短編集 らき☆すた~変わる日常IF、色々な世界~   作:ガイアード

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これも本編とは関係ない設定となっています。


つかさ編~本当の大切な人~

私、柊つかさには今とても気になってる人がいます。

 

高校に入ってから2年生になった頃に知り合った人なんだけど、その人は、私が困ってる所を親切に助けてくれた人だった。

 

その人の名前は高木洋介君。

 

クラスでもそれなりに人気者で、けれど、浮いた噂を聞く人じゃなかった。

 

最初は助けてもらった時のお礼を言う、それだけの事ではあったんだけど、その時から彼の事が気になりだした。

 

今にして考えてみると、これって恋だったんだなって思えた。

 

その日の昼休みの事、いつものように私とおねえちゃん、こなちゃん、ゆきちゃんの4人でお昼を取っていたときの事。

 

「・・・はあ・・・。」

 

雑談の最中に私は小さくため息を吐き出したのだけど、それをこなちゃんに目ざとくみつけられてしまい

 

「あれ?つかさ、どうしたの?ため息つくなんて珍しいね。」

 

そんな風に言うこなちゃんに便乗して、おねえちゃんやゆきちゃんも

 

「そういえばそうね?つかさ、あんた何か悩みでもあるの?」

「つかささんにしては珍しいですね。めったにため息をついてる姿は見られませんでしたし。」

 

そう言い、そんな3人に私は慌てて

 

「あ、あはは・・・なんでもないよ。ごめんね、突然ため息ついて心配させて。」

 

そう取り繕うけど、こなちゃんはそれでは納得してくれないようで

 

「むう?つかさー?隠し事下手なんだから素直に吐いちゃったほうがいいよー?でないと、こちらも非常手段をとらざるをえなくなるよー?」

 

私にニヤリと嫌な笑いを向けながら言うこなちゃんに、私はおどおどしながら

 

「え、ええ?非常手段って・・・なんなのかな?」

 

苦笑しつつこなちゃんに尋ねると、こなちゃんは両手をわきわきとさせながら

 

「素直に白状しなければくすぐり地獄の刑を処そうかと。」

 

と言うこなちゃんの言葉に引きながら

 

「あ、あはは・・・冗談、だよね?」

 

そう言う私に、じりじりとにじり寄ってくるこなちゃんを見て、これは本気だと思った私はその場から逃げ出そうと踵を返そうとしたのがまずかった。

 

「ふっ、逃がさないよ?」

 

そうこなちゃんが言ったかと思うと、私なんか及びもつかない程の俊敏さで私の背後に近づいたこなちゃんは、私をくすぐりはじめた。

 

「あ、あはは、あははははは、や、やめて、こなちゃん、あはは、わかったよ、言うから、言うからやめて~あはははは!!」

 

私が折れると、こなちゃんはくすぐりをやめて私を椅子に座らせて

 

「それならよし。じゃあ、つかさの悩みってのを聞かせてもらおうではないか。」

 

おねえちゃんやゆきちゃんも見守る中、私は観念したように私の悩みを打ち明ける。

 

「・・・実はね?同じクラスの男の子でちょっと気になる人がいるの。その人は私が黒井先生に言われてプリントを取りに職員室に行ってその帰りにそれを崩してばらばらにした時に一緒に拾い集めてくれたんだよ。それで、私はその行為が嬉しくなっちゃったと同時にその人の事が気になり始めちゃったんだよね。」

 

そこまで話すとこなちゃんは「うーん・・・」と唸って少し考えるような仕草をしながら

 

「ねえ、つかさ。話は分かったけどさ、その人ってこのクラスの人な訳だよね?名前はなんていうの?」

 

その質問に私は顔を赤くしつつ

 

「え・・・えっと・・・ね?高木・・・洋介くんっていうの・・・。」

 

その答えに驚くゆきちゃんは

 

「高木さん、ですか?なるほど、あの人ならそれも不思議ではないかもですね。」

 

頷きながらそう言うゆきちゃんにこなちゃんも腕組みしつつ顎に手を当てる仕草で

 

「ほほう。このクラスでは彼氏にしたい男の子ランキング上位の高木君か。つかさにも見る目はあったみたいだねえ。」

 

ニヤニヤしながらそう言うこなちゃんにおねえちゃんは

 

「彼氏にしたい男の子ランキングって・・・あんたどこでそんなランキングなんて調べてきてるのよ?」

 

そうツッコミをいれるおねえちゃんにこなちゃんは指を振って

 

「チッチッチ、甘いねかがみん。そんなものはクラスの女子達の噂話に耳を傾けていれば自然と入ってくるものなのだよ。ちなみにかがみんのクラスにもいるじゃん?上位のランカーがさ。」

 

こなちゃんの言葉におねえちゃんが不思議そうな顔で

 

「え?そんなのいたっけ?うちのクラスに?」

 

そう聞き返すと、こなちゃんはニヤリと笑って

 

「いるよ?かがみとつかさもよく知ってる人だよ?何せ幼馴染でもあるみたいだしねー。」

 

その言葉に私とおねえちゃんも驚きつつ

 

「まさか、こなちゃん・・・その上位ランキングの人って・・・。」

「あいつが?でも・・・うーん・・・・・・。」

 

そしてそんな私たちを見ながらゆきちゃんが

 

