先導者としての在り方[上]   作:イミテーター

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危険な二人

「なっ!?」

「タッグファイト!?」

 

この男の申し出に、驚いたようにクリアとツカサは揃って声を上げた。

 

そんな二人に男とヨシキは勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「どうした?怖じ気づいたか?」

「何故タッグファイトなんだ?それをする理由は?」

 

間髪入れずにクリアはそう男に問いただす。それに対し、男は鼻で笑いながら答えた。

 

「これは保険だ。普通にやっても勝てるとは思うが、わざわざそうやって誘って来るということはお前らも実力には自信があるということだろ?せっかく2対2なんだ、丁度いいだろ?」

 

ニヤリと笑う男に再び舌打ちを打つとクリアはツカサに声をかけた。

 

「おい、お前はどう思う?」

「タッグファイトのこと?ボクはそれでもいいよ。むしろそっちのほうがいいかな」

 

ツカサは自信満々に笑みを浮かべる。それを見て、クリアは安心したようにため息をついた。

 

「いやに自信ありげだな。何か考えがあるのか?」

「考え?そんなのないよ?ただタッグファイトやったことないから楽しみだな~って思ってさ」

 

ツカサはワクワクしたような笑顔でそう言うと、突如、クリアの額からドッと汗が吹き出した。

 

「一つ目の条件変更だ!おい、お前さっさと賭けるやつ何か出せ!」

 

クリアは切羽詰まった様子でツカサにそう言い迫った。

 

「え~!だってさっきクリア君ドヤ顔でカード賭けに出してたじゃん」

「状況が違うんだよ!大体、なんでお前が売った喧嘩に俺がカード出さなきゃいかんのだ……」

 

そんな二人のやり取りを面白そうに笑う男。そんな彼らに男はさらに追い討ちをかけた。

 

「言っとくが、一つ目の条件に変更はなしだ。もし変えるってんなら俺達は帰らせてもらうぜ?」

 

男の主張にクリアは言葉にならない言葉を出しながら恨めしそうに男を睨み付ける。

そんなクリア達を見てツカサの後ろにいた少年が心配そうに呟いた。

 

「だ、大丈夫なの……?」

「ん?大丈夫大丈夫。ちょっと今はあれだけど、ヴァンガードに関してはボク達、滅茶苦茶強いんだから」

 

ツカサは少年を安心させるようにニッと笑いながらそう言った。

 

「わかった……もういい。俺の考えを邪魔しなければなんでもいい。じゃあさっさと始めさせてもらおうか」

 

クリアは重いため息をつくと、破れかぶれになりながらそう言った。

 

「ヒヒ、そう来なくちゃな」

 

そう言うと、男は狙っていたかのようにヨシキに目配せをした。ヨシキも男が何を言いたいかを理解したのか、笑みを浮かべながら頷いた。

 

スタンディングテーブルに移動した四人はお互いにデッキを取り出すとFVを置き、デッキをシャッフルした。

 

「おい」

「ん?なんだい?」

 

男達に聞こえぬよう小さな声でクリアはツカサを呼んだ。

 

「お前、あれは使うのか?」

「あれって……アイデティックのこと?」

 

デッキの中のカードの順番を記憶し、思い通りにデッキを認識するアイデティック・イメージ。

 

負けられない戦いではあるが、これは体に負担がかかるため、クリアはそれを危惧しそう聞いたのだ。

 

すると、ツカサは頭を掻きながら参ったような表情を作ると口を開いた。

 

「使いたいのは山々だけど、まだ体調が万全じゃないんだ。だから今回は素でファイトすることになるね。ごめんね」

 

ツカサがそう謝ると、クリアはフッと笑いながらデッキからカードを引いた。

 

「安心しろ。端からあてになんかしてねぇよ。ただし、容赦なんかしたらただじゃおかないからな」

 

クリアが笑っているのを見て、ツカサもまた同じように笑みを浮かべた。

 

「フフン、勿論さ!」

 

 

四人はデッキから手札となるカードを引き終えると、目の前の相手と対峙した。

少年は、クリア側から心配そうにその様子を伺う。

 

「まずは誰から始めるかを決める。決める方法は……」

「あっ、ボクサイコロ持ってるからこれで決めようよ」

 

男の言葉を遮り、ツカサはポケットから取り出した八面サイコロを翳しながらそう言った。

 

