「悪いな、カイリ。もういいぞ」
ハジメがそう合図を送ると、集中してカードを見ていたカイりは間の抜けたような声を出した。
「え?あぁ、ごめん。結構長かったからもうデッキの中ずっと見てた。シャッフルし直しとくね」
「おけおけ。よし、じゃあまず手札を五枚引いたところから始めるぞ」
「……で、シロウ君はどんな感じよ」
店長はハジメの後ろからそう囁いた。
「店長、本当にあのあと俺に任せっきりだもんな……」
ハジメがそうウジウジしていると店長は笑いながらハジメの背中を強く叩いた。
「なーに言ってんの!あんたを信用してるから安心して見てられたのよ。流石ウチのNo.2ね!」
「ぐうぇ!おだてたって何も出てこないっすよ……」
ハジメは落ち着いたところでシロウに目線を向けた。
「センスはかなりあるっすね。やり方聞いた段階である程度の利用法を考えてるあたりお兄さんに相当話を聞かされてるっぽい」
店長は嬉しそうにハジメの話を聞くと手を会わせた。
「いいわねー。あの銀髪君もそうだけどこうどんどん強い子が来てくれたらウチも安泰安泰。今はほとんどクリア君一辺倒だし……。しかもあの子あんまり大会とか参加しないし……」
「俺はっ!?さっきと話違うやないですかい……。えげつねぇっすわ……」
ハジメは横目で店長を見ながら恨めしそうに呟いた。
カイリは再び五枚引くと、シロウに申し訳なさそうに謝った。
「ごめんね、待たせちゃって」
「いえいえ!僕が説明してもらってたってこともありましたし」
シロウが慌てて手を降って否定するのを見てカイリはクスリと笑った。
「それじゃあ改めて、お互い五枚引いたところから行くよ。本当は手札を見る前にやるんだけど、初めてだからそのへんは気にせずにまずは先行後攻を決めるよ。基本的に先行後攻はじゃんけんで決めるんだけど、あくまで無作為に決めないといけないから勝ったほうが先行、負けたら後攻ってあらかじめ決められてるんだ。それじゃあ行くよ!」
「はい!」
「「じゃんけんポン!」」
カイリはグー、シロウはパーを出した。
「ありゃ、シロウ君が先行だね。次にお互いに今引いた手札の中から好きな枚数をデッキに戻すことが出来るんだ。戻したくないなら戻さなくてもいいんだけどね。それで戻したら、またデッキをシャッフルしてまた手札が五枚になるように引き直す」
「なるほど……。手札の質を上げるんですね」
「そうだね。ただしこれは一回しかできないから注意してね」
そう言うとカイリは自分の手札を三枚デッキに戻すと、軽くシャッフルしてデッキをシロウのほうへ置いた。
「これも本当は最初に五枚引いた時にもやらないといけないんだけど、基本的にシャッフルは無作為にやらないといけないんだ。だから自分でシャッフルした後に相手にシャッフルしてもらうのが普通なんだ。というわけでシロウ君も手札から好きなカードをデッキに戻してくれて構わないよ」
カイリに促され、シロウは手札を睨みながら唸った。
(とりあえずG0は戻したほうがいいよね……デッキに戻せばまたトリガーが発動するかもしれないし……。G1からG3も全部あるしこれ以上変えるとトリガーを引いちゃうかもしれないからこれでいいかな)
「僕は一枚戻します!」
シロウが手札から一枚をデッキに戻す。手札を見ていたハジメはそれを見て頷いた。
(ちゃんとわかってるじゃねぇか。思ってた通り、シロウはほぼ完璧にヴァンガードの本質に気づきつつあるな)
シロウとカイリはお互いのデッキを軽くシャッフルすると、相手に返し、再び五枚になるようにカードを引いた。
「マリガンから先行後攻まではやったみたいだな。それじゃ掛け声の後にヴァンガードを表替えすんだ。それがヴァンガードファイトの始まりを表す。何て言うかはわかるよな?」
「はい、お兄ちゃんがよく言ってるのを聞くので」
「それじゃあ行くよ!シロウ君!」
「はい!」
「「スタンドアップ!ヴァンガード」」
カイリはロゼンジ・メイガス、シロウはバトルライザーを表にした。シロウは表替えしたバトルライザーを見たあと、目線を手札に移し見ると不意に笑みを浮かべた。
