真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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4-7 燃える虚都

突如発生した火災により燃える洛陽。

尋常ではない速度で、火の手は広がっていった。

 

「士郎さんっ!!」

 

「玖遠か!

他の皆は如何した?」

 

洛陽に向けて移動しようとしていると、

後方に控えていた玖遠がやって来た。

 

「今、水蓮さんが軍を纏めて洛陽への移動準備を進めてますっ!

・・・・・あと、桃香さん達が白蓮さんの白馬を借りて、

先に進んで行っちゃったみたいですっ・・・」

 

「桃香が!?

と言う事は、愛紗や鈴々,星も一緒にか・・・・・・」

 

「はいっ・・・・・」

 

緊急事態な今、聖や麗羽のような大軍を率いている軍は咄嗟の行動が取れない。

 

桃香たちは、連合軍の中では最も勢力が小さいため、先に進んでいけたのだろう。

 

「ならば今から俺も移動する!」

 

「はいっ。お供しますっ!」

 

そう言って馬首を洛陽に向けた二人は共に馬を走らせ、洛陽に疾駆して行く。

 

「一体何があったんですかねっ?」

 

「あれはどう見てもただの火災じゃないのは確かだな。

火の広がり方が早すぎる。」

 

木造建築が基本のこの時代、火災は下手をすると町全体を焼き滅ぼしかねない。

その為、洛陽クラスの大都市なら何らかの手は打っているのが普通なのだが・・・・・

 

「月さまも無事だといいんですけどっ・・・・」

 

「そうだな・・・・・・・」

 

そのまま進んでいると、目の前に何処かの部隊が居るのが見えてくる。

 

「?・・・・何処の軍ですかねっ。」

 

「あれは・・・・・霞っ!?」

 

視力を「強化」した士郎が見た旗には、「張」の文字が刺繍されており、

先頭に、偃月刀を持った霞が立っていた。

 

「士郎っ!

ここは通さへんでっ!!」

 

ブンッ!!と武器を振り回しながら言い放つ霞。

 

「俺たちは月を助けに行く途中なんだっ。」

 

「それにっ、火災も消火しないと大変ですっ!!」

 

必死に停戦を申し出る士郎たち。

 

「今、詠が探しに行って、藍が消火の方に向かっとる!

ウチは、外から来る連合軍を止めてくれって頼まれたんやっ。」

 

距離を詰めてくる霞。

 

「洛陽に行くなら、ウチを倒してからやっ!!」

 

本当は自分も助けに行きたいのだろう。

しかし、仲間である詠や藍を信じて、ここに立っている。

 

「・・・・・士郎さんっ、ここは私が相手をしますっ。

先に行って下さいっ。」

 

「玖遠・・・・・」

 

玖遠の申し出に困った顔を浮かべる士郎。

 

「大丈夫ですっ。

霞さんとは何回も戦ってますしっ、一回だけなら勝ってますからっ。」

 

そんな士郎にニコッと笑いながら答える。

 

「・・・・・私を信じてくださいっ。

数刻の遅れも惜しい状況ですっ。

私が洛陽に行くより、士郎さんが行った方が良いに決まってますっ。」

 

「・・・・・任せたっ。

・・・・・・借りが出来たな・・・・」

 

「はいっ。

後で、絶対に返して貰いますからっ♪」

 

そう言って、霞に向かって行く玖遠。

 

「玖遠がウチの相手するんか?」

 

「はいっ。・・・・一勝四敗、此処で勝っておかないと、

差が開き過ぎますからっ。」

 

双剣を持って構える。

 

「ぷっ、あはははははははっ。

そうやなっ。・・・・・・ほな、いくでぇッ!!」

 

ともに疾駆していく。

 

互いに武器を打ち付け、戦いが始まった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お~~~いっ!!士郎っ!!」

 

「馬超かっ!」

 

洛陽に向けて移動中の士郎に馬超が追いついて来た。

 

「もう此処まで来たのか?」

 

「ああ。あたしの軍は騎馬が中心だからな。

それに、兵の数もそんなに多くはないしな。」

 

