短編集 らき☆すた~変わる日常IF、色々な世界~   作:ガイアード

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こちらは本編設定のキャラです。


岩崎みなみ編~大好きなあの人と共に~

「みなみ、出題した範囲は終わったか?」

 

そう私に声をかけてきたのは、私の大好きな先輩、森村慶一さんだった。

 

私は、そんな慶一さんの言葉に頷いて

 

「・・・先輩の作成してくれた問題の範囲はとりあえず・・・。先輩、答え合わせをお願いします・・・。」

 

そう言いながら先輩に答案を渡すと、慶一さんは

 

「よし、それじゃ早速やってしまうか。」

 

そう言って、私の答案用紙の答え合わせを始めた。

 

そんな私達の様子を見ていたゆたかが

 

「さすがみなみちゃんだね。私まだ全部おわってないよー。」

 

困った表情でそう言うのを、私は苦笑しながら見て

 

「・・・大丈夫だよ、ゆたか・・・落ち着いて考えれば先輩の作ってくれたは問題は分かりやすいから・・・すぐ解けるよ・・・。」

 

そう言うと、ゆたかも私を見てにっこりと笑いながら

 

「そうだね。私も頑張るよ、みなみちゃん!」

 

そう言って、慶一さんの作った問題集に改めて向き合うのだった。

 

「それにしても、やっぱりレベル高いっスねー・・・先輩の問題は。頭パンクしそうっスよ・・・。」

 

かなりの苦戦をしている田村さんを見ながらパトリシアさんも

 

「ヒヨリ!このテイドでヘバっていてはモクヒョウすらタッセイナドできませんですヨ!?ミンナでイッショのカレッジをメザスってチカったハズです!」

 

そう、田村さんにはっぱをかけていたが、田村さんは辛そうな表情をしながら

 

「わ、分かってるよ、パティ。でもさ?パティは一度アメリカに帰ってしまうんだよね?だったらこうして一緒に勉強してるのは意味ないんじゃ?」

 

その言葉にパティは軽いため息をつきながら

 

「タシカにヒヨリのイウトオリではありますガ、ワタシはもうイチド二ポンへカエってクルイシはありマス!そして、ヘンニュウシケンをウケルタメに、ワタシもカレッジにツウヨウするレベルになっているヒツヨウがあるのですヨ!!だからこそスタディはカカせまセン!」

 

最後には力強く言い、そんなパトリシアさんに田村さんも感心していた。

 

そう、今私達は、慶一さん達の行っている大学を目指して猛勉強をしていたのだ。

 

特に私は、大好きな慶一さんと一緒の学校で過ごしたいと思ったから、頑張っている。

 

そして、ゆたかや田村さん、パトリシアさんもまた、私達の行く大学を目指していた。

 

慶一さんはそんな私達の意思を尊重してくれて、私達の勉強を見てくれていた。

 

私は一生懸命問題の答え合わせをしている慶一さんの横顔を見ながら、慶一さんとの事を思い出していた。

 

最初に先輩の事を知ったのは、ある日にみゆきさんが大きすぎる荷物の買い物をして、そんなみゆきさんを見かけた先輩がみゆきさんの手助けをした事をみゆきさんから聞いた事だった。

 

その時の私は嬉しそうな顔で先輩の事を話すみゆきさんを見て

 

(・・・みゆきさんの事を助けてくれる人、か・・・どんな人なのかな・・・?話を聞く限りは、何だか優しそうな人みたい・・・。)

 

そう心の中で考えていた事を覚えている。

 

そして、そんな事があってからしばらくして、先輩と出会う機会が訪れた。

 

それは、私が先輩と出会うあの日にチェリーの散歩をしていた時の事。

 

気まぐれなチェリーはいつも散歩中に私の事を振り回す事が多かったのだけど、今回もまた散歩中に突然走り出すという事になってしまい、私は何とかチェリーのリードを離さないように必死にチェリーの動きに喰らいつきつつ、走っていた。

 

そして、チェリーはいきなり物思いにふけっていたらしい男の人へと突っ込んでいった。

 

その人はチェリーに押し倒されて近くの水溜りに突っ込み、呆然とした表情で、男の人の顔を舐めまわすチェリーに驚いていたようだった。

 

私もその男の人に凄く申し訳ない気持と、早くチェリーを引き離さないとという気持で慌てながらチェリーに呼びかけた。

 

「・・・チ、チェリー、だめ、やめなさい・・・。」

 

そう声をかけるが、チェリーは言う事をきかない。

 

それを見てますます焦る私。

 

そして、その人はそうやってチェリーを鎮めようとする私を見た。

 

私はその視線を受けて、(怒られる・・・。)そう心の中で思い、怯えと申し訳なさで目をつぶったが、その後にその人から発せられた言葉は意外なものだった。

 

「大丈夫だよ。そんなにおろおろしなくても別に俺は怒ってはいないからさ。」

 

そう声をかけてくれる男の人に驚きつつ私はその人に申し訳なさそうな顔で

 

「・・・す、すみません・・・うちの子が、とんだご迷惑を・・・。」

 

そう言うと、その人は優しげな顔で私を見て

 

「ははは。これくらい平気さ。それに、俺は犬は好きだからね。」

 

そう言って笑ってくれたのだった。

 

その言葉を聞いた私は何故か凄く安心した事を覚えてる。

 

そして、色々と話をしているうちにみゆきさんが私達の側を通りかかり、私に二言三言声をかけた後、その男の人に気付いて声をかけていた。

 

どうやらその人はみゆきさんの知り合いだったみたいで、みゆきさんは嬉しそうな顔でその人と話していた。

 