「次はファイトを進めながら説明してくぞ。どのカードゲームでもそうだけどヴァンガードもそれぞれターンを交互にやりながら進めていくんだ。ファイターは定められた行動手順(フェイズ)でやらないといけない。まずはスタンドフェイズ。最初のターンは関係ないけど行動終了したユニットはレストしてるからそのユニットを再び行動出来る状態、スタンドするフェイズなんだ。レストとかの説明は後にして、次はドローフェイズ。まぁ普通に引くんだけのことだから特に説明することなしだな」
「なるほど……。とりあえずじゃあ引きますね」
シロウは一言断りを入れるとデッキからカードを一枚手札に加えた。
「ああ。次はライドフェイズ。ここではヴァンガードを手札のユニットに重ねることでその重ねたユニットをヴァンガードとして扱うことが出来るんだ。このことをライドっていうんだけど、このライド出来るユニットっていうのが……」
「それは知ってます!今のヴァンガードのグレードより一つ上のグレードにライド出来るんですよね」
突然のシロウの発言に臆したハジメだったがすぐに説明を続けた。
「あ、あぁ……、基本的にそうだな。だけど一応同じグレードのユニットにもライド出来るから、時と状況を考えてライドするカードを選ばないといけないな。ちなみにライドはライドフェイズに一回しかできないから気をつけてくれ」
「同じグレードにライドできるんですね……。それは知らなかったです……」
恥ずかしそうに言うシロウを見ながら、ハジメは苦笑いを浮かべた。
(多分お兄さんに勧められた時にライドのことを教えられたんだろうな……)
「と、とりあえずシロウ。ライドしようぜ……」
「あっ、はい!すいません」
顔を伏せていたシロウは慌てて自分の手札から一枚をヴァンガードに重ねた。
「じゃあ、タフボーイ(8000)にライド!」
「よし、ノヴァグラップラーがバトルライザーにライドした時、バトルライザーはスキルを発動することが出来るぜ」
「スキル?」
疑問系に同じ言葉を繰り返すシロウにハジメはバトルライザーをとって見せた。
「FVはライドした時にスキルを発動するのがほとんどなんだ。例えばこのバトルライザーはノヴァグラップラーにライドされた時にこのカードをリアガードにコールすることが出来るんだ」
「なるほど……じゃあバトルライザー(3000)をタフボーイの後ろにコールします」
「ライドフェイズの次はメインフェイズ。ここではユニットをコールしたり起動効果を使ったりすることが出来るんだけど、先行はアタック出来ないから何かスキルを使うとかじゃなきゃ何もせずにそのままエンドしたほうがいいかな」
「どうしてですか?」
「コールはメインフェイズに何回でも出来るからな。何かしらのスキルがなければわざわざ早めにコールすることにメリットはないし、相手に自分の手の内をあかすことになる。それによって相手は攻めやすくなるから俺はあまりオススメしないな」
「なるほど……。今の手札じゃ特に何も出来ないから僕のターンはこれで終わりです」
シロウは自分の手札を確認するとそう宣言した。カイリはそれを確認し、自分のデッキに手を添えた。
「それじゃあ俺のターン、ドロー!俺はバトルシスターめーぷる(6000)にライド!さらにオラクルシンクタンクにライドした時、ロゼンジ・メイガス(3000)のスキルでこのカードをヴァンガードの後列にコール!」
カイリはなれた手つきでカードを移動させる。
お互いが移動させたバトルライザーとロゼンジ・メイガスはトリガーを持つユニットであるため、このままではデッキにあるトリガーは普通より少ない割合となってしまうが、双方のユニットはブーストした時にパワーを自身のパワー3000にプラスでさらに3000ものブーストをしたのちにデッキに戻るスキルを持っている。したがって任意にデッキにトリガーを戻すことでトリガーの発動を高めることが出来る。
シロウは移動させたバトルライザーとロゼンジを交互に見ながらそのことを悟った。
(なるほど……同じタイプのトリガーユニット。でもバトルライザーがスタンドトリガーに対してカイリさんのロゼンジはヒールトリガー……。ダメージチェックでも発動出来るヒールのほうが戻すことに意味がありそうだなぁ……。スタンドトリガーの効果がよくわからないけどコールしてまでデッキに戻す必要はないかな……)
カイリがユニットをコールしないことを悟ったハジメはシロウに向けて口を開いた。