「……まぁいい。なら、1か2なら俺、3か4ならヨシキ、5か6なら学ランのお前、7か8なら銀髪のあんたということにしてもらおうか」

「それで構わないよ。じゃっ……」

「待て」

 

振りかぶるツカサを制止、男は右手を差し出しながら言った。

 

「サイコロを振るのは俺にやらせてもらおうか。お前らが変な企みをしているかもしれないからな」

「別にそんなこと考えてないけど……」

 

そう言われたツカサは不満そうに呟きながらも、サイコロを男に差し出した。

 

受け取ったサイコロを握りしめると、男はおもむろに握っていた拳をパッと離し、サイコロをスタンディングテーブルに落とした。

 

「……1。俺からだな」

 

出目を確認した男はニヤリと笑うと、伏せていた手札を確認する。

他の三人も同じように手札を確認し、それぞれカードを取りながらデッキに戻した。

 

「さて、これから始める訳だが……」

 

全ての準備を終え、後はスタンドアップをするのみとなった状況に、男は一つ忠告をする。

 

「ファイト中の相談はなしにしてもらうぞ。あんまり時間がかかると萎えるからな」

「ああ。わかった。言いたいことはもうないか?」

 

次々と口を出す男に、早くはじめてほしいという念を込めてクリアは言った。

 

「フン、まぁこんなもんにしといてやろう。なら始めるぞ」

 

そう言うと、四人はそれぞれ自分のFVを手に取ると、掛け声と共にそれを表替えした。

 

「「スタンドアップ ヴァンガード!」」

「「スタンドアップ The・ヴァンガード」」

 

「リザードランナー コンロー(5000)」

「ブラウユンガー(5000)!」

 

「神鷹一拍子(5000)」

「案内するゾンビ(5000)!」

 

タッグファイトのターン移行は自分が先行だった場合、自分→対面の相手→味方→味方の対面の相手→自分といったように八文字で進む。

 

たとえば今回の場合は以下の通りになる。

 

かげろう→オラクル→ノヴァ→グラン

 

ちなみに対面状況はかげろう⇔オラクル、ノヴァ⇔グランである。

 

 

「兄貴、こいつら面白いっすね。ザとか……」

 

ヨシキは笑いを堪えながらそう言った。男も笑みを浮かべながら嘲るようにして言った。

 

「揃ってザを使うか。随分とヴァンガードをエンジョイしてるようだな」

「無駄口はいいからさっさとドローしたらどうだ?」

 

クリアが腕を組みながら無表情でそう言うと、男は適当に返事をし、ドローした。

 

「ヘイヘイ。鎧の化身バー(8000)にライド!コンローはスキルで左下に移動し、ターン終了だ」

 

男がターンの終了を告げるとクリア、ヨシキと順にターンを進行していった。

 

「俺のターン、ドロー。一拍子のスキル……対象カードはなし。手札から三日月の女神ツクヨミ(7000)にライド、Theヴァンガード。そしてエンド」

「俺のターン!俺はブラウパンツァー(8000)にライドしブラウユンガーのスキルを使い、手札にブラウクリューガーを加えるぜ!これでエンド!」

「ボクのターン。伊達男ロマリオ(8000)にライド、The・ヴァンガード!案内するゾンビはスキルで右下に移動するよ。で、ボクからアタック出来るんだよね」

 

タッグファイトはターン進行順四番目のプレイヤーからアタックすることが出来る。

 

今回の場合グランブルー、即ちツカサにターンが回ったらアタックすることが出来る。

 

「ああ、そうだ。ただしアタック出来るのは目の前の相手だけだ。お互いが共有しているのはダメージ、ソウル、ガードのみだということを覚えておけ」

 

クリアが念入りにそう言うと、ツカサはそれを軽く流しながらロマリオに手を添えた。

 

「そんなの解ってるよ~。じゃっ、早速ロマリオでヴァンガードにアタックさせてもらうよ!」8000

 

タッグファイトでの勝利条件は相手のダメージを9点にする、もしくは相手のデッキが無くなれば勝利となる。

それほどのダメージに余裕があるため、最初のダメージになるであろうこのアタックを防ぐ必要はほとんどない。

 

「最初は大人しく通してやるよ。きな!」

 

ヨシキの挑発的な言動にも動じることなく、ツカサはドライブチェックを行った。

 

「ドライブチェック……サムライ・スピリットか……。トリガーなしだよ」

「ダメージチェック、ブラウパンツァー。こっちもなしだ」

 

