真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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2章 黄巾大乱
2-1 黄巾の乱


「客将だけど、士郎くんが仲間になってくれましたーっ。」

 

朝、全員が集まって食事を取る前に聖が昨日の報告をした。

 

「とりあえずよろしく頼む。」

 

士郎が深々と頭を下げながらあいさつをする。

 

「よかったですっ!

やっぱり心強いですねっ!」

 

「はい・・・私としても・・非常に嬉しいです・・・」

 

「ふう・・・とりあえずよろしく頼む。」

 

どうやらここにいる全員は賛成のようだ。

 

まあ太守である聖たってのお願いなので、配下になる水蓮たちは強く反対するわけにもいかないし、

今更の事である。

 

「だけど聖、蓬梅や鈴梅に言わなくても大丈夫なの?」

 

「・・・たいじょうぶだよー・・・多分・・・」

 

聖は一瞬「うっ・・」という顔を浮かべるが、強引に納得した。

 

「えっと・・・たしかカイ良さまとカイ越さまでしたよねっ?」

 

「そうよ。この国の内政を仕切っているのよ。」

 

玖遠の質問に水蓮が答える。

 

「なにか・・・問題でも・・・?」

 

「ああ・・・あいつら姉妹は聖が大好きだから・・・

玖遠や援里みたいに女ならともかく、士郎みたいに男が近づくのを嫌がるんのよね・・・」

 

援理の質問に、水蓮が頭を悩ませながら答える。

 

「聖が大好きでしょうが無いのは水蓮も一緒じゃ・・・」

 

「な・・・なな・・・・何のことだっ!

私にはそんな覚えは無いぞっ!」

 

士郎の指摘に水蓮は顔を真っ赤にして否定する。

 

すると、

 

「そうなんだ・・・水蓮ちゃん、私のこと好きじゃないんだ・・・」

 

そこには落ち込んだ聖がいた。

 

「え・・ええっ!聖ちがうわよっ、そんなことないからっ!

・・・・・しーろーうーっー」

 

「ええっ、なんでさっ!」

 

「とりあえずお前がわるいーっ!」

 

水蓮が士郎を追いかける。

昨日の再現である。

 

「・・・賑やか・・・」

 

「あはははは・・・まあいい事ですよっ・・・」

 

巻き込まれないように二人から距離をとった玖遠と援里は、

のんびりと士郎お手製の朝食を食べることにした。

 

「このお汁っておいしいですねっ!」

 

「・・・じゃがいもを・・・磨り潰して作ってました・・・」

 

「なんか、ぽたーじゅって言うんだって。」

 

いつの間にか聖も加わってのんびりと朝食を食べる。

 

「お前がいると調子が狂うっ!何をしたーっ!」

 

「何もしてないって!」

 

「・・・やっぱり士郎さんのお料理はおいしいですっ。」

 

「・・・ですね・・・」

 

今日もいつも通りの朝になりそうだ(二人を除く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黄巾の乱・・・・ですか・・・・」

 

「うん、張角っていう人を中心にして、頭に黄色い布を巻いて反乱を起こしているから、

それを討伐せよ!

だって。」

 

今日の朝送られてきた「勅命」を読みながら聖が答えた。

 

「そういえば、先の戦でもそれらしいひとが大将でしたねっ。」

 

「そうだったな。」

 

先の戦で張曼成と対峙した玖遠と士郎が答える。

 

「それで・・・他には何か・・・?」

 

援里が、他に何か書いてあるのかを聞く。

 

「うん・・・まずは一週間後に、宛に居る黄巾党を西涼の董卓さんが討伐するから、私達もそれに参戦しろっていう指令になってるよ。」

 

「官軍はなにをしてるのよ・・・」

 

「宛を占拠されている時点で、もうまともには機能していないと思う。」

 

呆れながら話す水蓮に士郎が答える。

 

「それもそうね・・・

で、どうするの聖?」

 

水連の問いに、聖は一瞬考え、

 

「さすがに勅命だから・・・参加しないと、不敬罪に問われるからね・・・」

 

「分かったわ。とりあえずそれまで兵を休ませておくわね。」

 

「私も・・・宛に斥候を出しておきます・・・」

 

「うん。お願い水蓮ちゃん、援里ちゃん。」

 

「あのー私はどうすれば・・・」

 

皆の話に、途中からついていけなくなった玖遠があわあわしながら質問する。

 

「とりあえず私について来なさい。

兵への指示とか編成、いろいろ教える事があるから。」

 

「あのーーー、私そういうの苦手なんですけどっ・・・」

 

玖遠がかなり渋い顔をしながら答えるが、

 

「だめですっ!将軍になったんだから覚えてもらわないと!」

 

そのままズルズルと引きずられていく・・・

 

「うーーっ、士郎さーん」

 

「とりあえず俺もついて行くか。」

 

水蓮達に士郎が合流し、

 

「士郎も来るの?」

 

「ああ。兵の訓練とかなら手伝えると思うし、

どうせ勉強するなら一緒のほうがいいだろ。」

 

「助かるわ。

あ、終わったら手合わせをお願いしてもいい?鍛えなおしたいのよ。」

 

「了解した。」

 

「じゃあ私は街の偵察でも・・・」

 

