先導者としての在り方[上]   作:イミテーター

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波乱の幕開け

『僕は証明がしたいのかもね。この世に無駄なカードなんて存在しないということを。認めさせたいんだ、あらゆるユニットにはそのユニットにしかない役割があるということを……』

 

カイリの頭には先ほどのショウの言葉がグルグル回っていた。

 

初めてショウの言葉を聞いた時、カイリは一種の感動を覚える。

 

普通のファイターではただの戯言にしか聞こえないこの言葉を、ショウというファイターが口にするだけで皆を納得させるだけの効力を発揮したことに。

 

それは何故か。

誰もが感じとることが出来たからだ、彼がこういうファイターであることを。教えられたのだ、ファイトの中でその言葉の意味を。

 

そしてカイリはその持ち前の感受性の高さでより深くまで足を踏み入れる。そこで得られたのはショウの強さの秘密。

 

それは誰よりも普遍に、誰よりも異常であろうとする信念。ひたすらに一つのことを貫くという心だ。

 

そしてそれはクリアやツカサにも通じるものがあった。ファイタードームでの一件がそれを顕著に表れていたといえるだろう。

 

自分のプレイングについて、カイリは周りの人間からは非を受けることはなかったが、それでもカイリの勝率は低迷していた。

 

カイリは一度自分のデッキを、パーフェクトライザーを見つめる。

ショウの強さを踏まえ、今自分には何があるのかを確かめるために。

 

しかし、答えはモヤモヤして一向に出る気配はない。

 

たった一度だけ、その片鱗が見えた対コウ戦はカイリ自身がそれを思い出すことを拒絶していたため、勘定には入らない。

 

一体自分は何を糧にヴァンガードをしているのか……。それが分からない限り、自分はこれ以上強くなることは出来ないのかもしれない。

 

そう不安に考えている最中、ハジメがカイリの肩を叩いた。

 

「何ボーッとしてるんだよ?始まるぞ」

「始まる……って何が?」

 

話の見えていないカイリは苦笑いを浮かべながらそう言うと、ハジメは呆れた様子で呟いた。

 

「師匠のファイトが凄かったのは認めるが、俺達が何しに来たかを忘れたら駄目だろ……。大会の説明が始まるんだよ。ちゃんと聞いとかないと不戦敗になるぞ?俺も遅れたくないからもう先に行ってるからな」

「それは不味い……。すぐ行くよ!」

 

カイリは慌てて自分のデッキをケースにしまうと、ハジメを追いファイトスペースの奥へと入っていくカイリ。

 

ざわつくファイトスペースには既に多くのファイターが神妙な面持ちで佇んでおり、大会開始の合図を今か今かと待っていた。

 

カイリとハジメがタイキ達に合流したのと同時に、大会の進行の準備を終えた吉田君が手を挙げ、その場のファイター達の注目を自分に向けさせた。

 

「えー、では今から第三回ヴァンガードチャンピオンシップ ショップ予選を始めます!」

 

開始の音頭を取る吉田君の声。この声に今までざわついていた空間が一気に静寂に支配される。そんな中、吉田君の声に大会に出場することへの実感を持ち始めたカイリは緊張を隠せないでいた。

 

ここにいるのは皆ヴァンガードの実力に自信を持ったファイター達ばかり。始めたばかりの自分がどれだけ通用するのか。不安は募るばかりであった。

 

(いけないいけない……。こんなやる前から低姿勢じゃあ勝てるものも勝てない……!ハジメを見習って澄ました態度を……)

 

そう思いながらハジメを見ると、汗をダラダラに垂らしながら強張った表情を浮かべる親友の姿があった。

 

(そっか、そういえばハジメも大会に出るのは初めてって言ってたっけ。にしてもそれは緊張し過ぎだと思うな)

ガチガチに緊張しているハジメを見て、クスッと笑うカイリ。心なしか、緊張が和らいだところで吉田君の話に耳を傾ける。

 

