いつもの1日、いつもの放課後、風間ファミリーはそろっていつもの様に遊んでいた。
そこに現れた川神百代の挑戦者はいつもの様に倒された。
でもその後に現れた男との対決はいつもの様には行かなかった。

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この作品は二次創作です。
時代背景、物理理論、ガンダムファイトは開催されませんのでご了承ください。


真剣で私と恋しなさい!G

世紀の対決!真剣に私と爆熱しなさい!!

 

場所は川神市の繁華街の一角。

休日と言う事もあり人々で周囲はにぎわっていた。

ここに2人の男女が居た。

「ねぇ、次はあそこに行きましょう!」

 

「またなのか?」

 

「いいじゃない、せっかくの旅行なんだから」

 

「わかったわかった。でも少し休ませてくれ」

 

「そう、なら私は先に行ってるわよ」

 

女性は手を振ると目的の場所へと走っていってしまった。

残された男は壁に背を持たれかけしばし休息を取った。

 

「ふぅ、何で女の買い物はこんなに長いんだ」

 

ここに来て3時間ずっと彼女の買い物に付き合わされている。

無論その程度で疲れるほど軟ではないが自分の興味のないことを延々と続けられては辛くもなる。

それにもうすぐ昼食時、腹も減って来ている。

(このあたりに何かないのか?)

 

今の自分が立っている位置から見える範囲で空腹を満たすものはないかと探す。

だが見渡しても露店のクレープ店が1件あるだけで他には見当たらない。

 

「背に腹は変えられんか」

 

男は諦めて恥を忍んでその露店の列へと並んだ。

人気があるのだろうか、並んだ列にはすでに7、8人が並んでいた。

そして待つこと15分が経過する。

「はい、イチゴクレープね」

 

「ありがと!」

 

前に並んでいるポニーテールの少女が店員から大量のクレープを受け取っていた。

ビニールに入ったクレープを左腕に抱え店員からつり銭を貰っている。

彼女はつり銭を無造作にポケットに入れると一目散に走っていってしまう。

だがそのときにポケットの小銭が一枚地面に転げ落ちてしまう。

でも彼女はそんな事には気がつかずスピードを緩める事無く走っていく。

 

「おい!?」

 

後ろに立っていたお陰でそのことに気がつけた。

拾ってみたら500円玉でさすがに貰っておこうとは思えない。

 

「次の方~」

 

「くっ!?……えぇい!」

 

店員が呼んでいるがこのままにもしては置けない男は500円玉を右手に握り列を抜けて走っていった少女の方向へ彼も走った。

 

「さっきのヤツはどこに?」

 

急いで追いかけるが人ごみの中に埋もれてしまい少女の姿はどこにもない。

このまま人ごみをかき分けながら進んだとしても少女を見つけ出せる可能性は低い。

 

(しかたがない、アレだ)

 

男は跳躍すると近くの電柱に掴まった。

高さはおおよそ3メートル、これならさっきよりも広い範囲で見渡せるし探しやすくなる。

 

「あの兄ちゃん、すっげ~!」

 

「何だ?大道芸か何かか?」

 

「どうやってのぼったんだろ~?」

 

だが周囲の人の目に晒されることになってしまったがそんな事を男は気にしない。

感覚を研ぎ澄ましさっきの少女をもう1度さがす。

「居た!」

視界に捉えた少女は特徴的なポニーテールを揺らして走っていた。

 

(あの方角ならたしか川があったはずだ)

 

「よし!」

 

掴まっていた電柱を蹴ると男はまた跳躍した。

人ごみを飛び越えると少女が行先へと先回りする。

 

///

「みんなお待たせ~!!!」

 

「遅いぞワン子、待ちくたびれたぞ」

 

川神一子、もといワン子はクレープを抱えてみんなの元へ走ってきた。

みんなのリーダーのキャップは時間が掛かったことに愚痴を漏らしていた。

 

「いや、アレだけの距離を15分で往復出来れば充分早いって」

 