そして、私を一歩前に出すと、私の事をその人に紹介した。

 

私の自己紹介を受けてその人も自分の自己紹介をしてくれた。

 

そして、その人がみゆきさんの知り合いで同じ学校に通う森村慶一さんなのだ、ということを初めて知った。

 

チェリーの行動によって慶一さんのシャツが汚れてしまった事に責任を感じた私は、そのシャツを洗濯したいと思ったので慶一さんに家に寄ってもらうようにとお願いしたのだが、私に気を使ってくれたみゆきさんが代わりにシャツの洗濯をすると言ったので、私はみゆきさんや慶一さんと一緒にみゆきさんの家へと行く。

 

そこで、洗濯が終わるまでの間、慶一さんの話を聞いて楽しんでいたっけ。

 

そして、用事が終わり、みゆきさんの家を後にするとき、私は再度、慶一さんにかけてしまった迷惑について詫びたのだけど、慶一さんは私が慶一さんにかけてしまった迷惑のお詫びの代わりに、ある子と友達になってやって欲しいと私に頼んだのだった。

 

その子の事を聞き、慶一さんの優しさを知って私は、みゆきさんを目標にして陵桜を目指す事を思っていた以外に新たな目標を持つ事になった。

 

この時から私は、慶一さんの事を気にし始めていたように思う。

 

そうして、慶一さんとの出会いの後、私はより一層受験勉強にいそしむ事となった。

 

それからはしばらく慶一さんと出会う事はなかったのだけど、みゆきさんと会う度に私は慶一さんの事をみゆきさんから聞く事となった。

 

そして、慶一さんが今どんな風に過ごしているかを想像しながら、慶一さんと同じ学校により強く行きたいと思うようになっていった。

 

それからしばらくして、世間では夏休みも近づいたある日、慶一さんと再び再会を果たす時が来た。

 

それは、偶然ではあったのだけど、慶一さんも実家の方へは長い休みの前等には一度顔を出しに戻るという親との約束が、この偶然の再会を果たすきっかけになった。

 

その日、私はチェリーの散歩に出ようとしていた時、みゆきさんのお母さんのゆかりさんから家の前で声をかけられた。

 

「あっ、みなみちゃん。ちょっといいかしら?」

 

その声に私は振り向いて

 

「・・・ゆかりさん。私に何か御用ですか・・・?」

 

そう尋ねると、ゆかりさんは私に

 

「ええ。実はちょっとみゆきに用事を頼みたいんだけど、私うっかりしててその件をみゆきに伝え忘れちゃったのよね。だから、みなみちゃん。悪いんだけど言伝をお願いできないかしら?」

 

その言葉に私は頷きながら

 

「・・・わかりました。それで、今みゆきさんはどこにいるんですか・・・?」

 

みゆきさんの居場所をゆかりさんに聞いてみると、ゆかりさんはにっこり笑いながら

 

「この付近では結構有名な、龍神流の道場があるのはみなみちゃんも知ってるわよね?みゆきは今そこにお邪魔してるのよ。」

 

その言葉に私は凄く驚いて

 

「・・・え?あの龍神道場ですか・・・?なんだかみゆきさんがそこに行くイメージが湧かない場所ですよね・・・?」

 

私はゆかりさんにその事を尋ねるとゆかりさんも頷いて

 

「そうなのよねー・・・。でも、みゆきはそこに知り合いが居るのだと言っていたわ。だから今日はそこに尋ねていったらしいのよね。とにかく、そう言う訳だから、みなみちゃん、お願いできる?」

 

その言葉に私は改めて頷いて

 

「・・・わかりました。行くよ・・・?チェリー・・・。」

 

そう言うと、私はチェリーを連れて龍神道場を目指した。

 

そして、道場の側まで来た時、突然チェリーがまたも私の持つリードを振り払って道場内の敷地へと飛び込んで行き、誰かに飛びついたようでした。

 

それを見て慌てた私はすぐにチェリーの所へ急ぐと、そこにはチェリーにのしかかられて顔を舐められていた慶一さんが居たのだった。

 

私は、またもどうしていいかわからずおろおろとしていたのだけど、そんな私を見た慶一さんは

 

「よっ、岩崎さん。あの時以来だね。とはいえ、どうして君がここに?」

 

そう聞いて来た慶一さんに私は事情を説明し、また、なぜ慶一さんがここにいるのか、そして、性の違う慶一さんが何故ここを実家だと言ったのかを尋ねてみた所、ここに居た理由と性の違いの理由はみゆきさんに聞いてみてくれと話してくれた。

 

その上で、私は慶一さんは、私にも道場で見せたいものがあるからと言ったので、私はチェリーのリードをつないで、慶一さんと一緒に道場へと向かった。

 

そして、みゆきさんには会えたが、その時にみゆきさんにゆかりさんから預かったことづての事を伝え、同時にみゆきさんから聞いていた中の良いお友達の事を紹介してもらい、私も自己紹介を返し、その後で慶一さんは、私達に道場で習っている武術の演武を見せてくれた。

 

その動きは力強く、しなやかで動きも凄く綺麗で、思わず私はそんな慶一さんの姿に見入っていた。

 

そして、演武を終えて私達の側に来た慶一さんに私は素直な感想を言うと、慶一さんはその言葉に照れていたようだった。

 

けど、その後に道場に入ってきたお客さんを見た慶一さんは、さっきとはうって変わって元気を無くしていた。

 

そのお客さんの名前は牧村瞬一さんといい、慶一さんとは親友”だった”らしい。

 

そこで私は思いがけず慶一さんの過去を知る事となった。

 

同時に、今の慶一さんの性の違いについても理解が出来たのだった。

 

