「実力で負かされた……か」
頬杖をつきながら真っ赤に染まった空を眺め、クリアは呟いた。
キーンコーカーンコーン
下校のチャイムが鳴り響く。教室の中では待ってましたと言わんばかりに各々の生徒は自分の荷物をしまいだした。
「よーし、んじゃここまで。気をつけて帰れなー」
先生は特に気にしない態度で教室を出ていった。
クリアもまた、荷物をカバンにしまっていると青年がクリアに親しげに話しかけた。
「おっしゃ、んじゃあ帰ろうぜ。クリア」
「トモキか。今日はいいのか?」
「部活か?そう何度も行ってたら勧誘されかれねぇからな」
彼は梶山トモキ。クリアとは幼馴染みで運動神経が良く、部活の助っ人とした度々呼ばれることがあった。
クリアが荷物をしまい席を立つとトモキと共に教室を出た。
「しっかしクリアよー、最近なんかあったのか?いやに機嫌が良さそうじゃねぇかよー」
その質問にクリアは鼻で笑った。
「そうか?まぁ、最近ようやく歯ごたえのある相手とやったからかもしれんな」
「ヴァンガードの話か?お前もよく続けられるなー」
「お前が異常に飽きっぽいだけだろ」
「へっへ!ちげぇねぇや!あっそういえば聞いたか?転入生の話」
「……転入生……だと?」
下駄箱で靴に履き替えたトモキの一言を聞き、クリアは悪い予感を感じ取った。
「なんでも結構ヤバそうな奴らしくてよー。しかも俺たちの同じ学年ってきたもんだ」
「……まさかそいつ銀ぱ」「あっ!やっと見つけた!おーいクリアくーん!」
言いかけたところで後ろから聞き覚えの声が響いた。
その声は玄関全体に響きわたり、そこにいた生徒はその声のほうに目を向けた。
「おい、お前のこと呼んでるみてぇだけ……」
トモキも声のするほうに視線を向けると絶句した。
クリアも心を決めて、恐る恐る振り替える。
見覚えのあるバカにしたようなニヤニヤ顔。そして生徒全員が黒一色の髪をしているなかであまりにも異質な銀色の髪。
まさにあの時クリアを倒した青年がこちらに手を降りながら走ってきたのだった。
(何がヤバそうなのか解らんかったが……なんとなくわかったわ……)
トモキはこの青年が噂の転入生だと察した。
クリアのそばまで来ると少し息を荒くしながら深呼吸した。
「はぁ~。やっと見つけたよ。こんな身なりだからみんな避けて知り合いとかできないからさ~。クリア君がいてくれてよかったよ」
親しげに話しかけてくる青年にトモキはクリアに耳打ちした。
「なんだ、お前。この転入生と知り合いだったのかよ」
「……知らんな……」
クリアは何事もなかったように青年を無視してはや歩きに歩き出した。
実力は認めてはいるものの、その態度には好感を持てなかったということと、目立つことがあまり好きではないクリアはその場は早く脱したかった。
何の返事もなく突然歩き出したクリアに青年とトモキは慌てて追いかけた。
「おい!一体なんだってんだよ!」
「ちょっ!ボクのこと忘れちゃったの!?ボクだよ、新田ツカサだよ!?」
クリアは立ち止まると苛ついたような表情で振り向いた。
「お前の名前なんか知らない。今初めて聞いたところた。大体なんでお前がこんなところに居るんだ?」
それに対し、ツカサは惚けた様子で口を開いた。
「なんでって、ここの生徒だからじゃない?」
「あのなぁ……」
拳をプルプル震わせながら静かに自分の怒りを露にしていくクリア。
(とりあえず知り合いなんだな。しかし、クリアのイライラが頂天に達しようとしてんなー。ま、面白いからいいけど)
そう思いながらトモキは、ニヤニヤ笑いながら二人のやり取りを見ていた。
そんなやり取りをしながらクリア達は校門出る。そしてツカサも彼等に着いていった。
「……なんで着いてくるんだよ」
