機動戦士ガンダムSEED ZIPANGU   作:後藤陸将

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PHASE-28 安土攻防

 第二宇宙艦隊は安土の前で防空陣形を取っていた。

「敵MA接近します!!」

観測員からの報告で第二艦隊旗艦扶桑のCICの空気が変わった。

 

「全艦、対空ミサイル発射用意!!敵の編隊を崩す!!」

三雲の命令を受けて全艦のミサイル発射管が起動する。

「全艦、発射準備完了しました!!」

「よし!撃ち方始め!!」

三雲は腹の底から声を張り上げた。

 

 

「あいつら、戦艦をコロニーに貼り付けて盾にするつもりかい?なら、アヅチ諸共にボッコボコにしてやるよ……マーズ!ヘルベルト!フォーメーションDで行くよ!」

「おいおい、先刻言ったばかりだろ?俺たちの目標はアヅチだ。戦艦を相手にする必要はねぇ」

血気盛んなヒルダに対してマーズは慎重だ。彼も戦艦の火力を相手にしたくはないのだ。だが、ヒルダも反論する。

「どのみち目の前の艦隊を突破しないと目標に取り付けないよ!それに、アタシだって本気で沈めようとまでは考えてはいないさ。最大火力で敵陣を強行突破して、湾口部に一撃喰らわしたらそのまま離脱して艦隊を迂回して帰るんだよ。わかったかい?」

そのプランを聞いたマーズは一瞬思考を巡らせる。確かに、ここであの防空陣を回避して最大推力でアヅチを攻撃すれば自分達は傷一つ無く帰還できるだろう。だが、今回は司令官である砂漠の虎からはできるだけ早く目標を攻撃するように命令されている。

今自分達が軽口をたたきながら移動するだけの余裕があるのは味方機が日本のMSを引き付け、MAを艦隊が吸引しているためだ。味方の損耗率を下げるためにはここでできる限り早く戦略目標を達成する必要がある。ならば、ヒルダの策にのることが最良であるのかもしれない。

「……わかった。やってやろうじゃねぇか」

 

 ヒルダ、マーズ、ヘルベルトのミーティア各機は一定の間隔を空けつつ三角形の陣形を整える。

その時、モニターに映る戦艦のいたるところから真っ赤な火焔が迸った。放たれたミサイルは途中で子弾を放出し、その子弾は群れを成した狼のように三機に襲い掛かった。

「糞!対空ミサイルだ!!野郎共、全砲門開け!そのまま最大加速だ!ミサイルの中を突っ切るよ!!」

ヒルダの命令に従って三機は全砲門を開き、前方から迫り来るミサイル郡に一斉射撃を開始した。迎撃されたミサイルが強烈な先行を放つ。三機のミーティアは速度を落すことなく光の中を突破する。だが、光を抜けた先に待っていた光景は常に勝気なヒルダにすら弱音を吐かせるものだった。

「なんて火力だい!?まるで炎の壁だ!!行けるか!?」

そう、防空陣形を取っていた第二宇宙艦隊の各艦は装備している火器を持って効率的な対空砲火の網を作り出していたのだ。その熾烈な迎撃によりマーズ機が被弾した。幸いにも被弾したのは機体の左舷アーム部分であり、マーズは咄嗟に被弾部分を切り離すことで命拾いする。

「ヒルダ、すまねぇ!被弾した!」

「詫びてる暇があったら進みな!!このKILLゾーンを抜けるんだよ!」

だが、次いでヘルベルト機も被弾する。こちらはアーム部分を両方失ってしまった。

それでも彼らは止まらない。最大加速でただ前に突き進んでいく。加速によるGも凄まじく、対G能力に秀でているはずのコーディネーターの三人でさえ気を抜けば意識を手放しかねないほどだ。そして彼らはそのGに耐えきって火箭の豪雨を突破し、アヅチの前に出た。ヒルダが腹に力をこめながら僚機に呼びかける。

「マーズ!ヘルベルト!ミーティアを外壁にぶつけろ!穴からアタシが内部に一撃くれてやる!!」

「「おう!!」」

その掛け声と合わせて2機はミーティアをパージする。切り離された2機のミーティアは加速を続けながら安土の外壁に突っ込んだ。その膨大な運動エネルギーを叩きつけられ、さらにミーティア本体が爆発した衝撃が加わったために軍用のコロニーとして頑丈に造られたはずの外壁も耐えることはできず、衝突部分に大きな破孔ができた。

ヒルダ機はその破孔からコロニー内部に侵入し、コロニーの軸である中央のシャフトも兼ねた光源柱に向かって全火器を開放する。多数の火箭に貫かれた光源柱は光を失い、安土内部は暗闇に満たされた。同時に戦略目標を達成したヒルダは即座に離脱を開始した。

