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ある少女は期待に胸を躍らせていた。
どんな幽霊が出るんだろう? 泉だから河童とかかな? あれ、河童って幽霊だっけ?
ある少年は期待に胸を躍らせていた。
どんな怪物が出てくるんだろう? 一つ目のサイクロプスとか出てきたら面白いな!
ある少女は不安に怯えていた。
行きたくない。幽霊が出る場所になんて行きたくない。でも二人に置いてかれるのも怖い!
そんな不安を抱えながら歩いていると、道端に落ちていた菱形の青い石に気がついた。なんとなく手に取った彼女に、前を行く二人から「早く来ないと置いて行くよー!」という声が届き、慌ててポケットにしまって駆け出すことになった。
そうして訪れた泉。
桟橋の上で三人そろってしばらく周囲をきょろきょろと見回していると、ぼんやりと何かが泉の中から浮かんでくる。
「河童だ! 河童がいる!」
「違うよ! サイクロプスだよ!」
全然怖がる様子を見せずにはしゃぐ二人をよそに、彼女に見えたのは"二人に置いていかれて一人ぼっちで蹲る自分の姿"。
こんなものは見たくないと瞳をぎゅっと閉じる少女。三人一緒に逃げ出したいのに、二人は少女には見えない"怪物"に夢中になっている。
嫌だ。逃げ出したい。でも一人で逃げることなんてできない。一緒に逃げたい。少女は恐怖に震えながらただそんなことを考えていた。
二人には何が見えているの? もっと怖いモノが出たら一緒に逃げてくれるの? だったらもっと怖いモノが出てくればいい。そう願った。
ポケットに入れていた青い石を握りながら。
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「俺らと同じくらいのやつが噂の怪異を確かめに泉に行ったって?」
「うん、仲居さんがそっちに向かう林道に入ったのを見たって」
「何もなきゃいいけど」
旅館から泉へと繋がる散歩コースの上空を飛びながら、下に誰かが歩いていないか確認するが、それらしい姿は見えない。どうやら既に通り過ぎた後らしい。
「学校で発動したジュエルシードみたいに、"こんなお化けがいるかも"って無意識の願いをジュエルシードがかなえたのかな?」
「でもそのくらいの覚醒状態になってたら僕の捜索魔法にひっかかるはずなんだけど」
なのはが以前のジュエルシードのことを思い出して今回の噂の正体を推測するが、ユーノはそれには首をかしげる。
結局ユーノの捜索魔法ではジュエルシードの正確な位置はわからなかった。"もしかしたら何かあるかもしれない"というレベルの異変というには微細な感じしかわからなかったらしい。ここいら一帯がもともと魔力が濃い土地であることも影響しているせいで正確な探知ができないのだ。
ちなみにユーノはフェレット姿から人の姿に戻っている。万が一フェイト達と遭遇した時のためだ。目に見える人数の多さはそれだけ相手への牽制につながる。
「クロウカードの可能性は?」
翔太がもうひとつの可能性を指摘する。既に不可思議な現象が観測されているのに、ジュエルシードの反応がない。それが魔法関係の現象なら、残りはクロウカードが引き起こしている可能性が残る。無論、本物の心霊現象の可能性もなくはないが。
『そっちのほうが可能性は高いな。気配が読みにくいカードもおるさかい、普通の探索魔法には引っかからん可能性が高い』
「お化けを見せるクロウカードってことなの?」
「というよりも、結果としてお化けに見えたって考えた方がいい気がするわ」
なのはの疑問に、下唇に人差し指を当てたアリサが答えた。
「人によって見えるモノが違ってたのがミソだと思うわ。ケロちゃん、スピネル、そんなカードに覚えはない?」
『うーん、どやったかなー?』
