真・恋姫無双〜正義の味方〜   作:山隼

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3-3 方針決定

前日の追い込みで、政務にも大分余裕が出来た聖たちは

次の仕事に取り掛かっていた。

 

「とりあえずは天和達の扱いと、人材の発掘、新野の拡張工事。

あとは、月たちとの貿易か。」

 

士郎がこれからしていく事を読み上げていく。

 

「とりあえず一個づついきましょうか。」

 

水蓮の発言に全員が頷く。

 

「一応聞くけど、天和たちは何がしたいのよ?」

 

鈴梅が天和たちに質問する。

 

「歌って、皆を幸せに出来ればいいよ~」

 

「ちぃも歌えればいいわ。」

 

「それしか無いわね。」

 

天和たちは当たり前と言った感じに答える。

 

「えっと・・・・どうしようか?」

 

聖の言葉に全員が頭を悩ませる。

 

まぁ政治や戦はしたことがあるが、アイドルのプロデュースなんかした事が無い為、

こうなるのは当たり前であった。

 

「とりあえず、歌う場所さえ提供してもらえればあとはなんとかできます。」

 

この状態では、

今までマネージャー的な事をして来た人和に任せるのが妥当だろう。

 

「場所か・・・どこか広場みたいな所でいいのか?」

 

「そうですね。人が集まる所なら大丈夫です。」

 

そんな人和の言葉に、聖がある事を提案してくる。

 

「ねぇねぇ。だったら劇場を作らない?」

 

『劇場?』

 

その提案に皆が首を傾げる。

 

「うん。

ほら、今たくさん人が街にきてるよね?

それで環境の違いとかで、色々苦労してると思うから

天和ちゃんたちには、その人たちに為に歌って欲しいんだ。」

 

聖は頷きながら理由を話し出す。

 

「成る程。ストレス解消の場所を提供するって言うことか。」

 

「すとれす?」

 

聞きなれない言葉に首を傾げる聖。

 

「あ、ああ。俺の国の言葉さ。

・・・・苛々したりすると、体調を崩したり、他人にきつく当たったりするだろ。」

 

「ああ・・・確かにそうね・・・・」

 

どうやら心当たりがあるのか、

水蓮は思いっきり頷いている。

 

「それで、私たちの歌で元気にしていけばいいの?」

 

「そうだね~

・・・・如何かな?」

 

聖に言われ、人和が考えていると、

 

「私はそれでいいよー」

 

天和がそれに賛成する。

 

「だってその人たちがここに流れてきたのは、元々私たちのせいでしょ?

だから、私たちがその人たちを元気にすれば、少しは罪滅ぼしになるかなーって。」

 

「「姉さん・・・・」」

 

 

天和の言葉に皆が静かになる。

 

天然な性格だが、心の中では気にしていたのだろう。

 

「で、どうかな。鈴梅ちゃん?」

 

聖は、この国の政治を取り仕切ってる鈴梅に話しかける。

 

基本的に大金を動かす際は、鈴梅の承認が必要になっているのだが・・・・・・

 

「聖さまがいいなら良いに決まってるじゃない。

直ぐに準備するね~」

 

鈴梅は聖に甘いので、スムーズに話が進んでいく。

 

まぁ幸い資金は沢山あるし、

一時的だが雇用も増えるので、長い目で見ればお得である。

 

そう言う事で、襄陽に大きな劇場を作る事が決定したのだった。

 

「とりあえず・・・・・この件はこれで・・・・終わりです?」

 

「そうです。担当はまた後で決めるです。」

 

援里の言葉に蓬梅が頷き、鈴梅が次の話題を話し出す。

 

「次は人材の発掘と、新野の拡張工事ね。

・・・誰か意見ある?」

 

「武官と文官どちらも欲しいわよ。それは。」

 

「あはは・・・・そうだよねぇ・・・・」

 

水蓮の意見に、聖が苦笑いを浮かべながら頷く。

 

「新野に沢山人が来てますからっ、

そこから見つけるんじゃないんですかっ?」

 

玖遠が以前話していたことを質問してくる。

 

「そうよ。まぁ武官は一人心当たりが居るから、

文官を中心に探した方がいいわね。」

 

「そうです。で、だれが行きますです?」

 

蓬梅の質問に全員が静かになる。

 

それもそうだ。いきなり新野に行かされた挙句、

街の拡張工事と人材発掘を同時に行えというのは、最早いじめである。

 

それにそれだけの事をするとなると、蓬梅や鈴梅クラスの人間が行く必要が出てくる。

 

「先に言っとくけど私は嫌よ!

せっかく聖さまと一緒に居られるのにっ!」

 

「私もです。」

 

当然の如く聖が大好きな二人は全力で嫌がる。

 

「水蓮っ、アンタが行きなさいよっ!」

 

「わ、私だって軍の再編があるのよっ!」

 

「ずっと一緒に居たくせに、大根はずるいです。」

 

「しょうがないじゃないっ!」

 

三人の口げんかが始まる。

 

「なんだか賑やかだね~」

 

天和はそれを楽しそうに見ている。

 

「ち、ちょっと、大丈夫なの?これ。」

 

「なんで俺に聞くのさ・・・・・・」

 

「緊張感が無い人たちなんですね・・・・」

 

地和は慌てて士郎に聞き、人和は呆れている。

 

そうこうしていると・・・・・

 

「士郎っ!じゃあアンタが行きなさいよっ!」

 

鈴梅に急に呼ばれる士郎。

 

「そういう重大な仕事を俺にさせるのか・・・・・・」

 