「だってボクも帰り道こっちだからさ」
クリアの質問にツカサはニヤニヤ笑いながらそう言った。
クリアは舌打ちをするとトモキに声をかける。
「トモキ、俺はアネモネに寄るがお前は……」「あっ!ボクも一緒に行くよ。カイリ君やハジメ君がいるといいね~」
クリアの言葉を遮るようにツカサは言った。
「へぇー、じゃあツカサもヴァンガードやってんだ?あ、俺はトモキ」
「うん、そうだよ。クリア君ともアネモネで初めて会ったからね~。トモキ君はやってないの?」
「前はやってたけど飽きて止めちまったな。まぁ、カードがあればやれるが」
「ならトモキ君も一緒に行こう!もしかしたらまたポテンシャル上がってやるかもしれないし」
突然の提案に驚くクリア。
「おい、勝手に決め……」「いいねぇ!久しぶりにクリアのドヤ顔でも拝んでみるかな。っというか、なんか都合が悪かったか?」
今度はクリアの制止を遮るようにトモキが言った。
クリアはばつの悪そうな顔をすると頭を掻いた。
「別にお前がいいなら構わないが……」
「よっしゃ!んじゃあ決まりな。ところでツカサってヴァンガード強いのか?」
「それなりにはね~。とりあえずクリア君には勝ったよ」
「マジかよ!めっちゃやり手じゃねぇか」
ツカサとトモキが盛り上がっている中、クリアはため息をついてアネモネに向かった。
* * * * *
場所は変わってここはアネモネの店内。
いつものようにカイリとハジメは二人でヴァンガードをやっていた。
そんな二人に近づく一人の影があった。
「あれ、ハジメいんじゃん。カイリもいるし」
「うぇっ……、タイキ……」
声をかけてきたのは宮本タイキ。ハジメとは同じクラスでハジメを介してカイリもタイキのことを知っていた。
「なんだー、普通に帰るって言ったのに結局来たわけか。お前も好きやねー。ってかあれ、カイリもヴァンガードやってたのか?」
タイキはヴァンガードを並べるカイリを見てそう言った。
「えっ、うん、最近始めたばっかりなんだけどさ。タイキ君もヴァンガードやってるの?」
「あたぼーよ!さてはお前もハジメに誘われたくちだな?」
カイリの問いに胸を張って答えるタイキ。
ハジメは面倒くさいことになったと思いながらカードをデッキにまとめていく。
「お、ちょうど終わったところだったのか。ならカイリ、いっちょヴァンガろうぜ!」
「ちょっ!勝手に決めるなよ。お前がやると……」
「うん?なんか問題があるか?」
「いや……」
突然の提案にハジメは焦ったように言うが真顔で聞くタイキに渋い顔をした。
「っしゃあ、俺のデッキ見て腰抜かすなー。ところでカイリの使ってるのってかげろうか?」
鞄を机のすみに置き、デッキを取り出しながらタイキは聞いた。
「えっ?違うけど」
「ならいいんだどな。正直、俺のデッキかげろう苦手でさ」
「それ言ったら僕のデッキもかげろう苦手だよ。除去されると本当にきついんだよね……」
「だよな!だよな!」
二人が盛り上がっているなか、ハジメはあることを恐れていた。
(まさか、タイキが来るとは……。っていうかあいつがアネモネに行くか?って聞かれた時点で来るの確定してただろ……馬鹿か俺は……。タイキの悪い癖が直っているか、出ないことを祈るばかりだぜ……)
カイリとタイキは机を挟んで座るとお互いはFVを置き、じゃんけんをした。
「うおっし、俺の勝ちだな。2枚戻すぜ」
「俺は4枚戻すね」
お互いはカードを戻した後、デッキをシャッフルし五枚になるように引いた。
「いくぜ!スタンドアップ、ヴァンガード!」
「スタンドアップ、ヴァンガード!」
カイリはいつもと同じバトルライザー(3000)、タイキはどらんがる(5000)を表替えした。
