「んじゃっ、ボクのスタンド&ドロー!お~、なるほどね~」
青年は引いたカードを手札に加えると、無造作に手札をシャッフルした。
カイリとハジメも青年が引いたカードを確認する。
「お、危なかったな……。でもギリギリあのカードを引けたっていうのはにいさんに運が向いてるってことか?」
「じゃああれがさっき言ってた目的のカードなんだね。でもなんで突然手札をあんなパチパチしてるの?」
「いや、あれは特に意味はないんだ。人によってはあーやって考える癖があるんだけど、あれやられるほうはあんまり好まれないからカイリは真似すんなよ」
「大丈夫だ。多分やろうと思っても出来ないから問題ない」
カイリは努めてドヤ顔を作った。
「んじゃっ、行くよ!これがボクのヴァンガード!ライド、The・ヴァンガード!魔の海域の王バスカーク!(10000)」
青年はそう声を上げると、手札のカードを選んでVに重ねる。
「そのままバスカークのスキルでデッキの上から一枚をソウルチャージ(以後SC)。うわ、スケルトンの見張り番……ドン引き……。で~パワー+2000!」12000
「左側の前列にカットラス(5000)をコール!カットラスのソウルブラスト(以後SB)!ソウルのナイトミストとイービルをドロップに置き、ドロー!」
「右側の前列にネグロマール(8000)をコール!ネグロマールのカウンターブラスト(以後CB)!ドロップゾーンより荒海のパンシー(4000)を左側の後列にコール!」
着々とアタックへの準備を整える青年を見ていたハジメは、納得したように声を上げる。
「あ~、ちゃっぴーでパンシーを落としたのはこのためだったのか……。確かにパンシーはサイキックバードと同じ自身をソウルに置いてドロー出来るからおいしいっちゃあおいしいけど、やっぱりクリティカルを落とすのはおいしくないなぁ……」
「じゃあハジメだったら何を落とす」
カイリの問いにハジメは眉間を摘む。
「ん~、俺だったらカットラスを落として、もう1ターンまってソウルが貯まった時にネグロマール使って出してSB使うかな……。そうすればパンシーと同じように一枚引けてしかも場にカットラスが残るからナイトミストの餌にできるしな」
「なるほどなるほど……。みんな色々考えてるんだな……」
ツクヨミ
前列
トム/半月/半月
後列
なし/みるく/サイキック
グランブルー
前列
カットラス/バスカーク/ネグロマール
後列
パンシー/案内するゾンビ/なし
場が整ったところで青年はネグロマールをレストさせる。
「ネグロマールでトムにアタック!」8000
この青年のアタックにクリアは口を噤む。状況から展開を考察し、より効率的な運用を模索する為だ。
(セオリー通りに行くなら手札のドロートリガーをガードに使う……。が、もしやつがスタンドトリガーを発動した場合、パワーを乗せなくてもネグロマールはトムへアタック出来てしまう。が、さっきのSCでスタンドトリガーを吸い、ダメージゾーンにも一枚飛んでいる。ならば……)
「ミラクルキッドでガードだ」13000
「だよね~。じゃっ、案内するゾンビのブースト、バスカークでヴァンガードにアタック!」17000
「ノーガードだ」
「ツインドライブ!!ファーストチェック……伊達男ロマリオ。セカンドチェック……バスカーク。ありゃ、トリガーなし」
青年は残念そうにドライブチェックのカードを手札に加えた。
「ダメージチェック。ドリームイーター。ドロートリガーGET。一枚引き、パワーはリアガードのトムに加える」
「またドロートリガー……クリアさん凄い運良さそうだね」
「だな、にいさんのほうはあれを引き寄せて運を使いきった感が否めねぇ感じ。まだにいさんのハンドのほうが余裕はあるけど、先輩はこっからがヤバい……」
クリアがドローすると青年は頭を抱える。人差し指を振りながら何かをブツブツ呟いた。
「ふむぅ……。んじゃっ、パンシーのブースト、カットラスでリアガードの半月にアタック!」9000
「だろうな。ノーガードだ。半月を退却」
「読まれた……だと……!とりま、これでボクのターンは終了だよ」