『いえ、そもそも私達に出会っていないカードのことを聞いても無駄ですよ』
「なによ、教えられないっていうの?」
カードの当りをつけるための何気ない質問だったが、スピネルからは想いもよらない答えが返ってきた。
『あー、いやそういうわけやない』
『最高位の
『中にはホンマに封印するまで思い出せんカードもおったはずや。それがどんなカードかすら思い出せんけどな』
「そう、なの?」
「そういえば、私たちってクロウカードの探索を始めて結構たつけど、ケロちゃん達から"こんなカードがあるから気をつけるように"って言われたことは一度もないわね」
『せや。事前情報なく、その場で臨機応変に乗り越えられるような骨のあるやつやないとカードも主とは認めへんからや』
『遠い昔に私達を創った魔導師は、クロウカードを託すに足る存在か試すためにそのような機能を私達につけたのです。……もっとも、遠い昔すぎて顔も覚えていませんが』
どこか寂しげにスピネルが呟いた。
「でも発掘しようとしたユーノくんならわからないの?」
「ごめん、僕の方でも全てのカードを把握しているわけじゃないんだ。いくつかのカードの能力が記された文献は読んだ事があるんだけど、今回のケースに該当するようなカードはなかったと思う」
「要するに前情報はなしってことね。いいじゃない、いつも通りぶっつけ本番でやってやろうじゃないの!」
「カードたちに主だって認めてもらえるように頑張るよ」
アリサとすずかがグッと気合を入れた返事をした所で、
―――ィィィィィィン!―――
強い魔力反応が翔太達のリンカーコアを震わせた。
「っ、ジュエルシード!」
「反応が大きい、これはもしかして……」
「あの樹の時と同じくらいの感じがするの!」
「人が発動させたのかもしれない」
「まずい、急ぐぞ!」
翔太は先頭に出て風よけになり、全員の速度を上げて泉に向かった。
「見えた!」
高速で突っ切ってきた木々が茂る林が途切れ、その先にある泉が視界に入る。
「何あの怪物たち!?」
そこには泉から数多の異型達が這い出す光景が広がっていた。
普通では見る事ができない異様な光景に気圧され、一瞬速度を落としてしまったアリサとすずか。だが以前の夜の小学校の件で若干の耐性ができていた後の三人は、そのまま林を抜ける。
「っ、あそこっ!」
すばやく地上に視線を飛ばしたユーノが、怪物たちに追われている数人の子供の姿を見つけて叫んだ。
子供の背後に迫る緑の巨体が、その巨体に見合った腕を大きく振りかぶる。
「危ないっ!?」
「っく、フィアフルフィンを、足だけにもういっちょぉ!!」
翔太は既に展開していたフィアフルフィンに加えて、再度フィアフルフィンを展開する。新たに展開した羽が足を覆っていく。通常のフィアフルフィンは身体の関節部に展開されるが、今回は脚部にのみ集中して足先が翼のように見える。
翔太が展開するフィアフルフィンは、フィン一枚一枚に推進力があり、増えれば増えただけ速度を増す仕様になっている。魔力の問題だけで言えば実は二重にしてもそれほど負荷にはならないが、その速度をまだ制御できないので使っていなかった。
しかし今回に限っては通常のフィアフルフィンでは間に合わず、それに一直線に突っ込むだけなら細かい制御も必要ないので使用に踏み切った。
「間に合えーっ!」
両足の翼に魔力を流し込んで加速し、彼らに襲いかかろうとしている怪物に向かって突進する。
「ついでに硬化と鋭化して、キィィィック!」
叫んだ通りの魔法を両足の翼に付加し、スピードに乗せて体を回転させ、その足で怪物の腕を
『ゥガーーーーーーーーーーー!?』
怪物は切られた腕を押さえて大きく仰け反る。それと同時に、パリンと翔太の足に集中していたフィアフルフィンが砕けて消滅した。
「ギリ、セーフ」
