短編集 らき☆すた~変わる日常IF、色々な世界~ 作:ガイアード
「けい兄ー!こっちこっちー!」
と、私は幼馴染でもあり、そして、恋人にもなった、自分にとっては兄のようでもある森村慶一<私は、けい兄と呼んでいる>さんに声をかける。
そんな私の呼びかけに、けい兄は困ったような顔をしながら
「おい、たまき!学校ではちゃんと先輩と呼べ、先輩と!まったく・・・。」
そう言いつつ、やれやれというジェスチャーをするけい兄に私は、思わず笑いながら
「はいはい、わかりましたよーけい先輩。これでいい?」
そう言いながら私は、いつもの私の指定席であるけい兄の右腕に抱きついた。
そんな私の態度にけい兄は顔を少し赤らめつつ
「お、おい・・・ったく、いつもいつも俺を困らせてくれるよな?お前は・・・。」
そう言いつつも、けい兄は私のこの態度も少々照れるものの、嫌という訳ではないようだった。
その証拠に、苦笑しつつもけい兄は、私の頭を優しく撫でてくれる。
何だかんだ言っても私とけい兄は仲がいいのだった。
もう1人の幼馴染、みくや、高校に入って出来た友達のこうもまた、そんな2人を羨ましげな目で見ているのを知ってはいたが、そんな事はお構いなしな程にラブラブな2人は、結果的に2人に自分たちの仲の良さを見せ付けて、2人にやっかまれる事がいつしか日常になっていた。
「羨ましいなあ、たまき。私もいつか良い人見つけられたらなあ・・・。」
「ぶっさん、頑張ろう。頑張って私達も慶一先輩以上のいい人を見つけて2人を見返してやろう。」
「そうだね、頑張ろう、こう。」
そう言って、羨ましげな視線を私達に向けながら、そう言う2人にやっかまれつつ、けい兄と2人して苦笑しながら私は、けい兄と出会ってから今までの事を思い出していたのだった。
けい兄と初めて会ったのは今から10年くらい前、親の都合で転勤と転校を繰り返すけい兄一家が、私達の住む家の近くに引っ越して来た事がきっかけだった。
けい兄とご両親は、引越しの挨拶という事で近所に挨拶回りをしていたのだが、私の家も丁度けい兄の近所にあり、けい兄達は私の家にも挨拶にやってきた。
そして、私とけい兄はそこで初めて顔を合わせる事となったのだった。
「初めまして。今日から皆さんとはしばらく間のお付き合いとなるかと思いましたので、私たちもご近所の方々にご挨拶にお伺いさせていた次第でして、今日は山辺さんの所へご挨拶にあがらせていただきました。今後ともよろしくお願いします。」
そう言って、けい兄のお父さんは私の家に挨拶に訪れていたのだけど、その時にけい兄のお母さんとけい兄も共に私達の家にやってきていて、なんとなく新しい人の事が気になった私は、こっそりとお母さん達のやりとりを覗いていたのだけど、その時に私は偶然けい兄の顔を見た。
私は男の子の顔を見るのは当時は珍しくて、けい兄の顔をまじまじと見つめていたのだけど、そんな私の視線にけい兄も気付いたみたいで、ふと私のほうに顔を向けたけい兄と視線がぶつかった。
そんな私の顔を見てけい兄はにこりと笑ったのだけど、その笑顔を見たとき、私は子供心に凄く照れてしまって、思わずその場から逃げ出してしまった。
でも、その時みたけい兄の笑顔はその後もなんだか頭の墨に残っていて、その時の笑顔を思い出すたびに私は奇妙な感情に囚われた。
それは、その当時の私には良くわからない感情だったが、今にして思えば、あの時の感情は間違いなくけい兄を意識してたのだと思う。
そしてそれは、私にとっての初恋でもあったのかも、とも最近は思うようになった。
その後、本格的にけい兄と話をしたのは、私が幼馴染で家の近所に住んでいるみくと、近くの駄菓子屋にお菓子を買いに行った帰りだった。
駄菓子屋から帰る途中、歩きながらお菓子を食べていた私達の前に突然野良犬が現れた。