「ひょっとしてその人は森村慶一さん、なんですか?」

 

その言葉にこなちゃんは大仰に頷きながら

 

「その通り!ルックスはまあまあだけど、その性格の良さと面倒見のよさ、そして、頭も決して悪くないし優しい性格は女子から結構人気だったりするよ?」

 

そんなこなちゃんに私たちは苦笑しつつ

 

「そ、そうだったんだ・・・確かにけーちゃんは面倒見よくて優しいってのはあるかなあ?」

「頭は悪くないっていうけど、結構私が勉強見てやってた時期もあるわよ?あいつ。でも、まあ、優しいってのは・・・あってるかな?」

 

そんな私たちを見てゆきちゃんはにこにこと笑いながら

 

「それに、何だかんだいってもお2人ともそれなりに仲は良いですよね?見ていて微笑ましいくらいに。」

 

そんな風に言うゆきちゃんに私とおねちゃんは照れながら

 

「う、うん。まあ、それは言えてるかな?」

「そ、そんな事ないわよ。みゆきはかんぐりすぎよ?」

 

そう言うお姉ちゃんにこなちゃんはニヤニヤしながら

 

「まったく、かがみんは素直じゃないねー。普段を見ている私から見たら、そう言っても説得力ないよ?」

 

こなちゃんの指摘に顔を真っ赤にしたお姉ちゃんは

 

「う、うるさい!それに、かがみん言うな!!別にあんなやつの事なんてどうだっていいわよ!!」

 

そう言ってこなちゃんを追いかけ回し始めたのを、私とゆきちゃんは苦笑しながら見つめていた。

 

こなちゃんの言っていた森村慶一くんは、私達とは小学生の頃から一緒だった幼馴染で、私とおねえちゃんがいじめっ子にちょっかいかけられている所を助けてくれたのが仲良くなるきっかけだった。

 

その後は、私とおねえちゃんは彼の事をけーちゃん、慶くんと呼ぶようになり、彼も私達を名字では区別しずらいと言う理由から名前の方、かがみ、つかさと呼ぶようになった。

 

その後中学、高校とクラスは違ったりする事もあったけど、これまでずっと一緒に過ごして来たのだった。

 

最近はおねえちゃんはけーちゃんに少し冷たい態度を取る事が多くなってきた気がしたのだけれど、でも何となく気付いたのは、おねえちゃんはけーちゃんにその態度とは裏腹に、淡い思いを抱いていると言う事が感じ取れた事だった。

 

私も高木君という人が現れるまでは、おねえちゃんと同じようにけーちゃんに淡い気持を持っていた事も高木君が気になる人になった事で自覚した。

 

けれど、肝心のけーちゃんはそんなおねえちゃんや私の気持には気付いていない感じだった。

 

そんな風にけーちゃんの事を思い返して1人思考に浸っていたら

 

「・・・さ、つかさ。おい、大丈夫か?つかさ。」

 

私を呼びかける声が聞こえて、私ははっとして

 

「あ・・・ご、ごめん。けーちゃん。ちょっと考え事してたよ~。」

 

声をかけてきた人、森村慶一君に苦笑しつつも返事を返して

 

「ところでけーちゃん。私に何か用事?」

 

そう尋ねると、けーちゃんは呆れたような顔になって

 

「あのなあ・・・次の古文の授業で教科書貸してくれって俺に頼んだだろ?だからそれを持ってきたんだよ。つかさ、俺にその事を言ったのを忘れてたんじゃないだろうな?」

 

その言葉に私は”はっ”となって

 

「そ、そうだった。ごめんね~?けーちゃん。これ借りとくね。放課後には返しに行くから~。」

 

そう返事をすると、けーちゃんは軽いため息をついて

 

「了解だ。それにしても、あの2人は相変わらずやってるんだな。」

 

未だこなちゃんを追い掛け回すおねえちゃんを見たけーちゃんは、呆れたような口調でそう言う。

 

そんなけーちゃんに釣られて苦笑しながら

 

「あはは・・・まあ、いつもの事だよね~。」

 

そう言うと、ゆきちゃんも困ったような顔で

 

「仲が良いと言う事はいい事だとは思いますが・・・そのうちかがみさんがやり過ぎないかが少し心配ですね。」

 

そう言うと、けーちゃんはそんなゆきちゃんに

 

「その時はみゆきが2人を止めてやってくれよ。俺じゃあの2人は止めれないからなあ・・・。」

 

そう言いながら苦笑するけーちゃんに、ゆきちゃんは慌てながら

 

「そ、そんなことはありませんよ。むしろ慶一さんでないと無理だと思いますよ?」

 

困惑顔でそう返すゆきちゃんに、けーちゃんも苦笑していた。

 

けーちゃんはゆきちゃんやこなちゃんにも気に入られているというのもあるけれど、結構すんなり2人とも仲良くなり、2人にも名前で呼ばれるほどになっていた。

 

けーちゃんもそんな2人を同じように名前で呼んで欲しいと言われて、今は名前で呼び合っている。

 

私はそんなけーちゃんに1つ用事を思い出して

 

「そうだ、けーちゃん。今日の放課後暇かな?」

 

そう尋ねると、けーちゃんは私に

 

「ん?今日は特に用事ないけど、どうかしたのか?」

 

そう聞いてくるけーちゃんに私は

 