翼が砕けた事に特に動揺せず、怪物と襲われていた子たちの間に降り立った翔太。そもそも術式もテキトーにくっつけてみただけなので、長く持つとは思っていなかった。
「ちょ、ちょっと何よその脆い攻撃魔法っ!? そんなので突っ込むなんて危ないじゃない!」
声を荒げるアリサを筆頭に、次々に翔太の隣に着地する。
「結果オーライだろ。それに俺じゃないと間に合わなかったんだから仕方ないだろ」
「それはそうかもしれないけど……」
同意はしつつも翔太が心配なのか気遣わしげな視線を向けるすずか。
「今はこっちの対処の方が優先だよ!」
なのはがレイジングハートを怪物たちに向けて構える。翔太が切り裂いた怪物は傷から消滅していったが、その間も泉から次々と怪物たちが這い出して来てゆっくりと翔太達に向かって近づいてきていた。
数十の怪物たちが全員翔太達を睨んでいる。サイクロプスにミノタウロスにゾンビのような何か。西洋系ばかりかと思えば、河童や赤鬼青鬼ろくろ首、矢が刺さった鎧武者の姿もある。
「和洋折衷の百鬼夜行かよ」
「ちょちょちょっとキミたちなに!? 一体何がどうなってんの!?」
襲われていたうちの一人、黒髪ショートの女の子が翔太の肩を何度も叩いて慌てたように声を上げる。その後ろにいるツインテールの女子は金髪ツンツン頭の男の子にしがみついて震えている。
その声に反応したのか、怪物たちの先頭にいたミノタウロスが駆けだして飛びかかってきた。
「今は説明より対処が先――」
と、翔太が足を踏み出した矢先
「――っておわっ!?」
「わわっ!?」
両肩をアリサとすずかにガッと掴まれて後ろに引き戻された。勢いが良すぎてバランスを崩して黒髪の子の方まで転がりこんで、その子を驚かせる。
ミノタウロスの方はその間になのはが撃ち落としていた。
「アンタは後ろでその三人からジュエルシードの事聞いてなさい!」
「あんな脆い攻撃魔法で挑んじゃダメだよ」
「うぐぅ」
二人に叱られて二の句が継げない翔太はすごすごとさがる。
「どうやら怪物たちの中に飛べるモノはいないみたいだよ」
「わかったわ。……となればこうすると安心ね。言う事聞きなさいよ、
クロウカードを宙に放りあげ、太陽の杖を振りかぶる。魔法陣が浮かび上がってから一瞬のタイムラグを得て、アリサを中心とした足元が小さく揺れ出す。
「え? え? 何これ?」
「どうなってるの!?」
それはそのまま盛り上がり、魔法を知らない二人が慌てている間に、怪物たちの手が届かない高さまで到達する。ツインテールの子は金髪の子の胸に顔をうずめているせいで周囲の変化には気づいない。
『アアァ』
『ボアァ』
ねずみ返しのように反らしているので下にいる怪物たちは登ってくる事ができない。これで翔太達の当座の安全は保障された。
「ひとまずこれでよし、と。なのは、すずか。私たちは怪物たちの対処よ。翔太の攻撃で消えるくらいならあいつ等大した事ないわ」
「うん」
「わかった」
「何気に酷くない?」
翔太の言葉は軽く無視された。
「ユーノはこの泉全体に結界をはってもらえるかしら?」
「フェイト達が入ってこれないように、だね」
「お願いね。それじゃ、行くわよ!」
アリサの掛け声に続いてなのはとすずかも怪物たちに向けて飛び立つ。ユーノは印を結び呪文を唱える。それと同時に翡翠の魔力が泉全体を包む。ユーノの結界魔法は、現段階のなのはの砲撃魔法を数発耐えられるだけの強度を持っている。フェイト相手でも暫くは突破されることはないだろう。
「勇敢な女子たちだよな」
怪物たちの手の届かない高さで飛びながら、それぞれの魔力弾を撃って怪物たちを消滅させていくアリサ達を、何んともいえない顔で見つめる翔太。
「女の子ってたくましいよね」
ユーノも同じような顔で同意する。
「この状況を解決するには、俺が通常攻撃の手段を手に入れないといけないわけだが」
