先導者としての在り方[上]   作:イミテーター

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理想の姿

「あの、ちょっといいですか?」

 

観客席に座りながら観戦していたユウに近寄るとカイリはそう尋ねた。

 

「なんでしょう?」

 

ファイト中にも関わらずそう聞いてきたカイリに疑問を抱きながらもユウは返事を返した。

 

「すいません、ちょっと気になったことがあって……。どうしてクリアさんがここにいるんですか?」

 

この問いにユウは何を今さらと言う表情でカイリを見たがすぐに何故このような問いをしたのかを察した。

 

「あぁ、そういえば貴方は何も知らずにただハジメさんを追ってここに来たのでしたね」

「はい……」

 

顔を赤めながら返事をするカイリ。

 

そんなカイリを見て微笑みながらユウはクリアが来た経緯を簡単に説明した。

 

「……つまり、ツカサさんのパンドーラー・イメージの力を確かめるためにクリアさんが選ばれたということなんですね」

「えぇ。ツカサの目的はヴァンガードの世界で最も強くなること。したがってその相手となればそれ相応の実力を持ち合わせていなければなりませんものね。そういう意味では、少し食い違いはありましたがピオネールである彼の存在はまさに適任と言えるでしょう」

「最も強くなるために……。じゃあ前にツカサさんが言ってたこの町を離れるというのもそれが理由で……?」

「えぇ。ようやく完成したパンドーラー・イメージを試した後、つまりこのファイトが終わった後、この力がピオネールにも通じると分かった段階で、次の大会に向けてツカサにはフー・ファイターの施設に向かう手筈になっております」

「ピオネールにも通じるとわかった段階で……。それじゃあもしこのファイトでクリアさんが勝ったら……」

「おそらく、貴方の考えている通りでしょう。運の要素はあれ、パンドーラーを用いても勝てないのであれば意味がありません。これで負ければツカサがこの町を離れることは無くなるでしょう」

「そうですか……」

 

それを聞いたカイリは俯きながらそう言った。ユウはこのカイリの反応に首を傾げる。

 

彼らは、ツカサをこの町に留めるためにここに来た。ならば、一縷の望みであれ可能性があるならば喜ぶはず。

 

なのにカイリはそれを聞いて不安な表情を浮かべていた。一体何故なのか……。

 

「どうしてそのような表情をなさっているのですか?貴方はツカサがいなくなっても良いと思っているのですか?」

「いえ!そんなことはないですけど……。ちょっと混乱してて……」

 

ユウの問いにカイリは慌てて否定し、視線をはずしながらそう言った。

 

「もし――クリアさんが勝ったとして、ツカサさんは今まで通り接してくれるでしょうか……?」

「……どうしてそのような考えを?」

「――もちろん、俺としてはツカサさんにはこれからも一緒にアネモネでファイト出来たらいいと思ってます。でもツカサさんは、それよりも純粋に強くなることを望んでいる。俺たちの勝手な考えを押し付けることは、ツカサさんにとって迷惑になるんじゃないかと思ったんです。いや、ツカサさんのことなのでもしかしたらまたいつもと変わらないかもしれませんが、心のどこかで何か未練が残ってしまったら俺のほうが普通に接することが出来なくなるっていうか……」

 

深刻そうに語るカイリ。最初にツカサがここを離れると聞いた時に抱いた感情をそのまま吐き出した。

 

そんなカイリを見ていたユウは突然「プッ」と吹き出すと笑いだした。

 

「うぇっ!?なんで笑うんですか!?」

 

自分は真剣に話しているのに馬鹿にされたように感じたカイリは困惑しながらもそう怒鳴った。

ユウは笑いを堪えながら息を整えると緩んだ口許のまま謝罪を述べた。

 

「……すいません……フフ、あまりに聞いたままの性格だったので……」

「聞いたまま……?」

「ツカサから貴殿方のことを聞いていると言ったのを忘れましたか?特に、貴方についてはよく話してましたよ」

「えっ、そうなんですか?」

 