どうやらその野良犬はお腹を空かせているみたいで、私達の持っているお菓子の匂いにつられて来たらしかった。
お腹を空かせているという事が犬の気分を苛立たせていたようで、その犬は私達の持っているお菓子を奪おうと、私達を威嚇するように唸りながらゆっくりと私達の方へと寄って来た。
「こ、来ないで・・・お願い・・・。」
「あっちいってよー!こないでー!!」
と、私たちは犬に怯えつつも抵抗を試みたのだが、所詮は子供と成犬、そんな私達のささやかな抵抗は意味を成さず、犬は私達へと飛びかかろうと体制を低くしつつあった。
そして、犬がまさに飛びかかろうとしたその瞬間、犬に向かって何かがぶつけられたのを見た。
それと同時に、私達の前に突然男の子が現れ、私達の前に私たちを庇うように立つと、その男の子は犬に向かってもう一度何かをぶつけていたようだった。
そして、犬はそのぶつけられたものに興味を示し、それに気をとられたのを見た男の子は私達に
「ふたりとも、今のうちだよ?さあいこう。」
そう言ってその男の子は、私達の手を取ってその場から走り出したのだった。
訳が分からずその男の子手を引かれるままに走りながら私は、ちらりとさっきの犬の様子を伺ったが、犬はその男の子が投げたものを夢中で食べているみたいで、逃げていくこちらには気付いていない事に安堵しつつ、男の子と一緒に近くの公園まで走って行った。
公園についてから男の子は私たちに向き直ると
「はあ、はあ・・・あーあぶなかった・・・ふたりともだいじょうぶ?」
と、息を切らせつつ私たちにそう言うと、私達もその男の子に顔を向けつつ
「はあ、はあ・・・あ、ありがとう。たすけてくれて・・・。」
「こ、こわかったー・・・って、あ!きみはわたしの家にきたおとこのこ!?」
その言葉にその男の子も私の事を改めて見て
「あ!?あのいえにいたおんなのこだよね?あのとききみのことをみたからおぼえてるよ。ぼくはもりむらけいいち、っていうんだ。8さいだよ?」
驚きの声をあげつつそう自己紹介してくれたので、私たちも思わず
「わたしはぶすじまみく。7さい。もりむらくんはわたしたちよりもひとつうえなんだね?」
「え、えっと・・・わたしはやまべたまき。みくちゃんとおなじで7さいだよ。もりむらくんはわたしよりもおにいちゃんなんだね。ねーねー、もりむらくんのことけいにいちゃん、ってよんでもいい?」
と、私がそう言うと、けい兄はちょっとてれながらも
「ぼくがおにいちゃん、かー・・・。いいよ?なら、ぼくもみくちゃんとたまきちゃんってよんでもいい?」
その言葉に私たちは頷いて
「うん。いいよ?じゃあ、わたしもけいにいちゃんってよぶねー?」
「わたしもそれでいいよー?あ、そろそろかえらなくっちゃ。けいにいちゃん、またあそぼうねー?」
そう言うと、けい兄も私たちに手を振りながら
「うん。またねー?みくちゃん、たまきちゃん。」
そう言って私たちは、その場で別れてそれぞれの家に帰ったのだった。
ちなみに、後であの時の犬から私たちをどうやって助けたのかをけい兄に聞いてみたのだけど、けい兄は自分の持っていたお菓子を犬に投げつけて、それに犬が気をとられた隙に私たちを連れ出したとの事。
本人もあの時は相当夢中でやった事らしく、あの後、お菓子が食べれなくなった事に気付いて泣いたんだと言っていた。
その事を聞いた時、その時のけい兄を想像したら凄く可愛いなと思ったのは内緒だけど。
その後、私たちは事あるごとに3人で集まって遊ぶようになった。
時にはおままごとをしてみたり、時には子供のできる範囲の冒険のような事をしてみたり、お互いの家に遊びに行って遊んでる最中にアニメも見たりしたのだけど、その時に私とみくは、けい兄の見ているヒーロー物のアニメにも興味を持った。