「メインフェイズは終わったみたいだな。後攻はアタックすることが出来るから次はバトルフェイズに入る。バトルフェイズは他のフェイズと違ってステップに分割して進行するんだけど、特に気にせず、まぁ流れを覚えて行けばいいと思うぜ。まずはスタートステップだけどアタックするかしないかをするステップだから気にしなくていいや。次はバトルステップ。ここでようやくどのユニットでどのユニットにアタックをするかを選べる。今回はお互い前列にヴァンガードしかいないから選択もくそもないけどな」
「それじゃあアタックするよ。ヴァンガードのめーぷるでヴァンガードにアタック!」
カイリがヴァンガードをレストさせ、アタックを宣言するとシロウは声を漏らした。
「あっ!なるほど、レストすることでアタックすることが出来るんですね!ということはバトルライザーのスタンドトリガーはアタックし終わったユニットをまたアタック出来るようにするんですね!」
テンションが上がったように声をあげるシロウにカイリとハジメは驚いた。
「あ、ああ。ただしスタンド出来るのはリアガードだけな。ヴァンガードがスタンドしたらまたドライブチェック出来ることに繋がるからだろうけど」
「ですよね……。それが出来たら手札が増えちゃいますもんね……」
(図星だったか……)
一気にテンションが下がったシロウを見てハジメはそう思った。
「バトルステップの次はガードステップだ。ここで初めてガーディアンサークルにユニットをコールすることが出来る」
「えっと、アタックがヒットするのはアタックしたほうのパワーがアタックされたパワー以上だったらでしたよね。タフボーイのパワーは8000でめーぷるのパワーは6000だから……」
するとカイリは思い出したように声を漏らした。
「あっ!ごめん。めーぷるはアタックした時に自分の手札が4枚以上あったらパワーが3000上がってめーぷるのパワーは9000なんだ……。アタックした時にスキルを言えばよかったね」
申し訳なさそうにカイリは言った。
(さっきアタックした時シロウに割ってはいられたからな……仕方ないっちゃあ仕方ない)
「なるほど……じゃあこのままだとアタックがヒットしてダメージ受けちゃうんですね。タフボーイは8000、めーぷるが9000だからこの場合5000でガード出来るってことでいいんですよね?」
「まぁ、そうだな。ただめーぷるはヴァンガードだからドライブチェックがあるんだ。もし5000でガードしたとしてトリガーが出た時にそのトリガーの効果がめーぷるに乗せられたらアタックがヒットするから気をつけてくれな」
「なるほど。じゃあ本気でガードしたいと思ったら10000でガードしないといけないんですね……」
シロウは自分の手札を確認するとそう残念そうに呟いた。
「そんな気ぃ落とすなよ。大体最初のターンは場の展開を優先したいからガードしないのは普通なんだぜ?」
そう励ますとシロウは勢いよくハジメの方を向いた。
「そうなんですか!それじゃあノーガードです!」
自信を持って宣言をするシロウを見てハジメはニヤリと笑った。
「おし!じゃあ次はドライブステップだ。ドライブステップはヴァンガードがアタックした時にのみ行われて、多分もうわかってると思うけどドライブチェックが出来るんだ。まぁ、アタックはヒットすることが確定してるけどな」
「いいかな……?じゃあドライブチェック!」
ハジメが説明を終えたのを確認するとカイリはデッキの上から一枚を捲る。
「ドリームイーター!ドロートリガーGET!一枚引いて一応パワーはヴァンガードに加えるね」
カイリはドリームイーターをトリガーゾーンに置くと一枚引き、ドリームイーターも手札に加えた。
「一発目で引くかよ……。まぁ出てくれた方がこちらとしても説明しやすいからいいけど……」
ハジメは呆れた顔をしながら言った。
「これがドロートリガー……。たしか一枚引いてパワーを5000加えることが出来るんですね」
「ああ。まぁ、今回は他にアタック出来るユニットがいないからパワーはほとんど無駄になるけどな。」
「さっき5000でガードしなくてよかった……」
ホッとするシロウにハジメは肩を叩いた。
「確かにガードは無駄にならなかったけど次のダメージステップでパワー14000のめーぷるのアタックがパワー8000のタフボーイにヒットしたことになる。タフボーイはヴァンガードだからこのヒットでダメージチェックが発生するぞ。クリティカルは1だからここでは一点のダメージを受ける」