ツクヨミ グランブルー
手札 3 5
ダメ表 1 1
ダメ裏 0 2
「俺のスタンド&ドロー。半月のスキル。デッキから五枚確認。」
クリアは確認すると無表情で全てのカードを並び替えてデッキの下に置いた。
「対象のカードはなし。手札より、満月の女神ツクヨミにライド!ソウルに一拍子、三日月、半月がいる時、パワー11000を維持。さらに、場のサイキックバードのスキル。自身をソウルへ置くことでドロー」
クリアは間髪入れることなく場にユニットを配置する。
「左側前列にプロミスドーター(9000)右側後列に三日月の女神ツクヨミをコール」
あっとういう間に盤面を整えアタックに入ったクリアに、カイリは思わず感嘆の声を上げる。
「早いなぁ。俺の時もそうだったけどここまではセオリー通りなのかな?」
「だな。ただプロミスの後ろにブースターがいないのが惜しい感じ。あの時にいさんがジェミニを潰したのは正解だったのかも知れないな。しかしあぁやって考える暇なく進める先輩のプレイングは本当に焦るぜ……」
「うん、あのプレッシャーはヤバかった……」
カイリも思い出しながらハジメの言葉に賛同した。
「みるくのブースト、満月でヴァンガードにアタック!」17000
「まぁ、ノーガード」
澄ました顔でそう言う青年を一瞥した後、クリアは自分のデッキに視線を移す。
「ツインドライブ。ファーストチェック、ロゼンジ。ヒールトリガーGET。ダメージは負けてるから無意味だが、パワーはプロミスに加える。セカンドチェック、バトルシスターしょこら」
「ダメージチェック。おっ!お化けのリック!ヒールトリガーGET!ボクは遠慮なく回復させて貰うよ。んでっ、パワーはヴァンガードのバスカークに加えるよ」15000
青年はダメージゾーンで裏側になっているスカルドラゴンをドロップゾーンに置いた。
(チッ……トリガー出たか……。これでプロミスはバスカークにアタック出来なくなった。スキルを使えば無理ではないが今それを使うのは後に響く……。そうなるとアタック出来るのはカットラスかネグロマールだが……そもそもドロップゾーンにナイトミストがいる時点でどちらもそんなに変わらない。だがやつがCBを温存してくる可能性を考えるならば、手札にロマリオがいること考えると、ネグロマールを残しておけば十中八九そこに置いてくるだろう。なにより手札にバスカークがいる以上、パワーの高いG3に変えてやる必要もない)
「プロミスでカットラスにアタックだ」14000
ツクヨミ
前列
トム/満月/プロミス
後列
三日月/みるく/なし
グランブルー
前列
カットラス/バスカーク/ネグロマール
後列
パンシー/案内するゾンビ/なし
「それもノーガードで。お疲れ!カットラス!」
そう言いながら青年は場のカットラスをドロップゾーンに置いた。
あまりに大人しく退却させる青年に一瞬、自分のプレイングが正しかったかどうかということが頭に過ったが、先程の青年のプレイを思いだし、再び思考を開始させた。
「三日月のブースト、トムでヴァンガードにアタック」15000
「折角のヒールトリガーだ。無駄にはしないよ!イービルでガード!」20000
ツクヨミ グランブルー
手札 4 4
ダメ表 1 2
ダメ裏 0 1
「ボクのスタンド&ドロー。続けてバスカークのSC(大幹部ブルーブラッド)」
ソウルに入ったカードを確認した青年はニヤリと笑みを浮かべた後、意地悪くクリアを見ながら盤面を埋めていった。
「場のパンシーのスキルで自身をソウルに置き、ドロー!さらに、カットラスを左側の後列にコール!SB!ソウルのパンシーとブルーブラッドをドロップゾーンに置き、ドロー」
さてさて……と準備を終えた青年は早速アタックに入る為にロマリオへと手を添えた。
「そろそろ攻めさせてもらうよ!右側の後列に伊達男ロマリオ(8000)を、左側の前列にルイン・シェイド(9000)をコール!そしてカットラスのブースト、ルインでヴァンガードにアタック!ルインのスキル発動!デッキから二枚をドロップゾーンに置くことでパワー+2000!(お化けのりっく、スピリットイクシード)」16000