カイリは意外そうにそう言った。無個性な自分なんかよりもクリアやハジメのほうがもっと話題は膨らむのではと思いながら。

 

ユウは微笑みながらカイリの顔を見て言った。

 

「えぇ、それはもう毎日のように。あまりに嬉しそうにに話すので私も楽しく聞かせてもらいました。意外でしたでしょうか?」

「はい……まぁ……。俺みたいな特に特徴のないやつのことの話なんか盛り上がるんですかね……?」

 

それを聞いたユウはまたクスクス笑うと、ツカサの話を思い出しながら語りだした。

 

「それは貴方が自分のことを知らないだけですわ。常日頃から他人の感情を敏感に感じとり、出来る限り穏便にすませようとする性格。かといって争いが生まれたら止めるわけではなく、下手に仲立ちをしようとして悪化すると思ってただアワアワ見てるだけ。かと思ったら他人に喧嘩を売って今までの態度が嘘のように相手を蔑むようなことをする。そんな貴方のことをツカサは面白い方だと言ってますし私もそう思います」

「なんか……あんまりいい風には聞こえないんですけど……」

 

苦笑いを浮かべながらカイリはそう言った。否定しないのは一応思い当たる節があったためである。

 

「あら、悪く言ったつもりではありませんよ?他人を思いやる優しい性格だけでなく、状況判断力、そして時として他人に厳しくするその様は人の理想像だと思いませんか?」

「そうですかね……」

 

疑り深そうに呟くカイリ。ユウは笑いながらファイトをしているツカサに視線を向けた。

 

「ツカサは言ってました。貴方はいずれ自分を越えるファイターになると。貴方のその長所がいずれ大成に導くと」

「俺が……ツカサさん以上に……?」

 

カイリもまた視線をツカサに向ける。こんな自分があれほどの激闘を演じるツカサに……?

 

するとユウはまたクスッと笑うと安心させるようにカイリに声をかけた。

 

「大丈夫です。このファイトの結果がなんであれ、貴殿方とツカサの関係に蟠りが生まれることはありません。貴殿方と接していたあの子はいつもイキイキしていましたもの」

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

ツカサのターン。

 

デッキから一枚引くと、そのカードの角を額に当てながらツカサは呟いた。

 

「この感覚、心踊る気分だよ。さて、君が思うに王に必要な資質とはなんだと思う?」

 

突然の問い。クリアは眉ひとつ動かすことなくツカサを見据えていた。

 

「ボクは演出が必要だと思うんだよね、いつも言ってるけど。強くないといけないのはそうだけど、結局人が見て面白いと思わないと他のファイトと変わらない。せっかくのMFS、いろいろやらなきゃね」

 

そう言うと、ツカサは額に当てていたカードを回転させながら投げる。

 

「気高き誇りの白き翼。禁忌の騎士、今ここに。ライド、The・ヴァンガード!」

 

役目を終えたような安らかな表情をする騎士王は、光に包まれる。

 

ヴァンガードサークルの発現とともに眩い光が騎士王から放たれ、翼の生えたペガサスのような馬に乗った銀色の騎士が現れた。

 

「孤高の騎士 ガンスロッド(9000)。ガンスさんには出てくるだけで人を湧かせるカリスマ性があるからね~。しかも、色んな仕事を任せられるイケメン。いや~、いつもアニメでイゾルデで捨てられてないな~」

「あぁ、もし手札にイゾルデとバロミデスがあったらガードを渋り思わぬプレミをしてしまうところをガンスさんなら任せてくれと言わんばかりにコストに出来るからね。いやぁ、やっぱり孤高の騎士は謙虚だなー」

「ガンスさんの悪口はそこまでっすよ!」

「お兄ちゃんとハジメさん、知らない間にかなり仲良くなってるみたいですね……」

 

シロウはショウとハジメのやり取りを苦笑いで見ながらそう呟いた。

 