「うん。ちょっと新作のお菓子作ってみたからけーちゃんに試食してもらいたいかなーってね。」

 

私の言葉に少し考え込む仕草をしていたけーちゃんは

 

「まあ、そういう事なら別にいいかな?つかさのお菓子は美味いから今回はどんなものを食べさせてもらるのかが楽しみだな。」

 

そんなけーちゃんに私も照れながら

 

「あ、あはは。照れちゃうな。でも、いつもわたしの作った料理の試食してくれてありがとう。」

 

そう言うとけーちゃんは少しだけ顔を赤くして照れながら

 

「・・・いいさ。俺が好きでやってる事だからな。それに、つかさの料理は好きだからさ。」

 

視線を外しながらそう言うけーちゃんの、そんな仕草は私も何となく好きだった。

 

でも、この時の私はけーちゃんの気持を知らなかった事もそうだけど、私自身が高木君に入れ込んでいた所為もあったから、こんな些細なけーちゃんの行為がどれほどにありがたくてそして、嬉しい事だったのかを後になって気付かされる事となる。

 

けど、今のけーちゃんに返したわたしの言葉は

 

「そ、そうかな?そう言ってくれると嬉しいかな?」

 

そんなけーちゃんを気遣わない、無神経な答えだった。

 

そして、放課後になり、私はけーちゃんに借りた古文の教科書を返しに行って、けーちゃんに家で待っていてもらうように伝えて、私も高木君にプレゼントしようと思っている新作のお菓子の試作品を持ってけーちゃんの家に足を運んだ。

 

呼び鈴を鳴らすと、けーちゃんはすぐに私を出迎えてくれた。

 

「お待たせ、けーちゃん。紅茶もあると美味しいと思うから試食してもらう代わりに私がそれを入れるね?用意できるまでちょっと待っててくれるかな?」

 

お皿に私の持ってきたお菓子を乗せて準備するけーちゃんにそう言うと、けーちゃんは頷いて

 

「分かった。こっちの準備はやっとくからそっちは頼むな?」

 

そう言うけーちゃんに私は頷くと、お茶の準備にかかるのだった。

 

お茶の準備をしてる間、その時けーちゃんは、ずっと私の後姿を見ていたようだった。

 

その時の私は、そんなけーちゃんの視線の意味が分からなかったのだけど。

 

そしてお茶の準備もできて、いざ試食と言う事となり、けーちゃんは早速私の作ってきたお菓子にかぶりついた。

 

そして、味をじっくりと確かめるように食べた後私に

 

「へえ?これもまたなかなかいけるな。甘さも丁度いいし、食感も中々だと思うぞ?」

 

そう評価してくれた。

 

私はその評価に嬉しくなって

 

「本当!?これなら高木君にあげても大丈夫かな!?」

 

と、思わず私は自分が気になってる人の名前を出してしまった。

 

その言葉に少し驚いたような、少し寂しそうな表情をしていたけーちゃんだったけど、けーちゃんはゆっくりと頷くと

 

「そっか、高木がつかさが気になってる人なんだな?・・・まあ、大丈夫だろ。これだけの出来だからな、あいつもきっと喜んでくれるさ。」

 

そう言って笑うけーちゃんを見たとき、私は少しだけ胸の奥に痛みを感じたような気がしたけど、それでもけーちゃんが大丈夫と言ってくれた事にほっとしながら

 

「そ、それなら、よかったかな?あはは・・・。」

 

少しだけ、ほんの少しだけ複雑な感情で私はけーちゃんにそう答えると、そんな私を見てけーちゃんは優しく微笑みながら

 

「どうしたんだよ、つかさ。俺が大丈夫だって言ってるんだ。お前の料理を毎回試食してる俺が保証してるんだから自信持てよ。ほら、いい評価もらえたんだからそんな顔すんな。」

 

そう言って私の頭をわしわしと撫でてくれた。

 

「あ、ありがとう・・・あの、けーちゃん・・・私そろそろ夕飯の支度手伝わなきゃいけないからこれでいくね?今日は色々ありがとう。」

 

私は、そんなけーちゃんの顔を見ている事がなんだか辛くなってきて、早々に後片付けを済ますと、足早にけーちゃんの家を後にした。

 

帰り際にけーちゃんが少しだけ寂しそうな表情を見せた気がしたけれど、私はそれに気付かない振りを決めこんで家へと急いだ。

 

その帰りの途中におねえちゃんともすれ違い、声をかけられた。

 

「つかさ、もう用事は済んだの?慶くん、あんたの新作をどうだって言ってた?」

 

そんなおねえちゃんに私は複雑な表情で

 

「・・・うん、美味しいって言ってくれたよ?少しだけ、自信ついたかな?」

 

そんな風に言う私の顔を見ておねえちゃんは

 

「・・・つかさ、何かあったの?少し元気ないみたいだけどさ?まさか、慶くんあんたの作ったお菓子をまずい!とか言ったんじゃないでしょうね?」

 

そのおねえちゃんの言葉を首をぶんぶんと振って否定しながら

 

「そ、それはないよ、おねえちゃん。それにけーちゃんはそういう事には嘘言わない人だって知ってるでしょ?」

 

慌てる私の顔をじーっと見つめるおねえちゃんは、軽いため息を1つつくと

 

