先導者としての在り方[上]   作:イミテーター

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博学者

「なぁなぁ!あんたさ……」

 

ファイターはそれぞれ呼ばれた順番に指定の席に座っていく中、先に呼ばれた者は既にファイトの準備をしていた。

 

そんな中、吉田君の抽選の結果ミヤコと対戦することになったノブヒロは、向かい側の席で自分のデッキをシャッフルしているミヤコに声をかける。

 

「何?」

 

馴れ馴れしいノブヒロに特に関心を示さないミヤコは、そちらへ顔を向けることなくそう言うと、ノブヒロはニヤニヤ笑いながら自分がシャッフルしていたミヤコのデッキを本人に返した。。

 

「あんた、第一回ヴァンガードチャンピオンシップに出てただろ?俺、知ってんだぜ?」

「……あたり。でも、だから何?別にあんたがあたしの事を知ってるからといって、今からするファイトに関係ないはずよ」

 

素っ気ないミヤコの対応とともに渡された自分のデッキを手に取ったノブヒロは、少しも表情を変えないままデッキからカードを二枚引いた。

 

「第一回大会、決勝トーナメント予選リーグにて敗退……使用クラン……オラクル……敗退時の対戦相手はリセ……」

「っ!?」

 

静かに呟くノブヒロの言葉に、マリガンで手札を補充する手を止めたミヤコは思わず目を見開く。

 

それもそのはず、彼が言っているのは紛れもなく当時出場していた自分に関する情報。見ず知らずノブヒロがそんなことを知っているはすがないのだ。

 

「どうだ?これでもう関係ないとは言えないだろ?」

「当たり……あなた……どこであたしのことを……」

「簡単なことよ。俺もあの時の大会に出てたからな。目をつけたファイターの情報はこんなかに入ってるわけだ」

 

ノブヒロは自分の頭を指差しながらそう言った。

 

「あん時はどいつもこいつもロイパラしか使ってなかったからな。あんたみたいな人とは一度お手合わせしてみたいと思ってたんだよ」

 

ニカッと笑いながら言うノブヒロ。そんな彼に、ミヤコは「フッ」と笑った後、右手をFVの上に置いた。

 

「なろほどね、あなたも相当な手練れというのはわかったわ。じゃあその実力、見せてもらいましょうか?」

「おうともよ!」

 

ミヤコのその挑発的な発言に、ノブヒロもまた右手をFVの上に置いた。

 

「スタンドアップ、ヴァンガード」

「スタンドアップ・The・ヴァンガード」

 

「ラーク・ピジョン」5000

「イニグマン・フロー」5000

 

お互いのヴァンガードが表をあげ、二人は相手を品定めするかのようにそのヴァンガードに視線を向けた。

 

「ほー、ペイルムーンとはまた粋なクランを使ってるんだな。これは面白いファイトになりそうだ!」

「お互い様じゃない?ディメンションポリスもまた登場したばかりの新参クラン(当時は)。あなたがどんな風にそのクランを使うのか、まずはお手並み拝見ね」

「おう!バッチリ見せてやるよ!俺のこの不滅なる無限の正義《レジェンド・オブ・インフィニティ・ジャスティス》の力をな!」

「……いやに長い名前ね……」

 

テンションMAXのまま先行であるノブヒロはカードを一枚引く。

 

「ライド・ザ・ヴァンガード!イニグマン・リプル(8000)!この瞬間、フローのスキル発動!デッキからイニグマン・ウェーブを手札に加える!これで俺のターンは終了だぜ!」

 

イニグマン系列のスキルはもはや説明不要フルバウサイクル。その為、今ライドしたリプルのパワーは8000となり、次のライド先であるウェーブはライドすれば10000、そしてヴァンガードの時パワーが14000の時にアタックがヒットすればドローするスキルを持っている。

 

このウェーブのスキルにもあるヴァンガード時にパワーが一定以上の時に特殊な能力を手に入れるのがディメンションポリスのクラン特性。一時的なパワー上昇とその時々の強力なスキルによる爆発力は他のクランにはない特色と言えよう。

 