逆に、私たちの見る少女アニメのようなものもけい兄と一緒に見た事もあったけど、けい兄は今はそういう物は見れなくなってしまったものの、当時は興味を持ってくれたのだった。
そのきっかけもあり、私とみくは次第にオタクへの道へと入りはじめていた。
と同時に、私はそのうちに自分の前髪が自分の目を隠すような髪型に変わって来たのだけど、その頃になると、何故か私は、けい兄以外の男の人に自分の素顔を見せる事が恥ずかしく思うようになってきたようだった。
その後は、けい兄以外の男子と話したりする時はあったけど、目だけは隠したままで接するようになっていったのだった。
そんな風に小学生時代を過ごした私達だったが、小学校6年生の時、一時的にだが、けい兄とお別れをする時が来たのだった。
けい兄のご両親はあまり長い間一箇所に留まってる事ができない人達だった。
というのも、仕事上の事情で転勤を余儀なくされる機会が多かった為、どうしても仕方のない事なんだとけい兄やそのご両親も私達に話してくれた。
ただ、それでも4年間という長い間その地に留まれる事はめったにないとの事で、実質、私達と過ごした時間が、1番けい兄が覚えている中でも長かったとの事。
それでも、あれからけい兄に対して好意を持ってしまった私にはその事実はとても悲しくて、私達がお別れする前日、私達に別れを告げるために私達をいつも遊んでいたあの公園に呼び出したけい兄と会った時、私はけい兄に自分の思いのたけをぶつけたのだった。
「2人とも、来てくれてありがとう。それと、ごめんな?出来る事なら俺もたまき達と一緒に居たいけど、今の俺には父さんたちについていくしかないんだ・・・。でも、俺は絶対、2人の事忘れないから。いつかまた絶対会いに行くからだから・・・・・・」
けい兄はそう言いながらも、その目には涙が溜まっているのが見て取れた。
そんなけい兄を見て私たちも気付けば涙を流しながら
「うん・・・私も忘れない。けい兄の事忘れないから、だから、けい兄も私たちの事忘れないで?」
「私も絶対忘れないよ!?だって私、けい兄が好きだから!けい兄がいなくなる、ってわかった時、この気持に気付いたから、だから・・・だからけい兄・・・私も・・・ぐすっ・・・絶対けい兄の事忘れないよ?」
そう言うと、けい兄はそんな私達を抱きしめながら
「ごめん・・・2人とも、ほんとにごめん・・・でも、俺は絶対また2人の前に帰ってくるよ。」
そう言った後、けい兄は私に向き直って
「たまき。お前の気持、とても嬉しいよ。俺もたまきの事大好きだ。だから、その・・・もう一度お前の前に帰って来た時に今の言葉をもう一度言うよ。だから、たまき・・・俺の事、待っていてくれる?」
その言葉に私は、けい兄にうんうんと頷きながら
「待ってる。待ってるよ?けい兄。それまでは私も、けい兄がすぐに私だって分かるようにこの髪型のままでいるから。だから・・・絶対帰ってきてね?」
そう言う私の言葉にけい兄も力強く頷き、私たちもそんなけい兄の頷きに同じように力強い頷きで応えた後、私達はお互いに約束の証の指きりをして、一時別れる事となったのだった。
けい兄の乗るトラックが遠く離れて行くのを、いつまでも私は手を振って見送っていたのだった。
それから4年の月日が流れたのだけど、あの時に私はけい兄の引越し先の住所等を聞くのを忘れていて、けい兄とは連絡が取れない状況が2年くらい続いた。
けど、けい兄達は私の家の住所等を覚えていてくれた為、2年くらいしてからけい兄からの手紙が届くようになった。
さらには電話番号等もそこには記載されていた事もあって、私とけい兄は密に連絡を取り合ったりしていた。
そんな中で、けい兄が中学生の時に2人の友達を作ったとの事で、私にその報告も兼ねた手紙と共に写真も同封して送ってきたのだけど、それを見た私はなんというか面白くない気分になったのだった。