平地の移動速度なら騎馬に勝るものはいない。

桃香たちも、白蓮の騎馬を借りて、先に洛陽進んでいっているのだ。

 

「馬超も洛陽の様子が気になるのか?」

 

「まぁ・・・あれだけの火災だし・・・・・

あたし達でも出来る事はあるかなって・・・」

 

恥ずかしそうに答える馬超。

それを見た士郎は思わず笑みをこぼす。

 

「な、なんだよっ!!」

 

「いや。いい所あるんだなってな。」

 

「っ~~~~~!!う、煩いっ!!」

 

共に並走する二人。

 

「・・・・・やっぱり距離があるな。」

 

 

虎牢関から洛陽までは、そんなに距離はないのだが、

焦る気持ちが、気を急かしていた。

 

「大分馬も疲れてるみたいだな。」

 

馬超が士郎の馬を見ながら言う。

 

士郎が以前乗っていた「的盧」は黄巾の時、月に貸したままになっており、

今は別の馬を使用していた。

 

「大分無理させてきたからな・・・・・」

 

武器や鎧を装備した人を乗せた馬は、想像以上に消耗が激しいのだ。

 

「・・・・なら、馬貸してやるよ。

けど、後で絶対返してくれよな。」

 

そう言った馬超は後ろから一体の馬を呼んでくる。

 

「「紫燕」っていうんだ。

そこらの馬よりは全然良いと思う。」

 

「これは・・・・いい馬だな。

けど・・・本当にいいのか?」

 

馬というのは、飼い主がしっかりと愛情も持って育てれば、それに答えてくれる。

この馬を見てみると、馬超がいかに丁寧に育てているのかがよく分かるのだ。

 

「ああ。乗り換えように幾つか連れてきてるしな。

・・・・けど、怪我とかはさせないでくれよ。」

 

かのチンギス・ハーンは、広大なアジア大陸を移動する際、

自分が乗る馬のほかにも、7~8体の馬を一緒に走らせ、

自分が乗っている馬が疲れてくると、他の馬に乗り換えて走るというのを繰り返し、

移動速度と距離をかせいでいた。

 

だが、この時代の騎馬は非常に高価な為、実行できないが、

西涼は騎馬の生産が非常に盛んな為、馬超クラスの人なら其れが可能なのだ。

 

「よしっ!一気に洛陽に行くぞっ!!」

 

「ああっ!」

 

目標の洛陽はもう直ぐで着く所まで来ていた・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士郎たちが洛陽に移動している頃、

玖遠と霞の戦いはまだ続いていた。

 

「やああああああっ!!」

 

玖遠は右手に持った短槍で切り込んで行き、

それを偃月刀で受け止める霞。

 

偃月刀と短槍が鍔迫り合って止まった隙に、

玖遠は左足を踏み込んで霞の懐に滑り込み、左逆手に持った短剣で切り込んでいく。

 

「甘いでっ!!」

 

だがそれも、偃月刀の柄で受け止められる。

 

そのまま強引に弾き飛ばされる玖遠。

 

「くっ・・・・ふぅッ!!」

 

再度半身に構え、左逆手に持った短剣で突く。

 

「ちッ!!」

 

吹き飛ばした直後の隙を狙われた為、受けが間に合わないのでそれを避ける霞。

 

玖遠は突いたままの左逆手に持った短剣の柄尻に、右手に持った短槍を連結させ双刃槍を作り、

そのまま回りながら右手側の刃で切り込むが―――

 

「それもッ・・・・・予想済みやッ!!」

 

力一杯に振り下ろされる偃月刀。

 

「きゃあッ!!」

 

不十分な体勢で受けた為、先程よりも強く吹き飛ばされる玖遠。

 

再度、互いに距離をとって対峙する。

 

「諦めぇな玖遠!