「ええい煩いわね。つべこべ言わずに・・・・・」

 

「やりなさい!」と言おうとした瞬間、

 

「士郎君はダメだよ~鈴梅ちゃん。」

 

聖がそれを止める。

 

「どうしてですか?聖様?」

 

蓬梅がその理由を聞くと、

 

「だって一緒に仕事がしたいんだよう。」

 

すごく私的な理由である。

 

「あっ。それなら私も一緒に訓練したいですっ!」

 

「私も・・・・です・・・」

 

聖の発言に玖遠や援里も乗ってくる。

 

「・・・・・・・し~ろ~う~~~~」

 

「・・・・・・・・・」

 

聖の発言を聞いた鈴梅が凄い目で睨んで来ており、

蓬梅も無言のプレッシャーをかけてくる。

 

その迫力に思わず後ずさる士郎。

 

慌てて水蓮の方に目を向けるが、

 

「・・・やっぱり・・・・・・男は悪影響ね・・・・・」

 

なんだかぶつぶつと呟いている。

 

「なんでさ・・・・・・・」

 

またややこしい事になっている士郎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

このままでは埒が明かないと判断した蓬梅は、

 

「しょうがないです。こうなったらアイツを行かせるです。」

 

そう言って入り口の扉を開ける。

 

其処には・・・・・・

 

「あ、あれ?」

 

右手にコップを持って、きょとんとしている向朗が立っていた。

 

「え~~~と・・・・・・

さようなら~~~」

 

慌てて逃げ出すが、蓬梅に服を掴まれ止められる。

 

「盗み聞きしてたです。」

 

「そ、そんなわけないですよぉ~~~」

 

余りにも白々しい嘘である。

 

「まぁ聞いてたのなら話は早いです。

新野にさっさと行くです。」

 

蓬梅に言われ、ガーンと言う効果音が聞こえて来そうなくらい落ち込む向朗。

 

「そ、そんなあ・・・・・

私だって沢山用事があるんですよお!

・・・ほらこの書類も今まとめてますしー。」

 

そう言って、木簡の束を蓬梅の目の前に差し出してくる。

 

すると、その内の一つが転がり落ち、それを蓬梅が拾う。

 

「?蓬梅・鈴梅成長日記・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・』

 

全員が沈黙する。

 

「左遷決定だな。」

 

「うえええええぇっ!日記が書けなくなるじゃないですかぁっ!?」

 

士郎の一言に慌てだす向朗。

 

「うっさい!そんなもの処分よ処分!」

 

「そんなああああああ・・・・

子鬼!小悪魔!ちっちゃい人でなし!」

 

「全部に小さいつけるなっ!!」

 

鈴梅は思いっきり向朗の脛を蹴りつける。

 

「ぎにゃーーーー」

 

「まったく・・・・・この変態は・・・・・」

 

(いやキミも大して変わらんだろ・・・・・)

 

「何っ!今失礼なこと考えなかったっ!?」

 

慌てて首を振る士郎。

 

「と、とりあえずこれで決定だね。」

 

「そ、そうですねっ。次の議題にいきますかっ!」

 

場の空気を入れ替えるように、聖と玖遠は次の議題を促していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「次は董卓さま達との貿易ね。」

 

鈴梅が次の議題を話す。

 

「うん。

まぁお互いに出す物は決まってるんだけどね。」

 

聖たちは長江がある為水軍が発展しているが、良い馬が居なく、騎馬軍の扱いは苦手。

 

月たちは広い平原を駆け抜けるため騎馬軍は得意だが、造船等の技術は皆無。

 

この為、聖たちは造船技術を。

月は良馬を輸出するのは既に決まっている。

 

「で、他に何か欲しいものあるかな?」

 

聖の質問に皆考え込む。

 

「涼州って確か大秦とも交易してたよね?

そこらの情報も欲しいわ。」

 

「そうですね。確かに情報が少ないです。」

 

鈴梅の意見に蓬梅が賛同する。

 

「ふむふむ。情報と・・・・」

 

聖は手に持っている木簡に何かを書き込んでいる。

 

「欲しいものって言っても、特には無いわね。」

 

「他のもの買うより・・・・・その分・・・

馬を買った方がいいです・・・・・・」

 

この時代の馬は大変高価である。

 

基本的に馬は北の方で飼育されている為、

一騎でも多く入手しておきたい。

 

「それにあんまり要求すると、

霞さんあたりに「士郎さんを持って来い!」って言われそうですねっ。」

 

「ああ・・・確かに言われそうね・・・・・」

 

玖遠の発言に水蓮も頷く。

 

「だったらこの男を出荷して・・・・・・

冗談!冗談です聖さまっ!?」

 

鈴梅が危ない発言をしだしたが、

聖がむすっとした顔をしたので、慌てて否定する。

 

「・・・・・・・・・」

 

ガツッ!!

 

その様子を見て、無言で士郎の脛を蹴る蓬梅。

 

「痛っ!なんで蹴られるのさっ!?」

 

「うっさいです。士郎がわるいです。」

 

また脱線し始める。

 

「と、取り敢えず、基本は馬の入手で話を進めておくわよ。」

 

その様子を見ていた水蓮は強引に場を閉める。

 

「もう決めておく事は無いのか?」

 

「そうだね~~

また何かあったら集まるようにするから、大丈夫だよう。」

 

士郎の質問にのんびりした感じで答える聖。

 

「じゃあ仕事に戻るか。」

 

簡単な方針を決定し、各人はそれぞれの仕事に戻っていった・・・・・


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