「では今から大会の注意点を説明していきます。使用デッキについてはファイターズルールにのっとり、ばーくがるのFVでの使用を禁止とします。その他混クラン、ファイト毎にデッキの変更など制限は特にありません」

 

「続いて、当店における地区大会への出場枠ですが、今回は三枠設けております。この枠を競う対戦方式として、まずはこれを使います」

 

吉田君はそう言うと、あらかじめ用意していたくじ引きの入っていそうな穴の空いた箱を取り出した。

 

「この中に皆さんの名前が書かれた紙を入れます。そこから俺が二枚引き、出た同士でファイトを行っていただき、そこで二回勝った者から決勝トーナメントへと登り進む方式をとらせていただきます。ちなみに相手が被ってしまった場合、やったことのない相手と当たるまでくじをひくことになります」

 

「決勝トーナメントの枠は12名で、人数が揃った段階でそれまで二勝出来なかった者は敗退という形になります。ですので一つ助言を述べると、ただ勝つだけでなく、素早い運用で正確なプレイが要求されます。それらを踏まえたファイトを皆さん心がけてください」

 

「一度のファイトの制限時間は30分です。それを越えてしまった場合、両者敗北としますのでお気をつけください。決勝トーナメントでは時間の短縮の為、上位三名が決まった時点で大会は終了となりますのでご了承ください。説明は以上となりますが、何か質問はありますか?」

 

一通り話終え手に持っていた資料の紙を下ろし、吉田君は問いかける。

 

すると、カイリの左手の方にピンッと真っ直ぐに手を伸ばすツカサの姿があった。

 

「つまり逆に言えばあれだよね。一回戦目は皆0勝から始まるわけだからそこまで急がなくていいわけだね」

「そうですね。早い者勝ちとは言いましたが、一回戦・二回戦とわける都合上、皆さんのファイトが終わるまで次のファイトを始めることは出来ませんからね。しかし、時間がかかりすぎてしまうと両者負けとカウントさせていただきますのでお気をつけください」

「大丈夫大丈夫~。じゃっ、さっさと始めましょうよ~」

 

ツカサは待ちきれない思いをさらけ出しながらそう急かした。ツカサだけではない。おそらくここにいるファイターは誰もが早くファイトをしたいと考えているだろう。

 

吉田君もそれを察したように手元の紙の束を手に取り、ファイター達に呼び掛けた。

 

「それでは今からエントリーシートを渡しますので、名前を呼びましたらこちらに来てください。エントリーシートが渡りましたらそこに自分のハンドルネームを書いていただき、またこちらへ返却をお願いします。そこに書かれたハンドルネームがこれから大会に進む上でのあなたの名前となりますので、忘れないような名前をご記入してください」

 

吉田君は紙の束を一枚ずつ確認しながら名前を読んで行く。おそらく名前を書いた順に呼んでいるのだろう、誰よりも早くショップに来ていたタイキの名が最初に呼ばれた。

 

「うっしゃ!先に行ってくるぜ!」

「うん。ということは俺達は最後の方に来たから呼ばれるのも最後の方になるのかな?」

「だろうな。まぁ、始めるのは同時なんだから気長に待とうぜ。そういえばカイリはハンドルネームをなんて名前にするか決めてあるのか?」

「うん、決まってるよ。ハジメは?」

「俺は普段から愛用のやつがあるからな。しかし、さすがに緊張するわ……。シロウを見習いたいぜ」

 

ハジメは澄んだ顔をするシロウを見ながらそう言った。

 

「僕は勝てるかどうかより全力を尽くすだけですからね。こうやってただ強い人とやれるだけで満足ですよ。あっ、じゃあ僕も行ってきますね」

 

自分の名前が呼ばれたシロウは、そう一言断りを入れると吉田君の方へ向かった。

 

「ただ全力を出すだけか……。それが正しい考え方なんだろうけど、そう簡単に割り切れないよな」

 

シロウの後ろ姿を眺めながら参ったように頭を抱えるハジメ。そんなハジメを苦笑いで見ながらカイリは相槌を打った。

 