私はそんな過去を知り、慶一さんに凄く同情した。

 

けど、そんな中でも、慶一さんの周りの友人は慶一さんを軽蔑したりしなかった事が嬉しくもあり、私もまた、そんな皆さんと同じように、慶一さんは好きになれる人、そう思ったのだった。

 

そして、みんなのそんな気持を受けた慶一さんは後ろを向いて涙を見せていたようだったのを見て、改めてこの人は優しい人なのだと思えた。

 

そんな事があって、ますます受験に向けて張り切った私だったけど、夏休みに突入する頃、少々受験勉強疲れのようなものが出ていたみたいで、私は自身の壁に当たる事になった。

 

この状況をどうにかしたいと悩んでいた時、みゆきさんから貰った電話は、そんな煮詰まった状況を打開するものだった。

 

それは、慶一さんが受験勉強の気晴らしに私を海へと誘ってくれた事だった。

 

私はすぐにその提案に飛びついた。

 

私は海に行けることも喜んでいたけど、それ以上にまた慶一さんと会える、その事を喜んだ。

 

そして、集合場所に来て見ると、私以外に慶一さんが誘った私と同い年の子がいた。

 

慶一さんがその、もう一人の私と同年代の子と話して居るのを聞いた時、その名前は以前に慶一さんから聞かされていた名前だった事を思い出して

 

「・・・森村さん、先ほどあの子の事を”ゆたか”って呼んでいたみたいですが・・・ひょっとしてあの子なんですか・・・?森村さんが言っていた子は・・・。」

 

私の言葉に驚きと嬉しさの表情を見せた慶一さんは

 

「そっか、覚えててくれたんだな。そうだよ?あの子が君に友達になってやって欲しいってお願いした子さ。本当は陵桜に行ってからの予定だったけど、今からでも友達になってやってくれないかな?頼むよ、みなみ。」

 

と言う慶一さんの言葉に私は、名前で呼んでもらえた事に驚きつつもそれを嬉しく思いながら”ゆたか”と呼ばれた子の方を見て少し考え込んでいたが、私はその子と友第になる事を決意すると、”ゆたか”の側に行って、声をかけた。

 

と同時に慶一さんも小早川さんに私を紹介してくれ、小早川さんも私に同じく自己紹介をしてくれた。

 

私は、一目でこの子の事が気に入り、小早川さんも私と友達になりたいと言ってくれたのが嬉しかった私は、この子となら上手くやれそうな気がしていた。

 

更にそこに慶一さんは田村さんも紹介をしてくれ、私の友達は一気に2人になった。

 

そんな慶一さんの気遣いに嬉しさを感じつつ、私たちは海へと向かった。

 

その時に車に乗る順を決めていたのだけど、私の乗った車で私は地獄を見る事になったのは私自身も想像ができなかった。

 

そして、海でも色々な事があった。

 

砂の城を作っている所に声をかけてもらったり、慶一さんが砂に埋められたり、ビーチバレーで慶一さんがかがみ先輩に殴り倒されたり、花火をしたり等、でも、その一週間の旅行中の3日目に凄く怖い事があった。

 

それは、柊先輩達を助ける為に慶一さんは身を呈して闘って猪を仕留めたという事だった。

 

まさに死闘だったとその後、山登りチームの面々は語っていた。

 

慶一さんはなんでもないような事を言っていたけど、私は凄く心配だった。

 

次の日は仲間達に前日の一件について責められる慶一さんだったけど、みんなの思いを感じ取った慶一さんは申し訳なさから涙を流して詫びていた。

 

私はそんな慶一さんを見ながら、無事に戻ってくれた事に心底安堵していた。

 

更には慶一さんはこの海に来た本当の目的を5日目の時に明かしてくれた。

 

ゆたか達と会話しつつ、長森先輩の言葉を聞いて私もその時にはある仮説が頭の中にあったが、先輩の独白を聞いた時、それは正しい事なのだと分かった。

 

そして、私を含めた皆に対して改めて仲間と言ってくれる先輩の気持が嬉しかった。

 

と同時に私以外の皆もまた、慶一さんに対して思う所があるのが感じられた時、私は胸中複雑な気分だった。

 

思えばこの時に、慶一さんを好きになり始めていたのだと思う。

 

みんなで花火を見て、最後に温泉へ行って、楽しいけど、ちょっとだけ怖かった旅行も終わりを告げた。

 

その日から私は再び受験勉強へと没頭しはじめた。

 

けれど、夏休みの最中に慶一さんに関するイベントがあり、私は慶一さんの為にプレゼントを用意しようと思い、お店を回っていた。

 

(・・・どれがいいかな・・・。色々考えるけど・・・男の人にプレゼントなんて送った事ないから、よくわからない・・・あ、あのTシャツはいいかも・・・。)

 

私は心の中で考えながらあるTシャツを見つけ、それをプレゼントにする事にした。

 

そして、店員さんに

 

「・・・あの・・・このTシャツをお願いします・・・。プレゼント用ですので、リボンをかけてもらえますか・・・?」

 

そう言うと、店員さんは

 

「これですね、承ります。男物ですね、彼氏へのプレゼントですか?」

 

そう聞いて来たので私は途端に顔を真っ赤にして手を振りながら

 

「・・・い、いえ・・・その・・・そう言う訳では・・・。」

 

そんな風に言い訳をする私に店員さんも妙なかんぐりをしつつも、プレゼント用に綺麗に包装してくれたTシャツを渡してくれた。

 

その間もずっと、顔を赤くしながら俯く私だったが、プレゼントを受け取ると、慶一さんの誕生日に備えた。

 