いつも通り冷静にモロがつっこんでいた。

 

「それで目当ても物は買えたのか?」

 

「うん!少し並んじゃったけどね。でもここのすごく美味しいんだよ!」

 

大和に言われて抱えていたビニールからクレープを1つ取り出した。

イチゴがふんだんに使われておりとても美味しそうだ。

 

「雑誌にも載ったからこのあたりでは有名だよ」

 

京はさも当然かのようにそう言った。

 

「そうなんですか、全然知りませんでした」

 

「私もこういう情報はあまり詳しくない。一子にしてはよくやったな」

 

まゆっちとクリスはクレープを買ってきたワン子を少し尊敬の眼差しで見つめた。

 

「えへへ~、ほめて、ほめて」

 

「なら食べ歩きながら基地へ行こうぜ」

 

「あ!そういうのは俺が言うんだぞ!」

 

大和がそう言うとみんなで秘密基地の廃ビルへと歩き出す。

 

「いや、食べるのは運動が済んだ後だ」

 

けれども1人、川神百代はここに立ち止っている。

彼女の眼差しは川を渡る橋のむこうを向いていた。

そこに異様な雰囲気を漂わせる男が1人。

 

「毎度毎度よく来るね、ほんと」

 

「でもモモ先輩いつも瞬殺じゃん。勝てる奴なんて居るのか?」

 

「さすがにじいさんには勝てんだろう。まぁ俺達はここで終わるのを待とう」

 

モロ、ガクト、大和の言うようにいつもなら1分と掛からずに挑戦者はやられていってしまう。

だが今回に限りそうは行かなかった。

 

「川神百代だな?」

 

「あぁ、そっちは?」

 

「失礼した。私はシカゴから来たレフスパークと言います。アナタと1対1で勝負したい」

 

「いいよ、私もちょうどやりたかった所だ」

 

百代は両手を握り締めるとボキボキと骨を鳴らし戦う準備は整った。

突然何処からか来た挑戦者と勝負するのは日常茶飯事で百代は全戦全勝、苦戦すらしたことがない。

「では、いざ尋常に……」

 

「勝負!!!」

 

「「はぁぁぁぁ!!!!」」

 

向かい合った両者が互いを見つめると拳を握り殴りかかった。

普通ならこの一撃で百代の勝利に終わるのだが今回は違った。

 

「キサマ何者!?」

 

戦いを始めた両者の間に見慣れない男がどこからか1人介入してきた。

レフスパークの拳を百代に当たらないように受け止めている。

 

「大の大人が女に殴りかかるのか?」

 

乱入した男が力を入れると握っていた拳の骨に簡単にヒビが入った。

 

「ぐぅっ!!!」

 

その激痛にのた打ち回る挑戦者、しばらくはこのまま苦しむことだろう。

 

「怪我はないか?」

 

「あ……あぁ」

 

一方の百代も突然の事に驚いていた。

それは他のみんなも同じだ。

 

「急に乱入してきたアイツ誰だ?」

 

「知らないよ、でもどこからやってきたんだ」

 

ガクトと大和の目にはいつ介入してきたのか見る事すら出来なかった。

すると地面で痛みに耐えていたレフスパークが立ち上がった。

 

「貴様!何故私達の試合の邪魔をする!」

 

「試合ならもっとちゃんとした場所でやれ。こんな所でやられたんじゃ邪魔だ」

 

「邪魔だと!」

 

男の言葉に挑戦者は完全に頭に血が上っている。

百代に向けていた闘志を男にも向ける。

 

「おっおい……」

 

このままでは無関係なこの人まで巻き込んでしまうと考えるが珍しく百代もこの状況になにも出来ずに居た。

 

「どうやら言っても分からんらしいな」

 

「あぁ、わからんな。ならば貴様を倒しもう1度川神百代と戦うまで」

 

「お前では俺に勝てん」

 

「減らず口を!」

 

痺れを切らした挑戦者が男に襲いかかる。

 

「はぁぁぁ!!!」

 