いわば前座と呼ばれるであろうこのやり取りを終え、ツカサはターンを終了した。

 

「さぁ、こっからが本番だ。俺のドロー。バーニングホーン・ドラゴン(9000)にライド!」

 

ここで、クリアの眉がピクリと動く。

 

「……ジ・エンドか」

 

クリアの言葉に男はニヤリと笑う。

 

「ようく分かってるじゃねぇか。だが、これだけじゃねぇぜ?コンローのCB!」

 

そう言うと、男はヨシキのダメージを裏返し、コンローを退却させ、デッキを手に取った。

 

「デッキから、ワイバーンガード バリィを手札に加える。さらに、V裏に希望の火 エルモ(6000)をコール。そしてバトルに入る!」

 

/バーニングホーン/

/エルモ/

 

「エルモのブースト、バーニングホーンでヴァンガードにアタック」15000

「ノーガードだ」

「ドライブチェック、チッ、ドラゴンモンクゲンジョウ。回復はなしだが、パワーはVに」20000

「えっ、回復しないの?」

 

驚いたツカサはそう言ってクリアを見ながら答えを求めた。

 

「ああ。ダメージはCBを使う場合共有出来るが、効果範囲が指定されているもの。たとえばトリガーだが、あれは自身のダメージを回復出来るのであり、味方のダメージは回復することは出来ない。ちなみにこれはダメージ以外にも言えることであり、たとえば相手のユニットを一枚選びというものの場合……」

 

そこまで言うと、クリアは男に視線を向けた。

 

「適用されるのは目の前の対戦相手、つまりかげろうの退却スキルは俺にしか使うことは出来ない。ダメージチェックだ」

 

説明を終えたクリアはダメージを捲る。

 

「ドリーム・イーター。GET、ドロートリガー。一枚引き、パワーはVに加える」12000

「さっすがクリア君。相変わらずの運の良さだね!」

「ちっ、エルモのスキル。手札のゲンジョーを捨てドロー。俺のターンは終了だ」

 

かげろう

 

手札6

表ダメージ0(0)

裏ダメージ0(1)

 

()←味方ダメージ

 

「俺のターン。三日月のスキル……なし。手札から半月の女神ツクヨミ(9000)にライド、ザ・ヴァンガード。そしてスキル発動、二枚SC(ミラクルキッド、ジェミニ)」

 

SCを終えたクリアは続けざまにユニットをコールしていく。

 

「半月、三日月を左列にコール。そしてバトル」

 

半月/半月/

三日月//

 

「Vの半月でヴァンガードにアタック」9000

 

男は自分の手札を確認し、カードを一枚取るとガーディアンサークルに置いた。

 

「ブルーレイ・ドラコキッドでガード」19000

「ドライブチェック、サイキック・バード。GET、クリティカルトリガー」

「チッ、またトリガーか……」

「こいつ、運よすぎっすね……」

 

悪態をつく男とヨシキにも構わず、クリアはトリガーの効果をRの半月に乗せた。

 

「三日月のブースト、半月でヴァンガードにアタック」21000☆2

「あ、兄貴……」

「っ!ノーガードだ!ダメージ、一枚目、ドラゴニック・オーバーロード。二枚目、ガトリングクロー・ドラゴン!ドロートリガーだ。一枚引かせてもらう!狼狽えてんじゃねぇ!勝負はまだ始まったばかりだ。ここで有利を取ってもそれがいつまでも続くわけじゃねぇ」

 

心配そうに言うヨシキに男は顔を歪めながらも、そうしかりつけた。

 

(銀髪の方は知らんが、この学ラン……。腕も運もただ者じゃねぇ……。タイマンでやってたら危なかったかもしれねぇが、これはタッグ。それの本当の怖さを教えてやるぜ)

 

男は口元を緩めながらターンの終了を告げたクリアを見据えた。

 

オラクル

手札5

表ダメージ1(0)

裏ダメージ0(0)

 

ターンはヨシキに移る。2ターン目にしてダメージは3対1。戦況はあちらに傾いており、男からのプレッシャーもある彼は少なからずこの状況に動揺していた。

 

(落ち着け俺!相手はこんなガキんちょじゃねぇか。普通にやれば俺と兄貴のタッグが負ける筈ねぇんだ!)