「どらんがる……ってことはガラハット?」
「どうだかなー。それは見てからのお楽しみってところだ。俺のターン、ドロー!そしてどらんがるのスキルを発動するぜ!」
タイキはデッキの上から五枚見た。どらんがるのスキルはツクヨミと同じ、ライドフェイズの始めにデッキから五枚見てその中に指定のカードがあればスペリオルライドすることが出来る。
「うお!調子いいな!探求の騎士ガラハット(7000)にスペリオルライド!残りはデッキの下に戻して俺のターンは終了だ」
「俺のターン、ドロー!ライザーカスタム(6000)にライド!スキルでバトルライザーを左側の後列に置くよ」
タイキはカイリのライザーカスタムを見ると、物珍しそうな視線を向けながら頷いた。
「カイリはライザー軸なわけだ。なかなか珍しいデッキを使ってるな」
「そうなの?」
「いや、単純に俺が見たことが無かっただけなんだけどな。初めてだからテンション上がるわー」
「そうなんだ。俺はまだタイキ君が濁すからデッキがなんなのかわからなくて困ってるよ……。取り敢えずヴァンガードの後ろに叫んで踊れる実況シャウト(7000)をコールするね。6000じゃアタックがヒットしないし……。じゃあシャウトのブースト、ライザーカスタムでヴァンガードにアタック!」13000
「へっへっ、それはノーガードだぜ」
カイリはタイキの宣言を聞いた後、デッキを捲った。
「ドライブチェック!キング・オブ・ソード。トリガーなしだね」
「ダメージチェックだな。げっ……光の牙ガルモール」
「そうなんだ、タイキ君のデッキはガルモールなんだね」
「あぁ、FVはぶるうがるでもいいんだが後半邪魔になってくるからどらんがるにしたんだ。にしてもネタバレ早すぎワロタだわ……」
タイキはそのガルモールをダメージゾーンに置いた。
「にしても始めたばっかりのわりにはカードのことよく知ってるな、カイリ」
「うん、暇な時に携帯とかでヴァンガードのwikiとか見てるからね。でも、まだメインクランのところしか把握してないけどね」
「へぇ、そいつは気が抜けねーや。じゃあ俺のターン、いくぜ!」
タイキはカードを引くと再びデッキの上から五枚を見た。
「はっはー、完璧だわ。試練の騎士ガラハット(9000)にスペリオルライドだ!残りはデッキ下に戻すぜ。これで手札二枚ぶんのアドを稼いだわけだ。どうせばれちまってるから遠慮なく使わせてもらうぜ。左側前列に獣騎士ガルモール(8000)をコール!そして手札の探求の騎士ガラハットを捨てて、ガルモールのスキル発動!デッキからすのうがる(6000)をガルモールの後ろにスペリオルコールだ!すのうがるのスキルは知ってるか?」
「うん、場の自分を除くすのうがるの数だけパワーが1000上がるんだよね」
「そそ、だから他にすのうがるはいねーからこのすのうがるはパワー6000。すのうがるのブーストでガルモールでアタックすれば14000だ」
「あー、アタックするんだね……。それはノーガードで。ダメージチェック、スリーミニッツ!ドロートリガーGET!一枚引いてパワーはヴァンガードに加えるね」11000
「うお、まじか……お前もついてんな。とりあえず試練でヴァンガードにアタックだ」9000
「それもノーガード」
ハジメは黙って二人のファイトを見ていた。
(まだ断言出来ないがあのプレイングを見るに直ってなさそうだな……)
「こい……!ドライブチェック!っしゃあ!ヒールトリガーGET!回復してパワーをヴァンガードに加えるぜ!」
「ありゃ、これでガラハットのパワーは14000になるからヒットしちゃうね……。ダメージチェック!ハイパワードライザーカスタム」
カイリがダメージゾーンにカードを置くのを確認したタイキはターンを終了した。