フィンショットは嫌がらせ程度の威力しかなく、禁書の召喚はいわばド○クエのマダ○テのような一発限りの代物。なので翔太は相手に通用する通常攻撃の手段を持たないことずっと気にしていた。
「それがさっきの翼の剣?」
「使えるんじゃないかと考えてたけど、やっぱダメ?」
「一回で砕けるなら、実戦で使える強度じゃないと思うよ。そもそもあれって本当に単純に硬化と鋭化を付与しただけだよね?」
「ダメなのか?」
「ダメじゃないと思った理由が知りたいよ…… 一つの魔法として組むならちゃんとそれぞれに合うように術式を調整しないと。特に硬化の魔法は物体に対してかけるものであって、光刃に対して付与するタイプの術式じゃないからね」
「なるほど。アレか、ご飯にかける用のカレーと、うどんにかける用のカレーの違いってことか!」
「……翔太がそれで理解できるって言うならもうそれでいいよ」
「なになにご飯の話?」
翔太とユーノの、主にユーノからにじみ出る呆れとも諦めともつかない雰囲気を切り裂くように、黒髪の子が割り込んできた。こんな事態の中で明るい表情でご飯の話題に食いつく辺り、かなり胆が太い子のようだ。
「いや、ご飯は関係なくて。と、そっちの子は大丈夫?」
「え? え? な、なんでこんな高い所に?」
涙も止まり、ようやく周囲の状況に気付いたツインテールの子が今更ながらに慌てだした。
「なんだかよくわからないけど、この人たちが守ってくれたみたいだよ、ベッキー」
「そ、そうなの?」
「空を飛んできたり怪物を倒して、キミたちって魔法使い!?」
目をキラキラさせて翔太とユーノに迫る黒髪の女の子。こんな状況なのに、否、こんな状況だからこその高いテンションで捲し立てる。
「私にも使える!? ねえ!ねえ!ねえ!?」
「おぉ!? えっとそれはリンカーコアがないと」
「りんかーこあってなに!?」
「翔太!」
翔太が勢いに押されていると、ユーノが慌てた様子で空を仰いだ。
「外から結界を攻撃されてる! 急がないとマズイよ!」
「フェイト達か!」
ユーノが手を空に掲げて結界の強化に全神経を集中し始める。外からの攻撃のせいで、ユーノの表情は段々と険しい物に変わっていく。
「菱形の青い宝石に見覚えはない?」
横目で見たユーノの様子にのんびりしている暇はないと質問攻めを躱し、後ろの二人に視線を向ける。
「青い宝石って、ベッキーが持ってたアレ?」
「今も持って……ないな。強い魔力反応がないし」
「その、光った時に驚いて投げちゃって……」
「どの辺に落ちたかわかる?」
「えっと……」
「あ、それなら泉の中心辺りに落ちたと思うよ」
ベッキーと呼ばれた少女が言葉に詰まると同時に、黒髪の少女が横から補足した。なんとなく動く物を目で追っていたとのこと。
「なるほどジュエルシードは泉の中、か。さて、どうしよう……って、怪物増えてね?」
振り返って今更ながらに下の状況にづく。
「うっさいわね! 倒しても倒しても湧き出てくるし、キリがないのよ!」
『『『『『『『アアアアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーー』』』』』』』
「うわーん! なんかうじゃうじゃしてて怖いのー」
「なのはちゃんしっかり!」
翔太の眼下に広がる光景は今や怪物たちのおしくらまんじゅうの様相を呈している。まるで初詣に訪れた群衆のように。
それがスクラムを組んで更に上に重ね合って、徐々に翔太達がいる土の塔の頂上に迫って来ている。それだけではなく、アリサ達にも疲労の色が見える。魔力弾を撃ち続けている面も当然あるが、それ以上に撃っても撃っても終わりが見えない精神的疲労の方が大きい。
「アリサちゃん、どこ撃ってるの?」
「この河童何発撃っても全然倒れないのよ!」