「・・・まあ、それもそうね。それじゃ私はちょっと用事済ませてくるから後でね。」

 

そんなおねえちゃんに私も心の中でほっとしつつ

 

「うん。わたしはお母さんと一緒に夕食の準備するから先に行くね?それじゃあね?おねえちゃん。」

 

そう言って私はこの場を後にしたのだった。

 

かがみside

 

慶くんの家へ用事で向かおうとした時に、慶くんの所で用事を済ませてきたらしいつかさに出会い、その様子が少しおかしかったので、私はつかさにその理由を尋ねてみた。

 

でも、つかさと問答してるうちに、最初は慶くんがつかさに何か言ったのかな?と思ったのだけど、どうもそれが違う事だと何となく気付いたのだった。

 

心に少しだけ納得行かないものを感じつつも、私は慶くんの家へと急いだのだった。

 

そして、家について呼び鈴を鳴らすと慶くんが出迎えてくれた。

 

「はいはい、っと。あれ?かがみ。どうしたんだ?俺に用事か?」

 

そう言う慶くんに私は頷きつつ

 

「まあね。ほらこれ、あんたが貸して欲しいって言ってた奴よ?」

 

そう言って慶くんにラノベを手渡すと、慶くんは

 

「お?そういえばこれ借りたいって思ってた奴だっけ。ありがとな、かがみ。そうだ、かがみ。少し上がっていくか?お茶くらいは出すぞ?」

 

そう言って来たので、私はその好意に素直に甘える事にしたのだった。

 

「それじゃ、お言葉に甘えて。お邪魔します。」

 

そう言って家に上がり、慶くんがお茶を準備している間に、あいつの持っているラノベを適当に漁って待っていた。

 

「お待たせ、かがみ。」

 

そう言って入れてくれた紅茶を私の前に置く慶くんに、私は先程のつかさの態度が気になって慶くんに事情を聞いてみることにした。

 

「ねえ、慶くん。さっきこっちにくる時につかさに会ったんだけどさ。なんかあの子少し元気なかったみたいなのよね?何かここであの子がいるときにあった?」

 

そう尋ねると、慶くんはその時の事を思い出すように考え込んでいたが、やがて

 

「いや?つかさが持ってきてくれたお菓子を試食して、それが美味いと言って褒めただけだけどな。それに、あいつが高木にそのお菓子を渡したいと思ってる事を聞いた。それで、俺はこのお菓子ならあいつも受け取ってくれるだろう、そう感想を言っただけだけどな。まあ確かに、帰る時には少し様子が変だったみたいだけどさ。」

 

そう説明してくれたのを聞いて私は

 

「そっか・・・うーん・・・それじゃ、あんたは悪くはないわね・・・となると・・・あの子が勝手に悩んでる事があるからなのかもしれないわね・・・。」

 

そう言うと、慶くんもまた、何事かを考え込み始めたようだった。

 

そんな慶くんの様子を見ながら私は、1つ慶くんに聞いてようと思い、声をかけた。

 

「・・・あ、あのさ・・・慶くんは・・・私とつかさの事どう思う?」

 

その質問に慶くんは驚いて

 

「え?それって、どういう・・・。」

 

そう聞き返す慶くんに私は勇気を振り絞って

 

「・・・つかさには、慶くんも知ったと思うけど、気になってる人がいるわ。でも、私にはそんな人は・・・あ・・・あんたしかいないのよ。慶くんがつかさの事を気にしてる事は薄々気付いてた。でも、私は、それでも・・・そんなあんたが・・・気になるのよ・・・。つかさが高木君の事を気にしている事を知ったから、だから卑怯かもしれないけど、今回の事はチャンスだと思った。だから、私は・・・あんたに気持を打ち明けようと思ったの。ねえ、慶くん、私は・・・」

 

そこまで言いかけた時慶くんが私の言葉を遮って

 

「・・・ごめん、かがみ。かがみの気持は凄く嬉しい。けど、俺はまだ、つかさの一件の結末を見ていない。だから今はまだ、その結末を見るまでは俺は、つかさの事を諦めきれない。もしもつかさが高木と付き合う事になるのなら、その時にはすっぱりと諦められると思う。だから、その時まで、俺も卑怯だと思うけど、かがみの気持を受け入れる事は出来ないって思うから・・・。」

 

その慶くんの言葉に、私はまだ慶くんはつかさのことを諦めていないと言う事を知った。

 

そして、それを知ると同時に、慶くんのつかさへの思いはまだ諦めきれないものなのだと分かった。

 

それと同時に、さっきのつかさの表情の意味も少しだけ気がついたような気がした。

 

つかさの中に、高木君の事を気にしつつも慶くんに対する気持もまた少なからずあったのかもしれない、それがつかさの中でせめぎあって、つかさ自身も気付かない葛藤が起きていたんだろう、と言う事が分かったような気がした。

 

私は慶くんを見据えて

 

「・・・いいの?あんたはそれで・・・今のつかさはあんたの気持に気付いていないわよ?それに、あんたの思いはつかさには届かないかもしれないのよ?それでも・・・。」

 

私の言葉に慶くんは頷くと

 

「・・・届かなかったのなら、俺はつかさにとってそれまでの男だったと言う事さ。それでも俺は・・・最後まで見届けたいんだ。馬鹿な事ではあるけどさ。」

 