「んじゃっ、冗談はここまでにしてこれからどうするか考えるかな」

 

ツカサはMFSによって写し出されたオーバーロードを見上げた後、視線をクリアが置いた手札に注目した。

 

「君の手札は四枚。内二枚はすでに把握済み。ダメージは四点だからクリティカルが出ればほぼ終了だよね。そしてボクはそのトリガーがなんであるかも把握済みだ。君の手札に最大でガード札が三枚しかないということで、早速ボクはこのスキルを使わせてもらうよ」

 

そう言うとツカサはダメージを二枚裏返した。

 

「ガンスロッドのスキル、【ラック・アロンダイン】。これにより、ガンスロッドのパワーは+5000、クリティカルを+1。単純だけど強力なスキルだ。そして……」

 

ツカサはさらに二枚のカードを手に取り、場に展開した。

 

「爆炎の剣士 バロミデス(10000)、試練の騎士 ガラハッドをコール。他のアタックにも余念がないようにしないとね。出来ればガラハッドはボールスにしたかったかな~?」

 

バロミデス/ガンスロッド/ガラハッド

といぷがる/リアン/マロン

 

展開されたユニット達。その強力な面々を見るハジメの額には汗が流れた。

 

「本当に余念がねぇ……。バロミデスはほぼ13000アタッカー。といぷがると合わせてパワーは22000。そうでなくてもガンスロッドは自前でクリティカルが上がってるからがしがし手札を減らしてくる……。でもなんでボールス?バロミデスでいいんじゃ……?」

「いやいや、彼はいいセンスしてるよ。バロミデスにボールス、そして湖の巫女にブーストされるガンスロッド。なかなかロマンチックなことを考えるよ、うん」

「とにかくツカサさんが有利なんですよね……。もしクリティカルトリガーが出たらバロミデスのアタックも止めないといけなくなりますし、クリアさん守れるでしょうか……」

「さすがに厳しいだろうな……。手札にはG3を抱えてるし、もし完ガでも持ってなかったらガンスロッドのアタックでかなりの手札を持ってかれちまう。ここばかりは運頼みするしかないな」

 

頷くショウをよそにハジメとシロウはファイトを見ながらそう話し合った。

 

「んじゃっ、いくよ!マロンのブースト、ガラハッドでベリコウスティにアタック!」17000

「ヴァンガードからじゃなくリアガードからアタック!?しかもリアガードのベリコウスティに……」

「おそらくガンスロッドのアタックを確実なものにするためだろうな。もし、手札にガードが15000しかないならここでインターセプトを潰しておけばクリアさんは最低ガードせざる終えなくなるしな」

「なるほど……、ツカサさんはこのターンで決める気なんですね」

 

悠然と構えるツカサ。ピオネールの肩書きを持つクリアに対してもこの圧倒的に優位なためか、かなり余裕の表情を浮かべていた。

 

しかし、クリアもこの不利な局面にも関わらず決して焦る様子を見せない。

 

「ノーガード、ベリコウスティは退却」

 

ベリコウスティをドロップゾーンに置く。クリアはそのまま視線をツカサのダメージに向けた。

 

(――あの時ベリコウスティのアタックを通したのはこのためか。おそらく俺のドライブチェックでG3があったのを見て攻めに転じるためにガンスロッドにライドしたのだろう。事実、俺の手札は少ない上にガードも僅か。よくて守れるのは一発が限度だろう。さて……)

 

クリアは今度はツカサ自身に目を向けた。

 

ツカサは今まさにアタックを行うところで、ニヤニヤ笑いながらユニットをレストさせていた。

 

「リアンのブースト、ガンスロッドでアタックだ!さぁ、焦って守らないと終わっちゃうよ!?」21000

 

テンションを上げながらアタックを宣言するツカサ。ガンスロッドのクリティカルは2。ダメージが四点のクリアはヒールトリガーが出ない限り、これを通すことは敗北を意味する。

 