もちろん、そのことをミヤコも熟知しており、その欠点もわかっている。

 

「あたしのターン、パープル・トラピージスト(6000)にライド。その後ろにスカル・ジャグラー、SCにニトロ・ジャグラー。スカル・ジャグラーのブースト、パープル・トラピージストでVにアタック」13000

「そりゃあもちろんノーガード」

「ドライブチェック、レインボーマジシャン。ドロートリガーGET。一枚引いてとりあえずパワーはVに」

 

開幕からのドロートリガー。序盤での手札補助はその後の展開を大きく左右する。

しかし、そんなことはよくあること。ノブヒロは怯むことなくダメージを受けた。

 

「ダメージトリガーチェック!アーミー・ペンギン!ドロートリガーGETだ!こっちも一枚引かせてもらうぜ!」

「っ……あたしのターンは終了……元気なのもいいけど、もう少し落ち着いてやれないものかしら?」

 

一言一言に力がこもったノブヒロの反応に、ミヤコは参ったようにそう言った。

 

「ん、ああ。悪い悪い、あんたみたいなファイターとやるとやっぱり楽しいもんだからよー。どうにも力が入っちまうんだ。これから気をつけるから簡便な。ってことで、俺のスタンド&ドロー!」

「どこをどう気をつけてるのかしら……」

 

まったく態度変える気配を見せないノブヒロに頭を悩ますミヤコ。しかし、本人はそんなことを少しも気にかけることなく手札からカードを取り出した。

 

「ライド・ザ・ヴァンガード!イニグマン・ウェーブ(10000)!んでもって右上にリプル(6000)をコールしてスキル発動!手札のミラクル・ビューティーを捨て、デッキからイニグマン・ストームを手札に加えてバトルに入るぜ!」

 

/ウェーブ/リプル

//

 

「まずはリプルでVにアタック!」6000

(Rからのアタック……まだトリガーが揃っていないディメンションポリスじゃこれだけでトリガーの配分を絞ることは無理そうね)

「レインボーマジシャンでガード」11000

 

ミヤコはチラっとノブヒロのデッキを見た後そうカードをきる。

 

「ほー、無難な立ち回り……悪くはないが、こいつはどうだ?ウェーブでVにアタックだ!」10000

「もちろんここも無難にノーガード。ここで焦る必要はないものね」

 

涼しそうな表情でそう宣言。要求値はそこまで高くはないが、最初にガードを切った為に手札の温存を狙ったからか、はたまた手札にちょうどいいガードがなかったからかは分からないが、ノブヒロは依然として表情を変えずにドライブチェックを行う。

 

「ドライブチェック!コスモ・ビーク、トリガーなしだ」

「ダメージチェック、ダークメタル・バイコーン。こちらもトリガーなし」

「これで俺のターンはこれで終了だ!さすがにお互いなかなか戦況が動かないな。嵐の前の静けさと言ったところか?」

 

ディメポリ

手札7

ダメージ表1

 

「あなたは充分騒がしいとあたしは思うけどね。あたしのスタンド&ドロー。バーキング・ケルベロスにライド。右下にトラピージスト(6000)をコールしてスキル発動。スカルをソウルに入れてそのままソウルからスカル(7000)を右上にスペリオルコール。更にスキルでSC(スカル・ジャグラー)。そして今空いたV裏にミッドナイト・バニー(7000)コールしてをバトルに入るわ」

 

/バーキング/スカル

/バニー/トラピ

 

必要な場を作ったところで、ミヤコは先ほど手札に加えたストームを考慮に入れたうえで、どうアタックするかの決断を下した。

 

「トラピージストのブースト、スカルでVにアタック」13000

(リプルにアタックしないのはディメポリのG2のパワーの低さを狙って奇形ラインを形成させる狙いだろうが、俺のストームとコスモビークを見てなお攻め手は緩めないか。面白い!)「ペンギンでガード!」15000

「バニーのブースト、バーキングでVにアタック」17000

「それはノーガードだ」

 

手札の状況と見比べてそうノブヒロは宣言する。

 