そんな青年の態度に眉間にしわを寄せるクリアだが、至極冷静にその対応にあたった。
「ノーガードだ。ダメージチェック。お天気お姉さんみるく。」
「案内するゾンビのブースト!バスカークでアタック!」17000
「ノーガード」
「ツインドライブ!!ファーストチェック……荒海のパンシー!クリティカルトリガーGET!で!全てネグロマールに加えるよ」
(意地でも俺に満月のスキルを使わせない気か。それとも俺が満月のスキルを使いたいがためにダメージを通してくると思っているか……。どちらにしても次のアタックは……)
「セカンドチェック!サムライスピリット!」
「ダメージチェック。満月の女神ツクヨミ」
「どんどん行くよ!ロマリオのブースト、ネグロマールでヴァンガードにアタック!さっきのトリガーでパワー21000!クリティカル2!」
ツクヨミ
前列
トム/満月/プロミス
後列
三日月/みるく/なし
グランブルー
前列
ルイン/バスカーク/ネグロマール
後列
カットラス/案内するゾンビ/ロマリオ
「しょこらでガード。手札のアマテラスを捨て完全ガード」
「さすがにガードされちゃうか~。ボクのターンはこれで終わりだよ」
ツクヨミ グランブルー
手札 2 6
ダメ表 3 2
ダメ裏 0 1
「俺のスタンド&ドロー」
クリアが引いたカードを確認していると、青年はニヤニヤと嫌味っぽく笑いながら自分の手札とクリアの手札を見比べた。
「さすがに手札の差が開いてきて辛いんじゃないかな~?」
「確かにな。だが俺もここからは全力でせめさせてもらおう。」
クリアはそう言うと自分のダメージを二枚裏返した。
「ソウルにオラクルシンクタンクが6枚ある時、満月の女神ツクヨミのCB!デッキから二枚引き、手札から一枚ソウルに置く」
「ソウルが6枚……?さっきまでVになってた3枚と半月のツクヨミのスキルで2枚……。一枚足りないんじゃ……」
疑問に思ったカイリがそう小さく呟くと、呆れた様子でハジメがこのことについて補足した。
「おいおい、忘れちゃったのか?前のターンでサイキックバードをソウルに置いてただろ」
「あぁ~、そういえば……。それじゃああの時のコールはこのスキルを使うことまで念頭にいれてたってわけだね。深いなぁ……」
カイリがそう関心していると、クリアはその補充した手札からカードを一枚取り場に出した。
「左側の後列にダークキャット(7000)をコール!ダークキャットのスキル発動。お互いは任意でドローすることが出来る」
「ふぅん……そう言うデッキなわけね」
何かに気づいたような素振りを見せた青年に、クリアはため息混じりに口を開いた。
「さすがに気づくか……俺のデッキはドローすることに重視している。そしてダークキャットのスキルはお互いがドローしてしまうためアドバンテージが取れないように見えるがオラクルには手札を参照するカードが多い。これで俺の手札は4枚。みるくのブーストは10000となる。」
「ドロートリガー偏重のツクヨミなわけね……そんなこと教えてくれていいのかい?」
「グランブルーのデッキ構築はおよそ見当つくからな、これで対等ってところだろ。三日月のブースト、トムでヴァンガードにアタック!」15000
「律儀だねぇ~。でもこれはもうテンプレ通りに行くしかないなぁ~。サムライスピリット二枚でガード!」20000
お互い皮肉っぽく言い合う最中、カイリはこのわけのわからないやり取りに頭を悩ませた。
「もうこの人達が何しゃべってるのかわからなくなってきた……」
「お、俺はギリギリついていけてるかな!?」
「うわ~すごいなぁ~憧れちゃうな~」
「」
カイリとハジメが漫才をしている間にクリアはみるくに手を添える。
「みるくのブースト、満月でヴァンガードにアタック!」21000
「ノーガード……ざわざわ……」
ツクヨミ
前列
トム/満月/プロミス
後列
三日月/みるく/ダークキャット
グランブルー
前列
ルイン/バスカーク/ネグロマール