 

ヨシキはそう自分を奮い立てるとデッキから一枚ドローした。

 

「俺は、ブラウクリューガー(10000)にライドする!」

「う~ん……」

 

ヨシキがライドしたにも関わらず、ツカサは自分の手札とにらめっこしながらそう唸っていた。

そんな態度のツカサに頭がきたのか、ヨシキは声をあげながらユニットをコールしていく。

 

「無視してんじゃねぇぞ、おら!!V裏にブラウパンツァー(6000)!!左上にタフボーイ(8000)をコール!!」

 

タフボーイ/ブラウクリューガー/

/ブラウパンツァー/

 

「えっ、あぁ、ごめん。ちょっと色々考えててさ~」

 

そう惚けたように笑いながら、ツカサはさらにヨシキの怒りを逆撫でした。

 

「てめぇ……」

「落ち着け、ヨシキ。頭に血が昇るのはわかるが、お前は自信をもって普段通りにやればいい」

「は、はい。すんません……」

 

男に宥められ、ギロリとツカサを睨み付けるヨシキ。

 

「パンツァーのブースト、ブラウクリューガーでVにアタックだ!」15000

 

このアタックに、ツカサはチラリとRのタフボーイを見ると、同じタイミングでクリアは忠告した。

 

「ツカサ、おそらく奴の狙いは……」

「大丈夫、分かってるよ。でも分かっててもどうしようも無いんだよね。ノーガードだよ」

「だよな。ドライブチェック、レッド・ライトニング!こっちもクリティカルだ!クリティカルはV、パワーはタフボーイに加える!」13000

 

してやったりといった笑みを浮かべ、ヨシキはそう言った。

 

「ふ~む。ダメージチェック、ファースト……ナイト・スピリット!クリティカルトリガーGET!効果は全てVに。セカンド……突風のジン」13000

「チッ、チャラになったか。まぁいいさ。ブラウクリューガーのアタックがヒットした時、スキル発動!ダメージを一枚表にする。そしてタフボーイでヴァンガードにアタック!」13000

 

舌打ちをするヨシキに、ツカサは苦笑いを浮かべながら手札から一枚カードを取った。

 

「あんまり出てもらってもしょうがないんだけどね~。お化けのちゃっぴーでガード!そしてスキルを発動させてもらうよ!」23000

 

そう言うとツカサはデッキを取ると、その中から一枚を選んで皆に見せながらドロップゾーンに置いた。

 

「ボクはスピリット・イクシードをドロップゾーンにおかせてもらうよ!」

「……スピリット・イクシードだと?」

 

ヨシキがそう声を出すのと同時に、クリアと男もこのツカサの行動に視線を注目した。

 

ノヴァ

手札5

表ダメージ1(2)

裏ダメージ0(0)

 

三人の反応をニヤニヤ笑いながら堪能するツカサ。すると、ツカサは側から見ていた少年に声をかけた。

 

「ねぇ、君。一応もうヴァンガードのルールは分かるんだよね?」

「えっ!?あ、うん。一応は……」

 

突然話しかけられた少年は驚きながらもそう答えた。

 

「なら、ライドに関しても知ってるよね」

「うん、それくらいなら分かるよ。1ターンに一度一つ上のGのカードをVに出来るんだよね」

「そうそう。普通はそうやって自分のターンが3ターン回らないとG3にはなれないんだ。――普通はね」

 

ツカサは自分のユニットをスタンドさせると、一枚ドローした。

 

「とりあえずキャプテン・ナイトミスト(8000)にライド!正直ここにいる人達は皆ボクのやることを察しちゃってるから出来れば君にはよ~く見ていて欲しいんだ」

 

そう言いながらツカサは笑いながら少年を見つめた。それに少年は目をつけながらツカサの盤上を見つめた。

 

「それじゃあ行くよ!左上にナイト・スピリット(5000)、左下にサムライ・スピリット(7000)をコール!」

「クリティカルトリガーをコール?それにこのユニット達、みんなさっき捨てたカードに似てる……」

「似てて当然さ!何故ならこの姿は彼らの本当の姿なんだから!ドロップゾーンのスピリット・イクシードのスキル発動!場のナイト・スピリット、サムライ・スピリットをソウルへ!」

 

ツカサは荒ぶるテンションをそのままにスピリット・イクシードを掲げた。

 

「己が信念を貫きし二振の剣!汝が魂を呼応させ、今ここに、その在り方を現世に刻め!スペリオルライド、ザ・ヴァンガード!スピリット・イクシード(10000)!」

 