ノブヒロ自身も、このミヤコのアタックからどのような戦法が繰り出されるかは予想出来ている。このVのアタックがヒットすることでどれだけ痛手を負うのかということも。

 

しかし、だからと言って最初のアタックを通してダメージトリガーに期待するにはあまりにもリスクが高過ぎる。

 

「人のことを言っておいて、あなたも充分無難な立ち回りじゃない?」

 

見た目に反して、冷静に対応するノブヒロを見て鼻で笑いながらミヤコはそう言った。

 

それに対し、ノブヒロは口元を不自然なまでに歪ませながら笑い、指に挟んだカードをミヤコに向けながら言った。

 

「あったりまえだろ?全力でやってこその真剣勝負だ。俺が楽しめなかったらあんたのせいだぜ?」

 

まるで何かのスイッチが入ったようなノブヒロの発言は、同じくミヤコの中の何かを動かすきっかけとなる。

 

「……いいわ。なら、驚いて腰を抜かさないよう気を付けることね。ドライブチェック、ニトロ・ジャグラー。トリガーなし。そして、アタックがヒットした瞬間、バニーのCB」

 

ノブヒロがダメージゾーンにグローリーメーカーを置いたのを確認したミヤコはそう言うと、ダメージを一枚裏返し、V裏のバニーをソウルに入れる。

 

「ソウルより、トラピージスト左下にスペリオルコール。さらにトラピージストのスキルで右のトラピージストをソウルへ、ソウルよりニトロ(9000)をスペリオルコール。そしてニトルのスキルでSC(マッドキャップ・マリオネット)」

 

CB1でラインを1つ形成、さらにソウルを一枚増やしたミヤコ。ペイルムーンのソウル操作を巧みに操る彼女の動きであるが、当然ノブヒロもこの事態は予測している。

 

「さすがのペイルムーンの曲芸は飽きさせないな。だが、こんなもんじゃ俺は満足させるには足りないぜ!」

「当たり。これはまだ序章も序章。プロローグで満足されたらこちらが困るものフィナーレまで付き合ってもらうわよ。トラピージストのブースト、ニトロでVにアタック」15000

「ガード!コスモファング!」20000

 

ペイル

手札4

ダメージ表0

ダメージ裏1

 

徐々に二人を取り巻く空気が熱くなる。

 

それは、開始から二人のファイトを見ていた店長と吉田君にも感じ取ることができた。

 

「どうしたのかしら……。二人ともなんかさっきと雰囲気が変わったみたい……」

「序盤は恐らく二人とも相手の様子を伺っていたのでしょう。そしてその均衡は今しがた打ち砕かれた。ここからが本番ということでしょう」

 

ターンはミヤコからノブヒロへと移る。そしてこのターンからノブヒロはG3にライドすることが可能となる。

 

「ノブさんは前のターンにストームとコスモビークを手に入れてます。ストームには自身のパワーを+4000上がることでクリティカル+1するスキルを持っており、コスモビークはCB2でVのパワーを+4000上げることが出来ます。そして彼のダメージは丁度2枚。いつでも発動することが出来る」

「でもそれは当然あのミヤコって子も知ってるんでしょう?」

「はい。彼女もきっとこのターンで彼がしかけてくることはわかっていると思います。それを防ぐ術を持っているのか、それともあえてその高打点を身に受ける用意が出来ているのか。それは、このターンが終わる頃にはっきりするでしょう」

 

吉田君がそう言い終えた後、前のツカサとショウのファイトとは違った違和感を覚えた店長は視線を二人のファイトに戻した。

 

「勇猛を振るえ、無敵の超人!ライド・ザ・ヴァンガード!イニグマン・ストーム!(11000)」

 

G3にライドしたノブヒロはここで一呼吸入れる。何の策もなしにあの序盤から速攻をかけきたとは彼も毛頭思っていない。

 

まだミヤコのダメージは一点。ここでクリティカルの上がったストームのアタックを受けてもダメージは3点で致命傷とは言えない。もし彼女が完全ガードを持っていたとしてもノーガードしてくるということも考えられる。なにより……、

 

(このファイトから漂うこの独特な感覚……俺には覚えがあるが、これが本物か偽物かはわからない。むずい選択だが……)