「俺のスタンド&ドロー!マジシャンガールキララにライド!」
「うお……キララとか……。また面倒なのにライドするな……。ダメージ与えなかったほうが良かったかもわからん」
「あはは……、とりあえず右側前列にキング・オブ・ソードをコールするね。そしてキングでガルモールにアタック!」10000
「インターセプト潰しなわけか……。まー、ガルモールはもういらないからノーガードで。ガルモール退却」
「じゃあ、シャウトのブースト、キララでヴァンガードにアタック!」16000
「これはガードしてーなー……。けどノーガードだ」
「ドライブチェック!ハイパワードライザーカスタム。トリガーなしだよ」
「ダメージチェック!小さな賢者マロンか……。ぶるうがるが出るよりはましか」
「じゃあキララのアタックがヒットしたからCB!一枚ドローして俺のターンは終了だよ」
ノヴァ ガルモール
手札 7 6
ダメージ表 0 1
ダメージ裏 2 0
ノヴァ
前列
/キララ/キング
後列
バトルライザー/シャウト/
ガルモール
前列
/試練/
後列
ぶるうがる//
「守るか、だがこいつはどうかな?すのうがるのブースト、光の牙でヴァンガードにアタック!」21000
(なんかテンション変わってきてる……)「うーん……。せっかくトリガー出てるからラウンドガールクララとキングをインターセプトでガード!」29000
「ツインドライブ!!一発目!沈黙の騎士ギャラティン。二発目!アラバスター・オウル!クリティカルトリガーGET!……だが乗せてもヒットしねーか……。経験が生きたな……。俺のターンは終了だ」
(やっぱりクリティカルトリガー入ってるんだ……。バランス配分なのかな……?)
「俺のスタンド&ドロー!パーフェクトライザー……と言いたいところだけどMr.インビンジブルにライド!そしてインビンのスキルでSC……パーフェクトライザー……。あとダメージを一枚表にするね。右側の前列にマジシャンガールキララ、後半にライザーカスタムを、左側前列にハイパワードライザーカスタムをコール!ハイパワードは後列にバトルライザーがいたらパワーが8000上がる!ハイパワードライザーカスタムでバロミデスにアタック!」16000
「だよなー。ならアラバスター・オウルでガード!簡単にゃーやらせないぜ!」
「ふむぅ……、じゃあシャウトのブースト、インビンジブルでヴァンガードにアタック!」17000
「ヴァンガードで来るか……。そいつはノーガードだ」
「ツインドライブ!!一枚目……バトルライザー!スタンドトリガーGETハイパワードをスタンドさせてパワーはキララに加えるよ。二枚目……ライザーカスタム」
「16000がスタンドとか斬新な真似するな。ダメージチェック、まぁるがる!ドロートリガーGET!一枚引いてパワーはヴァンガードに加えるぜ!」15000
「じゃあハイパワードでバロミデスにアタック!」16000
「くぅ……しつこいな……。世界樹の巫女エレインでガード!」20000
「ライザーカスタムのブースト、キララでバロミデスにアタック!」20000
「だぁー!しかたねー、ノーガードだ。バロミデス退却!」
「バロミデスは強いからさ……。あとキララのアタックがヒットしたからCB!一枚引いて僕のターンは終了だよ」
カイリがそう宣言した時、店の扉が開くとクリア達三人が店内に入ってきた。
「あー、この雰囲気久しぶりだなぁー。うしっ!クリア!久しぶりにやろうぜ!」
「……お前デッキ全部売っちまったの忘れたのか……?どうやってやるつもりだ」
「たしかこの店ってトライアルデッキ貸し出してくれるんだろ?俺、コンローだけはもってっからかげろうでやればそれなりに出来んだろ」