「そうだね。でも、もしかしたらこの緊張は力を出しきる以上に上を目指すことを意識し過ぎてるからかもしれないよ?」

「上を目指すことを?そんなの誰だってそうじゃないのか?」

「たしかにそうだけど、他の人達と違って俺達はクリアさん達の力をよく知ってる。俺達はそんな強いファイターがいる中からたった3つしかない地区大会への切符を手に入れないといけないんだ。プレッシャーを感じないほうがおかしいよ」

 

カイリは吉田君から紙を受け取るシロウに視線を向ける。彼の表情はカイリやハジメと違い、柔和な顔を浮かべていた。

 

「でもシロウ君には地区大会への意識は全くない。ただひたすらに、目の前のことに集中している。だから別に気にしなくてもいいんじゃないかな。俺達には俺達のシロウ君にはシロウの戦い方があるんだから」

 

核心をつくようなカイリの言葉にハジメは目を丸くした。

 

「成長してるんだな……」

「えっ、何が?」

 

ハジメはカイリの顔を見ると、まるで昔を懐かしむような穏やかな表情で返事をする。

 

「前はいっつも人の機嫌ばかり伺って、少しでも機嫌を損ねたら全力でそれを取り持とうとしてたカイリが、今じゃあ人の考えを解釈してそれを自分の糧にしてる。タイキも自分のファイトスタイルを見つめ直して様になるようになってるし、シロウに言わずもがなだ。みんな、なんだかんだ言って成長してるんだなって思ってさ」

 

慣れない事を言うハジメにカイリはクスッと笑った。

 

「それはハジメも同じだよ。ツカサさんやショウさん、色んな人のファイトを体験してそれをちゃんと吸収してる。俺は今のハジメならあの人達にも負けないって信じてるよ」

 

お互いを激励するカイリとハジメ。すると二人はお互いの顔を見合うとニヤリと笑った。

 

「勝とうぜカイリ!一筋縄じゃいかない山だが、きっと登るための道はあるはずだ。地区大会の切符をもぎ取って、俺達でアネモネに旋風を巻き起こしてやろうぜ!」

 

拳をつきだしながら初めの緊張を振り払うように力強い声でハジメは言った。カイリも同じように拳をつきだした。

 

「もちろんさ!」

 

吉田君は次々と名前を読み上げ、最後のショウから紙を受け取ると、他の紙と同じように折り曲げ、くじ引きの箱の中に入れた。

 

「これで全員ですね。では今から紙を引き、ハンドルネームのほうを読み上げていきます。呼ばれましたらまた紙を渡しますので、受け取ったら指定の席に座り開始の合図が出るまで待機していてください」

 

「さて」と説明を終えた吉田君は持っていた箱の中身を混ぜるように上下に振った。

 

「それではいきましょう。最初のファイターは……」

 

箱の中に手を突っ込む。見ていたファイターは頭の中で自分のハンドルネームを唱えながら吉田君を見据える。

 

「QMAさんです!」

「うおぉい!?」

 

吉田君が名前を読み上げると、今しがた紙を渡したショウが足を挫きながら声を上げた。

 

「早速僕ですか!ちょっと吉田さん、箱の中ちゃんとバラけてないんじゃないですかい?」

「たまたまですよ」

 

体勢を立て直し再び吉田君に走りよるとショウは疑り深そうに箱を凝視した。

 

「QMA……。どういう意味なの?」

 

シロウは首を傾げながらそう言うと、ショウは返答に困りながら冷や汗をかいた。

 

「あー、多分分かる人には分かる……とだけ言っておこう」

 

苦笑いを浮かべながら変に誤魔化すショウ。その傍ら、意味を知っていたかのように「へぇ」と呟きながら感心したようにハジメは頷いた。

 

「丸ごとそのままってわけじゃないんすね。そのままじゃ流石に不味いか……?しかし初っぱなから師匠となると、誰が相手になるか楽しみっすね」

「そうですね。先ほど見事なファイトを見せてくれたQMAさんの対戦相手が誰になるのか。次にいきましょう」

 