ハジメはシロウのデッキトップを捲った。
「うぇ……。バトルライザー……」
渋い顔で捲ったバトルライザーをトリガーゾーンに置く。
「スタンドトリガーGET……ってことですよね……?」
心配そうに聞くシロウに苦笑いでハジメは返答した。
「ああ……。ただスタンドトリガーはクリティカルに近い部類のトリガーなんだ。これが発動すれば自分のリアガードを一枚スタンド出来るんだが、相手ターンにスタンドするメリットがあまりないんだ。一応、一部のカードの妨害が出来るからクリティカルよりはましだが……」
ハジメはトリガーゾーンのバトルライザーをダメージゾーンに置いた。
「相手の最後のアタックでトリガーが出た。つまりパワーを加えても仕方がないんだ。だからこのスタンドトリガーは完全に無駄になったことになる」
「なるほど……せっかくのトリガーが無駄になったということはそれだけ後のトリガーの発生率が下がるから痛いってことですね」
「発生率が下がったところでトリガーがなくなったってわけじゃないから特に気にしなくてもいいんだけどな……。こういうことはよくあるし。ただ初っぱなからだからな……うん、まぁ気にすんな」
((その言い方じゃ絶対に気になってしまうんですが……))
ハジメが何度も頷くのを見ながらカイリとシロウは同じことを思った。
「ダメージステップのあとはクローズステップ。ここでアタックしたユニットのアタックが終了するんだ。ちなみにめーぷるのバトル中上昇するパワーもここで効力がなくなる。バトル中になんちゃらって言う効果はこのステップでなくなるというのを覚えとけばいいかな?」
「なるほど、わかりました」
「おし、クローズステップの後はまだアタックしてないユニットをアタックすることでさっきまでの一連の流れをまたやるんだが、他にユニットがいないからこれでカイリはバトルフェイズを終了し、エンドフェイズに移行することになる。エンドフェイズは自分のターンの終わりの時に誘発するスキルを処理するフェイズでブーストしたバトルライザーやロゼンジもこのフェイズにデッキに戻る」
「でも、俺はブーストしてないから特に何もなくエンドするよ」
カイリは手をシロウに向けて指すとそう言った。
「一連の流れは説明したつもりだけど……わかったか?」
「そうですね……。なんとなくは……」
ぎこちなく返事をするシロウにハジメは眉間を摘んだ。
「ん~、まぁわからないことがあれば聞いてくれ。ルールとかスキルとかのことは教えるから。ただどこにアタックしたほうがいいとかは自分で考えてくれよな」
「すいません……。ありがとうございます。それじゃあ僕のターン行きます!ドロー!」
シロウはデッキから一枚引いた。今までは誘導されていた部分があるためここから自分の意思で選択していかなければいけない。
シロウにとって、ここからが初めてのヴァンガードファイトの始まりである。
まだ基本的なプレイングがわからないため、楽しくやるという気分にはなれないが、それでもシロウは思いきってお願いしてよかったと思っていた。
「僕は超電磁生命体ストームにライドします!」
「ルール説明は終わったみたいね」
一部始終を見ていた店長は、笑顔でハジメに近寄りながらそう話しかけた。
「店長、忙しかったら別にわざわざ見に来なくてもいいと思うんすよ……」
「大丈夫よ。ようやく一段落したから。というか来てほしくないの?」
「んな訳ないじゃないっすかー」
「ふーん、嫌なんだ」
「まじ気ぃ使います……」
ハジメは基本的に正直者であった。
シロウはライドしたあと、手札を見ながら黙った。
「あの、大丈夫ですかね……。このカードのこのマークってなんなんですかね?」
シロウはカードを指しながらハジメに聞いた。
「ハハッ、俺のストレスがマッハ……。あ、なんだっけ?あぁ、これか。これはカウンターブラスト。これはダメージゾーンの表になってるカードを裏返すことで下のスキルを発動出来るんだ。」
「なるほど……。じゃあバターリングミノタウルス(6000)を右側前列にコールします」
「気を付けろよ?カウンターブラストは基本、一度使ったら自然にまた表に戻ることはない。ただノヴァグラップラーはスキルでまた表に出来るけどな。このヴァンガードのストームとかそうだけど」
「使い回しが効くんですね。でも使うなら慎重にやったほうがいいですね……」