それでも男は至って冷静だった。

殴りかかる男の拳を紙一重で回避すると一瞬で背後に回りこんだ。

 

「え?」

 

そのまま襟元を左手で掴むと男を軽々と橋の下の川へと投げ落とした。

 

「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

最後に聞こえたのは落ちて行く挑戦者の悲鳴だけ。

勝った男は喜ぶ素振りもなくたたずんでいた。

 

「あの人すごいです」

 

「えぇ、片腕だけで意図も簡単に相手を倒すなんて中々の腕前です」

 

まゆっちとクリスにはあの一瞬でも分かった。

あの男が相当な強者だと。

 

「これからは気をつけろ。それと―――」

 

男は百代に声を掛けると何故かワン子に向かって来た。

 

「?」

 

「忘れ物だ、さっき店の前で落としていった」

 

ワン子はポケットの中を探ると小銭を握りしめた。

手のひらで店員に貰った釣り銭を確認すると明らかに足りない。

 

「ああ!!!ホントだ」

 

「さすがワン子だな」

 

「ありがとう!!!」

 

男は右手に握っていた500円玉を一子に手渡した。

 

「じゃあ俺は戻る。待ってる奴が居るからな」

 

「待て」

 

この男は用を済ませるとこの場から立ち去ろうとしたれどもモモの隣を通り過ぎようとするといきなり呼び止められた。

 

「何だ、俺はもう―――」

 

振り向いた瞬間、百代の強力なパンチが顔面に飛んできた。

でも寸前の所でパンチはまた止められ互いの骨と筋肉がミシミシと音を鳴らす。

 

「どういうつもりだ?」

 

「決まっている、私と勝負しろ」

 

「さっきも言った、俺はもう戻る」

 

「あんな白人ヤロウと比べたらアンタのほうがずっと強そうだ。それとも女だからって言い訳して逃げるのか?」

 

「なにぃ!」

 

逃げる、などと言われていい気などせず男の闘争心に火が灯る。

 

「いいだろう、だが場所を変えるぞ」

 

「あぁ、あそこの河原でしよう」

 

ここに世紀の一戦が始まる。

けれどもまだ誰もその事に気が付いていない。

川原にたたずむ男と女、互いに向かい合いピリピリとした空気を漂わせている。

大和達ほかのメンバーは試合が終わるまで少し離れれた場所で観戦していた。

太陽の日差しが降り注ぐ中、男が1歩前に出た。

「あまり時間が無い。悪いがすぐに終わらせる」

 

「いいねぇ、そそるねぇ~」

 

モモは両腕を組みそう呟いた。

今まで何人もの武道家と試合をしてきた、いろんな肩書きを付けていてもどれも百代の相手になる腕ではなかった。

 

(さ~て、コイツは私を楽しませてくれるかな?)

 

「行くぞ!レディーーー!」

 

「ゴーーーー!!!」

 

男の掛け声にモモも大きな声で返すとそのまま試合が始まった。

両者は走り出すと一気に間合いを詰め拳を握り締める。

 

「「はあああぁぁぁぁ!!!」」

 

先手は百代の強烈な右ストレート、顔面に向け思い切り殴りかかる。

男も同じく皮のグローブを付けた右手でモモの顔を殴る。

互いに避けようとはせず強力な一撃が両者の顔にぶち当たる。

普通ならこれでモモの勝利に終わる。

だがコイツは違った、少し仰け反る程度で続けざまに上段蹴りを撃ってくる。

 

「くっ!?」

 

モモは両腕を交差させ蹴りを防ぐ、靴の跡がつくのではないかと思うくらい重い蹴りだった。

 

(野良試合で防御するなんて初めてだ。コイツはできる!)

 

男の実力に百代は心の中で喜んでいた。

 

(強いヤツと戦う、これ以上に過激で楽しい事があるか?)