クリアは、手札二枚とり、一枚はガーディアンゾーンに、一枚をドロップゾーンに置いた。

 

「ワイバーンガード バリィでガード。スキルにより手札のモニカを捨て、完全ガードだ」

「ありゃっ、完全ガードか。まっ、さすがに持ってるよね~。じゃっ、ツインドライブ!!だ!」

 

ツカサはチラリとドロップゾーンに置かれたモニカを見るとドライブチェックを行った。

 

「ファーストチェック、騎士王アルフレッド。セカンドチェック、まぁるがる。GETドロートリガー。一枚引いてパワーはバロミデスに上げるよ」

 

クリティカルトリガーはなし。力みながらドライブチェックを見ていたハジメとシロウはそれを確認すると力を抜いた。

 

バロミデスのパワーはブーストと合わせて27000。普通にガードするのであれば驚異になるパワーだが、ダメージに余裕があるためこれでガードをする必要性はなくなった。

 

ツカサもそれを認識しており、このバロミデスのアタックはノーガードされるだろうと考えていた。しかし……

 

(ブレイジングフレアじゃなくモニカを捨てたんだ……。アタッカーを確保するために残したのかな?まっ、こちらとしては次のターンにオバロとバーの19000アタックをされても困るし、どうせVでもノーガードされるなら……)

 

ツカサはスタンドしているバロミデスに手を添え、アタックを宣言した。

 

「といぷがるのブースト、バロミデスでリアガードのオーバーロードにアタック!といぷがるとバロミデスはブーストした時にG3が二枚以上あればパワー+3000!」27000

「ノーガード。オーバーロードは退却」

 

考える素振りもなくクリアはオーバーロードをドロップゾーンに置く。

 

手札二枚、内一枚がG3でこのアタックをガードするには完全ガードを使う以外ない。

 

「ふぅ、本当はこれで終わらせる気でいたんだけどな~。これでボクのターンは終了だよ」

 

ツカサは体重をスタンディングテーブルに預けながらそう言った。

 

クリアの場はまるで先ほどのツカサの場のように前列のリアガードがなくなった。ツカサの場合、手札が潤っていたため問題なかったが、クリアの手札は二枚。

 

次のターンに戦線を復活させることが出来なければ、ツカサとの圧倒的な手札の差に押し潰されてしまうだろう。

 

ツカサ

 

手札6

ダメージ表0

ダメージ裏4

 

クリア

 

手札2

ダメージ表2

ダメージ裏2

 

「スタンド&ドロー」

 

引いたカードを確認しスタンディングテーブルに伏せる。もはや当たり前のような行為だが、今回は少しだけ違った。

 

「封じられし力を解き放ち、今爆炎の力を得て蘇れ。ライド、The・ヴァンガード」

 

瞬間、クリアの後ろに巨大な炎柱が迸り、それはあのオーバーロードを飲み込んだ。

 

「ブレイジングフレア・ドラゴン(10000)」

 

炎柱が消えるとそこには多彩な武装を纏ったドラゴンが現れ、自分の復活を喜ぶかのようにドラゴンは雄叫びを上げた。

 

このライドに一瞬我を忘れていたツカサだったが、すぐにそのクリアのプレイングに疑問を抱いた。

 

「ちょっと驚いたな~。まさかこんな状況でライドするとはね」

 

目を擦りながら信じられないように言うツカサの発言に賛同するように観客席からも声が上がった。

 

「ツカサ先輩の言うとおりマジでなんでライドしたかわからない……」

「そうですよね……。そうでなくても手札は少ないですし、ライドに手札を使うくらいならリアガードに展開したいですもんね……。お兄ちゃんはどうしてか分かる?」

「うーん、彼の手札を見てみないことにはなんとも言えないかなー。でも、無意味なことをするとは思えないし彼のこのあとの動きを見ていようか」

 

ショウの言葉にお互いの顔を見合わせたあと、ハジメとシロウはファイトに視線を戻した。

 