そして、慶一さんの誕生日もやってきて、私は泉先輩に呼ばれて準備の手伝いをするために慶一さんの家を訪れた。

 

私は慶一さんの喜ぶ顔を想像しながらパーティの準備をしたのだった。

 

そして、自分の誕生日を忘れていた慶一さんが泉先輩にその事を指摘され、凄く嬉しそうな顔をしていたのを見た。

 

そんな顔を見た私も嬉しくなり、そして、慶一さんの為に買ったプレゼントを手渡すと慶一さんは凄く喜んでくれた。

 

皆から貰ったものも喜んでいたが、何故か、私が渡したプレゼントを貰った慶一さんは皆からのより喜んでいたように見えた。

 

最初は気のせいかも、って思っていた私だったけど、ふいに慶一さんと2人になった時に

 

「ありがとな、みなみ。凄くうれしかったよ。」

 

私にだけ慶一さんは改めてそう言ってくれたのだった。

 

「・・・い、いえ・・・先輩にはお世話になっていますから・・・私も良くしてもらえて嬉しかったですし・・・。」

 

そう返しつつも私は、その言葉を聞いて物凄く嬉しくなった。

 

私のその言葉を聞いた慶一さんは、にっこりと笑ってくれたのだった。

 

私はその後、周りの人達の様子を見ていたのだけど、慶一さんは私以外にはそんな事を言っている様子がなかった。

 

その事がますます私を嬉しい気持にさせてくれた。

 

そういう事もあったが、密かに嬉しい誕生パーティイベントを終えて、私は夏休みを過ごしていく。

 

夏休みの終わり頃には、旅行で出会ったゆたかや田村さんと一緒に夏休みの宿題兼受験勉強をみゆきさんに手伝ってもらいながら終わらすつもりだったのだけど、みゆきさんは1人で捌ききれない事を悟り、慶一さんや柊先輩に助けを求める事となった。

 

夏休みももうすぐ終わりということでかなり忙しいかもしれないと思い、迷惑をかける事に抵抗はあったのだけど、慶一さんは私達を受け入れてくれ、慶一さんの自宅で宿題兼、受験勉強ををする事となった。

 

でも、やっぱり慶一さんの家には皆が集まる事となり、八坂先輩と永森先輩以外の全員がここに集合する事になった。

 

そして、一通りの事を終えて私たちも宿題をかたすことが出来、受験勉強にも弾みがつけられ、私は充実した勉強の成果を喜んだ。

 

そして、帰る途中で先輩が私にメールを送ってくれた。

 

from:慶一

 

今日は大変だったな、みなみ。受験までまだまだあるにせよ、この調子で頑張れ。

そして、陵桜に合格する事を祈ってるよ。

それと、みなみ、気付いたかな?今日は俺はお前から送ってもらったプレゼントのTシャツ着てたんだぜ?

これ、本当に嬉しかった。

改めてありがとうな、みなみ。

 

P.S

 

お前の誕生日には俺もお返しで何か送らせてもらうよ。時期的にみゆきに受け渡しを頼む事になるかもだけど、楽しみにしててくれ。

 

私はそんな慶一さんからのメールを見て、凄く嬉しくなった。

 

と同時に慶一さんへの思いも深まり始めたようだった。

 

あの時から私は慶一さんとはよくメールの交換をしたり、電話したりをするようになった。

 

私もそうだったけど、慶一さんもまた、私をよく気にかけてくれるようになった。

 

会えない事は仕方のない事だったけど、私は慶一さんからのメールや電話を自分の力に変えてさらに受験勉強へと打ち込んだ。

 

その後新学期が始まって、慶一さんは私の誕生日の事を覚えていてくれたみたいで、みゆきさんと一緒に選んだ物らしいけど、勉強に役立つ物と星の形の飾りがついた髪留めを送ってくれた。

 

私の事情もあったからパーティは出来なかったものの、そのプレゼントは物凄く嬉しかった。

 

あの髪留めは今でも慶一さんと会う時には着けていっている。

 

そんな事があってからしばらくして、慶一さんから体育祭の招待のメールを受け取った。

 

私は応援に行こうかな?と考えていたのだが、その時にゆたかからの電話が来たので電話を取ると、その内容は陵桜学園の体育祭に先輩達の応援に行ってみよう、という誘いだった。

 

私はその誘いに応じたのだけど、田村さんもまた一緒に行くという事になり、私達は3人そろって体育祭へ先輩の応援に行くのだった。

 

私たちの声に答えてくれる慶一さんのの行為は嬉しいものだった。

 

けど、泉先輩達と一緒に居る慶一さん達のお昼休みの様子を見て私は、あの場に自分がいない事が寂しくも感じられた。

 

そんなふうに少しだけブルーになる事もあったが、そんな私の心情に反して体育祭は物凄く盛り上がった。

 

先輩達やみゆきさんの活躍も凄かったけど、最後の慶一さんのリレーは鳥肌がたつほどに興奮した。

 

あの絶望的な状況から1位をもぎとるその慶一さんの底力は凄いと感じた私だった。

 

結果的に泉先輩のクラスに優勝は持っていかれたけど、私の中では慶一さんの活躍が一番だった。

 

そんな大興奮の体育祭が終わってしばらくして、私も気付かないうちに慶一さんの身に事件が起きた。

 

それを知ったのは、最近になって慶一さんからのメールの返信や連絡がなくなっていた事に何となく不審な物を感じていた事。

 

そして、そんな事が起きはじめて3日後に、怖い顔でどこかへ出かけようとしているみゆきさんの姿を見たからだった。

 

私はそんなみゆきさんの表情から何か嫌な予感を覚えて

 

「・・・こんにちはみゆきさん・・・大分慌てているみたいですが、何かありましたか・・・?」

 