そんな風に言う慶くんに私は、気付けば涙を流しながら抱きついて

 

「・・・馬鹿よ・・・あんたは、本当に・・・・わかった・・・私も見届けるわ。あんたの言う結末を、その上でもう一度今度こそあんたに私の気持を伝えるから。」

 

そう言う私に慶くんは、優しく頭を撫でながら私を受け止めていたのだった。

 

つかさside

 

家に戻った私は夕食の準備の後、今日けーちゃんに試食してもらったお菓子を再度作って明日、高木君に手渡して高木君と仲良くなりたいな、って思っていた。

 

けど、その事を考えている時、あの時のけーちゃんの寂しそうな表情が同時に浮かんで、私は困惑した。

 

(どうしてだろう・・・私には高木君が気になる人のはずなのに、どうしてさっきのけーちゃんの顔を見たとき私は困惑してたんだろう・・・けーちゃんとは幼馴染でお友達で・・・ただそれだけだよね?なのに・・・なんでこんなに気持がもやもやとするのかな?それに、けーちゃんだって・・・私の事をどうこうとも言ってなかったよね・・・むしろ高木君との事を応援すらしてくれたのに・・・でも・・・あのちょっとだけ寂しそうな顔が・・・なんだか気になるなあ・・・。)

 

そんな風に考えつつも、とりあえずは明日、高木君に渡すお菓子をちゃんと作らないとと思って、作業に集中する私だった。

 

そして、丁度、夕食の準備もできてお菓子の仕込みも終わる頃におねえちゃんが帰ってきたんだけど、なんだか浮かない表情をしているおねえちゃんを見て私は

 

「おかえり、おねえちゃん。なんだか元気ないみたいだけど、何かあった?」

 

そう尋ねると、おねえちゃんは私の言葉にびくっと反応しながらも笑顔を作って

 

「な、なんでもないわよ。それよりつかさ。慶くんに聞いたわよ?高木君へのお菓子作ってるみたいじゃない?明日それを渡すの?」

 

その言葉に私は慌てながら

 

「ど、どうしておねえちゃんがその事を知ってるの?あ!ひょっとしておねえちゃんが用事のあるって言ったのはけーちゃんの所へ行く事だったの?」

 

その言葉におねえちゃんは舌をぺろりと出して

 

「あはは、ばれちゃったか。まあね、慶くんに貸そうと思ってたラノベがあったし、さっきあんたと会った時、あんた少し元気ないみたいだったじゃない?だからちょっと気になって慶くんを問い詰めたのよ。そうしたら慶くんがつかさの元気がなかった訳を教えてくれたわ。」

 

そう言うおねえちゃんに私は苦笑しながら

 

「そ、そうだったんだ~。でも、けーちゃんから聞いて分かったと思うけどわたし・・・。」

 

その私の言葉に頷いたおねえちゃんは

 

「わかってるわよ。自分の気持ちが高木君に通じるかどうかが心配だったんでしょ?大丈夫よ、あんたの気持、きっと高木君にだって届くと思うわ。」

 

そんな風に言ってくれるおねえちゃんに、私はどこか安心したような感じになって

 

「そ、そうかな?でも、よかったよ。おねえちゃんにもそう言ってもらえてわたしはちょっとだけ自信持てたかな?」

 

そう答えると、おねえちゃんはふいに真剣な目を私に向けて

 

「・・・ねえ、つかさ。夕食の後、ちょっと話があるからさ、付き合ってくれない?」

 

そう言ってきたおねえちゃんの言葉に私は戸惑いながらも頷いて

 

「うん。わかったよ。それじゃ御飯食べたらおねえちゃんの部屋に行くね?」

 

そう言うと、おねえちゃんも頷いて

 

「わかったわ。とりあえず御飯たべちゃいましょ?おなかぺこぺこだわ。」

 

そう言っておなかをさするおねえちゃんに私も頷いて

 

「そうだね。いこうよ、おねえちゃん。」

 

そう言うと、おねえちゃんと一緒に夕食を済ませた。

 

そして、洗い物等をして落ち着いた頃、私はおねえちゃんの部屋へと出向いていった。

 

部屋のドアをノックすると、おねえちゃんが私を部屋に招きいれてくれたので、私はそれに従って部屋に入る。

 

「・・・よく来たわね、つかさ。さあ、そこに座って楽にして?」

 

そういわれるままに、おねえちゃんのベットに私は腰掛けた。

 

「つかさ、あんたに聞きたい事があるの。よく考えて答えてくれる?」

 

ふいに真剣な顔になり、話をはじめるおねえちゃんを見て私はこくりと頷くと、おねえちゃんは更に言葉を続けた。

 

「つかさ、あんたは慶くんの事をどう思ってる?」

 

そのおねえちゃんの質問に私は困惑しつつ

 

「どう、ってどういう意味で、かな?」

 

そう聞き返すと、おねえちゃんはしばしの間を置いてから

 

「慶くんの事を好きか嫌いか、って事ね。」

 

おねえちゃんのその言葉に、いまいち真意をつかみ取れない私は

 

「好きか嫌いか、っていうのは、お友達として?」

 

その私の答えにおねえちゃんは首を振って

 

「違うわ。慶くんの事を・・・異性として、よ。」

 

そのおねえちゃんの言葉に私は、更に困惑を深めながら

 