最初のファイトで完全にマークされたショウ。その対戦相手が誰になるか、箱に手を入れた吉田君に注目が集まる。

 

「……これは……」

 

吉田君は取り出した紙を見た途端、口が止まった。

 

「QMAさんの対戦相手はクリスさんです!」

「クリスさんね、一体どこの猛者が……」

 

誰も聞き覚えのない“クリス”という名に、その場にいたファイターは誰なのかを確認するために辺りを見渡した。

 

「まさか……こんなに早く当たってしまうとは……。運命の神様は随分とせっかちな性格みたいだ」

 

一人の青年が足を一歩踏み出す。その口振りから、彼がその“クリス”であるということは火を見るよりも明らかであった。

 

「これはこれは……。とびっきりの猛者が相手になってしまいましたな……」

 

ショウはそう言いながら目の前の対戦相手を見つめた。

 

銀色の髪と人を馬鹿にしたようなニヤニヤ笑い。自分と同じファイトスタイルを持つ数少ないファイター

 

新田ツカサ

 

誰よりも楽しみにしていた彼とのファイトであるが、これ程早く実現してしまったことに逆に戸惑いを感じていた。

 

「参ったなぁ。僕は基本的に好きなものは最後に残しておきたいタイプなんだよね。唐揚げ定食の唐揚げとか」

「おかずはご飯と一緒に食べる物って知りません?でもボクはこれで良かったかな~って思ってるんだ。変に焦らされるよりは……ね」

「それは言えてるなぁ。まっ、楽しもうじゃないか。この機会を与えてくれた神様をアッと驚かせるようなファイトが出来るようにさ」

 

二人の奇術師は言葉を交わしながら終始笑みを浮かべる。相手をどのようにして誑かそうか。そんな奇妙な気迫が感じられた。

 

指定の席に向かう二人の後ろ姿を見ながら、ハジメは腕を震わせていた。

 

「うわっ!ヤベェ!このファイト超見たいんすけど!」

 

興奮したように声を上げるハジメ。しかし、その願いは叶わぬものであった。

 

「残念ながらハジメ。君は大会の参加者なのですから、自分のファイトに集中してくださいね」

 

立場を再確認させるような吉田君からの指摘。当然、ハジメもこれは自覚している。

 

「そりゃ分かってるけど……。ああ、カメラか何かで撮っときてぇ……」

 

気になるものは仕方がない、そう呟きながらハジメは駄々をこねる子どものように不満げな表情を浮かべた。

 

しかし、気持ちは分かる。この二人に関しては勝敗よりも勝負の内容が気になるのだから。だが、大会は二人だけの独壇場ではない。吉田君はそれを肝に命じながら黙々と次のくじを引いて行く。

 

対戦相手に各々が思うところあるが、対戦表はどんどん埋まっていく。

 

ノブヒロ、ミヤコ、タイキはそれぞれ顔見知りのファイターと当たり、指定の席に座って行く。

 

後、残ったのはカイリ、ハジメを含めた四人。

 

「はは……、まさかここまで残るとは思ってなかったな」

「そ、そうだね……」

 

乾いた笑みを浮かべながら冷や汗を流す二人。参加者は偶数である都合、シードは存在しない。ルール上、そんなものはありはしないが。

 

したがって、カイリとハジメはこの中の誰かと対戦することになる。

 

「さて、他の方を待たせるのも悪いですからいきましょう。次は、特攻オバケさん!」

「やっと俺の番か!頼むからアイツとは勘弁だぞ……」

 

カイリとハジメの側で一人のファイターがそう言いながら知り合いのファイターを横目で見た。まるでそれに同調するかのように、カイリとハジメも箱を見ながら心の中で願う。

 

自分の名前が出てくれることを……。

 

「その対戦相手は……ピンクの悪魔さん!」

 

名前を聞いた少年は、あからさまに嫌な顔をしながら落胆した。

 