そっちの手は大体分かっとるでっ!!」

 

「そう・・・・ですねっ。

けどっ、ここで頑張らないとっ、士郎さんに貸しが作れませんからっ!!」

 

気力を振り絞るように立ち上がり、

くるりと双刃槍を振るい、構える。

 

「・・・・それは中々面白そうやんか。

けど、ウチも詠との約束があるけん、負けてやれんのや。」

 

そんな玖遠の前に、堂々と立ちふさがる霞。

玖遠からすれば、それま正に壁であった。

 

(ここで勝たなきゃ・・・・・士郎さんに追いつけなくなりますっ)

 

自身の遥か遠くいる士郎。

体調が万全ならともかく、手負いの霞にここで勝てないようでは絶対に追いつけない。

 

「行きますっ!!」

 

「ええでッ!!そっちが力尽きるまで捌いたるわ!!」

 

玖遠の変則二刀は、すべて霞に読まれている。

それは黄巾の際、共に戦ったり、模擬戦を繰り返したせいでもある。

 

同じ相手と戦えば戦うほど、勝率が下がっていくのだ。

 

(けどっ・・・・士郎さんは違いますっ!)

 

士郎も玖遠と似たように奇策を用いる事があるが、

それを戦いながら相手のスタイルに合わせて、その都度全く違う対処をしているから読まれないのだ。

 

(まだっ・・・全然及ばないけどっ・・・士郎さんのようにっ!!)

 

霞が受けの構えに入る。

玖遠の攻撃を見切っている霞からすれば、無理に攻撃するより、

防御に徹して玖遠の体力を削る方が安全と判断したのだろう。

 

そんな霞を見た玖遠は、霞の目前でいきなり背中を向ける。

 

「なッ!!」

 

予想外すぎる玖遠の行動に、一瞬思考停止する霞。

もちろん、その隙を玖遠が逃すはずが無かった。

 

「たあっ!!」

 

左に反転しながら切り込む。

霞が持っている偃月刀の刃は、向かって左に構えていたので、

これならがら空きの方を攻撃できるからだ。

 

しかし―――――

 

「させんでッ!!」

 

それを防ぐ霞。

その衝撃で、玖遠の双刃槍の片方の短剣が外れる。

 

「えっ!?」

 

先程連結させた時、きちんと繋がっていなかったのか―――

玖遠に外れて飛ばされる短剣を、拾う余裕がある筈も無かった。

 

「貰ったッ!!」

 

一気に攻め込んでくる霞。

下から、偃月刀の刃が襲い掛かる。

 

「くっ!!」

 

残った片方の刃で防ぐが、弾き飛ばされる。

 

その瞬間―――――玖遠の手から『武器』が無くなる。

 

「これで!終わりやッ!!」

 

思いっきり振りかぶる霞。

正にその刃が振り下ろされる瞬間―――

 

「え?」

 

霞が吹き飛ばされる。

 

(なん・・でやッ・・・・・)

 

水月に走る鈍い痛み。

 

意識を失う瞬間に見たのは、

右手に『棒』を持って突いたままの姿勢でいる玖遠だった。

 

・・・・・・・・・

 

玖遠の武器は短剣二本と、連結用の棒で構成されている。

霞に二本目を弾き飛ばされる前に、棒を外して右手に持っていたのだった。

 

「はぁっ・・・・はぁっ・・・・・・

なんとか・・・・・・勝てましたっ・・・・・」

 

体のあちこちを怪我しており体力も殆ど残っておらず、

正に満身創痍だが、何とか勝ちをおさめた。

 

「皆さんっ・・・・霞さんを拘束して、陣に連れて行って下さいっ・・・・」

 

玖遠の命令を聞き、動き始める兵たち。

 

「少し休んだら・・・・・直ぐに洛陽に行かないとっ・・・・・」

 

心配そうに、洛陽を見つめながら思わず呟く玖遠だった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは・・・・・・・」

 

士郎と馬超が見たのは、まるで蛇のように蠢く炎だった。

 

凄まじい勢いで火勢が広がり、もはや洛陽全体を覆いつくしている。

 

「士郎っ!お前も来てたのか。」

 

そんな士郎に近付いて来たのは白蓮。

どうやら兵を連れて消火作業に当たっているようだ。

 