「・・・それは、わからないよ・・・今のわたしは高木君が気になってるし、けーちゃんだって今までわたしの事をそんな風には見てきていないみたいだったもん。だから、わからない・・・。」

 

その私の答えにおねえちゃんもしばし考え込んでいたようだったけど、ふいに顔をあげると

 

「あんたには迷いみたいなものがあるんじゃない?」

 

そう言ってきたおねえちゃんに私は驚いて

 

「それって、どう言う事?」

 

そう聞き返すとおねえちゃんは

 

「あんたが私とすれ違ったあの時の事、覚えてる?」

 

そのおねえちゃんの言葉に私は頷きで答えると、おねえちゃんは更に言葉を続けて

 

「あの時のあんたの顔はどことなく元気がないみたいに見えた。あんたが高木君の事で慶くんにお菓子を試食してもらい、褒めてもらえた事は聞いてるわ。でも、それだったらあんたは、慶くんに対して何も気兼ねする事はないんじゃない?好きな人に渡すお菓子は成功してる。それを美味しいと褒めてもらえた。でも、慶くんの事をなんとも思っていないのなら、あんたは高木君の事だけ考えていればいいんじゃない?慶くんの事は気にする必要はないんじゃない?」

 

そう言う。

 

私はそんなおねえちゃんの指摘に困惑しながら

 

「そ、それは・・・確かにそうだよね・・・わたしがけーちゃんの事を気にする事なんてないんだよね?」

 

私の答えにおねえちゃんは頷いて

 

「そうよ?そのはずよ?でも、あんたにはどこか、迷いみたいなものを私は感じたのよ。ねえ、つかさ。教えてくれない?つかさが慶くんの家から出てくる前に何かあったんじゃないの?」

 

そのおねえちゃんの言葉に私はその時の事を少し思い出して

 

「・・・わからないの・・・けーちゃんの家から戻る時に、わたし、一瞬だけ見せたけーちゃんの寂しそうな顔を見ちゃってから・・・なんだか、いても経ってもいられなくなったから逃げるようにけーちゃんの家を飛び出してきた。あの顔を見ちゃってから、わたし・・・どうしてこんなにもやもやした気持になるのかがわからなくて・・・。」

 

そう話すと、おねえちゃんは再び少し考え込むような仕草をしていたけれど、少しして再び私の方へ向き直り

 

「・・・なるほど、そういう事なのね。つかさ、その答えはあんた自身でださなければだめよ?それと同時にあんたに言っておくわ。私は・・・慶くんが好き。さっき私は慶くんの家に行った時に、この気持を伝えようとしたわ。でもね、慶くんは・・・あんたの事が好きみたい。だから、あんたと高木君との決着がつくまでは私の気持も受け入れてはもらえなかったわ・・・。慶くんは、事の決着を見守りたい、そう言ってたから・・・。」

 

そのおねえちゃんの言葉を聞いて私は動揺した。

 

今までけーちゃんは私に対してそんな素振りを見せてこなかった、というのもあったけど、どこかで私もけーちゃんとそういう風になる事を諦めていた所もあったからだと思う。

 

私よりもおねえちゃんのほうが、むしろけーちゃんに近いとさえ思ってた位だから。

 

だから、おねえちゃんから聞かされたけーちゃんの気持を聞いた私は、ただただ困惑をするしかなかった。

 

「・・・おねえちゃん、今言った事って本当?けーちゃんが、わたしの事・・・おねえちゃんがけーちゃんの事・・・。」

 

私の質問におねえちゃんは頷いて

 

「・・・認めたくないけど、本当の事よ?あいつの口から聞いた事だから間違いないわ。そして、私の気持もね・・・。」

 

その言葉に愕然とする私におねえちゃんは

 

「しばらくは・・・よく考えなさい。その上であんたが高木君を選んだとしても、慶くんは受け入れてくれるわ。あいつは・・・そういう奴だからさ。とりあえず、話はこれで終わり。明日も学校なんだからあんたも早めに休みなさいよ?」

 

そう言うと、お風呂に入る準備をして、おねえちゃんは下へ降りていった。

 

その後、少しして私も自分の部屋に戻り、さっきの話の事を考えていた。

 

(けーちゃんが、私の事を、なんて全然気がつかなかった・・・私はけーちゃんにそんな風に思ってもらってるなんて事思いもしなかったよね・・・でも、今の私には高木君という気になる人もいるし・・・迷い・・・か。あの時に胸の奥が少し痛くなったように思えたのは、けーちゃんに対する罪悪感みたいなものだったのかもしれないね・・・どうして今頃になってけーちゃんはそんな事言ったのかな・・・もっとはやくに気付いていたら・・・けーちゃんが言ってくれてたら・・・私・・・ううん・・・違うよ・・・けーちゃんだけを責めるのは違う・・・気付けなかった、気付こうともしなかった私だって・・・悪いんだよね・・・どうしたら、いいのかな?誰か私に答えを教えて欲しい・・・。)

 

そうやってベットに寝転んで考え事をしてるうちに、何時の間にか眠ってしまっていたらしく、その日はお風呂へと入りそびれた私だった。

 

そして、次の日に私は、高木君の為に作ったお菓子を持って学校へ行った。

 

けーちゃんの事は気にはなったけど、でも今の私には高木君の存在も私の中で大きくなっていたから、結局私は、チャンスを作って高木君に会ってお菓子をを渡す、そうしたのだった。

