕を組んで見守っているのだが……っておい、一家の大黒柱としてなんかしろよ

最終的には諦めたのか二人は「またね」と、それに返す様に俺達も「またね」と

フェイトに腕を掴まれる……どこに行くのかは分からない

遠くなっていくクロノ達の姿を見ながら、遅れないようについていく

 

 

 

 

 

 

 

ついた場所は、人気のない場所だった

人工的に作られた湖が見える小さな公園の様なところ……ちょっとした休憩などにはもってこいなのかもしれない

当然パレードが近づいた今の時間には誰もおらずただただキャラクターが書かれた遊具や自販機があるだけなのだが

 

なんでこんな場所に来たのかは知らないが何もないというのも心もとない、座ろっか、というフェイトに対して自販機で飲み物だけ買ってくるといい、二人分のお茶を買う

気温は暑くもなく寒くもない適温、お茶を彼女に渡した後に隣に腰掛ける……あと十分もしたら暗くなるだろう

 

「御免ね、パレードがあるんだけど……ちょっと話さないといけない事があって」

 

「まぁいいけど、どうかしたのか?改まって」

 

何か重い話っぽい、少なくともキャーキャー騒げる類ではないだろう

実際パレードも絶対に見たいなどとも思わないわけだしお茶を飲みながら聞き返す、言い辛いことならゆっくりでいいしそこはフェイトのペースでいい

 

「その……ホントはもっと早くに言わないといけなかったんだけどね……怖くて、でも今日一緒にいて思ったんだ……逃げられない事なんだって」

 

深刻そうな顔、どちらかと言えば不安……なのだろうか?

というかもっと早くに言わないといけなかった?

 

「ケントは私に優しくしてくれるし、笑いかけてくれるし、今も一緒に暮らしてる……だから、ちゃんと話そうって」

 

まっすぐにこっちを見つめてくる彼女、それにつられて俺も真剣な表情になってしまう

……え、そんな難しい事でもあるの?

 

「その……私ね」

 

 

 

「ちゃんとした人間じゃないんだ」

 

 

 

察し、というか大体わかった

今思えば出会って十年ちょっと、彼女の口からその事は聞いてない気がする

 

そこからゆっくりと語り出す自分自身の過去、PT事件の全貌、彼女が俺に伝えたかったのは自分が『アリシア』という人間を元に作られたクローンであって普通の生まれ方をしていないと

そうだな、確かに原作では自分という存在を割り切っているがそれは事実であって逃れる事の出来ない現実、その時周りは受け入れてくれたと言っても今はどうか分からない

だってそうだろ?

自分の自己紹介の時に『私は○○のクローンです』なんて言うか?

答えはNO

そのせいでもしかするとそれまで親密な関係にあった人間と距離をおかれる事になるかもしれないし軽蔑されるかもしれない、悪ければ化物扱いだ

そんな話を彼女はしてくれている……それはどれほどの勇気が必要なのだろうか

でも、だからこそ

 

「フェイト、それ俺も知ってるよ」

 

「ふぇ?」

 

あえてそれを口にする

確かに原作知識もある、だけれども

 

「で、でも私、今まで一度も、他の人には……」

 

「じゃあ聞くけどフェイト、コルテットの次期当主第一候補の人間の周りにいる人間、みんな信用してると思ってる?いつもSPゴロゴロ連れて歩かせる様な組織が」

 

これも答えはNO、そもそもコルテットが子供時代の俺に望んでいたのはもっとほら、高貴な人間との交友関係であり一般人ではない、その一般人だって下心のある奴ばかりが近寄ってくるのだ、当然、害があるのか無いのかぐらいは調べるだろう

 

「こんな言い方をするのは良くないんだけど……フェイトと会った次の日に伝えられたよ、前科持ちのクローンだって、危険指定の人物だって」

 

「えっ」

 

ホントは当主が決める事なんだろうけどあのザマだったんだし、決定権は当然俺にある

だけど……さ

 

「俺は今もこうして側にいる、それが答えなんじゃないのか?」

 

「あ」

 

ま、あの時はこの事実を伝えられた時『いや、知ってるし、だから?』みたいな感じで病んでたからな……それはそれでしょうがないんだろうけど

 

「それにそんな事気にしてたらネリアは妹になってないしヴィヴィオとも暮らしていけねぇよ、それに魔法なんだから結局は何でもアリだと割り切れるし」

 

それを考えてフェイトも話せたんだと思うけどな

ちなみに危険指定の人物は他にもはやてとか守護騎士、なのは撃墜事件のあの時は場にいた奴殆どだよな、なのはだって管理外世界の得体の知れない存在だったんだし

まぁ結局それも『知ってるし、興味ないからどうでもいい』だったんだが……普通のお坊っちゃまなら気持ち悪がって勝手に嫌悪するんだろうな、俺は例外だからいいとして

ま、そういうわけで

 

「んな事気にすんなよ、俺は少なくともどうでもいい」

 

どうでもいい、それが一番

大丈夫とか別にとかでもなく、ただただどうでもいい

 

「って、泣く程の事なのか?」

 

「え、あ、ご、ごめんね」

 

いや、謝らなくてもいいのに

ハンカチを渡して涙を拭かせる

涙はすぐに収まった、一度「よし」と言ったあと立ち上がり、俺の手をとる

 

「時間とらせてごめんね、パレード始まっちゃうから行こうか」

 

気付けばもう空は暗い、遠くからはガヤガヤという声が聞こえてくる

俺の手を放してその場でクルリと回るフェイト、その姿が……とても愛おしく見えて

 

「?、どうしたの?」

 

涙の後が見える、頬は赤い

心は空っぽ、何も考えずに……口が開く

 

「俺も、ちょっとフェイトに話さない事があるんだ」

 

「ん?」

 

俺の表情が緩い事を知っての事だろう、フェイトの表情も柔らかい

それでもしっかり聞いてくれるのが、嬉しくて

 

「俺さ、一時期本気で笑えなくなった時があったんだ」

 

今となっては懐かしくも感じる……どうしてああなったのかさえもハッキリとしない

ただ……

 

「そんな中で、必死に俺を励ましてくれたその人が、眩しくて」

 

何度助けられたか分からない、ただ、気がつけば自然と笑える様になっていて

 

「なのに、本気で信頼していた人に裏切られて」

 

燃える屋敷と血だらけの妹、今でも忘れない

 

「心が壊れそうになっている時に見た、その人の顔が、ホントに、美しくて」

 

雨の中俺の為に涙を流してくれたその顔が、ホントに綺麗で

 

「俺はそれに救われた」

 

自分の為に、本気で涙を流してくれる人がいる事に

 

「だから」

 

 

 

 

 

「俺は、フェイトの事が好きなんだ」

 

 

生まれて初めて、自分の気持ちを口にする

 

ほんの少しの間の後、彼女から返されたのは

 

唇に触れる、温かなぬくもりだった

 

 

 




それでも世の中あまくない、青髭の旦那はアカルトが尊敬する人間の一人
色々とちゃんと書けてるか心配です

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