「白蓮っ・・・・・桃香たちは何処に行ったんだ?」

 

「あ、ああ。桃香なら政庁の方に向かって行ったけど、愛紗や星も一緒だから大丈夫だろ。」

 

「そうか・・・・・俺も少し用があるから、行って来るよ。

・・・・・馬超、馬を返しておくよ。有難う。」

 

少し名残惜しそうにしている「紫燕」から降りる士郎。

 

「別にいいけど・・・・・

士郎、この火には気をつけろよっ。

燃え広がった所は消えるんだけど、うねうね動いてる火が消えないんだ。」

 

「了解した。

馬超は如何するんだ?」

 

「あたし?

・・・・そうだな、他の所に行って消火に参加するよ。

士郎・・・・気を付けろよ。」

 

「ああ、行ってくる。」

 

そう言って駆けて行く士郎。

 

火を避けながら、ドンドン奥に進んで行く。

 

(この火は魔術で生み出された火だな・・・・・・

・・・・・・炎の蛇(ネフシュタン)か・・・・・・)

 

魔術によって生み出された『生きている炎』。

確かにこの火は普通には消せない。

 

(だったら・・・・・・ッ・・・・・・)

 

周りに人が居ないのを確認して、自身の魔術回路に魔力を流す。

 

「―――投影(トレース)開始(オン)

 

 創造の理念を鑑定し

 基本となる骨子を想定し

 構成された材質を複製し

 製作に及ぶ技術を模倣し

 成長に至る経験に共感し

 蓄積された年月を再現するッ・・・・

 

「―――投影(トレース)・・・完了(オフ)・・・・」

 

士郎の周りに現れたのは、ふわふわと中に浮かぶ数十個の水泡。

大きさは大小さまざまで、

バスケットボールほどの大きさの物もあれば、ソフトボール位のものも存在する。

 

霧露乾坤網(むろけんこんもう)「仙女護りし満つる水珠」』

 

士郎の言葉と同時に、周りに待機している水泡が天に昇り、

雲となりそのまま洛陽を覆い、雨を降らせ一気に消火していく。

 

洛陽のあちこちに居る炎の蛇たちは、のた打ち回りながら消えていった。

 

そのまま洛陽に蠢く炎の蛇を消し終えると、

霧露乾坤網は再度水泡に戻り、士郎の周りで待機する。

 

投影破棄(トレース・オフ)

 

待機状態の霧露乾坤網を破棄する。

 

霧露乾坤網は一度発動してしまえば、待機状態にしているだけでも魔力を消費してしまので、

ただでさえ魔力が少ない士郎からすれば非常に困る。

 

それに周りに水泡が浮いている状態で他の兵に会おうものなら、確実に怪しまれる為だ。

 

「よし。これで火は何とかなったか・・・・・・」

 

周辺の鎮火を確認した後、

士郎は桃香たちを探して、さらに進んでいった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大分遅れを取ったわね。」

 

士郎たちが洛陽に着いて大分たった頃、華琳たちの軍勢も

やっと洛陽に到着していた。

虎牢関でずっと徐晃に足止めされていたせいで、到着が遅れてしまったのだ。

 

だが、その徐晃も洛陽の火災の報告を聞くと直ぐに向かって行ったのだが。

 

「それにしてもあの水はなんだったのかしら?」

 

洛陽に移動している途中、遠目だが、何か水の網の様なものが洛陽を覆い、

一気に消火したのを見たのだ。

 

「それも含めて調査した方が言いと思います。」

 

「それもそうね。」

 

桂花の提案に頷く華琳。

そのまま華琳が命令を下そうとすると、

 

「誰だ貴様はっ!!」

 

詠や月を探してウロウロしていた藍とかち合わせる。

今まで消火作業をしていたのだが、急に水が降りてきて一気に消火した為、

洛陽をウロウロしていたのだった。

 

「おい!士郎を見なかったか!!」

 

どうやら士郎を探しているらしい。

・・・・・色々やられたので、恨みが溜まっているのか。

 

「知るわけないだろうっ!!