後列
カットラス/案内/ロマリオ
「ツインドライブ。ファーストチェック、ミラクルキッド。ドロートリガーGET。一枚引き、パワーはプロミスに加える。セカンドチェック。サイキックバード。クリティカルトリガーGET。俺はクリティカルを満月に、パワーをプロミスに加える」
「うわぁ……えげつねぇ……。ここでダブルトリガーかぁ……しかもクリティカルトリガー、ヒールが出ないともう次のアタックは通せない……」
ハジメがそう苦い顔を浮かべるのと同じように、青年も何かが鼻についたように顔を歪めるとデッキに手を添えた。
「うぇうぇ、ダメージチェック。一枚目……ナイトスピリット!クリティカルトリガーGET!ヴァンガードに全て加えるよ。二枚目……突風のジン」
「なんとかトリガーが発動して多少楽にはなったけど……次は……」
初心者のカイリでもわかる試合展開。次に訪れるクリアに攻撃がいかに驚異的なものかを物語るように、カイリは冷や汗を流しながら成り行きを見守った。
「ダークキャットのブースト、プロミスでヴァンガードにアタック!プロミスのスキル発動!手札のミラクルキッドを捨て、パワー+5000」31000
31000という膨大な攻撃力。しかし、それでも青年はお気楽そうにカードを選定しながらカードをガーディアンサークルに置いた。
「ん~、ナイトスピリットと荒海のパンシーでガード!」35000
ツクヨミ グランブルー
手札 6 3
ダメ表 1 4
ダメ裏 2 1
「これで俺のターンは終了。手札の差が開いてきたな。しかもダメージも歴然、どう挽回するのか楽しみだな」
目を瞑りながら薄ら笑いを浮かべるクリア。それに対してわざとらしく悔しそうな声を青年は上げる。
「ぐぬぬ……ボクのスタンド&ドロー!バスカークのスキルでSC(ルイン・シェイド)」
「ドロップゾーンのナイトミストのCB!ネグロマールをドロップゾーンに置き、ナイトミストを右側前列にスペリオルコール!」
ナイトミストをコールした青年はおもむろに深呼吸をした。
「ふぅ、出来るだけのことはやった……行くよ!カットラスのブースト、ルインでヴァンガードにアタック!ルインのスキル発動!デッキの上から二枚ドロップゾーンに置き(ロマリオ、お化けのりっく)、パワー+2000!」16000
落ちたカードを見ながらハジメは声を上げた。
「あちゃ~、またか……。ヒールトリガーが落ちちゃったのは痛い……。やっぱり運は先輩に向いちゃってるかな~?というか、ここまでハンドとダメージの差をつけられると正直やる気が無くなるぜ……」
頭を掻きながらハジメは苦笑いを浮かべる。
「ロゼンジ・メイガスでガード」21000
「でもこの人全然気にしてない感じだから何か考えがあるのかな?」
「かもなぁー。実は俺もそれを期待してるんだ。次は何をしてくれるのかなってさ」
ツクヨミ
前列
トム/満月/プロミス
後列
三日月/みるく/ダークキャット
グランブルー
前列
ルイン/バスカーク/ナイトミスト
後列
カットラス/案内するゾンビ/ロマリオ
ハジメとカイリは期待の眼差しで青年を見つめるが、そんな二人のことなど露知らず、青年はバスカークと案内するゾンビをレストさせた。
「案内するゾンビのブースト、バスカークでヴァンガードにアタック!」17000
ここで再びクリアは口を噤む。
(こちらのダメージは3。このアタックを通してクリティカルが一枚出てもダメージ5、負けることはない。が、最悪クリティカルを含めたトリガーが二枚出た場合、次のナイトミストのアタックが辛くなる。しかもまだやつのドロップゾーンにクリティカルは3枚、ダメージに1枚……。手札にあることも考えられるが多く見積もって残りクリティカルは4枚……。残り山札から考えて、最悪クリティカルが2枚出てしまう可能性もある。ここは無難に行くか)
クリアは眉間から手を離し、手札から2枚選んでガーディアンサークルに置いた。
「サイキックバードとミラクルキッドでガード」26000
「ダメージ3なのにまだガードするんだ……。本当に堅実だよね~」