「なんだ?お前の好きな演出だぞ?もっと喜べよ。言っておくが、俺は勝つためのテンプレに沿ってやっているだけだ」

 

クリアは、さらに手札を取り場にコールした。

 

「ブレイジングフレアをコール。この一枚分のディスアドバンテージはお前のカードを道ずれに取り返す。リアガードのキンナラのCB」

 

そう言うと、クリアはダメージを一枚裏返し、キンナラをソウルに入れた。

 

「スキルにより、お前のマロンを退却してもらおうか。さらに相手のユニットが退却された時、ブレイジングフレアのパワーは+3000」

「まさか……二枚目のブレイジングフレアとはね~。マロンは退却するよ。さて、次は何を退却させるんだい?」

 

顔に手を当て、ツカサは笑いながらそう呟いた。その表情はユニットを破壊された悔しさよりも、クリアの予想を上回るプレイングへの興味のほうが大きかった。

 

「よくわかってるな。ブレイジングフレアのSB」

 

クリアはそう宣言するとソウルにあった五枚のカードをドロップゾーンに置いた。

 

「かげろうの退却は基本的にG2以下だが、ブレイジングフレアは対象に制限はない。バロミデスを退却してもらおう」

 

かげろうの得意とする除去を遺憾なく発揮するクリア。

 

ツカサの場には二つの穴が空き、退却したことで二体のブレイジングフレアはさらにパワーを上昇させる。

 

「ベリコウスティを再びコール。手札はなくなったが、これで十分だ」

 

ブレイジング/ブレイジング/ベリコウスティ

バー/ゴジョー/

 

「……見たっすか?あれ」

 

驚愕のあまり声を震わせながらハジメは呟いた。

 

「うん、モニターから写し出されてるからバッチリ見えたよ。彼、さっきの手札の内、二枚ともブレイジングフレアだったようだね」

 

前髪を上げながらショウはそう言った。

 

「あんなこと普通出来るっすか……?手札にG3が二枚もあるにも関わらず、完全ガードのコストに使わないなんて……」

「いや、必要な運用だったと思うよ。たかが5000ガードを握ってても結局ガード出来ないし、ツカサ君がリアガードを狙ってくることを考えればアタッカーとなるユニットを温存するのは間違いじゃない。ただ、気持ちの問題さ。安らぎを求めて普通にG3を捨てるか、G3を残し、茨の道を進むか。結果的にクリティカルは出ず、ブレイジングフレアにライドすることで活路を導いた」

 

前髪を下ろし、吐息を吐き出しながらショウはクリアを見た。

 

「彼には勝利に続く道にしか興味がないようだ。案全牌には見向きもしないその姿勢は全く運ゲーをする気は無いのに、彼自身はヴァンガードは運ゲーと言って憚らない。まったく、こうも面白い人材集うとは世の中狭いように思えるよ」

「お兄ちゃんも含めて……だね」

 

ボソッと呟きながらシロウは笑みを溢す。

 

こうして様々な出会いを得て、シロウはこれまでで最高に充実していた。

 

そして感謝した。自分を快く受け入れ、こうした出会いをくれたカイリとハジメに。

 

そして志した。激闘を繰り広げる最強の二人のファイターを。いずれそこにたどり着こうと。

 

「ゴジョーのブースト、ブレイジングフレアでヴァンガードにアタック」23000

 

Vによるアタック。ツカサのダメージも四点であるため、ヒールが出ない限りクリティカルが出れば勝負は決する。

 

ただし、ツカサの場合この段階でヒールが出るかどうかわかっているため、明確にガードをするかどうかを考えなければならない。したがって、

 

「閃光の盾 イゾルデでガード!ガンスロッドを捨てて完全ガードだ!」

 

ガードを宣言することはヒールがないということを意味する。

 

「ツインドライブ!!アインス、魔竜導師 ヤクシャ。GET、クリティカルトリガー。全てリアガードのブレイジングフレアに。ツヴァイ、フレイムエッジ」

 