「うわっ!お前かよ……。見事に俺勝てないじゃん……」

「俺を恨むなよ……。俺だってせっかくの大会で身内と当たるとか運悪すぎて吹いたわ。まっ、しゃあないか」

 

そう呟きながら少年はチラリとカイリを一瞥した後、仕方なさそうに対戦相手の知り合いと共に指定の席につく。

 

しかし、視線を向けられた本人であるカイリはそんなことを気にしていなかった。

 

「ってことは俺の相手は……」

 

ハジメは苦笑い浮かべながらカイリを見ると、それを宣告するように吉田君の声が響く。

 

「これで決定ですね。残りのお二方も紙を受け取ったら、指定の席についてください」

 

運営としての役割を全うする吉田君。悪気はないのだろうが、その言葉に寂しい印象を覚えるカイリとハジメ。

 

お互いを激励し、共に上を登り詰めようと約束した相手といきなり当たってしまったことに戸惑いを隠しきれない二人。

 

しかし既に皆を待たせてしまっている以上、ここで止まっている訳にもいかず、とりあえず紙を受け取り席についた。

 

こうして、第一回戦の対戦表が決定した。描写を書いていくのは以下の通り。

 

ショウVSツカサ

カイリVSハジメ

 

吉田君は周りを見渡した後、腕時計を見ながら口を開いた。

 

「それでは皆さん、準備が済みましたらファイトを開始してください」

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

「ふぅ……」

 

ファイトの開始を終え、一息つく吉田君。その顔は説明している時の平静さから一変、疲労感を感じさせる表情に変わっていた。

 

「お疲れ様!三回目の運営になってもなかなか慣れない様子ね」

 

トンと肩に手を置きながら店長が話しかけてくる。店長の顔を確認した吉田君は参った様子で重い口を開いた。

 

「そりゃそうですよ……。自分の不手際で彼等に迷惑をかけてしまったら一大事ですからね。何回やってもこの緊張状態は解けませんよ……」

「そうね。ここにいるファイターは理由はどうあれ、この大会に意味を見いだして参加してる。私たちが気抜けてたら彼等に失礼だものね。さっ!とりあえずファイトが終わるまですることもないし、誰かのファイトでも見てましょうか!」

 

しんみりとした口調からパッと明るい笑顔を浮かべる店長。

 

調子のいいそのノリに自然と口が緩む。吉田君は、ある一点に視線を向けた。

 

「そうですね。では俺は彼等のファイトを……」

 

そう呟く吉田君を見て、彼がどのファイトを見たいのか感づいた店長はクスッと笑った。

 

「やっぱり吉田君も気になるわよね。ハジメには悪いけど、ガッツリ見させてもらいましょうか」

 

意見が一致した二人は早速移動を開始した。

 

最初に呼ばれたショウとツカサは奥の席に座っていた為、二人は他のファイトを邪魔をしないよう、慎重に通路の隅を進んで行く。

 

「流石に急ぎ過ぎたかしらね。まだ始まったばかりたし、もう少し周りを観察してからでも良かったかも」

「最初から観るに越したことは無いでしょう。それに途中からでは彼等の意向を読み取ることは難しいですからむしろ丁度いいのではないでしょうか」

 

進みながら道中のファイトを流し見るも、まだ始まったばかりで、特に大きなアクションを起こしている者はいなかった。

 

故にいくらあの二人でもこの序盤では特に変わったことはまだしていないと考えていた。

 

「えっ……どういうこと……」

 

ファイトを見るまでは。

 

「吉田君……これわかる?」

 

あまりの異常な光景に声を震わせる店長。吉田君はその側で目を尖らせながら現状を観察する。

 

「わかりません……。状況から見て先行はショウさん。しかし先行でありながら彼は……」

 

この状況を作った本人を見る。一片の迷いのない笑みを浮かべるショウを。

 

「“前列Rにダークキャットを二枚コールしている”これを理解出来る者のほうが少ないです」


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