「マーズ!ヘルベルト!こっちのミーティアに掴まりな!!」

既にミーティアを失っている2機は安土内部から脱出してきたヒルダのミーティアに掴る。それを確認したヒルダは再び最大出力で安土を後にしようとした。第二宇宙艦隊を迂回するコースを選んで1機の流星が加速する。

 

 

 その頃、バルトフェルド率いる艦隊には第3・第4航宙戦隊のMA攻撃隊が接近していた。

「距離3000イエロー31マーク64アルファに敵MA隊!数、140!!」

「防空担当のミーティアをまわせ!!3機ともだ」

敵の襲撃を受けていながらバルトフェルドの表情に焦りの色は全く見えない。これは司令官が部下に器の底を見せてしまっては士気に関わることを知っているということも理由ではあるが、自分に与えられた戦力に対して、自分自身の指揮官としての手腕に対して自信を持っていたためであった。

バルトフェルドが防空隊に通信を繋ぐ。

「いいか、諸君。作戦の目標は敵の壊滅にはない。故に君達は別に撃墜数スコアを稼ぐ必要はない。敵機の攻撃の妨害に全力を尽くしてくれたまえ」

「「「了解!!」」」

ミーティアを駆る三人は威勢のいい返事を返す。彼らはブースターを噴射させて一直線に日本のMA隊を目指して飛行した。

 

 

「あのデカブツか!」

コールサイン機龍1――権藤吾郎大佐は白鷺の頭部メインカメラが最大望遠で捉えた敵MAの映像を見て叫んだ。

まるで巨大なコンテナが中央のMSを挟んでいるようだと権藤は感じた。先に交戦した安土守備部隊からの情報であのMAは多数の対空ミサイルと大出力ビーム砲、さらに巨大なビームサーベルを装備していることが分かっている。

「機龍1より機龍隊各機!中央のデカブツは第一小隊でやる!第二小隊は左の、第三小隊は右のデカブツをやれ!MA隊に手出しさせんじゃねぇぞ!!」

権藤は無線で自身が率いる次世代MS試験中隊――機龍隊の面々に命令を下した。彼の指揮下にあるのはMAとMSの混成大隊であったが、MA2個中隊の方は対艦攻撃を命じているために彼がミーティアの相手に割くことができたのは次世代MSを試験的に導入していた1個中隊だけであった。

命令に従い、中隊は3つに分かれ、敵MAとそれぞれ相対する。権藤は敵上方から仕掛けることにした。既にMA隊はミーティアの武装が少ない下方を抜ける進路を取っている。できることならば火器の少ない下方から攻めたかったが、ここで敵機に武装をMA隊に向ける余裕を作らせてはならないと判断したためだ。

白鷺とミーティアの距離が急激に縮まっていく。だが、先に発砲したのはミーティアだった。ミーティアが持てる火器を全て開放する。迸る何条もの火箭が権藤ら第一小隊を襲った。

4機の白鷺は火箭の夕立の中を掻き分けて進んでいく。機体のガンマウントと右腕に搭載している71式複合砲計3門が同時に火を噴く。

 

 71式複合砲は撃震を始めとした我が国のMSの殆どが装備していた70式突撃砲の改良型である。70式突撃砲は120mm弾と36mm弾を運用できる突撃砲で、36mmマガジンを銃身と水平に装着する突撃砲である。ジンやシグーの76mm重突撃機銃と比べて弾倉の突起が少ない分だけ取り回しに優れていた。

71式複合砲は36mm弾の代わりにビームを発射できるように改良された機銃で、白鷺以降のMSでは標準装備になる予定になっている。

 4機合計で12門の砲口から放たれた火箭がミーティアを襲う。だがミーティアは急加速で箭痕から抜け出す。急加速の上での急旋回で4機の白鷺の攻撃は回避されたのだ。

「化け物が!!」

権藤はそう呟いた。そもそも、あれだけの火器を搭載していれば一発の被弾で弾薬の誘爆を引き起こしかねないだろう。そんな飛ぶ火薬庫で飛び回るだけでもイカれた考えであるのに、その機体で凄まじいGのかかる機動をやってのけるコーディネーターの頑丈さに内心驚嘆する。

旋回を終えたミーティアが再び突撃する。再び多数の火箭が権藤達を襲う。凄まじい火箭の雨はまるでスコールであった。白鷺の頭部を足を、腕をビームが掠め、後方に抜けていく。再び敵機の姿が正面モニター上の照準環の中央に収まった。それを確認するやいなや白鷺の全火器が火を噴いた。