「どんなプレイングをしようが俺の勝手だろ」
「んまぁ、そうだけどさ~。んじゃまっ、ツインドライブ!!」
青年はこの不利な状況でも今までと同じ調子でデッキを捲った。
「ファーストチェック……ナイトスピリット!クリティカルトリガーGET!」
青年は声を上げ、トリガーをトリガーゾーンに置いた。
(きたか……。だが一枚では通らない。次のトリガーがクリティカル以外ならナイトミストのアタックを通し、クリティカルなら完全ガードで防ぐとして……)
クリアがそう考えている中、青年はトリガーの効果の対象を宣言する。
「全てヴァンガードのバスカークに加えるよ!」22000
「おぉ、にいさん、勝負にでたな!」
「もし次のトリガーでクリティカルが出たらアタックがヒットでダメージ3……。アドバンテージの差とか関係なしに決着が着くってわけだね!」
「まぁ先輩がヒールを引くかもしれないけど6点目で出なきゃ回復しないから余程のことがない限り決着がつくな!」
ハジメとカイリはこの青年の判断にテンションを上げる。
それに対してクリアは面倒臭そうにため息をついた。
(だろうとは思った。ま、これでクリティカルが出たら仕方ない。端からこういうゲームだということは承知してるからな)
クリアは頬杖をつきながら青年のドライブチェックを眺めた。
「セカンドチェック……スケルトンの見張り番!スタンドトリガーGET!パワーはヴァンガードのバスカークに加え、ルインをスタンドさせる!」
「おしっ!クリティカルじゃなかったもののこれでダメージは通る!ダメージはにいさんが5点だから確実お互い5点になる!アタックもルインとナイトミストが残ってるからこっから一気に巻き返しだな!」
「っていうかハジメ、クリアさん応援しなくていいの?今更だけどさ」
「本当に今更だな。そりゃ応援するなら不利なほうだろ!それに先輩が負けてるところ見てみたいしな」
「そうなんだ……」
悪戯っぽく笑うハジメにカイリは苦笑いを浮かべた。
クリアは頬杖を解き、その手をデッキに添える。
「ダメージチェック、一枚目、サイレントトム。二枚目、ミラクルキッド、ドロートリガーGET。一枚引き、パワーはヴァンガードの満月に加える」16000
クリアは引いたカードを確認すると自分の場を見つめた。
「まだ引きますか……そうですか……。んじゃっ、スタンドしたルインでトムにアタックしようかな!スキルは使わないよ」9000
「だろうな。手札にそれだけG0があるんだ、さぞトムは邪魔だろう。ということがわかってるんだ、プロミスでインターセプトさせてもらおう」13000
「ですよね~。けど諦めないよ!ロマリオのブースト、ナイトミストでトムにアタック!」16000
「ふん、ロゼンジでガード」18000
「ふぅん、ボクのターンは終わりだよ」
勝負が決すると思われたこのフェイズでも結果は五分五分。この展開にハジメは息苦しそうに冷や汗を流した。
「お互い一歩も引かないな……。けどダメージはお互い5点、こっからは消耗戦になる……。となると次の先輩のアタックをにいさんがどれだけ余力を残してガードできるかが勝負の鍵になってくる……」
「例えガード出来ても場と手札がなくちゃ次のこの人のアタックでクリアさんを倒せない……。正念場だね……」
ツクヨミ グランブルー
手札 3 6
ダメ表 3 3
ダメ裏 2 2
「俺のスタンド&ドロー。そして満月のCB!」
クリアはそう言ってダメージを2枚裏返すと、デッキから二枚引き、手札の満月をソウルに置いた。
「右側前列にメテオブレイク・ウィザード(10000)をコール」
クリアの出したカードを見て、ハジメは声を上げた。
「うわぁ、ここでそいつを出すか。えげつない場だなぁ、ありゃ」
「今コールしたメテオなんとかってどういうカードなの?」
ハジメの反応を見て、カイリは今コールされたカードを指差した。
「あれはCBしてパワーを+3000するカードだ。単純だけど、この場面に於いてはまさにフィニッシュカードになりうるユニット……」
ハジメもまた、クリアの場を見ると説明を続ける。