何故なら、そこに写っていたのはけい兄と男子も1人居たけど、その他に2人の女の子が写った写真だったからだ。
そして、その写真に写っている子達の名前もここでわかった。
後に私が高校で出会う事になる友達で、八坂こうと永森やまと、と言う名前なのだった。
手紙にはけい兄が2人と出会った経緯などについて書かれていたが、それをなんとなく複雑な思いで読み進めて行くと、けい兄の中学を出た後の進路の事についての記述もあったので、私はそれをしっかりと確かめた。
けい兄の行こうとしている高校は、埼玉でもかなりレベルの高い陵桜学園。
私はそれを知って、自分の目指す場所はそこなのだと確信し、絶対にけい兄と再会する為に受験勉強を必死で頑張った。
みくもまた、あの頃からずっと付き合いを続けていた事もあったのだけど、私の行こうとしている学校を目指してみたいと言ってくれた事が嬉しかった。
そんなみくも居てくれた事もあって、私は厳しい受験を乗り越え、ついに陵桜へと合格を果たす事が出来たのだった。
一足先に陵桜へとやって来ていたけい兄が2年生になり、そして私達の入学式の日、私はすぐにけい兄の事をみくと共に探して回った。
しばらく探し回ったあげく、ようやくけい兄の居るクラスを見つけ、私はそのクラスから出てくる青い髪で高校生にしてはやけに小柄な女生徒に声をかけた。
「あの、すいません。このクラスにけいに・・・えっと・・・森村慶一先輩が居ると聞いて来てみたんですが、森村先輩は今教室にいますか?」
私がそう言うと、その女生徒は私をじっと見つめて
「・・・慶一君はこのクラスにいるけど、2人とも慶一君の知り合い?」
と、怪訝な表情で私達を見ながらいうその女生徒に私達は頷きながら
「はい。私達は森村先輩の幼馴染なんです。先輩もこの学校に来てると聞いたので、会いに来たんです。」
そう言葉を返すと、青い髪の女生徒はもう一度私の姿を見た後に
「・・・わかった。ちょっと待っててね?今呼んで来てあげるから。」
そう言って教室の中へと入って行き、けい兄を呼びに行ってくれたようだった。
少しの間教室の前で待っている私達だったが、程なくして教室から1人の男子生徒が現れ、私達の側へとやってきた。
私はその男子生徒を見た時、見た目や身長等が変わってはいたものの、それがけい兄である事がすぐに分かった。
そして、私が久しぶりの再会に嬉しさを滲ませながら
「けい兄!久しぶり!元気そうで安心したよ!?けい兄も大分変わっちゃったけど、また会えてよかった!!」
そう言いながら、思わずけい兄に抱きつく私にみくは驚きつつ
「ちょ、ちょっと、たまき。いきなり大胆すぎだよ?周りにも人の目って物があるんだから少しは自重しなきゃけい兄さんにも迷惑かけるよ?」
そう忠告するみくと、私の行動に驚きの表情を見せつつも、私を受け止めながらけい兄は
「うわっと!って、その髪型、その声、ひょっとしてたまきか?まさか同じ学校に来ていたとは思わなかったが、でも・・・久しぶりだな?たまき。」
そう言いながら、優しい表情で私の頭を撫でてくれるけい兄としばしの再会の余韻に浸っていたが、そんな中、けい兄はみくにも久々の挨拶をしているのだった。
「みく。お前も元気そうで何よりだな。2人してこの学校へ来ていたって事か。って事はひょっとしてたまきはあの時の事を覚えていて、って事なのか?」
そう、みくに問い掛けるけい兄に、みくは軽い溜息をつきつつ頷きながら
「そうだよ?あの時からたまきはけい兄さんの事ずっと思ってて、それでけい兄さんとの手紙のやり取りの中でけい兄さんの進路を知って、私もそこに行くんだ!って言い出したんで、仕方なく私もたまきに付き合ったんだよ。でも、けい兄さんも元気そうでよかった。」
そう言うたまきにけい兄は、私を受け止めつつも苦笑しながら