今度の火箭は敵MAの左推進機を貫いた。左推進機が一度火を噴出したかと思うと、一瞬、敵MAが光に包まれながら巨大化したように見えた。そして敵MAは巨大な火球に変貌していた。煌々と漆黒の宇宙を照らすその巨大な火球はまるで太陽が突如出現したかのようであった。

「……第一小隊各機、残弾数を報告しろ」

敵MAの凄絶な末路にしばし呆然としていた権藤だが、気をとりなおすと小隊の各機に通信を繋いだ。

「こちら結城……だめだな。120mmは品切れだ。ビームしか使えんぞ」

「こちら佐藤。先ほどの攻撃で噴射ユニットに被弾しました。左の噴射ユニットが咳き込んでいます。戦闘継続は厳しいです」

「こちら新城。120mmの残弾が0になっています」

 

 援護に行くことは厳しい以上、残り2機の敵MAは他の小隊に任せることになると権藤が思案していたことが一瞬の油断であった。

突如白鷺のコックピット内に警報が鳴り響く。直後に爆炎の中から砲火が放たれ、権藤の機体の左足をもぎ取った。

「権藤!!」

突然の攻撃に結城は自身の駆る白鷺に盾を構えさせて権藤の機体のカバーに入る。

「問題ない!左足をもぎ取られただけだ」

権藤は無線でそう返すと自分を襲った機体を見定めるべくモニターに映る敵機の姿を凝視した。

敵機は先の巨大MAにくっついていたMSだ。その背後には特徴的な蒼い翼がある。

「MSに天使の格好でもさせて何がしたいんだよ。コーディネーターってやつは信仰心てやつがあんのか?」

権藤は毒を吐くが、胸中では焦っていた。あの爆発でも無傷でいるところを見ると、あの装甲は十中八九フェイズシフト装甲である。そして何よりあれほどの火器を制御する腕前を持ったパイロットが相手である。こちらの状態は万全とは言いがたい。数の利があるが、それがどこまで通用するかは不透明だ。

「やるしかないか……新城、佐藤!お前らは距離を取って援護しろ!!結城!お前と俺でやつに近接戦を仕掛けるぞ!!」

権藤は自身を奮い立てるように叫び、フットバーを蹴って白鷺の噴射ユニットを全開で噴かした。だが、敵は遠距離戦闘で迎え撃つつもりなのか、腰部の砲門と背部ウイングから展開された砲門を正面に向けた。権藤と結城の白鷺は左右に散開し、側面から敵機に向かって加速した。

 

 敵MA1機を屠るために最新鋭機1個小隊がかりで攻撃してこれほどの消耗を招いたことに権藤は危機感を感じていた。おそらく、あれほどの火器を制御できる人物などザフトでも一握りであろうが、彼らが下手するとこちらの最新鋭機を駆る精鋭1個小隊に匹敵する戦力であるということは由々しき事態だ。

対抗できる武装やFCSの更新を早期に用意する必要があると彼は痛感していた。

 

 

 

 アンドリュー・バルトフェルド率いる艦隊は日本軍MA隊の攻撃を受けていた。多数のミサイルを搭載したエターナル級が一斉に砲門を開き、敵MA隊にミサイルのスコールをお見舞いする。そのカメレオンの舌のように伸びた火箭に舐められて一機、また一機とMAは爆発四散していく。

艦隊の防空を担当するジン・ハイマニューバもその高い運動性能を活かしていくつもの敵機を撃墜することに成功しているが、全てを阻止することはできない。

隣の味方機が撃墜されても日本軍機はうろたえることは無かった。日本のMA――『風巻』はスピードを緩めることなく火箭の網を食い破らんと突き進んでいく。そして射点へとたどり着いた機体は一斉に胴体に括りつけたASM-7を発射した。その後、風巻は回頭して全速力で離脱する。2発のASM-7を打ち尽くせばもう対艦攻撃オプションは無いのである。

そして宙を翔けるミサイルがその船体に吸い込まれているようにわき目も振らずにナスカ級に接近する。防空火器や直轄機が迎撃を試みるも、多数のミサイルが迎撃を潜り抜け、その青みがかった船体に炸裂した。

 

 旗艦、エターナル艦橋に詰めていたバルトフェルドは指揮下にある部隊が次々と敵MAが放ったミサイルに貫かれていく様子を見て顔を歪めていた。

艦橋には日本軍による襲撃の被害状況が引っ切り無しに飛び込んでくる。

指揮下にあるナスカ級24隻の内の2隻、グーテンベルク、カルティエの両艦は敵ミサイルに装甲を貫通され弾薬庫に被弾し、総員退艦を指示する間もなくそのまま轟沈したとの報告が入っている。だが、被害はそれだけに止まらない。