「簡単な条件で20000ものアタックが出来るメテオブレイク……、そしてG0をガーディアンとして使うことを禁止するサイレントトム……。完璧な布陣だ。しかも手札は4枚あるからみるくは10000のブーストが可能になる。ちょっとガードをミスるだけでお陀仏だな……」
「ダークキャットのブースト、メテオブレイクでヴァンガードにアタック。さらにメテオブレイクのCB。パワー+3000」20000
「スケルトンの見張り番とナイトミストをインターセプトでガード!」25000
「みるくのブースト、満月でヴァンガードにアタック」21000
「ナイトスピリットとブルーブラッドを2枚」
青年は手札から淡々とガーディアンをコールする。
「さらに、ルインでインターセプトでガード!」35000
「2枚分ガード!?先輩は基本的に堅実だからあんまり意味ないと思うんだけどなぁ……」
青年の行動を見て、ハジメは呟き、クリアもまた同じことを考えていた。
(こんなギリギリの状態でまだこんなプレイングをするのか、こいつは……。今までの俺のやり方からトリガーを全てのせるなんてことは思わないだろうが……。しかし、余分にガードを使ってくれるなら好都合。後悔するんだな、自分の愚かさを)
「ツインドライブ。ファーストチェック、半月の女神ツクヨミ。セカンドチェック、三日月の女神ツクヨミ。トリガーなし」
「あらら……、警戒してたのに一枚も出なかったみたいだね。嬉しいような悲しいような……」
「三日月のブースト、サイレントトムでヴァンガードにアタック!」15000
「突風のジンでガード!手札のバスカークを捨て、完全ガード」
ツクヨミ グランブルー
手札 6 0
ダメ表 0 3
ダメ裏 5 2
「これで俺のターンは終了だ。仕留めきれなかったが、お前が無駄にガードしたせいで手札は0、アタッカーもヴァンガードのみ。たとえドローでアタッカーを引いても一つのラインしか形成できない。カットラスでも引けばチャンスがあるかもしれないがこちらのツクヨミは11000。カットラスのSBで9000以上のアタッカーを引かなければならない。」
クリアは勝ち誇ったようにそう言った。パワー9000以上であれば、今場にあるカットラスをドロップゾーンのサムライスピリットに変えることで、パワー16000、最低限のパワーにまでになる。そして、出したカットラスはドロップゾーンのナイトミストに入れ換えることでロマリオと合わせて16000にすることが出来る。
「不可能だ……、既ににいさんのドロップゾーンにG2以上のアタッカーはほとんど落ちちまってる……。それをまずカットラスを引いてさらにアタッカーを引くなんて……。えげつないにも程があるぜ……」
ハジメは思わず声を漏らした。
「あの時先輩のヴァンガードのアタックを一枚分でガードすればにいさんの場にルインが残るからいかようにでも出来たのに……」
まるで自分のことのように後悔しているハジメに対し、青年はニヤリと笑う。
「まぁまぁ、そんなに攻めないでよ。さっきはトリガーが出なかったからあれだけど、もしダブルトリガーが出てたらボクはやれれてたんだよ?」
青年の言葉にクリアは鼻で笑った。
「たとえファーストチェックでトリガーが出たとしても、俺は次のトリガーに賭けてヴァンガードにのせるなんて真似はしない。検討違いだったな」
「ふ~ん、そりゃ残念。でもまっ、みんなが言うようにこのドローで勝負がほぼ決まるわけだから、ちょっと遊んでみようか」
青年はそう言うと、デッキから1枚引き、そのカードを裏側にしたまま机の上に置いた。
「それじゃっ、先にバスカークのSC!」
デッキの上から一枚を捲る。もしパワー9000以上のカード以外が出れば、次に目的のカードを引く確率が少なからず上がる。だが、逆に目的のカードが出た場合、次にパワー9000以上のカードを引くのは絶望的。
「ルイン・シェイド!、をソウルに入れてバスカークのパワー+2000!」
終わった……。誰もが思う絶体絶命の状況。しかし、そんななかでも青年はニヤニヤと笑っていた。