 

その間にも男は目にも止まらぬ早業で百烈拳を繰り出してくる。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

「面白くなってきたじゃないか!」

 

百代も対抗して百烈拳を叩き込もうとする。

互いの拳と拳がぶつかり合う、1秒にも満たない時間で信じられないほどのスピードで何発もの拳が飛ぶ。

その内の2発がモモの肩と脇腹に当たってしまう。

だが男はモモの攻撃を全て受け止めていた。

 

(やっぱり強いじゃないか!)

 

痛みなど感じない、今のこの瞬間が楽しくてしょうがなかった。

百代は跳躍し飛び蹴りを放つが向こうも同じ技を出してきた。

空中で交差する2人は地面に降り立った。

一瞬の攻防劇を京は冷静に見極めていた。

 

「あの人、当てたね」

 

「早すぎて何が起こってるのか訳わかんねぇよ!」

 

ガクトの言うとおりで、男性陣には2人が何をしているのか見る事が出来ないでいた。

武闘家の卓越した技術に一般人では視界に捉えることも叶わず理解出来るはずもない。

 

「京、解説頼む」

 

「大和には見えなかっただろうけど最後の飛び蹴りで右足をやられてた。たぶん最初の頃にも何発か受けてると思う。私でも全部は見切れなかった」

 

「姉さんが押されてる?そんな」

 

地面に付いた2人はもう1度接近して互いの拳を振りかざす。

 

「はっ!はぁっ!」

 

時間差の2連撃、でも通用しなかったいと百代は伸縮性を生かした鋭い裏拳を顔面に撃ち込む。

 

「くっ!?」

 

「甘いっ!!!」

 

右腕で攻撃を受け止めると左手で顔を狙ってくる。

とっさに防ごうと構えを変えるとその一瞬で裏拳を受けていた右腕で胸部に肘うちを当ててきた。

 

「姉さんに当てた!?」

 

「あの男の人、今までと違って結構強いんじゃ?」

 

大和やモロにもそれは分かった。

気がつくと男は立っているのに百代は地面に尻をつけていたから。

幼い頃から一緒に居た百代が倒れる所など今までに見たことがない。

 

「そうだよ、さっきから言ってるでしょう」

 

「モモ先輩に立ちふさがる謎の男……くぅーーー!俺もあんな風になってみたいぜ!」

 

「てかマジでやばいぞ!あのモモ先輩が押されてるぞ!」

 

「うん、何をしてるのかは見えないけど確実に姉さんはダメージを負ってる」

 

押されてはいたが百代はこれくらいで負けはしない。

立ち上がり服についた汚れを振り落とすと男の顔を見据えた。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、ふふふ」

 

「何を笑っている?」

 

「こんな強い奴と戦うのは久しぶりだ!やっぱりアンタを選んでよかった!」

 

「よろこぶのは勝手だがそんな事で俺に―――」

 

すると百代が瞬間移動したかのようなスピードで接近していた。

そのまま足のバネを使い上空に向かいアッパーを撃つ。

 

「これは!?」

 

「まだぁっ!」

 

アッパーの勢いで跳躍し廻し蹴りを繰り出した。

これには反応しきれずに肩に当たってしまった。

けれども勢いに流し体を横に飛ばし威力を少しでも減らしてきた。

 

(動きが変わった、いよいよ本気を出してきたか)

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

百代は地面に拳を突きつけると周囲一体が揺れた。

 

「川神流、地球割り!」

 

「くぅっ!?」

 

地面が揺れると目に見えない衝撃が男に迫るが前転して急いで避けた。

 

「川神流、致死蛍!」

 

続けざまにまた百代の攻撃が飛んで来る。

拳に気を練り上げると弾のように飛ばす。

男は気弾にに正拳を撃ち込み相殺しようとするが間に合わずに空中に打ち上げられてしまう。

 

「しまった!?」

 

「川神流―――」

 

身動きの出来ない体に百代が技を掛けようと空中で抱きつこうとする。

 

「このままやられてたまるか!」

 

男は額に結んでいた襷を取るとムチを振るかのごとく百代の体に当てた。

 

「しまっ!?」

 