最後にターンに回ってきたにも関わらず、皆を差し置いて一気にG3になったツカサ。同時にソウルも二枚溜める。

 

「凄い!2ターン目でもうG3になるなんて!ということはツインドライブ!!も使えるの?」

 

初心者である少年にとって、この出来事が劇的なものと捉えられたのか、今までの気後れした雰囲気から一転して明るくなった。

 

「もちろんさ!それにこれでG3のユニットも出せるようになるから展開もしやすくなるんだ」

 

少年とツカサが楽しそうに話すのを見て、ヨシキは鼻で笑った。

 

「はっ、よく言うぜ。確かにスペライしたことでツインドライブ!!が出来るようになったが、犠牲として手札二枚も使っちまってるじゃねぇか。そんな手札枚数でまともな展開が出来んのか?」

 

そう、ツカサは今ので手札を三枚、さらにガードに一枚使用したため、手札が三枚しか残っていない。ここからさらに展開するとなると手札が無くなりガードが疎かになってしまう危険性がある。

 

「と、普通は思うじゃん?」

「何?」

 

ツカサはそう一際大きくニヤリと笑うと、手札を二枚取った。

 

「君はちょっとグランブルーを甘く見すぎだね。そんなあなたに今回は特別に本当のグランブルーの強さっていうのを見せてあげるよ!」

 

そう言うと、ツカサは取った内の一枚を左下にコールする。

 

「まずはお前だ!ダンシング・カットラス(5000)!こいつはソウルから二枚をドロップゾーンに置くことで一枚ドローすることが出来る。ボクはソウルからナイトミストとサムライを捨ててドローするよ」

 

ここまでは何気ない普通のプレイング。しかし、今までツカサを見てきたクリアには、彼がこれで終わるとは到底思えなかった。

 

ツカサは宣言通り指定のユニットを捨て、ドローすると今度は自分のダメージに手を添えた。

 

「次はグランブルーお得意の復活能力でお送りするよ!ボクはCBで場のカットラスを捨てて今ドロップゾーンに置いたナイトミストを左上にスペリオルコール!さらに、手札からこのもう一枚のカードを右上にコール!」

「こいつ……まさか……」

 

男が何かを察したようにそう呟くと、ツカサは男を見ながらニッと笑った。

 

「感づかれちゃったかな?でも関係ないね!コールされた時、ネグロマール(8000)のCB!」

 

ツカサは自分のダメージとクリアのダメージを一枚ずつ裏返し、先ほど落としたカットラスを再び左下にコールした。

 

「カットラスはまたコールされた!つまり、ボクは再びSBで一枚ドローすることが出来る!」

「……手札消費なしで一気にユニットを三枚もコールしただと……!?」

 

自分の先ほどの言葉を完全に否定したツカサのプレイングに、ヨシキは声を震わせながらそう言った。

 

「これがグランブルーの真骨頂、『ヴァルホルン(無限復活地獄)』!悠久の時を生きる彼らから逃げることなんて出来ないよ!」

「くっ……」

 

やりたいことをやり、満足げのツカサを見た後、男は思わず顔をしかめるヨシキに視線を向けた。

 

(この状況に出来る最高のプレイング。イクシードのスペリオルライドによるSCとG3のコールが出来なければこの展開は出来なかった。……奴もただ者ではないと言うことか。チッ、ヨシキの奴。そんな一々馬鹿にみたいに驚いてるから舐められるんだ)

 

「出来れば案内するゾンビはサムライに変えたいところだけど、コストがないから仕方ないね。じゃっ、バトルに入るよ!」

 

ナイトミスト/イクシード/ネグロマール

カットラス//案内

 

「まずは案内するゾンビのブースト、ネグロマールでタフボーイにアタック!」13000

「ノーガード……!タフボーイは退却」

「普通に通したんだ……なら、イクシードでヴァンガードにアタック!」10000

「……ノーガード」

「ツインドライブ!!ファーストチェック……スケルトンの見張り番!スタンドトリガーだけどなぁ……。ネグロマールをスタンドさせたところでパワーは届かないし、もしパワー上げてあっちにもトリガーが出たら二列ともアタック出来なくなるしな~。案内するゾンビをスタンドさせてパワーはナイトミストに加えるよ。セカンドチェック……ルイン・シェイド」13000