勝負を決する力を秘めたクリティカルトリガー。

 

トリガーの乗ったブレイジングフレアのパワーはブーストと合わせて29000。パワー9000のガンスロッドはこのアタックにガードを最低でも25000も必要とする。

 

「これは会心のクリティカルトリガーっすね……」

「ここでガンスロッドの9000のパワーが響いてきたようだね。もし完全ガードがないならこのアタックでかなり手札を持っていかれることになる」

 

ドライブチェックのカードを伏せ、クリアはツカサの様子を伺う。

 

「……クリティカルね~。それはそれは恐ろしいことだ~」

 

ツカサは何故かフラフラ左右に揺れながら手札を見ていた。

 

(……なんだ?)

 

クリアは目を尖らせる。今でこそ思う、ツカサの様子がおかしいということに。

 

いや、おかしいのはいつものことだが、今までのそれとは違いツカサはどことなく睡魔に襲われているような素振りをしていたのだ。

 

時折見せる目を擦る動作。それだけでなく、顔を擦ったり、首を振ったり、あからさまに何かに耐えているように思えた。

 

そう考えていると、一向にアタックしてこないクリアに気づいたツカサは声をかけた。

 

「どうしたの~?また考え事かな?ふぁ~、結構こっちは暇なんだけどな~」

 

退屈そうに欠伸をするツカサ。これがわざとなのか、本当なのかは定かではない。

 

「……ベリコウスティでヴァンガードにアタック」9000

 

目を瞑りながらアタックを宣言する。しかし、このアタックはあまりにもリスクが高いことは誰の目から見ても明白だった。

 

「……なんでベリコウスティでヴァンガードにアタックしたんすかね……。ここはリアガードのガラハッドにアタックして次のブレイジングフレアのアタックを確実に通したほうが確実なんじゃ……」

 

顎を擦りながら呟くハジメ。ショウは一度ハジメに視線を向けた後、再びファイトに視線を戻した。

 

「さぁて……なんでだろうね。六点目のヒールでも警戒したのかもしれないし、他に何か狙いがあるかもしれない」

「でももし六点目にヒールが出るってわかってたらVのアタックを通すんじゃないんすか?ツカサ先輩の手札がどうであれ、最初に通せばトリガーが発動すれば後のガードも楽になるし、完全ガードも温存出来るし……」

「クリティカルトリガーダブルを警戒したのかもしれないじゃん?まぁ、理由はいくらでも作れるし後は成り行きを見届けようじゃないか」

 

前のめりになりながら言うハジメを遮るようにショウは言った。ツカサもこのアタックに疑問を抱いたものの、ニヤリと笑うとノーガードを宣言した。

 

「ノーガードだよ。ダメージチェックはアラバスター・オウル。クリティカルトリガーだ。効果は全てVに」14000

最悪の展開。これで次のブレイジングフレアのアタックが楽になり、これには観客席から落胆の音が響いた。

 

しかし、クリアは特に気にする様子もなく次のアタックに移る。

 

「ベリコウスティのスキルにより、コストを表に。バーのブースト、ブレイジングフレアでヴァンガードにアタック」29000

「まぁるがる、エレイン、ガラハッドをインターセプトでガード!」34000

「……エンドだ」

 

クリアが静かに呟くと、ツカサに不意に囁いた。

 

「なんか気を使わせちゃった感じかな?わざわざベリコウスティからアタックしてくれるなんてさ。おかげで、やりたいことが出来るようになったよ」

 

確認を取るように言うと、ツカサはジッとクリアは見据えた。

 

鋭く輝く赤い瞳に映る自分を見ながら、クリアもまたツカサを真っ直ぐ見据える。

 

「君がくれたチャンス、きっちりいかさせてもらうよ。これが――ファイナルターンだ」

 

ツカサ

 

手札2

ダメージ表1

ダメージ裏4

 

クリア

 

手札2

ダメージ表2

ダメージ裏2


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