真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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歴史の進行は作者が書きやすいように、
演技と恋姫ごちゃまぜにしてますので。
ご理解の方よろしくです。


3-6 揺れる中原

秋口――――大分風も冷たくなり、

朝起きるのが億劫になる季節。

 

「朝か・・・・」

 

もぞもぞと目覚める士郎。

 

ゆっくりと体の感覚が戻ってくると、

誰かが布団の中に居るのを感じる。

 

「?」

 

布団を捲ると、其処には丸くなった璃々がいた。

 

「むぅーーーさむいーーーー」

 

布団が無くなり寒くなったのか、ぎゅっと士郎の脚に強く抱きついてくる。

 

夜中に目が覚め、トイレから帰ってくる時に部屋を間違えて入ったようだ。

士郎の横が紫苑の部屋なのも理由の一つである。

 

「どうするのさ・・・・・・」

 

ずっとこのままにしておく訳にもいかず、

士郎は朝から頭を悩ませるのだった・・・・・

 

「とりあえず紫苑の所に連れて行くか。」

 

士郎は璃々を背負い、立ち上がろうとすると、

誰かがドアをノックする。

 

「どうぞ。」

 

ドアを開け、入って来たのは、

丁度士郎が会いに行こうとしていた紫苑だった。

 

「朝早くにすみません。」

 

軽く挨拶をしながら入ってくると、士郎が背負っている璃々に気づく。

 

「あら・・・やっぱり士郎さまの所にお邪魔していましたか。」

 

にこりと柔らかな笑みを浮かべる紫苑。

 

「朝起きたら吃驚しましたよ・・・・・・

あ、あと「さま」なんてつけなくて良いですよ。

こっちは客将ですし。」

 

「ふふっ。士郎さまが敬語をやめて下さったら考えますわ。」

 

「・・・・やっぱり違和感があるのか・・・・」

 

少し落ち込む士郎。

 

「そちらの方がいいですわ。士郎さん。」

 

(歳はこっちの方が上なんだが・・・・・

主導権が取れそうにない・・・・・)

 

その後も紫苑に軽く降りまわされながら会話を続ける士郎だった。

 

 

 

 

「そろそろ食堂に行きますか。」

 

士郎は璃々を背負ったまま立ち上がる。

 

「そうですね。でもその前に・・・・」

 

紫苑は士郎の後ろに回り、

 

「ほら璃々。そろそろ降りなさい。」

 

そう言って璃々を士郎の背中から降ろす。

 

「起きてたのか。」

 

全く気づかなかった士郎。

 

「お兄ちゃんの背中、暖かいから好きーーー」

 

鍛え上げており、新陳代謝が良いので、体温は高い。

 

その言葉を聞いて、そっと両手を士郎の背に当てる紫苑。

 

「あらあら。本当ね。

・・・・それに・・・凄いですわね・・・・・」

 

そのまま背中の背筋や肩甲骨を確かめるように撫でる。

 

「お母さんっ。璃々もーー」

 

それを見た璃々も興味津々に混ざってくる。

 

「ふふふっ。お母さんの後でね♪」

 

「なんでさ・・・・」

 

朝から騒がしい親子であった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事が終わった後、全員が集まる。

 

「今日の報告は何があるんだ?」

 

「そうね・・・・・・」

 

士郎に聞かれ、考える鈴梅。

 

すると、援里がおもむろに手を上げる。

 

「朝・・・士郎さんの部屋から・・・・・紫苑さんが出てきました・・・・・」

 

『!?』

 

爆弾発言に全員が沈黙する。

 

どうやら入った時は見ていなかったようだが、出てくる所を見られていたらしい。

 

「ちが・・・・それは・・・・」

 

慌てて否定しようとするが、

 

「璃々ちゃんも・・・・一緒でした・・・・・」

 

・・・・・・・・ざわ・・・・ざわ・・・・・・

 

「それは違うだろ・・・・・・」

 

思わず突っ込む士郎。

 

「うっさい!この色情魔っ、黙ってなさい!」

 

鈴梅に怒られる。

 

「ね、ね、どうだったの!?」

 

「ど、どうだったんですかっ!?」

 

そんな二人を余所に、興味津々に紫苑に質問する聖と玖遠。

 

「うんっ。暖かかったよーー」

 

「逞しい背中でしたわ・・・」

 

意味深に答える紫苑と璃々。

 

「聖っ!そんな事聞いちゃ駄目よっ!?

・・・・し~ろ~う~っ~~~!!」

 

「確かに・・・・士郎さんの背中は・・・・温かいです・・・・」

 

「はぁ・・・・こうなったら聖さまに魔の手が及ぶ前に

処理したほうがいいです。」

 

各々が好き勝手に騒ぎ始める。

 

会議室は混乱の坩堝と化していった・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑が皆の誤解を解いた所で会議が再開される。

 

「時間が無駄になったじゃないっ!!」

 

「俺は被害者だろ・・・」

 

鈴梅に当たられる士郎。

良い迷惑である。

 

「あはははは・・・・

取り敢えず問題とか報告はあるかな?」

 

聖が全員に質問する。

 

「少しいいか?」

 

「うん。何かな。」

 

士郎の提案は

街の治安向上の為の駐屯所をあちこちに作ろうという物だった。

 