「ダメージチェック、ラウンドガール クララ!ヒールトリガーだ!ダメージを回復し、パワーはVに加える!」15000

 

フラグを回収したツカサは手札で前を隠しながら声を上げた。

 

「うわぁ、本当にトリガー出たか~。っていうか回復出来るの?ボクのダメージは二点であちらさんは一点だけど」

 

再び答えを求めてくるツカサに、クリアは小さくため息をつくと口を開いた。

 

「たしかに回復出来るのは自分のダメージだけだが、ヒール発動の判定はお互いのダメージの総数で判断される。俺達も相手もダメージの総数は三点、したがって回復することは可能だ」

 

説明が若干面倒になっていたクリアに目もくれず、「ふーん」と呟きながらツカサはナイトミストをレストさせていった。

 

「とにかくアタックはさせてもらおう!カットラスのブースト、ナイトミストでヴァンガードにアタック!」18000

「それはやらせねぇよ!スリーミニッツでガードだ!」20000

「防がれちゃったか~。ごめんよ、クリア君。結局一点も与えられずに終わっちゃった」

 

一応タッグファイトの意識があるためか、ツカサは苦笑いを浮かべながら珍しくそうクリアに謝った。

クリアはその言葉を横で聞き、目を瞑りながら淡々と返した。

 

「そうだな。まぁ、手札を二枚削ったんだ。ダメージはこっちで稼いでやるよ」

 

グランブルー

手札5

表ダメージ0(0)

裏ダメージ2(1)

 

そのクリアの言葉を聞いた男は「ほう?」と呟きながら笑みを浮かべた。

 

「何か企んでいるという顔をしているな。だが、次は俺のターンだ。先に痛い目を見てもらおうか。俺のスタンド&ドロー」

 

引いたカードを確認した男は少し不機嫌そうな顔をしたが、大したことじゃなかったのか「まぁいい」と呟きクリアを見据えた。

 

「さぁ、絶望にうちひしがれろ!ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンド(11000)にライド!」

 

パワー11000、クロスライドとスタンドスキルを搭載した現環境最強のカードが今、姿を現した。

 

「クロスライドは出来なかったが、こいつの強さはそれだけじゃないんでなぁ。更に、左にベリコウスティ(9000)とバーをコール、バトルに入る!」

 

ベリコ/ジ・エンド/

バー/エルモ/

 

「エルモのブースト、ジ・エンドでVにアタック」17000

 

男がユニットをレストさせ、アタックを宣言する。それを聞いたクリアは手札を見ながら思案を巡らせる。

 

(RではなくVにアタックしてきた。リアガードにはVヒット時にコスト回復出来るベリコウスティもいる。もし手札にもう一枚ジ・エンドがあり、ペルソナを狙っているのであればまずはRにアタックし、こちらのトリガー発動を防ぐ。そしてペルソナでスタンドしパワーをベリコウスティに割り振り、ガード要求値の底上げとコスト回復を狙うはず。ということは奴の手札にジ・エンドはないと考えていいか。――だが、)

 

クリアは視線をジ・エンドの後ろのエルモに向けた。

 

(これを通してツインドライブ!!+エルモの手札交換でジ・エンドを引かれる可能性も否定しきれない。どうするか……)

 

手札、場、ダメージ、あらゆる情報から最善の一手を模索する、そしてクリアはその中でも特にダメージを注目した。

 

「ノーガードだ」

 

長考からのノーガード宣言。男はニヤリと笑いながらデッキに手を添えた。

 

「どうしようもなくノーガードしたか。それともガードは出来るが俺があれを持ってないと踏んでの勇気のノーガードか……。まぁ、どちらでも俺は構わないがな。ツインドライブ!!一枚目、バーサーク・ドラゴン。二枚目、ガトリングクロー・ドラゴン!ドロートリガーだ。一枚引き、パワーはベリコウスティに加える!」

「ダメージチェック、サイレント・トム。トリガーなし」

「アタックがヒットした時、エルモのスキルでガトリングクローを捨てドロー。ククク、さぁ処刑の時間だ。ジ・エンドのアタックがヒットした時、ペルソナブラスト!」

 

含み笑いを浮かべながら、男はそう言って手札からジ・エンドをドロップゾーンに置き、自分のとヨシキのダメージを一枚ずつ裏返した。

 

「『エターナル・アポカリプス』ドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンドは再びスタンドする!」


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