「はは、そうだったのか。でも、この学校のレベルは高かったからかなり大変だったろ?とはいえ、こうして俺に追いついてきてくれた事は嬉しいかな?」
そう言うけい兄の言葉を聞きながら私は、みくの方にちらりと視線を向けると、みくも嬉しそうな顔をして、そして、私自身もまた、自分の行動とけい兄の言葉を思い出して顔を赤くして、照れながらもけい兄から体を離して
「あはは。そう言ってくれて嬉しいかな?それに、私は・・・私の気持はあれからもずっと変わってないよ?それに・・・私の素顔はみくとけい兄しか今も知ってる人はいないしね。あの頃からずっと私はそうしてきたんだ。私の素顔は・・・けい兄のものだからね。」
そう言って私は、あの時からの自分の気持をけい兄にぶつけたが、けい兄はそんな私の言葉に顔を真っ赤にして照れながら
「いや・・・その・・・えっと・・・なんというか・・・その台詞、すごい嬉しい反面、物凄く照れるぞ?でも、俺も気持ちはあの頃のまま変わってない。だからその・・・・・・ええい!めんどくさい!!」
と、けい兄は突然大声をあげると私の両肩を掴んで
「まどろっこしいのは俺の性分じゃないから思い切って言う!俺は今も変わらずお前の事が好きだ!だから、俺と付き合ってくれ!」
そう私に真剣な表情で言うけい兄の言葉に私は、思わず嬉しさで涙をこぼしながら
「うん!私もけい兄が好き!だから、私からもお願いするよ!けい兄、これからよろしくね?」
そう言って私達は再び抱き合うと、それを見ていたギャラリー達から歓声があがり、それを聞いた私たちははっと我に帰って、今ここで引き起こした事態に照れで顔を真っ赤にさせていた2人だった。
そんな私達をみくもまた、苦笑しながら見ていたのを見て、私達はさらに顔を赤くして照れていた。
その後は、私達はけい兄が中学時代に知り合った女の子を紹介され、その件についてしっかりと問い詰めた後、その女の子もまた私達と同様にアニメや漫画に興味のある人だという事がわかり、更にあの当時から私達もそれなりにアニメや漫画等に興味を持っていた事もあり、その女の子が部長を努めるアニ研への入部をする事になった。
更には、私達にけい兄を呼んできてくれた青い髪の女生徒もまた、けい兄と同じクラスの人であったという事が判明、あの時心の中でどうして1年生がけい兄のクラスにいたんだろう?という疑問を持っていた私のその時の感想は心の中に封印しようと思ったのだった。
それと同時に、その青い髪の女生徒以外にもけい兄には女の子の知り合いが多くて、私はそれを知った時にはかなりやきもきしたものだけど、それでもけい兄の気持が私にのみ向いている事が改めてわかり、私はほっと胸を撫で下ろしていたのだった。
その後、私達はたびたびアニ研の部室でお昼御飯を食べたり、けい兄もアニ研の部長である八坂さんの頼みを聞き入れてアニ研の仮部長になっていた事もあり、放課後の活動等にも顔を出したりしていた。
私達はけい兄のクラスの人達ともその後に友達になり、先輩方を交えての賑やかな日々を送る事となった。
そして、今日は私は、けい兄が1人暮らしをしているというアパートへとお邪魔する事になったのだった。
私もそれなりに家事のスキルは鍛えていたので、いつも質素な御飯を食べているらしいけい兄の為に、今日は私が御飯を作ってあげようと思ったからなのだった。
最初は遠慮していたけい兄だけど、私のどうしても、という希望を受けて、そこまで言うなら、と折れてくれたのだった。
けい兄と夕食の食材の買い物を済ませて家に向かう私達。
けい兄は昔と変わらない微笑を私に向けながら
「ありがとな?たまき。わざわざ夕御飯作ってくれるって言ってくれてさ。」
そう言いながら私の頭を撫でてくれるけい兄に私も笑顔で
「いいんだよ。私がそうしてあげたい、って思ったんだからさ。それに、私の料理の腕もけい兄には見てもらいたいしね。」
そう答えると、けい兄は照れながら