何か問題があった際、近い位置に駐屯所があったら解決も早くなるし、

そもそも事件も起きにくくなる。

 

「駐屯所には待機中の兵士を置くの?」

 

「ああ。

兵舎にずっといるより、街の人と交流した方が兵士にとってもいいだろ。」

 

「そうね・・・・・

治安も少し荒れてきてるし・・・

聖、私は賛成よ。」

 

「蓬梅ちゃん、鈴梅ちゃんは如何かな?」

 

決を取る為、姉妹にも質問する。

 

「むぅ・・・士郎にしては良い提案です。

私は賛成です。」

 

「お姉さまが良いなら私もいいわ。」

 

「じゃあ、当番の方は水蓮ちゃんお願いね~」

 

「ええ。分かったわ。」

 

話が一段落したところで、次の話題に移る。

 

「あと・・・董卓さまの事なんだけど・・・・・」

 

鈴梅が話題に出したのは、月との貿易の話。

 

「その時に何人か密偵を長安や洛陽に放ったのは、前に話したわよね。」

 

皆が頷く。

 

「その報告なんだけど・・・・

洛陽に白装束の変な集団が増えてきてるらしいのよ。」

 

「あれ?確か弧白さんも白い服着てなかった?」

 

聖が水蓮に問いかける。

 

「そうだったけど・・・・

武将って個性的な服着てる人が多いわよ。」

 

「そうだよねぇ・・・・

私も最初に士郎くん見たとき思ったよ~~~」

 

「聖さま・・・話が・・・違う方向いってます・・・・」

 

「あう・・・ごめんね鈴梅ちゃん・・・」

 

援里に指摘され、慌てて鈴梅に謝る。

 

「いえいえっ!?全然大丈夫ですよっ!

・・・・・こほんっ、それで張遼と話が出来たんだけど、

董卓さまも部屋に篭りっきりで殆ど姿を見せてなくて、

現状は賈駆さんが指示を出してるみたいよ。」

 

「黄巾の時も私たちはともかく、他の人にはあんまり会ってなかったよね。」

 

「どうもそういうやり方らしいです。

まだ若いですから、余り姿を見せない風にしてるです。」

 

人は見えないものには恐怖心を持つ。

西涼の屈強な兵を従えるには、そういうのも利用する必要があったのだろう。

 

 

(だとしたら・・・少し寂しいんだろうな・・・・)

 

士郎が思い出すのは月と別れる際、士郎を勧誘して来た事。

 

純粋に武将を求めたというのもあったとは思うが、

董卓では無く、「月」として甘えれる人を求めていたのかもしれない。

 

(まぁ推測に過ぎないけどな・・・・・)

 

士郎は軽く頭を振り、会議に意識を戻した。

 

 

「流石に張遼さんみたいな人たちとは

毎日一緒に食事したりしてたみたいだけど、それも無くなったみたいよ。」

 

「何か・・・病気をしている・・・・可能性は・・・・」

 

「無くは無いと思うけど・・・典医に聞いてもそう言う話は無かったみたい。」

 

援里が質問にも、困った顔で答える鈴梅。

 

「じゃあもしかしてっ、その白装束の人たちがお医者さんじゃないんですかっ?」

 

玖遠が閃いたとばかりに発言する。

 

「・・・・・・その白装束を見た張遼さんとウチの密偵の意見なんだけど・・・・

あれは・・・・人間じゃないって言ってたわよ・・・・・」

 

おもわず寒気が走る。

 

「や、やめてくださいようっ~~~

季節が違いすぎますっ!?」

 

本気で怯えている玖遠。

 

他のメンバーも心なしか嫌な顔をしている。

 

「最初に聞いた私はもっと嫌だったわよっ!」

 

思わず抗議する鈴梅。

 

「しろうさ~~~んっ・・・・

一緒に寝てもらっていい「俺の何かが無くなるからダメだ。」

ええ~~~~~っ・・・・・」

 

何か言ってる玖遠を放置して会議は進む。

 

「長安や洛陽にも人の出入りが厳しくなってるです。

このままだと涼州や中原が混乱するです。」

 

丁度二つの地方の間にある為、このまま封鎖されると物流が滞り確実に問題となる。

宛の方から経由しようにも、宛も月の統治下にある為それも出来ない。

 

そして宛が封鎖されると、この荊州と中原を結ぶ経路も閉ざされる。

一応新野から許昌は繋がっているが、道が整備されておらず、非常に通行しにくい。

 

今、発展中の荊州からすれば、非常に由々しき事態である。

 

「確実な情報も入手出来ていないし、

憶測で推理するのも限界があるわね・・・・」

 

鈴梅が苦々しい顔を浮かべながら呟く。

 

「とりあえずはこれ以上は情勢が悪化しないようにしなきゃね・・・・

私の方からも手紙出してみるよ。

鈴梅ちゃんは許昌方面の交易の手配をしておいて。」

 

「わかりました。聖さまっ。」

 

慌しくなっていく士郎たち。

 

その後色々試したが効果は出ず、

とうとう恐れていた、月が統治している道が使えなくなる事態に陥った・・・・・

 

予想通り涼州や中原の街を統治している太守も困り果て、

確実に悪化して行く中、その檄文は届いた。

 

反董卓連合の・・・・・・・


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