「え、そこにいるのは鎧武者だよ?」
「え?」
「え?」
「……もしかして、元々噂にあった"人によって別の幽霊が見える"のと、"ジュエルシードが生み出した怪物"が混ざってるんじゃないかな?」
「そ、そのせいで効率があがらなかったのね……」
今回のジュエルシードとクロウカードが同時に発動した状況に対処するのは実は初めてである事にアリサは気付いた。
「あ゛ぁぁぁ!やってられないわ!翔太、ジュエルシード大本はどこ!?」
「泉の中心らしい」
「この怪物がどんどん湧き出てくる状況で潜って探すなんて無理よね。もう大樹のときみたく砲撃で撃ち抜いた方が早いわ。なのは!」
「そうしたいのは山々だけど、私が離れると怪物さん達が土の塔を登り切っちゃうよ!?」
会話をしている間も一切手を止めず撃ち落としていると言うのに、いつの間にか土の塔の頂上のふちに怪物たちが手をかけられる所まで登って来ていた。
「うわっ、もうここまで!? この、この!」
翔太は咄嗟に蹴落として対処したが、撃墜率ナンバーワンのなのはが抜けるとこの拮抗が破られるのは時間の問題になる。
「アリサ、
「この子私の言う事あまり聞いてくれないのよ! その位置が今の限界!」
「あぁもう! 面倒な制限があるなぁ! てい! フィンショット!」
また這い上がってきた怪物の手を蹴り飛ばす。もう一匹いたのでそっちは目にフィンショットをかまして落す事に成功する。
『ガァ!?』
「フィンショットでも時間稼ぎくらいはできるみたいだな」
言っている間にもどんどん上がってくる怪物たちにフィンショットをみまう。
「前に出てても数が減らない……」
倒すスピードよりも湧き出てくる方が上回り始めた事にすずかが気付く。アリサは数瞬考えて声を張り上げる。
「なら私とすずかは防御に集中よ! なのは! こっちはどうにか時間を稼ぐからジュエルシードの封印をお願い」
アリサとすずかは翔太がいる土の塔に戻り、周辺の怪物たちに攻撃を始める。
「わかった! レイジングハート、お願い!」
『Shooting mode set up。stand by ready』
杖の先端部分が音叉状の形態に変形し、光の羽が生まれる。
それと同時になのはの足元に魔法陣が広がって、杖の先端部分に大きな光球が生成されていく。
「いっくよー! ディバイン――」
「まずい! 結界が!?」
なのはがディバインバスターを放とうとしたまさにその瞬間、ユーノの結界に大きな亀裂が走った。
「こ・わ・れ・ろぉぉぁああああああああああああああああああああ!!!!」
「うわあっ!?」
その絶叫が聞こえた瞬間に、大きな破壊音と共に結界が無残にも砕け散った。壊されないように魔力も神経も集中し過ぎていたせいで、その破壊の威力は術者にもフィードバックされたため、ユーノは大きく倒れ込んだ。
「ユーノくん!?」
「バカ、なのはこっちはいいから早く封印を――」
「サンダースマッシャー!!!!」
「きゃっ!?」
ユーノの様子に気を取られた瞬間、紫電を纏った金色の光線がなのはのすぐ隣を横切り、そのまま泉の中心を貫いた。
『『『『『『オォォォォ……』』』』』』
断末魔の叫び声と共に、土の塔に登りかけていた怪物たちが軒並み消滅していく。
「怪物たちが、消えた?」
「ジュエルシードが封印されたんだ。……フェイトに」
翔太達はそろって光線の発射地点に視線を向ける。
そこには、結界を破壊したであろう拳を振り抜いた格好をしたアルフと、デバイスを構えて黒いマントをたなびかせるフェイトの姿があった。
泉の中から封印状態になったジュエルシードがゆっくりと浮かび上がり、フェイトのデバイスに吸い込まれていった。
「結界、張って、閉めだす、とは、粋な、真似してくれるね」
結界破壊で少し消耗したのか、肩を大きく上下させて翔太を睨みつけるアルフ。