「……まぁ、お前ならそれなりに出来るか」
二人がそう言ってトライアルデッキを取りにカウンターへ向かった。
(ん~、誰かいないかな~。おっ)
ツカサは店内をキョロキョロ見渡し、カイリ達を見つけるとニヤリと笑い、彼らに近づいた。
「ヤッホ~、久しぶり~。とはじめまして~。ってファイト中みたいだね」
ツカサがそう声をかけると、顔を知っているカイリとハジメは笑顔になりながら挨拶をし、顔を知らないタイキはぎこちなく返した。
「こんにちはー」
「あぁ、どもっす」
「あっ、兄さんこんちわっす。良かったら一緒に見てって下さいよ」
「そうさせてもらうよ」
そう言うとツカサはハジメの横に座った。
「こっちのガルモールの子は君たちのお友達なのかい?」
「はい、そうなんすけど……、こいつちょっと面倒くさいんすよね……」
「面倒くさい?」
「まぁ、見てれば分かると思うっよ……」
ツカサがそう首を傾げるのと同時に、タイキはそう言いながらカードを引いた。
「じゃあ俺のターン、行くぜ!ドロー!」
その後もファイトは続いた。
タイキは終始、リアガードからのアタックを続け、それを見ていたツカサも彼のそのプレイングに気づいた。
「シャウトのブースト、Mr.インビンジブルでヴァンガードにアタック!」17000
「ちぃ……これはリアンと獣騎士ガルモールでガード!トリガーがこなけりゃ守りきれる……!」20000
「ツインドライブ!!一枚目……マジシャンガールキララ。二枚目……スリーミニッツ!ドロートリガーGET!一枚引いてヴァンガードにパワーを加えるよ!」
「うわっ、ついてねーな……。もう一回ヒールトリガーが出れば……。ダメージチェック……幸運の運び手エポナかよ。ちっ、俺の負けか。あーあ、あそこでドロー出るんだもんなー。まじついてねーわ」
「あぁ、うん……そうだね……ごめん……」
投げ遣りな態度でそう言うタイキにカイリは萎縮した。
そんなタイキの態度に堪らずハジメは立ち上がった。
「お前ふざけんなよ!運が悪いだ?一回六点目ヒールしといて何いってんだよ!運が悪いってほざく暇があるなら一回自分のプレイングを改めろよ!スタンドトリガー入ってないのにリアガードからアタックしてるとかどうかしてるぜ。いや、そもそもスタンド入ってたとしても全リアからのアタックはないわ。トリガーのパワー付与が飾りになっちまうからな」
「あぁん!?別に俺がどんなプレイングしようが俺の勝手だろーが!」
「ああ、そりゃお前の勝手だ。けどそれで負けてあんな風に悪態つけられたらやってるこっちが嫌な気分になるんだよ!」
「んなもん、俺の知ったこっちゃねーよ!」
言い争いを始めた二人にアワアワしながら止めに入ろうとしたカイリにツカサは頭をポンポンと叩くと口を開いた。
「まぁまぁ、二人とも落ち着こ~。彼の言う通りどういう構築、プレイングをしようと本人の自由なのは確かなんだしさ~」
「そうっすけど……でも……」
納得いかなそうに呟くハジメにツカサは安心させるように笑って見せた。
「ところで君はどうしてガルモールデッキを使おうと思ったんだい?」
見ず知らずの青年に話題を変えられ困惑するタイキ。
「えっ……どうしてって……。そりゃ強いと思ったから……」
「ふむふむ、どういうところが強いと思ったの?」
(突然来て面倒な人だな……)「どの辺って言われても、単純に展開力があって速攻がかけられるところ……っすかね。それにパワーも高いからクリティカルトリガーと合わせれば一気に戦況をもっていけると思っただけです」
「なるほどなるほど、君は随分とヴァンガードについての知識があるようだね。それじゃあ、どうしてリアガードからアタックするようになったのかな?賢明な君のことだ、何か理由があるんでしょ?」