そんな私の言葉にみゆきさんは苦悩の表情を一瞬見せましたが、私にその理由を話してくれた。

 

みゆきさんから聞いた言葉は私の心を騒がせた。

 

私はみゆきさんにいてもたってもいられなくなり

 

「・・・先輩、困っているんですか・・・?私も・・・先輩の力になれないでしょうか・・・?」

 

そうみゆきさんに聞くと、みゆきさんは首を振って

 

「今は、みなみちゃんに出来る事はありません。残念ですが・・・いえ・・・一つだけありましたね・・・みなみちゃん。慶一さんの事は私と泉さんがなんとかしてみせます。みなみちゃんは・・・慶一さんの無事を祈っていてあげてください。全てが済んだら、みなみちゃんにもちゃんと説明しますから。だから今は私達を、慶一さんを信じて待っていてください。」

 

そう言うみゆきさんを見て、私は今の私にはそれしか出来る事がないのだと理解した。

 

そして、慶一さんのピンチに何も出来ない自分を悔しく思いながら

 

「・・・わかりました・・・みゆきさん。頑張ってください・・・全てが上手く行く事を・・・祈ってますから・・・。(・・・慶一さんのピンチに何も出来ない・・・私に今出来る事はそれしかないんだ・・・。慶一さん、私にはこれしかできないけど・・・祈ります・・・だから、また元気な姿を見せてください・・・。)」

 

みゆきさんに慶一さんの事を託しつつそう心の中で言う私だった。

 

そして、私の祈りやみゆきさん達の懸命な努力で慶一さんは今回のピンチを脱したのだと知った。

 

私はみゆきさんから事の経緯の説明を聞いた時、心底ほっとした。

 

そして、回復した慶一さんの携帯へ、私は電話をかける。

 

「もしもし、みなみか?」

「・・・はい・・・先輩、今回はかなり大変だったみたいですね・・・。」

「みゆきから聞いたんだな?ああ、かなり大変だったけど、なんとかな・・・。みなみ、お前にも心配かけちゃったな。けど、もう大丈夫だ。」

「・・・よかった・・・私、すごく心配してました・・・もう2度と先輩と話す事も出来なくなってしまうんじゃないか・・・私の目標もなくなってしまうんじゃないかと・・・凄く不安になったんです・・・。」

「悪い・・・みなみ。それと、お前の言う目標ってなんなんだ?よければ教えてくれないか?」

 

その慶一さんの言葉に私は電話を耳に当てつつ顔を真っ赤にして

 

「・・・そ、その・・・先輩のいる学校へ行って・・・同じ学校で・・・先輩と楽しくやりたいと・・・その・・・そういう事です・・・。」

 

そう答えると、先輩はしばし無言になって

 

「・・・なあ、それって、俺だけか?皆も、じゃなくてか?」

 

慶一さんからその言葉を聞いた時、私は舞い上がって思わずすごい事を口走っている事に気付いて慌てて

 

「・・・あ、いえ、その・・・他の先輩達やゆたか達も、です・・・すいません・・・。」

 

私のその言葉に慶一さんは電話口で少し笑っているようで

 

「くくく・・・いや、すまん、そういう事か。でも、さっきの言葉は嬉しかったぞ?みなみ。」

 

最後の言葉は真面目な声で言う慶一さんに私は慌てながら

 

「・・・え?あ、えっと・・・その、なんというか・・・・・・はい・・・。」

 

最後の慶一さんの言葉が嬉しかった私だが、混乱のあまり、何だかしどろもどろな答えになってしまっていた。

 

そんな事を乗り越えてから数日後に私は、再び慶一さんと出会う機会があった。

 

それは、偶然にも八坂先輩や長森先輩と共に慶一さんが実家に戻っていたのと、ゆたか達と受験勉強の為に勉強会を先輩が戻る日に行っていた事がそのきっかけとなった。

 

早朝にチェリーをゆたか達と一緒に散歩させていた時、私達は龍神流道場の前を通りかかったのだけど、そこには朝早くに体を動かしていた慶一さんがいた。

 

私達は居る筈のない慶一さんの姿を見つけた事に驚いて、思わず慶一さんに声をかけていた。

 

「・・・慶一先輩?・・・どうしてここにいるんですか・・・?」

 

その言葉と同時にゆたかや田村さんも声をかける。

 

慶一さんは私達に笑いながらここにいる理由を説明してくれた。

 

そして、慶一さんは私達に「午後は暇あるか?」と聞いて来たので私は特に用事がある訳でもなかったので空いていると答えると、慶一さんは私達に連れて行きたい場所があるから付き合って欲しいと言って来たので、私達はそのお誘いに頷いた。

 

その後、何故か一緒に来ていた泉先輩達と共に慶一さんの連れて行きたい場所へと向かったのだが、そこは私も密かに利用していた喫茶店”レゾン”だった。

 

慶一さんがその店を知っていた事も驚きだったけど、慶一さんが私の知っている店を知っていてくれた事が凄く嬉しかった。

 

そして、ここに来た理由は、今回の騒ぎで世話になった皆に慶一さんが奢りたいと言った事だった。

 

そこで、私達ははからずとも慶一さんのもう1つの過去を知る事になった。

 

その話を聞いて大分大変だったんだな、と思うと共に、慶一さんはあの当時から比べるとかなり変わったんだな、としみじみ思ったのだった。

 

その後、桜藤祭があり、私達はそれも見ておきたいと思ったから一般公開の日に見に行った。

 

そこで、慶一さんとまた出会い、腕相撲の決戦を見ていた。

 