コルネイユ、ラシーヌ、ヘーゲルの3隻も行き足が止まり、戦闘不能になったという旨が報告された。コルネイユは胴体機関部に敵ミサイルが命中し、格納庫まで破壊されたことでMS運用母艦としての戦力を完全に喪失し、艦内に発生した火災も消化不能な規模になっているという。同時に両舷の推進機も使用不能に陥ったという。

ラシーヌは艦橋に敵ミサイルが直撃し、艦橋は壊滅した。指揮官が全滅し、残ったクルーで懸命に操鑑とダメージコントロールを進めているが、もはや戦闘をする余裕は無くなっている。この2隻には既に総員退艦の命令が下されたという。

ヘーゲルには2発のミサイルがそれぞれ艦首と左舷に命中し、艦首が敵ミサイルに食いちぎられ、左舷に穿たれた巨大な破孔が格納庫の内部を丸見えにしている。艦内に発生した火災の規模も深刻だ。ダメージコントロールで回復できる損害ではなく、もはやヘーゲルはMS運用母艦としての機能を完全に喪失し、MSの発着艦が不可能な状態にある。

シラー、デューラー、ツーゼ、ケプラーの4隻も航行不能とまではいかないまでもそれぞれ被弾し、現在ダメージコントロール班が必死の応急処置をしている。とりあえず操艦には支障がないが、戦闘継続は困難であるという報告がされていた。

 

 旗艦エターナルにも多数のミサイルが接近する。搭載する防空火器はザフト艦中随一で、C.E.71年現在最高クラスの防御力を誇るエターナル級MS専用運用母艦でも迫り来るミサイルの発射を防ぐことはできなかった。

「左舷にミサイル接近!!数4!!」

の報告が艦橋に響く。

「下げ舵20!急ぐんだ!!」

バルトフェルドの指示に従ってエターナルの船体が大きく向きを変える。同時にエターナルのCIWSが1発でも多くのミサイルを撃墜しようと火を噴く。そしてエターナルの左舷に火球が2つ現れた。

「敵ミサイル2、撃墜に成功!!」

だが、まだ敵ミサイルは2発残っている。艦橋にいるだれもがいまだに険しい表情を崩してはいなかった。

そしてオペレーターの一人が悲鳴じみた叫びをあげた。

「駄目です!!敵ミサイル2!避けられません!!」

「総員、衝撃に備えろ!!」

バルトフェルドが声を張り上げたのと同時に凄まじい衝撃がエターナルの艦体を揺さぶった。まるでボクサーのパンチを喰らったかのような衝撃にバルトフェルドも艦橋のクルー達ものけ反る。シートベルトをしていなければ艦橋の壁に叩きつけられていただろう。

だが、これは1発目だ。すぐさま2発目のミサイルがエターナルの艦体を穿つ。

「艦首!被弾しました!!カタパルト使用不能!!」

「左舷スラスターに被弾!スラスター停止しました!」

次々と被害の報告がオペレーターから報告される。

「ダメージコントロール急げ!!」

バルトフェルドは大声で怒鳴る。

「まだ戦闘は終わっていないんだ!応急修理で艦を保全しろ!!」

 

 万事休すか――そうバルトフェルドが覚悟した時、艦橋に彼が待ち続けた知らせが飛び込んだ。

「ヒルダ隊より入電!!『我、奇襲ニ成功セリ。目標達成度70%』」

その知らせを聞いたバルトフェルドは喜色を浮かべながら叫んだ。

「信号弾撃て!!撤退するぞ!!」

目標達成度70%ということはアヅチの内部にもそこそこの損傷を与えたことを意味する。目標が達成された以上は長居は無用だと判断したバルトフェルドはすぐさま撤退を決断したのである。

 

 

 信号弾があがったのを見て、権藤達の白鷺と交戦中であったフリーダムは一斉射撃を行って牽制し距離を取った。そして踵を返して艦隊へと帰還する。しかし、権藤らはそれを追うことができなかった。4機ともバッテリーは危険域に達しており、佐藤機にいたってはフェイズシフトダウンを起こしていた為である。

「くそったれ……撤退だと!?」

権藤が吐き捨てるが、もはや彼らにはどうすることもできない。彼らも後ろ髪を引かれる思いではあったが、しぶしぶ母艦へと帰還する。

「あの化け物MS……次は絶対に首置いてってもらうぞ」

 