「だな。あとコスト的なものにソウルブラストっていうのもある。ソウルっていうのはヴァンガードの下に重なっているカードのことを言うんだが、まぁこのデッキにソウルを気にするカードはないから気にしなくてもいいけど」
「ありがとうございます。じゃあバトルフェイズに入ります。えっと、アタックをするにはカードを横にしてやるんでしたよね。バトルリングミノタウルスでヴァンガードにアタックします!あとアタックした時にカウンターブラスト!パワーを3000上げます」9000
ダメージを裏返すとシロウはアタックを宣言した。
カイリは特に考える仕草もせず、待っていたかのように素早く手札から一枚ガーディアンサークルに置いた。
「ドリームイーターでガード!」11000
「まぁ定石だわな……。しかし、やはりシロウも初心者の壁に当たっちまったか……」
「初心者の壁?」
「まぁ壁って言っても店長や俺みたいにすぐに気づくようなことなんすけどね。5000ラインの形成のことっすよ」
「あー、5000の差をつけてアタックすることね」
「そうっす。今のところガードの値は5000と10000しかないっすからね。今のバターリングのアタックもカウンターブラストを使ってもパワー6000が9000になるだけで、結局6000のめーぷるは5000でガード出来ちゃうっすからね」
「でもいいんじゃない?どうせストームで回復するしシロウ君ならすぐ気づくわよ」
「だといいんすけどね……」
ハジメはヴァンガードを添えているシロウに視線を向けた。
「次はヴァンガードのストームでヴァンガードにアタックです!」9000
シロウがアタックを宣言したが、カイリは何かを待っているように黙った。
「……あれ、ブーストしないのかな?」
「えっ、はい。そうですけどなんかおかしいですかね……?」
「ううん!全然おかしくはないよ。ごめんね……これはノーガードだよ」
不安そうに聞くシロウにカイリは慌てて否定した。
ハジメはそんなカイリに同情の視線を送る。
「いやぁ……カイリの気持ちもわからんでもない……」
「私としてはあれで正解だと思うけど?どうせブーストしてもカイリ君はガードしないと思うしむしろブーストしたらバトルライザーがデッキに戻っちゃうし」
「でも基本的に初心者の人って大体なんでもブーストしようとしないっすかね?最初のカイリもそんな感じだったから多分カイリもブーストしてくると思ってたんだと思うんすよね……」
「あー、確かにそうかもね。全くヴァンガードのことがわからないってわけじゃないからちょっとずつ理解してきたんだとしたら楽しいことになりそうね!」
店長はワクワクしたように呟いた。
「何が楽しくなりそうなのか俺にはわからないっすわ……。でも少なくとも、運はシロウに向きつつあるみたいっすね」
ハジメはドライブチェックを捲るシロウを見ながらそう言った。
「ドライブチェック行きます!……シャイニング・レディ……。これは……クリティカルトリガーGETです!クリティカルをヴァンガードに付与します!」
シロウは目を見開くと声を上げて宣言した。
「うわぁ、いきなりやるね……。ダメージチェック。一枚目、ダークキャット。二枚目、ビクトリー・メーカー!ドロートリガーGETだね。一枚引いて意味ないけど一応ヴァンガードにパワーを加えるよ」
カイリは一枚引き、自分のヴァンガードに指を添えるとシロウは慌てて自分のヴァンガードに指を添えた。
「あ!トリガーのパワーはヴァンガードに加えたということで……」
「大丈夫だよ、お互いパワーは無駄になっちゃってるしね」
カイリは察したように柔らかく笑いながらそう言った。
「すいません……。あ、あとこのストームのスキルって使えるんですかね?」
シロウの質問にハジメはいち早く答えた。
「ああ、まさにこのタイミングで問題ないぜ。ストームのアタックがヴァンガードに当たった時、ダメージを一枚表替えすことが出来る」
ハジメは説明するとシロウの代わりに裏返しのダメージを表にした。
「ありがとうございます。じゃあこれで僕のターンは終了です」
オラクル ノヴァ
手札 6 5
ダメージ表 2 1
ダメージ裏 0 0
オラクル
前列
/ジェミニ/
後列
/ロゼンジ/
ノヴァ
前列
/ストーム/バターリング
後列
/バトルライザー/