お前の相手は私がしてやるッ!!」

 

藍と対峙する春蘭。

弧白との戦いが途中で中断された為、不完全燃焼なのである。

 

「いいわ。好きにやりなさい。」

 

華琳から許可を貰う春蘭。

 

「なんだ、私と戦う気か!?」

 

「ああ。いくぞッ!!」

 

その言葉と共に互いに切り込みあう。

 

互いに好戦的な性格をしている為、

激しい剣戟の音が鳴り響く。

 

見た感じでは、力,技術は同等。

速度では春蘭が優勢といった所か。

 

それに、藍は汜水関の際、士郎に負わされた傷が完治していない。

それでも強引に春蘭のスピードについていった為、

直ぐに息が上がり・・・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・っ・・・・・・」

 

ドサッと、途中で地面に倒れる。

 

「え、えええっ!

おい起きろ貴様っ!これからがいい所だろうッ!!」

 

またもや中断された春蘭。

なんとか藍に起きてもらおうと必死である。

 

「華琳さま・・・・・如何しますか?」

 

困った様子で話しかける秋蘭。

 

「・・・・とりあえず拘束しておきなさい・・・・・・・・

一応それなりに強いみたいだし、使い所はあるでしょう・・・・・・・」

 

華琳も、まさか急に倒れるとは思っておらず、

とりあえず拘束して自軍に連れて行ったのだった。

 

・・・・・倒れた藍は「士郎・・・・ッ・・・・許さん・・・・・」

と寝言を呟いていたが・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洛陽城門で士郎と分かれた馬超は、洛陽の中心まで進んでいた。

 

洛陽には先に到着した白蓮軍の他に、華琳,美羽の軍と続々と到着しており、

まだ到着していないのは麗羽と聖の軍だけで、聖はもう直ぐで付きそうだが、

麗羽の所はまだまだかかりそうだった。

 

暫くすると、先に進んでいた桃香たちの姿が見えてくる。

 

「お~い!!」

 

「貴女は・・・・馬超さん!?」

 

会議で自己紹介はしたが、面と向かって話すのは始めてである。

 

「馬超殿、何故ここまで来られたのかな?」

 

「ああ。士郎と一緒に洛陽に来たんだ。

まぁ士郎とは洛陽の城門で分かれたけどな。」

 

星の質問に答える馬超。

馬超は桃香たちの本当の目的を知らないから、

少し警戒しているのだろう。

 

「お兄ちゃんも来てるのだ!?」

 

「ああ。他の軍も到着してたから、

あたしは奥のほうの様子を見に来たのさ。」

 

簡単に状況を説明すると、

考え込む桃香。

 

「早くしないと拙いね・・・・・」

 

「はい。急いだ方がよろしいかと。」

 

桃香と愛紗が話しているのは月の事だろう。

他の軍が集まってくると、見つけ出すのが困難になってくる。

 

「何が拙いんだ?」

 

一人だけ状況をつかめてない馬超。

 

「えっとね。その・・・・・・・」

 

「董卓どのを探しているのですよ。」

 

上手く答えられない桃香に変わって答える星。

 

「董卓どのは余り他人と会った事がないので顔が知られていません。

けど、私は勿論会った事がありませんが、桃香さまは以前お会いしているのですよ。

それで、他の軍の人が間違えて逃がしたりしまわぬよう、先に探しているのです。」

 

上手く言い逃れする星。

 

「だったら特徴を伝えておいたらいいんじゃないか?」

 

「服装は変わりますし、顔の特徴を口で説明しようとしても、

会った事があるのが桃香さま,愛紗と鈴々では説明が出来ないでしょう。

下手に先入観を持たせて勘違いされて、責任問題になっても困りますしな。」

 

「それもそうだな・・・・・」

 

余り頭がいい方ではない馬超は上手く言いくるめられる。

 

「やはりこのまま政庁の方に進んで行った方がいいと思います。」

 

愛紗の提案に皆頷く。

 

そのまま進んで行こうとすると、

 

「おや?劉備じゃありませんか。」

 