 

結局こなちゃん達に手伝ってもらって私は、高木君にお菓子を渡すチャンスを作ってもらって、上手く2人きりになれた私は高木君に

 

「あ、あの・・・高木君。ちょっといいかな?」

 

そう切り出すと、高木君は私に

 

「ん?どうしたの?柊さん。僕に何か用?」

 

そう聞き返してきたので、私は持っていたお菓子を高木君の前に差し出して

 

「こ、これなんだけど・・・わたしお菓子とか作るの好きだから、この前親切にしてもらった御礼にって思って作ってきたんだ~。良かったら食べてくれないかなあ?」

 

そう言うと、高木君は私の差し出すお菓子を受け取ってにっこりとしながら

 

「へえ、これを君が作ってくれたんだ?ありがとう、後で食べさせてもらうよ。」

 

そう言って受け取ってくれたので、私はその事が嬉しくなって

 

「う、うん。ありがとう、受け取ってくれて。」

 

そんな風に言う私に彼は笑ってくれたのだった。

 

私はその日、彼にお菓子を受け取ってもらえた満足感と嬉しさで、けーちゃんの事もすっかり忘れ去っていた。

 

その様子をけーちゃんに見られていた事に気付きもしなかったのだけど。

 

そして、私は高木君に事あるごとに話し掛けたりするようになった。

 

彼もまた、優しくて人当たりの良い評判通り、私には優しく接してくれていたのだけど、それからしばらくして私は、高木君に思い切って告白する事を決心して彼を屋上に呼び出した。

 

私はドキドキしながら屋上で彼が来るのを待っていた。

 

その時に私は舞い上がっていた気持でいたから、私の気付かない場所でけーちゃん達が私たちの事を見守っている事に気付かなかった。

 

そして、しばらくして彼がやってきた。

 

「お待たせ、柊さん。僕に話って何なのかな?」

 

そう言ってくる彼に私は、凄くドキドキしながらも

 

「あ、あのね?わたし、高木君に言いたいことがあって・・・その・・・わ、わたしは・・・高木君のことが・・・好きです・・・。」

 

勇気を振り絞ってそう告げると同時に、何故か私の頭に、あの時少し寂しそうな顔をしているけーちゃんの顔が浮かんで困惑していたけれど、そんな私の葛藤に気付かない高木君は、私の突然の告白に驚いたような表情を見せながらも

 

「・・・ありがとう、柊さん。君のその気持は嬉しいよ。けど、ごめんね。僕は君のその気持には応えてあげられない。何故なら僕にはすでに付き合ってる人がいるからね。でも、勘違いしないで欲しい。君が僕にくれたあのお菓子は美味しかったし、君と話す事も楽しかった。その事だけは嘘じゃないから。」

 

その言葉を聞いて私は、一気に高いところから突き落とされるような感覚を味わった。

 

そして、言う事を言って去っていく彼の後を追う事も出来ず、ただ私はその場で呆然としていたのだった。

 

そして、高木君に振られた事を実感した時、私の目から涙があふれてきて止まらなくなった。

 

そうしてしばらくの間、私は屋上で静かに泣きつづけていたが、その時に私に気付かれないように屋上を離れる人影にすら、ショックで泣いていた私には気付けなかったのだった。

 

ようやく落ち着いた私は、落ち込みながらも教室へと戻ると、そこにはこなちゃん達が待っていた。

 

「・・・つかさ、残念だったね。大丈夫だよ。きっとつかさにもいい人現れるって。だから元気だしなよ?」

「つかささん。気晴らしがしたいのであれば、私たちはお付き合いさせてもらいますよ?」

「ま、そういう事なら私も付き合ってあげるわ。つかさ、今日だけはあんたの我侭聞いてあげるわよ?」

 

そう言ってくれるおねえちゃんたちに私は

 

「・・・ありがとう、こなちゃん、ゆきちゃん、おねえちゃん。気を使ってくれてありがたいけど、今日はわたし、1人になりたいから、だから、ごめんね?今度はきっとつき合わせてもらうから・・・。」

 

そう断りを入れて鞄を手に持って帰る私に、3人ともそれ以上は声をかけてこなかった。

 

それからどこをどう帰ったのかわからない。

 

気付いたら私はけーちゃんの家の前に来ていた。

 

私はどうするべきか迷っていたのだけど、そんな私に後ろから声をかけて来た人がいた。

 

「つかさ?お前、俺の家の前で何してるんだ?」

 

その声に振り向いてみると、そこに立っていたのはけーちゃんだった。

 

私は突然の事にあわてふためきながら

 

「え、えっと、その・・・よくわからないんだけど、色々考えながら歩いているうちにここに来てて・・・その・・・。」

 

そう言う私の頭をけーちゃんは微笑みながら撫でると

 

「そっか・・・まあ、ここにこのままいても仕方ないだろうから上がれよ。お茶くらいは出すからさ。」

 

そう言ってくれるけーちゃんの言葉が今はとてもありがたく思えて、私は

 

「・・・うん。それじゃちょっとお邪魔するね?」

 

そう言って家にあがったのだった。

 

そして、お茶を用意してくれたけーちゃんは紅茶を私の前に置くと、けーちゃんも何も話さずに私の前に座った。

 