「そっか。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらわないとな。それに、夕食を食べながら今日は色々と話そうぜ?俺達が一端別れてからの6年近い間の事とかさ。」
その言葉に私も頷きながら
「うん。けい兄と再会してから色々ばたばたしてて、そういう事ゆっくり話す機会もなかったもんね。私もけい兄の話を聞きたいしね。それに、そうなると長くなりそうだから、今日はけい兄の家に泊まらせてもらっちゃおうかな?」
と言う私の言葉にけい兄は顔を赤らめつつ慌てながら
「え?ちょ、ちょっと待て!いくらなんでもそれは・・・まずくないか?」
そう言うけい兄に私は笑いながら
「何言ってるの、今更。私たちは恋人同士なんだし、それに、けい兄の事は私の両親も知らない訳じゃないから大丈夫だよ。それとも彼女が泊まりに来たら迷惑?」
と、けい兄に上目使い<前髪を上げてけい兄に目を見せながら>で言うと、けい兄は照れながらも
「う・・・い、いや、そんな事はないけど・・・あーもう、わかったよ。その代わり家にはきっちりと連絡はしておけよ?」
そう言うけい兄に私も満面の笑顔で頷きながら
「その辺りは抜かりないようにするから心配ないよ?じゃあ、そういう事で。夕御飯、楽しみにしててね?」
その言葉にけい兄も頷きつつ、私の空いている方の手を握ってくれたのだった。
そして、その日の夕御飯の後、私達は、はなればなれだった6年もの間を埋めるように一晩中話し続けた。
翌日、日曜日という事もあり、私とけい兄は2人して徹夜した分少し休むと、私がけい兄の家から帰るその時まで一緒の時間をゆったりと過ごした。
そして、その日の帰り、私はけい兄の家から出る際に
「けい兄、ありがとう。楽しかったよ?あのさ、けい兄。私もっともっとけい兄と一緒にいたいな。だから、いつか一緒に暮らしたいな。ねえ、けい兄。こんなお願いって迷惑かな?」
そう、けい兄に言うと、けい兄はそんな私の顔をじっと見つめた後、私にキスをしてから
「迷惑なもんか。俺だってそうしたいって思ってるよ。俺もとりあえずは大学への進学はする予定だ。たまきがどうするつもりかは分からないけど、俺は進学を果たしたならその時はたまきと一緒に暮らしたい、って思ってる。」
その行為に顔を赤らめつつも、そのけい兄の言葉に私はその言葉を反芻しながら
「けい兄は大学へ行こうとしてるんだ?なら、私も行く。それで、けい兄と一緒に暮らしたい。私はこれからもけい兄と一緒にいたいから。だから、けい兄、大学へ進学したら1年だけ待ってて?私も絶対にけい兄と同じ場所に立ってみせるからね?」
その言葉にけい兄は嬉しそうな顔をしながら
「ああ、待ってるよ。これからもずっとお前と時を過ごして行きたいからな。でも、たまきが大学へ来るまでもちょくちょく会おう。勉強も教えるし、デートだってしたいからな。」
そう言うけい兄に今度は、私のほうからけい兄に抱きついてキスしながら
「それは当然だよ?それに、浮気は許さないんだからね?だから、これからも・・・」
その私の言葉をけい兄が補足してくれた。
「これからも、俺達はずっと、一緒に過ごして行こう。そしていつか、俺はお前を幸せにしたいって思ってるから。」
そのけい兄の言葉に私は嬉しさの涙をこぼしながら
「大丈夫だよ。私はこれからもずっとけい兄のものだからね?これからもずっとずっと変わらないんだから。」
その言葉にけい兄も笑顔で頷いてくれたのだった。
そして私達はいついかなる時も、お互いを必要とし続けて行く。
お互いを思い合い、お互いに助け合い、そして、これからの私達の未来へ向かって歩み始めたのだった。
短編のストックはここで一端終了となります。
今後は亀更新となりそうですが、これからもお付き合いいただけたら幸いです。