 

「へへっ」

 

おもむろにノブヒロは笑い声をあげる。その突然の行動にミヤコは目を鋭くした。

 

「引くか押すかの選択。もしどちらが正解かわからないなら俺の答えは当然押して通る!何よりヒーローがせっかく出てきて必殺技をお預けなんてできるわけないよな!なぁ、ストーム!」

 

手札からカードを勢いよく場に展開する。まるで初めから決めていたかのような迷いを感じない動きだ。

 

「リプルを後列に移動して、空いた右上にコスモ・ビーク(8000)をコール!そしてCB!Vのストームのパワー+4000!左下にコスモ・ロアー(6000)をコール!そしてロアーをレストしてスキル発動!ビークのパワーを+2000!そして左上にツイン・オーダー(10000)をコールしてバトルに入るぜ!」

 

オーダー/ストーム/ビーク

ロアー//リプル

 

「さすがはノブさん、抜け目ないですね」

 

横で吉田君が感心していると、首を傾げながら店長がその発言を指摘する。

 

「そう?わざわざスキルを使わなくてもロアーでブーストすれば16000にはなるし、そこまで要求値は変わらないと思うけど?」

「たしかにレストさせないほうが総合的なパワーは上です。しかし、レストさせるのとさせないのとでは前列の単体パワーが大きく違います。そしてそれは、スタンドトリガーの入っているデッキにおいて大きな意味を持っていきます」

「あー、そっか。ディメンションポリスってまだトリガーが足りてない(当時は)からどうしてもスタンドトリガーが入っちゃうのね」

「はい。セオリー通りに5000要求しかできないアタックをするなら、8000しかないビークでアタックするより単体でVにアタック出来るオーダーのほうがいいと言うわけです」

 

手札にある全戦力を解放して並べたノブヒロの場。少なからず奇形ラインの形成を期待していたミヤコにとって、ロアーによるパワー補助はわかっていても称賛に価するものだ。

 

「ずいぶん思い切りがいいようね」

「守って後悔するくらいなら攻めて後悔したほうがマシだ。そうだろ?」

「……そうね。あたしが答え合わせするならその論理は当たり。まぁ、あたしはどう来られても関係ないけど」

「そうかい、それじゃあとりあえず、俺流に行かせてもらうぜ!まずはオーダーでニトロにアタック!」10000

「ノーガード。ニトロは退却するわ」

「だろうな、さっきドライブチェックで引いてることだし。じゃあこいつはどうだ?イニグマン・ストームでVにアタック!パワーが15000だからさらにクリティカル+1だ!」15000

 

スキルによってロアーはレストしている為、ブーストのないアタックではあるが、対するミヤコのVはパワー10000のバーキング。素のパワーでも十分な火力があった。

 

「と言っても、どうせガードしないんだろ?」

 

まるで誘うようにノブヒロはそう呟く。ミヤコからすれば、このアタックの対処は前のターンで既に決まっているだろうが、その対応の仕方次第で見えなかった物が見えてくることもある。

 

それを聞いた当の本人であるミヤコは、静かに目を閉じると、ゆっくり口を開いた。

 

「当たり。たしかに食らえばそれなりの痛手になりかもしれないけど、あなたもあたしのアタックを通してくれたことに免じて、あたしもここはノーガードしてあげるわ」

 

まるでわざとガードしないかのような口ぶりではあるが、どんな策があろうとダメージはダメージ。自分に有利になるのに違いはない。

 

「ならお言葉に甘えさせてもらって……ツインドライブ!!アイン、ガイド・ドルフィン!GET、スタンドトリガー!オーダーをスタンドさせ、パワーはビークに!ツヴァイ、コマンダー・ローレル!」

「ダメージチェック。一枚目、ミッドナイト・バニー。二枚目、スカイハイ・ウォーカー。スタンドトリガーGET。トラピージストをスタンドさせ、パワーはVに」15000

 

お互いスタンドトリガーが発動し、アタック回数を増やしたノブヒロであるが、スタンドしたオーダーのパワーは10000。Vにアタックすることは出来ない。

 