私はゆたかや田村さんとハラハラしながらその様子を見ていたが、慶一さんは見事全員を倒して景品のテレビをゲットしていたのだった。

 

私はそんな慶一さんの凄さを改めて見て、慶一さんは凄い人だな、と改めて思った。

 

そして、慶一さんのクラスの出し物である喫茶店で、私達も予想だにしなかった慶一さんの過去が私達の前に、そして、慶一さんの前に現れた。

 

慶一さんに難癖をつけるかつてのクラスメイトの”盗人”という物言いに腹を立てた私は自分でも驚くほどの大声でクラスメイトに抗議をしていた。

 

しかし、彼らの真意を聞いて私は慶一さんの罪がまた1つ消えた事に安堵していた。

 

その後、慶一さんは私にあの時に自分を庇うように抗議をしてくれた事を嬉しく思ってくれて私にお礼のメールをくれたのだった。

 

FROM:慶一

 

みなみ、あの時のお前の言葉、凄く嬉しかった。

寡黙なお前がああまでも俺の為に声を荒げてくれた事がありがたかったよ。

今度また、何らかの機会にはお礼をさせてくれ。

 

P.S 売上勝負は結局俺達の完敗だった。

 

そんな慶一さんのメールを見て、私は1人部屋で微笑んでいたのだった。

 

そして年末になり、私達の受験もいよいよ追い込みとなり、私はクリスマスも気にせずに勉強を続けていた。

 

そんな事をしている時、ふいにお母さんが私に来客を告げたのだが、それはサンタクロースの格好をした慶一さんだった。

 

驚く私に慶一さんはプレゼントを渡すと、海での事、文化祭での事、誕生日の事のお礼を私に言ってくれた。

 

そして、その後慶一さんは私を外に連れ出すと

 

「・・・みなみ。お前にもう1つ言いたい事があってな。俺は、あの誕生日からずっとお前の事が気になってた。最初は勘違いだと思ったんだけど、冷静に考え直してみてもやっぱり答えは同じだった。みなみ、俺はお前の事を何時の間にか好きになっていたみたいだ。それで、その・・・みなみは俺の事、どう思ってるのか、聞かせてほしいんだ。」

 

その先輩の突然の告白に、私は何が起きたのかすぐに把握する事が出来なかったが、落ち着いて慶一さんの言葉を整理した時、慶一さんが何を言ったのかが分かって私は顔を真っ赤にした。

 

そして、私は散々悩みながら

 

「・・・先輩、先輩のその気持は嬉しいです・・・けど、もう少しだけ考えさせてもらえませんか・・・?私も、先輩に対して少なからずそういう思いはあったと思います・・・けど、まだはっきりしないんです・・・ですから・・・はっきりと答えが出るまでは・・・もう少しだけ、待っていて欲しいんです・・・。」

 

そう伝えると、慶一さんは少しだけがっかりしたような表情になりつつも頷いて

 

「わかった。けど、みなみ。俺は、俺のこの気持ちだけは嘘偽りはないから、それだけはこの場で誓うよ。だから、改めて俺の言葉を考えて欲しい。お前からの答え、待っているから。」

 

そう言いながら慶一さんは私を軽く抱きしめてくれ、そして、まだやる事があるからと私の前から去って行った。

 

そんな慶一さんの後姿を見送りながら、私はさっき慶一さんが言ったことを反芻しつつ、自分はどうなのだろう、慶一さんに対して自分はどう思っているのだろう、と自問自答を繰り返すのだった。

 

その後にみゆきさんから、慶一さんは私達のメンバー全員の所へプレゼントを配って歩いたのだという事を聞かされ、慶一さんらしいな、と笑ったのだった。

 

そうして、年も明け、いよいよ受験も迫る中、先輩から受験に向けての励ましのメールをもらった。

 

FROM:慶一

 

みなみ、もうすぐ受験だな。勉強はしっかりやれているか?俺の送ったお守りを身に付けて、本番では体調を崩さないように気をつけてな。

お前の合格を、同じ学校に通える事を祈ってるぞ?頑張れよ?みなみ。

 

P.S ゆたかやひよりにも同じようにお守りを贈った。3人揃って合格を願ってる。

 

その内容に私は慶一さんから貰ったお守りを見つめ、改めて頑張ろうと誓った。

 

そして、それから数日後には無事に受験も終え、時期的にバレンタインにもなっていたので、私は慶一さんに渡すチョコを作ると共に、この時にあの時から考えていた事の答えを慶一さんに伝える事を決めていた。

 

バレンタイン当日、ゆたかと田村さんと一緒に慶一さんにチョコを渡しに行く。

 

慶一にチョコを渡すと、慶一さんはその場でラッピングを解いて私達のチョコを食べてくれたのだった。

 

そして、慶一さんは私達をそのまま家にあげてお茶をご馳走してくれたのだが、慶一さんがキッチンに行っている時に私は、密かに慶一さんを慶一さんの部屋に呼び出すメールを飛ばした。

 

そして、慶一さんは話の途中でちょっと部屋に用事があるからといってリビングを出て、私はお手洗いを借りると偽り、やはり同じようにリビングを出た。

 

そして、慶一さんの部屋へ行くと、そこには慶一さんが私を待っていてくれたのだった。

 

「・・・で?俺に話しがあるんだろ?みなみ。」

 

慶一さんの言葉に私は頷いて

 

「・・・はい。あのクリスマスの日から、ずっと考えていた事への・・・答えを言いにきました・・・。先輩、私も先輩が好きです・・・。私もあれから、自問自答を繰り返しましたが・・・やはり私は先輩が好きなのだという結論に辿り着きました・・・。先輩は私を好きだと言ってくれました・・・だから私は・・・そんな先輩の気持に応えます・・・。」