と聖が街に行こうとすると、

 

「聖・・・・」

 

「な、なにかな水蓮ちゃん・・・」

 

右手に玖遠、左手に波及を持った水蓮に、じと目で睨まれ、

 

「せ・い・む・を・し・な・さ・い!」

 

「ううっ・・・」

 

「援里、見張りお願いできる?」

 

「はい・・・偵察を出したら・・・私もしますね・・・・」

 

「士郎くーん・・・」

 

水蓮と援里に逃げ道を塞がれた聖は士郎に助けを求めるが、

 

「し・ろ・う?」

 

「ごめん無理。」

 

水蓮のプレッシャーにあっけなく降参した。

 

「士郎さんは貰っていきますねっ。」

 

「次は私の番だからね!」

 

玖遠と聖がよく分からないバトルを始めている・・・

 

「?俺がどうかしたのか」

 

「気にしないほうが・・・いいかと・・・」

 

どたばたしたまま各々は自分の作業に移っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人の数が凄いな・・・」

 

水蓮たちとの訓練が終わった士郎は新野の街を歩いていた。

 

本格的に黄巾党の反乱が始まり、

戦火を逃れる為に荊州に大量の人が流れて来ているせいだった。

 

(これは街の拡張工事をする必要があるな・・・

それに工事を行えば仕事を増えるだろうし。)

 

いろいろ考え事をしながら歩いていると、本屋に積まれた本の隙間から、

ベレー帽が見える。

 

「あれは・・・援里?」

 

近づいて見てみると大量に積まれた本の塔に囲まれている援里がいた。

 

士郎が呆気にとられていると、援里の方から声をかけてきた。

 

「士郎・・・さん・・?・・どうか・・したんですか?」

 

「あ、ああ。ちょっとびっくりしただけだよ。

これ、全部読むのか?」

 

「一回は・・・・全部・・・・読んでますよ・・・」

 

「この量をか・・・」

 

士郎は積まれた本の山を見て絶句した・・・

 

「いまは何を読んでいるんだ」

 

士郎に聞かれた援里は本を差し出す。

 

それにはこう書いていた。

 

『悪の戦争教本ボリューム1』

 

「・・・・・・・なんなのさ・・・これ・・・」

 

「太公望さんが・・・書いた兵法書です・・・・すごい勉強になります・・・」

 

(三略・六韜じゃないのかそれは?

しかもボリューム1って、なんでそこは英語表記なんだ・・・・)

 

本当に今の時代が後漢なのか自信がもてなくなった士郎だった・・・

 

「そういえば政務の方・・・というより聖は大丈夫だったのか?」

 

朝に繰り広げられた事を思い出して、士郎が尋ねる。

 

「聖様は・・・・江夏の八俊と呼ばれているくらいの文化人ですから・・・

私は・・・昼からは・・・自由にしてもいいって・・・言われました。

士郎さんは・・・・何をしてたんですか?」

 

「ああ、俺も一段落ついたから、街を見て回ってたんだ。

俺も混ぜて貰ってもいいかな?」

 

士郎に聞かれた援里は少し困った顔を浮かべて、

 

「え・・・でも・・・本を読んでるだけですし・・

そんな私と一緒にいても・・面白くないですよ・・・」

 

「俺も、本を読む時はのんびりと静かに読むのが好きだしね。

それに、いい本があったら紹介してもらいたいし、援理と一緒にいるのは好きだぞ?」

 

そう言うと、少し赤くなった援里は横にずれ士郎の座るスペースを空けた。

 

士郎が「そういえば営業妨害になるんじゃ」と思って、店主の方を見ると

「ごゆっくりー」という返事が返ってきた。

 

「大丈夫なのか・・・」

 

とりあえず、援里の横に座った士郎はお勧めの本を受け取り、そのまま読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

ふと、周りを見渡す。

 

日が大分傾き、空は茜色に染まっていた。

 

「もうこんな時間か・・・」

 

沢山いた街の人も大分減っていた。

 

「そろそろ帰るか。」

 

そういって援里の方を見ると、そこには士郎にもたれ掛かって眠っている援理がいた。

 

「寝ちゃったのか・・・・

まあここ数日は特に急がしかったからな・・・援里もこの前の戦が初陣だったな。」

 

士郎は援里を起こさないように背負って、いくつか気に入った本の会計を済まし

そのまま聖たちがいる兵舎に歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

援里 side

 

ゆらゆらと揺れる。

 

あれ・・・私・・・どうなってるんだろ・・・・

 

頭がうまく回らない。

 

秋に季節が移りつつあり、長江からの風も冷たく、

私は目の前にある「暖かいもの」にぎゅっとしがみつく。

 

暖かい・・・それに、不思議な匂いがする。

 

決して不快なものではなく、私を落ち着かせる匂い。

 

本能で理解する。お父さんはいないけど、きっとこういうものなんだろうと。

 

士郎さんに背負われているというのは理解している。

 

いつもの私なら、すぐに降り、謝っている。

 

けど、今は、このぬくもりに甘えていたい・・・

 

いいですよね・・・士郎さん・・・




いよいよ本格的な黄巾の乱に入っていきます。

黄巾の乱の間は、董卓軍との共同戦線になります。

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