ただの布にも関わらず百代の体はもう少しの所で吹き飛ばされてしまった。

百代と男はそのまま空中で1回転すると地面に立った。

そして男は戦い方の変わった百代を見て異変に気付いた。

 

「この気は!?」

 

それはどす黒い気の塊だった。

かつての自分も怒りに飲み込まれてしまいこのようになった経験もありこれは危険だと察知した。

 

(この女、戦いの狂気に飲まれている)

 

「てぇぇぇい!!!」

 

本気を出した百代にクリスとまゆっちは息を呑んだ。

 

「百代先輩、マルさんと戦った時よりも遥かに強い」

 

「でもあの人もすごいです!先輩と互角に戦うなんて!」

 

男は襷を使い百代に近づかれないようにしていた。

前方のほぼ180度をあの襷でカバーできる。

それでも攻撃は出来ていなかった、近づかれないようにするのが今では精一杯だ。

 

(まだまだ師匠のようにはいかない!それにあの女の気もどんどん濃くなっていく)

 

時間が経つにつれて百代の戦闘はどんどん過激に強くなっていく。

でもそれは精神が狂気に飲み込まれている証拠だった。

男はそれをなんとか止めたかった。

 

「それなら!」

 

男は襷を額に結ぶと百代に構えた。

 

「はあああぁぁぁ!!!川神流、炙り肉!」

 

百代は気で右腕を紅蓮の炎に変化させるとその拳を男に当てようとする。

炎に包まれた腕が周囲の空気を焼くと跳躍し距離を瞬時に詰めるモモ。

 

「分身殺法!」

 

「なっ!?」

 

拳が当たったかに見えた。

けれども拳は空を切り男は姿を消した。

 

「消えた!?どこに!?」

 

消えた男を探し百代が後ろを振り向くとそこに居た。

両手を合わせて構えを取ると男の精神は静寂に包まれる。

 

「何かかまえたぞ、おい!」

 

「大丈夫かな、姉さん」

 

ガクトと大和が心配するのも無理はなかった。

こんなに苦戦している百代を大和は今までに見た事がない。

それでも京はいつも通りに冷静だった。

 

「大和、この試合どうなるか分からない。気の流れが変わっていく」

 

「何?何?どうした?もっと分かるように言ってくれ」

 

キャップには京の言っている意味が分からなかった。

 

「百代先輩の気があの人には通用していません。マルさんでもアレには勝てなかったのに」

 

「それに完全に隙がありません。あそこに攻撃を仕掛けに行くのは難しいです」

 

クリス、まゆっちにはあの構えの意味が少なからず理解できていた。

普通の人が見たらただ立っているだけにしか見えなくても武を極めている2人にはわかる。

隙をなくした男は構えたまま微動だにしていない。

 

(明鏡止水のパワーで―――)

 

「勝負!」

 

「はああああ!!!」

 

百代は構えている男にかまわず突っ込んだ。

瞬間回復、百代が会得した技の一つで自身のダメージを文字通り瞬間回復させた。

そののお陰でいままでに受けたダメージはすでに回復している。

 

「川神流奥義!虹色の波紋(ルビーオーバードライヴ)!!!」

 

「お前が虹色なら、俺は爆熱の指だぁ!!!」

 

互いに必殺の一撃を繰り出そうとしている。

それは大和にも理解できた。

どちらが先か、これを受けたほうがこの試合の敗者となる。

 

「姉さん!!!」

 

「俺のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと轟き叫ぶ!」

 

爆熱する炎の拳を男は百代に叩きこむ。

 

「ばぁぁぁく熱!!!ゴッド!!!フィンガーーーーー!!!」

 

「あああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

百代の渾身の拳を男も必殺の技で受け止めた。

 

「もらった!!」

 

互いの必殺の一撃がぶつかると百代は右腕を通して相手に波紋を流した。

これを喰らうと波紋により全身の骨が砕けてしまう。

それが川神流奥義虹色の波紋(ルビーオーバードライヴ)、武の匠と言えどもこれを受けては生きているのもやっとな程。

 