ツカサの問いにタイキはばつの悪そうな顔浮かべた。
「……別に何か考えてやってたわけじゃない……っすよ。ただ……ヴァンガードみたいなのは最後にアタックしたほうがキッチリしてるというか……」
「うんうん、わかるよ。RPGみたいに役割を持たせたほうがスッキリするもんね」
ツカサは納得している様子で頷いた。
「でも君は勝ちたいからそのデッキを使っているんでしょ?それを運に頼っていてはいけないな~」
タイキは黙ったままツカサの話を聞いた。
「君がもっと勝利を望めばユニット達は君を勝利を導くために尽力を尽くしてくれるさ。君のヴァンガードであるガルモールが味方からパワーをもらうのと同じように、君も仲間の声に耳を傾けたらどうかな?ね!」
ツカサに声をかけられたカイリとハジメは突然のことで驚きながらも笑って見せた。
「……まるでガキへの説教みたい……っすね」
タイキは口を開いた。
「……けど、そう言う風に言われるとなんだか自分がやってたことが馬鹿らしく思えてきた……っすよ」
タイキはため息をつきながら表情を和らげた。
「ほんとは俺も最初にハジメに言われた時に自分のプレイングはおかしいとは思ってた……っす。ただ、それを認めるのがなんか嫌でそのままあのプレイングを続けてたんです。案の定、なかなか勝てなくて初心者のカイリとやってもこの始末。ほんと、自分の頑固さ加減には涙が出ますよ」
「そっか、不器用なだけなんだねー」
「まぁ、そんなとこ……っすね。もうこれからは俺も一新してヴァンガードからのアタックを意識していきます。勝つために」
「……そんなことしたって変わらねぇよ……」
「んだとっ!?なんつった!?」
ハジメがボソッと呟いたことにタイキは身をのりだした。
カイリはまた喧嘩になると思い、ツカサに目を向けたが彼はニヤニヤしながら二人にのやり取りを見ていた。
「そんなことしたって俺には勝てないって言ったんだよ。なんなら、試してみるか?」
一瞬触発な状況に堪らずカイリはツカサに声をかけた。
「あの……大丈夫ですかね……。今にもまたさっきみたいなことが始まりそうな雰囲気ですけど……」
「大丈夫大丈夫~。少なくともハジメ君はそうだね。もともと彼とはファイトしたがらなかったハジメ君がわざわざ自分から申し出てるんだ。きっと彼を認めたんだろうね~」
「望むところだ!本気の俺の実力を見せつけてやんよ!」
タイキはカードをデッキに集め、FVをセットした。
「言うねー。なら、俺が勝ったらタイキから何かカード貰おうかな」
「なっ……。まさか……お前……。俺のコスモロードを狙って……!?」
「要らねぇよ!っていうかさりげなく俺にコスモさんをディスらせんじゃねぇよ!」
二人はのやり取りからもう大丈夫だと胸を撫で下ろしたカイリは、ツカサにお礼を言った。
「ありがとうございます。ハジメ、最近タイキ君のこと避けてる節があったのでこれで仲良くやっていけそうです」
「いやいや~、ボクは特に何もやってないさ~。タイキ君だったかな?彼が決断できたのは彼の強さの証だからね。きっとボクが何もいずれはこうなってたさ」
「でもあなたの手を煩わせてしまったのは確かですし……。あまりこういうことにも慣れて無さそうでしたので……」
「あ~、やっぱりわかる?」
「はい、特にRPGがなんとかのところに関しては正直何いってるのかよくわからなくて……」
「……その君の記憶にGET!クリティカルをして消……」「完全ガードしますね」
「死守された!?」
ツカサの反応にカイリは笑った。
カイリはこの時、ヴァンガードをやってよかったと改めて思ったのであった。