急に現れた二人の男が近付いて来る。

 

「だれだ貴様はッ!!」

 

警戒する愛紗。

他のメンバーも各々の得物を構えている。

 

「始めまして。私は于吉と言います。

黄巾の時は左慈がお世話になりましたねぇ。

・・・・ここで何人か殺した方が後々いいでしょうか?」

 

「あの男の仲間かっ!」

 

互いの間に緊張が走る。

 

「愛紗よ。

ここは私と馬超どのに任せて先に行け。」

 

「あ、あたしもっ!?」

 

「星っ!?」

 

星の提案に驚く二人。

 

「今は一刻を争うのだろう?

ならば董卓どのの顔を知っている三人は先に進んだほうがいい。

私と馬超どのならば、そう簡単には負けはせぬよ。」

 

「・・・・大丈夫なの星ちゃん・・・・・?」

 

心配そうな桃香。

 

「ふふっ。大丈夫ですよ。

さあお行きなされ!」

 

「あたしがの残るのは決定してるんだな・・・・・」

 

星に促され、進んで行く三人。

 

「おや?あの三人は逃げましたか・・・・・

・・・・・どうやら董卓を探しに行ったようですね。」

 

三人が駆けて行くのを見ながら話す于吉。

 

「私はあの三人を追いかけます。

ここは任せましたよ。」

 

「ふむ。了解した。」

 

そう言うと于吉は袖から出した札を燃やし、姿を眩ます。

 

「「なッ!!」」

 

それを見て驚く二人。

無理もない。目の前で妖術を見たら驚くのは仕方ないだろう。

 

「さて。そなたらの相手は私が努めるようになったのだが・・・・・」

 

ゆるりと近付いて来る男。

 

長髪を後ろでくくっており、見た感じでは鎧を着けておらず、手に持つ細身の剣は凄まじく長い。

 

どこか優雅さを感じさせる雰囲気を出しており、

炎が燻り、瓦礫と死体が蹲る此処とは、

全く異質な空気を発していた。

 

「先ずは名乗ろう。

アサシン・・・・ではないな。我が名は佐々木小次郎。

勝負願おうッ!!」

 

燕切る剣士との死闘が始まった・・・・・・




霧露乾坤網(むろけんこんもう)

宝具ランク B
対人宝具

真名解放は「仙女護りし満つる水珠」

使用者の周りに、「混ざらない」「蒸発しない」純水で出来た
水泡が数十個待機する。

真名解放すると、発動した者の意思にあわせて動き、
「水槍」による攻撃
「水膜」による防御
(術者には常時発動。他人にも張る事が可能
ただし、水膜自体の防御力は低い)を行い、
他にも雨による消火、
水球に人を乗せての移動など色々な用途に使用出来る。

また純水で出来ており、他の物が混ざらない特性の為、
電気を完全にシャットアウト出来る。

封神演義での竜吉公主の宝貝ですね。
元々は雨を降らすだけでしたが、
フジリュー版の方を採用しました。

どこで士郎は見たのかですが、聖杯戦争が終わった後、
世界をウロウロしている時に、どっかで見たんでしょう。
もしくははギルの『王の財宝』発動時、
見かけたのかも知れません。
(特に決めてないのです・・・・)


炎の蛇(ネフシュタン)


モーゼがエジプトから民を連れて移動している途中、
神の怒りを買った為、神が送った蛇。

これに噛まれた民から死者が出た。

その為、その炎の蛇を模してモーゼが青銅で像を作り
(ネフシュタンはその像の名前)
炎の蛇に噛まれても、その像に祈れば生きながらえたと言う。

于吉が『太平要術の書』で召還した蛇。
一気に焼き尽くそうとした為、
普通の水では消えないように使用しました。

ですが、さすがに宝具の力を無効化できるわけも無く、
霧露乾坤網によって消火されました。

名前が無かったので、モーゼの像の方を使用しました。
もともとこの像も炎の蛇がベースですし……

佐々木小次郎が何故此処いるのかは次話位で説明が入ります。

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