 

私の答えを聞いた先輩は嬉しそうな顔で私を抱きしめてくれ、そして

 

「ありがとう、みなみ。よかった、何だかほっとしたよ。あの時お前に一方的に自分の気持ちを伝えて、あれからずっと、お前の気持が気になってたからな。」

 

そう言う慶一さんの言葉と行為に私は、顔を真っ赤にしながらも首を振って

 

「・・・私こそ・・・すみません・・・すぐに答えを出せなくて・・・先輩を不安にさせてしまいました・・・。」

 

私の言葉に慶一さんは優しい声で

 

「いいんだ。こうして気持が通じ合ったんだし、もういいよ。みなみ、同じ学校に通うようになったら改めてよろしくな。」

 

その言葉に私も頷いて

 

「・・・はい、こちらこそよろしくお願いします・・・。大好きです・・・先輩・・・。」

 

そう言う私に慶一さんは

 

「みなみ、学校にいるときとかはそう言う呼び方でもいいけどさ、2人きりのときは、その・・・名前で呼んでくれると嬉しいんだが。」

 

顔を赤くしながらそう言う慶一さんに私も赤い顔のまま薄く微笑んで

 

「・・・わかりました・・・。・・・慶一さん・・・でいいですか・・・?」

 

私のその言葉に嬉しさを顔一杯に浮かべた慶一さんは

 

「・・・ありがとな。俺も大好きだ、みなみ。」

 

そう言うと、私と慶一さんはその場で唇を重ね合わせた。

 

初めての慶一さんとのキスはほんの短い間だったけど、凄く照れくさくて、そして凄く嬉しかった。

 

その後、私達はお互いに手をつなぎながらリビングに戻ったのだが、そんな私達の事に気付いたゆたかや田村さんにからかわれたりもしたが、慶一さんが私と付き合う事を2人に告げたら、2人とも凄くびっくりとしていた。

 

それはやがて、みゆきさんや他の先輩方にも知られる事となり、でも、皆はそんな私達を祝福してくれたのだった。

 

そして、受験の結果発表を受けて、私達は無事に陵桜に合格を果たした。

 

それからしばらくは、新しい仲間であるパトリシアさんも加わり、楽しい日々が続いていたが、しばらくするともう1つ大きな事件が起こってしまった。

 

それは、あの日レゾンで会った牧村さんが突然亡くなったというものだった。

 

あの事件は慶一さんには堪えたらしく、その後しばらくの間は慶一さんは塞ぎこんでしまっていた。

 

それでも、そんな慶一さんの側にいて私は慶一さんを励ましつづけ、慶一さんも何とか立ち直ってくれた。

 

それと同時に慶一さんの過去の決着もついたみたいで、これ以後は大きな事もなく、慶一さんもなんとか私達が一緒に行こうとしている大学の受験済ませる事が出来たようだった。

 

そして、しばらくは大学と高校という隔たりもあったものの、慶一さんとの付き合いも続き、今度は私が慶一さんを追う為に慶一さんの所属する大学を目指した。

 

その間もずっと、慶一さんは私達の勉強の面倒を見てくれた。

 

そしていよいよ受験も迫ってきた頃、現在は冒頭の状況なのだった。

 

相当に大変だったけど、受験も終え、その後は結果発表を待つばかりとなった。

 

発表の始まる数日前、私達は久しぶりにデートをしていた。

 

「ようやく受験も済んだな。みなみ、手応えの方はどうだ?」

 

そう聞いてくる慶一さんに私はコクリと頷くと

 

「・・・教わった所も・・・範囲はばっちりだった・・・。出来は悪くないと思うよ・・・?」

 

その言葉を聞いた慶一さんは嬉しそうに

 

「そっか。それなら俺も頑張った甲斐があったってもんだな。後はお前の合格を祈るばかりか。」

 

慶一さんの言葉に私は微笑ながら

 

「・・・そうだね・・・絶対に合格したいから・・・私頑張ったよ・・・?大学に行ったら・・・高校以上に色々な事を慶一さんとやってみたい・・・。今から楽しみだね・・・。」

 

私の言葉に慶一さんも満面の笑顔で頷いて

 

「そうだな。高校とは違って2年も時間があるからな。お前ともっと思い出、作れそうだからな。」

 

その言葉に顔を真っ赤にした私は嬉しそうな顔で

 

「・・・うん・・・。大学ではまた高校のときとはちょっと違う思い出を・・・作りたいね・・・。もっともっと色々な所に行ったり・・・学校の行事を楽しんだりしたい・・・。慶一さんとどれも一緒に・・・やって行きたいな・・・。」

 

私の言葉に慶一さんは照れたような顔で

 

「はは、みなみがそう言ってくれるのは嬉しいな。大丈夫だ、絶対合格できる。だから、自信を持って待とう、合格発表をさ。」

 

そう言って私の手を握って笑いかけてくれる慶一さんに私も笑顔を返しながら手を握り返して

 

「・・・慶一さんの言葉を・・・信じるよ・・・。」

 

私も慶一さんの顔を見つめながらそう言うのだった。

 

そして、何度目かわからないけども、また2人、唇を重ね合わせて私達は家へと帰った。

 

それから数日後、いよいよ訪れた合格発表の日、私は慶一さんやゆたか達と共に合格発表を見に、張り出されている掲示板へと足を向けた。

 

緊張の最中、まずはゆたかとひよりがおそるおそる掲示板を見る。

 

私達はそれを、やはり緊張の面持ちで見守っていた。

 

そして、結果は・・・・・・

 

「あ、あった、あったよ!?私の番号あったよー!!」

 

まずゆたかが合格を決めたようだった。

 