「いいやまだだ!!!」

 

「なっ!?」

 

だが百代が波紋を放つ前に左腕からもゴッドフィンガーが放たれた。

百代はこれを防ぐ手立てがなく腹部に強烈な一撃を喰らい持ち上げられてしまう。

虹色の波紋も男の右手から離れてしまう。

 

「ヒィィィト、エンド!!!」

 

その掛け声と共にモモの意識は暗闇に消えていった。

勝負はついた、一瞬にも一生のようにも思えた戦いは終わった。

 

「これで決着は着いたな。おい!」

 

男は百代を抱えると試合を見ていた大和たちに声を掛けた。

 

「姉さん!」

 

「おね~さま~!」

 

大和たちは走って百代の元へ行った。

傍まで来ると百代の体を大和に抱きかかえさせてきた。

 

「気絶しているだけだ。しばらくすれば目を覚ますだろ」

 

そう言うと男は赤いマントを着てまたどこかへ行こうと歩き出した。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

「キャップ?」

 

「アンタの名前を聞かせてくれ」

 

キャップの突然の問いに男は立ち止まった。

ゆっくりと振り向くと男はこう言った。

 

「俺の名はドモン・カッシュ」

 

///

月明かりに照らされてもうあたりは夜になっていた。

 

「うん!?」

 

百代は目を覚ますとここは川神院のいつも寝ている布団の中だった。

横に振り向くとルー師範代が看病についていてくれた。

「おぉ、目を覚ましましたヨ!」

 

「お姉さま~~!」

 

ルー師範代の言葉が聞こえると奥からワン子の大きな声を出して駆けつけて来る。

どたどたと音を立て百代の部屋まで走ってきた。

 

「ここは?私は負けたのか?」

 

「お姉さま」

「ふん、少しはいいクスリになったじゃろ」

 

「じじい」

 

珍しく祖父の川神鉄心もそこに居た。

普段は百代の問題に頭を悩ませ怒るぐらいしかしないが孫が自分以外の人間に負けたとなれば話は別だった。

鉄心はさとすように百代に話しかける。

 

「何故自分が負けたのか説明できるか?」

 

祖父の問いにモモは頭を横に振った。

 

「だろうな。あれは明鏡止水」

 

「迷……京……?」

 

「明鏡止水、それで」

 

一子は明鏡止水が分からないらしいが2人は無視して話を続けた。

 

「澄んだ水の様に清らかな心、あれの前にはお前の闘気など無意味」

 

「それが明鏡止水……」

 

「あの者は明鏡止水の極みを会得しておる。今のままの戦い方では到底勝つ事は出来ん」

 

「じじいは出来るのか、その明鏡止水の極みを?」

 

「ふふふ、あれは誰かに教えてもらう物ではない。せいぜい精進するがいいわい」

 

「おい、じじい!」

 

イヤらしい笑みを浮かべながら鉄心とルー師範代は部屋から出て行ってしまう。

部屋には一子しかもういない。

 

「なぁワン子……」

 

「何、お姉さま?」

 

「もう1度あの男と戦いたい。こんな気持ちは初めてだ、何か負けたのにすごく清々しい気持ちなんだ」

 

「確か名前を言ってたわ!う~ん……どもほるん?」

 

「それ、絶対違う」

///

「すまん、レイン!!!」

 

「しらない」

 

ドモンが繁華街に戻ってきたときにはもう夕方になっていた。

レインを置いていってしまったせいでひどくご立腹だった。

だからこうして許してもらえるよう平謝りを繰り返している。

 

「頼む、この通りだ!」

 

「ふん!」

 

レインの怒りが静まるのは百代の狂気を沈めるようにうまくはいかなかった。




いかかでしたでしょうか?
アニメ版は見ていないのでモモがどれくらい強いのかいまいち分かっていませんでした。
モモはもっと強いぞ!と、言う方もいるかもしれませんがご了承ください。
これで完結ですが需要があればまた書きたいと思います。
ご意見、ご感想お待ちしております。


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