「さすがに二回もチェックが入るとなれば一枚は出るよな。予定通りだ」

 

ニヤリと笑み浮かべそう言うと、ノブヒロはトリガーを手札に加え、オーダーに手を添えた。

 

「オーダーでスカルにアタック!」10000

「ノーガード、スカルは退却」

「次だ。リプルのブースト、ビークでVにアタック!これが入るとまだ4点だが、俺からすれば射程距離に入っちまうぜ?」21000

「それは困るわね。ダイナマイト・ジャグラーでガード」25000

「さすがにこれ以上甘えさせてもらえない、か。これで俺のターンは終了だ」

 

ディメポリ

手札4

ダメージ表0

ダメージ裏2

 

「これでノブさんはミヤコさんにかなりの負担かけることが出来ましたが、手の内のほとんどを晒してしまった。ここからの展開を考えると、ノブさんはかなり厳しい立場に立たされるかもしれませんね」

 

吉田君はここまでの戦況を考察するかのように呟くと、店長も二人の場を見ながら口を開いた。

 

「たしかにそうかもしれないけど、ノブ君のVのストームのパワーは11000。Rを削っていくことは出来るけど、比較的パワー不足のペイルムーンじゃあ少しやりずらいんじゃないかしら?」

「そうですね。しかし、ペイルムーンの真骨頂をヒット時スキルによる圧力です。無理にVへアタックせずともRで戦力を削り、戦況を有利にするのに長けたクランです。それに対してどう対処するかが、ノブさんへの課題でしょう」

 

お互いがG3になるこのミヤコのターン。ダメージはまだまだ少なく、戦況がひっくり返ってもおかしくない現状である。

 

「あたしのスタンド&ドロー。宵闇の奇術師 ロベール(10000)にライド。そしてロベールにスキル、SC(冥界の催眠術師)してデッキトップ確認。このカードはデッキボトムに。さらに……」「なぁ……」

 

新たにユニットを展開しようとするミヤコを遮り、ノブヒロは問いかける。

 

「何かしら?」

「そろそろ教えてくれてもいいんじゃねぇか?別に減るもんでもないだろ?」

「なんのことかしら?あたしがあなたに教えてあげたいことなんて今からコールするユニットくらいのものだけど」

 

惚けたように今からコールするカードを見ながらミヤコは呟く。すると、ノブヒロは失笑しながらミヤコを睨めつける。

 

「やっとわかったんだよ、この独特の感覚の真実が……通常基準では測りきれない異端の適合。あんた、規格外適合者だろ?」

 

聞きなれぬ単語を口にするノブヒロ。もちろん聞いていた吉田君や店長は、そのノブヒロの突然の行動に困惑を隠せずにいた。

 

「規格外適合者……?一体何のこと……?」

「……噂で聞いたことがあります。ファイトを決する三大要素、デッキ構築・プレイング・運。これらの総数が高い者が勝利を得ることが出来るヴァンガードの中でもう一つ、ファイトを左右する第四の領域を操るファイター……規格外適合者……。たしかピオネールの他の三人もこれに含まれていたような……」

 

吉田君の言葉はそこまでで途切れた。いや、というよりかき消されたというほうが正しいのかもしれない。

 

「フフフ……あーはっはっは!」

 

今までもの静かな佇まいを醸していたミヤコの突然の高笑い。彼女のイメージから考えられないその光景に圧倒される吉田君と店長とは別に、ノブヒロも不敵に笑いながらそれ見守る。

 

「当たり、こんなに速く気付いたのはあなたが初めてよ。そもそもその単語を知ってるファイターだってそんなにいないものよ。……いいわ、特別に教えてあげる」

 

そう言うと、ミヤコは先ほどコールしようとしていたニトロ・ジャグラーを右上にコールした。そして、そのスキルでデッキからカードを一枚ソウルに入れた。そのクリムゾン・ビーストテイマーを。

 

「あたしの能力は“姿なき不発弾頭(ギュゲースクラスター)”。あたしがするSCに不利益となるトリガーは存在しない。これは決定事項よ」


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