そして、一言も発する事無くしばらくはその状態が続いていたのだけど、ふいにけーちゃんが私に

 

「・・・残念だったな・・・その・・・あいつにもう付き合ってる奴いたみたいでさ・・・。」

 

そう話を振ってきたので私は驚いて

 

「けーちゃん・・・どうして、その事知ってるの?」

 

そう聞き返すと、けーちゃんはバツの悪そうな顔で

 

「・・・実はな・・・悪いと思ったんだが、お前が告白に行くと聞いて少し心配になってな、お前の来る所に先回りしてこっそり様子を伺ってたんだ。」

 

そんなけーちゃんの告白に驚いた私は

 

「え?あの時けーちゃん側にいたの?わたし、全然気付かなかったよ~。そっか、見られちゃってたんだね・・・。」

 

そう言う私にけーちゃんは心底すまなそうに

 

「・・・俺の中で、つかさに対するけじめをつけるいいチャンスかもって思っていたってのもあるけどさ・・・だからこそ、結果だけは知りたかったんだ・・・ごめん、つかさ。結局は俺の、自己満足の為だった・・・。」

 

その言葉に私はおねえちゃんからあの時言われた事を思い出して

 

「けじめって・・・けーちゃんのわたしに対する気持の事?」

 

私の言葉にけーちゃんは驚いた表情になり

 

「つかさ、どうしてその事を?ひょっとして、かがみから聞いたのか?」

 

そのけーちゃんの言葉に私はしまった、と思いながらも頷いて

 

「・・・うん。あの日けーちゃんに新作のお菓子を試食してもらった日にね、おねえちゃんが私に話してくれた。けーちゃんは・・・私の事が・・・その・・・気になってるって事を・・・。」

 

そう言った後、私はさらに言葉を続けて

 

「ねえ、けーちゃん。それっていつからだったの?わたしにそんな気持を持ったのって・・・」

 

そう尋ねると、けーちゃんは照れながら

 

「つかさと出会ってしばらくして、お前が俺にお菓子を作って持ってきてくれた事があったよな?あの時からかな。」

 

そう言うけーちゃんに私は

 

「そっか、あの時からなんだ・・・でも、けーちゃん、どうしてわたしにその事を言ってくれなかったの?わたしもおねえちゃんから聞くまでけーちゃんの気持に全然気付けなかったよ。」

 

そう指摘すると、けーちゃんは後頭部を掻きながら

 

「つかさが高木に気がある、っていうのを聞くまでは、俺もつかさに対する本当の気持がわからなかったっていうのが理由かな。俺も気付いたのは最近だったんだよ。でもその時にはつかさは高木に気持が向いていたから、俺はそんなつかさに何も言えなかった。」

 

そう言った後、けーちゃんは1つ深呼吸すると、さらに言葉を続けて

 

「だから俺は・・・お前を見守ろうって思った。決着がつけばあきらめられるかもしれない、そう思った。それに、かがみからも告白されてはいたからな・・・。つかさの恋が上手く行ったなら、俺はそのまま身を引こうとさえ考えていた。だから、俺は・・・ちゃんと結果を知りたかったんだよ。」

 

私はそんなけーちゃんの気持を聞いて少し考えてから

 

「私の恋は・・・残念だけど失敗しちゃったよ。それでけーちゃんは、これからどうするの?わたしに付き合って欲しいって言う?」

 

そう尋ねると、けーちゃんは少し考える仕草をしてから

 

「・・・正直そう言いたいって思う。でも、つかさは振られたばっかりで、今のつかさに俺がそれを言うのは、つかさの弱みに付け込んでいるようで俺としても納得できない。だから・・・待つよ。つかさの心の傷が癒えるその時まで。それでもつかさが俺を思ってくれるのなら、俺はその時こそ自分の気持ちをお前にはっきりと伝える。」

 

そのけーちゃんの言葉に私は、とても嬉しい気持になりつつ、そして、今までけーちゃんの気持に気付けなかった罪悪感も混じって私は、それを感じた時にぽろぽろと涙を流し始めていた。

 

そんな私を見たけーちゃんは少し慌てながらも私を優しく抱きしめて

 

「・・・今はこれだけしかできないけど・・・俺の胸を貸すから思い切り泣けばいい。そして、泣くだけ泣いたら・・・俺の事も少しは考えてくれたら嬉しいかな?」

 

そう言ってくれるけーちゃんに私はこくりと1つ頷くと、失恋の傷を癒すように、そして、新たな恋を感じるようにけーちゃんの胸の中で泣き続けた。

 

こうして私は、1つの恋を失ったけれど、その後に新しい恋の予感を見つけたのだった。

 

その後は、おねえちゃんとライバル関係になりながらけーちゃんを取り合いっこしていたけれど、最後にはおねえちゃんもわたしとけーちゃんの事を認めてくれた。

 

そして・・・・・・

 

「けーちゃん、今日も新作のお菓子作って来て見たよ?食べてくれるかな?」

「つかさの作ってくれたお菓子なら大歓迎だ。今度は夕食も頼むよ、つかさ。」

「うん。まかせて~。美味しい御飯期待しててね?」

 

私の料理をいつも美味しいと食べてくれるけーちゃんと、毎日楽しく過ごすようになった。

 

こうして私は、本当に大切な人を手に入れる事が出来たのだった。

 


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