「逃すか!!」

一方、これまで敵MS部隊と交戦していた白き牙ホワイトファングス中隊は逃してなるものかと追撃をかけようとする。だが、そこにナスカ級から発射された多数のミサイルが飛来する。中隊の各機は迎撃しようと突撃砲を構えるが、その砲口が火を噴く前にミサイルは自爆した。

「スモーク!?それにこれはアンチビーム爆雷か!!」

ミサイルはスモークとアンチビーム爆雷の混成であった。戦闘の序盤でばら撒かれたアンチビーム爆雷の効果は切れていたが、これで再びビーム攻撃が封じられ、さらに有視界もスモークで塞がれたために追撃はできなくなった。

唇を噛みしめる唯依の元にCPから通信が入る。

「白き牙ホワイトファングスマムより白き牙ホワイトファングス各機。司令部からの命令です。『追撃は中止、生存者の救助にあたれ』以上です」

「しかし、ここでザフトを逃すわけには!」

「追撃はL4に帰還中の第一宇宙艦隊が行うとのことです。ですから今は生存者の救出を」

その言葉に唯依も閉口する。第一宇宙艦隊――かの新鋭戦艦『長門』を擁する艦隊で追撃するのであれば仕方がない。

「……了解した。これより白き牙ホワイトファングス各機は生存者の救助にあたる」

彼女自身この戦いで部下を失っており、その仇を討ちたいと思っている。しかし、軍人である以上は命令は絶対だ。彼女は機体の向きを変え、交戦していた宙域に戻っていった。

 

 

 地上にもザフトの魔の手が及んでいたことを彼らはまだ知らない。

C.E.71 6月12日――混迷する世界の中で蚊帳の外の平和を謳歌していた日本に冷や水が浴びせられた日であった。

 

 

 

 

形式番号 XFJ-Type2

正式名称 試製二式戦術空間戦闘機『白鷺』

配備年数 C.E.71

設計   大日本帝国防衛省特殊技術研究開発局

機体全高 19.5m

使用武装 71式突撃砲

     71式支援突撃砲

     70式近接戦闘長刀

     70式片手盾

     71式ビーム砲

     71式ビームサーベル

     71式複合砲

     71式高周波振動短刀

 

備考:外見はMuv-Luvシリーズに登場するSu-27『ジュラーブリク』

   ただし、脹脛の部分にスラスターを内蔵しているほか、甲型は跳躍ユニットの形が異なっている。(飛行機を思わせる形状ではなく、扁平な形状)

   撃震とは異なり、ナイフシースは存在しない。

 

 

防衛省が特殊技術研究開発局に製作を命令した純国産MSの第二世代機の試作機。

設計は撃震と同じく香月博士率いるプロジェクトチームの手によって行われた。

各国のMSにビーム兵器が次々と採用されている現状やザフトと交戦したパイロット達の意見を踏まえ、撃震にあった防御重視のコンセプトを撤廃しているために装甲は撃震のものと比べて軽くなっている。

ビーム兵器が相手では撃震並に分厚い装甲を纏っていても焼け石に水といった状況であったため、「防御力よりも回避性能を優先する方がパイロットの生存率の向上につながる」というコンセプトの元、機動性と運動性を突き詰めた設計となっている。

また、敵のエースパイロットや高性能機との交戦では接近戦の機会が非常に多かったことを受けて撃震に比べて近接戦闘能力を大幅に向上させた。

装甲を削った分装甲の質を高めるために全面的にフェイズシフト装甲を採用している。色は白を基調としている。

これらの近接戦闘を主眼に入れた設計や各種武装について助言したのはブルーフラッグにも参加した白銀武少尉だと言われている。

両前腕部には71式高周波振動短刀を内蔵(71式ビームサーベルに換装することも可能)し、膝部前面、肩部装甲ブロック、爪先には特徴的なブレードエッジが搭載されている。

ただ、格闘性能を高めるべく多くの武装や継戦能力を高めるべく特殊な機構、そして大型バッテリーを搭載した本機は多少大型化してしまったことが欠点といえる。

C.E.71 9月時点で宇宙軍への正式配備が始まった。

エースパイロットが搭乗すれば核エンジン搭載型MSとも互角に戦える基本性能を誇る。

 

 

 

 

Aー67『風巻』

 

全長19メートル

外見はウルトラマンティガに登場する月面基地ガロワの飛行艇

 

宇宙軍が採用している哨戒機。

 

PA-67『彩雲』の原型になった対艦攻撃機。装甲も厚く防御力、航続力、搭載能力は連合のメビウスを凌駕する。だが、その分メビウスと比べて機体は大型であり、運動性能も劣る。

固定武装は20mm機関砲で、胴体に対艦ミサイルASM-7を最大2発搭載可能。


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