そして、同じように掲示板を見つめるひよりも

 

「や、やった!やったっス!!私も番号あるっスよ!!」

 

そう言ってゆたかと2人抱き合って喜んでいた。

 

「よかったね、ひよりちゃん!!」

「うんうん!やったっス!!」

 

そんな2人に慶一さんも嬉しそうに

 

「やったな、2人とも。よく頑張った。お前らならやれるって信じていたよ。」

 

そう言うと、2人は嬉し涙を浮かべた顔で

 

「はい!先輩のおかげです!ありがとうございました!!」

「先輩の言う通り頑張ってよかったっス!本当に感謝っスよ!!」

 

そう言う2人に先輩もうんうんと頷いて喜んでいた。

 

そして、そんな最中、ついに私の番がやってきた。

 

緊張の面持ちで見守る慶一さんとゆたかとひより。

 

私は願いを込めて掲示板に目をやった。

 

そして、その結果は・・・・・・

 

「・・・ある・・・。私の番号もここに・・・。」

 

見事私も合格を果たしたのだった。

 

この結果に喜ぶゆたかとひより。

 

そして私は思わず慶一さんに抱きついて

 

「・・・やったよ・・・?慶一さん・・・私・・・合格出来た・・・嬉しい・・・本当に・・・。」

 

思わず私はゆたか達の前では慶一さんを先輩と呼ぶ事も忘れ、2人きりの時の呼び方をしてしまっていた。

 

そんな私にゆたかとひよりは驚いていたが、慶一さんはそんな私を優しく抱きとめて

 

「よかったな、みなみ。俺を信じて、自分を信じて、そして、約束を果たそうと頑張ったお前の努力の結果だよ。みなみ、これから2年間、よろしくな?」

 

慶一さんの言葉に私は嬉し涙で濡れた顔を向けて

 

「・・・うん・・・私こそよろしく・・・これから一杯楽しい思い出を作りたい・・・。」

 

そう言う私に慶一さんも満足気に頷いていた。

 

そんな私達を見た2人は呆れたような目で私達を見ながら

 

「もう・・・私達もそういう思いを持って頑張ったんだよ?なのに、2人だけで楽しい思い出なんてずるくない?」

「久々にネタきたー!!じゃなくて、ゆーちゃんの言う通りっスよ。私達も一緒に楽しい思い出作りたいと思っていたんスからそれを忘れてもらっちゃ困るっス!」

 

そして、事の成り行きを見守っていた泉先輩達もまた私達の近くにやってきて

 

「まったく、ほんと羨ましいよ。ラブラブだもんねー。」

「はあ・・・何だか悔しいわね・・・認めはしたけど、やっぱりね・・・。」

「いいなあ~・・・みなみちゃんが羨ましいよ。」

「ふふ、よかったですね、みなみちゃん。」

「まあまあ、これでまた皆一緒なんだし、楽しい思い出を作っていきましょ?」

「そうだなー。まだまだ私らも色々できるはずだもんな。」

「ひよりんも入ってきた事だし、私のサークルも安泰だしね。」

「まったく、大学行ってまでそんなサークル作ってるんだから、呆れるわね・・・。」

「まあ、いいんじゃないですか?やさこのサークル楽しいし。」

「だよね、こっちでも楽しいことできそう。」

「今では私も染まっちゃったかもしれないわね。」

 

そんな風に言うみんなの言葉に私は慌てながら

 

「・・・あ、あの・・・その・・・ごめんなさい・・・。」

 

そう言うと、慶一さんはそんな皆の言葉に苦笑しながら

 

「ベ、別にいいじゃないか、俺達付き合っているんだし。それに、そう思うのならこなた達も恋人の1人でも作ればいいんじゃないか?」

 

その言葉に一斉に睨みを効かせる皆に、慶一さんは思わず縮こまっていた。

 

その様子を見て笑う私達。

 

私の願い、慶一さんの願い、そして、皆の願いもついに叶った瞬間だった。

 

そんな事もあったが、こうして私は無事に好きな人の通う大学への合格を成し遂げた。

 

そして、現在は・・・・・・

 

私と慶一さんは慶一さんの家で一緒に暮らしている。

 

そして、私は今日も慶一さんを起こしに部屋へと行った。

 

大学に受かってからは慶一さんも講義に出る傍ら、泉先輩達には相変わらずレポートの事に関して頼られていたようだ。

 

その所為もあってか、ここ最近は慶一さんも私よりも遅く起きる事が増えたようだった。

 

「・・・おはよう、慶一さん。朝御飯出来たよ・・・?食事済ませて講義に行かないと・・・。」

「ん?もうそんな時間か、昨日のレポートで大分夜更かししちゃったからな・・・ふあーあ・・・。」

「・・・ふふ、あまり無理はしないでね・・・?それで、夏の旅行の事だけど・・・・・・。」

「そうだな、皆と大学で話し合うか。」

「・・・そうね。それと、それ以外に私と2人での旅行も・・・。」

「・・・ああ、わかってるよ。皆と一緒もいいけど、やっぱりお前と2人でも旅行、行きたいからな。」

「・・・うん・・・。慶一さん、大好きだよ・・・。」

「俺もさ、みなみ。」

 

そんな会話を交して私達は今日も大学に向かい、そして、皆と楽しみ、慶一さんと2人の時間を過ごす。

 

まだまだ時間は一杯あるこの学生生活で、私達はこれからも更なる思い出を積み上げて行こうと思うのだった。

 

そして、私達はお互いの生涯が終わるその時まで、ずっと一緒に居ようと誓い合った。

 

私にとっての運命の人と一緒にこの先も・・・・・・。

 


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