先導者としての在り方[上]   作:イミテーター

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今回も無駄に解説してるところがありますが、当時の環境の話な上にヴァンガード初心者の方用に書いた物なので流し読みしていただけるといいかもです。10000文字以上ありますし・・・

どうでもいいけど当時に比べて今は本当にパワーインフレが激しいなと常々思う


探し物

いつもと同じアネモネ店内。

 

タイキは一人で最近新しい発売された『双剣覚醒』のパックを開けていた。

最近になってアネモネに良く足を運ぶようになったのは、シロウやツカサといった知り合いが増えたことが起因していた。

一足遅れて店内に入ってきたハジメは、一人で座っていたタイキを見つけると近寄った。

 

「先に来てたのか、タイキ。なんだ、お前も双剣覚醒買ったんだな」

 

タイキはハジメが来たのを見計らったかのようにため息をついた。

 

「はぁー。つれーわー。マジ金無くて1パックしか買えなかったわー!」

「へぇー、俺は今回の弾はそんなに欲しいカード無かったから試しに15パック買ったくらいかな」

「えーそんなに?だはぁー、マジ金ないってつれーわ!これじゃー大したカード出ねーだろーなー。っていうか出るわけないわー」

 

(なんか……うざいな)「で、何が出たんだよ」

 

「あー、やっぱ気になる?俺もさー、今開けたばっかりだから何があるかわかんねーんだよなー。まー、大したもん出ねーだろーなー」

 

タイキはそう言ってカードを確認していくとわざとらしく驚いた。

 

「うわっ!やっべー、SPジエンド出ちゃったよ!マジっべー!たった1パックでSPジエンド出ちまったわ!こりゃっべーわ」

「あぁ、そうか……そりゃえぐい。良かったな……」

 

ハジメは棒読みでそう言った。

その時、今度はシロウが店内に入ってきた。

 

「あ、ハジメさん、タイキさんこんにちはですー。タイキさん、本当にありがとうございます!こんなに凄いカードくれるなんて、凄く太っ腹なんですね!」

 

そういうと、タイキはきらびやかな加工が施された三枚のカードを出した。

 

「くれたって……お前……」

 

シロウのカードを見たハジメは白い目でタイキを見た。

 

「……あー、マジつれーわー……。本当につれー……」

 

何かのたかが外れたタイキは無表情でそういうと少しずつ机に倒れていき、最終的に動かなくなった。

 

(そうとう剥いだんだな……。ようやくSPジエンドが出たようだけど、……アドが取れたのかどうか……)

 

ハジメはその真っ白になったタイキを哀れみを込めて見つめた。

 

「えっ、あれ……。僕、何かしましたですかね……?」

 

ぼろ雑巾に成り果てたタイキをフリースペースの隅の方に放置し、ハジメとシロウは二人でファイトをしていた。

 

「今日はカイリさん来ないんですか?あ、それはノーガードです」

「あぁ、なんでも今日は友達に掃除当番を変わって欲しいからとかなんとかで遅れるか最悪これないらしいぜ。宿題もやらないといけないし仕方ないわな。あ、GETクリティカルトリガーダブル……」

「ちょっ!?それはズルいですよ!初心者に対して遠慮なさすぎです!」

「あー悪い悪い!でも俺も好きでGETしたわけじゃないから仕方ないだろ?ヴァンガードなんだし……」

「うっ……それで納得できなくもないですが……」

 

シロウも慣れてきたのか、二人は親しげに話しながらファイトしていた。

 

ダブルクリティカルであっという間に負けてしまったシロウは煮え切らない様子でカードをデッキに戻していくのを苦笑いで見ていたハジメは、不意に店の扉が開いたことに気づいた。

 

(うわぁ、絶対カードゲームなんかやってないだろってくらい美人な人が来たな……)

 

ハジメが思わずそう思ってしまうほど、長い黒髪とライダースーツを身に纏う女性は、店内に入ると辺りをキョロキョロ見渡していた。

 

「悪い、シロウ。ちょっと行ってくる」

「えっ?」

 

ハジメは適当にデッキにカードを戻すと、荷物はそのままにデッキだけを持ってその女性の方へ向かった。

 

「誰かお探しっすか?お姉さん」

 

ハジメが親しげにそう言うと、女性は探すのをやめ、ハジメのほうに視線を向けた。

 

「当たり。あたし、今ここの店で一番強い人とやりたいんだけど、あなた知ってる?」

 

(今……一番強い……)

 

ハジメは一度辺りを見渡すとニヤリと笑い、彼女に言った。

 

「多分俺だと思うっすよ」

 

ハジメの言葉に、女性はじっとハジメを品定めするように見ると、何かを悟ったよう様子で口を開いた。

 

「いいわ、それじゃあやりましょうか。ファイト」

「はい、お願いします」

 

ハジメは女性に見えないところでガッツポーズをとった。

 

「タイキさん、起きてくださいよー」

「あぁ……、コスモロード……君はどうしてそんなに輝いているの……?ん?シロウ、いたのか。見てみろ、このコスモロード、輝いてるだろ?こいつを100円で買わねーか?」

「何いってるんですか!それジエンドですよ!」

「ジエンド……?あぁ、そうか。犠牲にしたものが多すぎて目が霞んでたぜ……」

「もうしっかりしてくださいよー」

 

瀕死のタイキをなんとか起こしたシロウは、先ほどの女性とハジメが向かい合うようにして座ったのを見た。

 

「ほら、ハジメさんが知らない女の人とファイトするみたいですよ」

「なん……だと……?っていうかなかなかなべっぴんさんだなー。ハジメもなかなかやるねー」

「……なんか発言が親父臭いですね……」

「……これ以上俺のメンタルを潰してどうしたい?」

「すいません……」

 

ハジメ達はお互いのデッキをシャッフルすると相手に返し、デッキから五枚引いた。

 

「そういえば、お姉さんはなんて言うんすか?さすがにこのままお姉さんって言うのはなんかおかしな感じしますし。あ、俺は里見ハジメって言うっす」

 

さりげなく名前を聞くハジメに女性は、ハジメの言動から諦めたように小さく呟いた。

 

「……ハズレね……」

「えっ、なんか言ったんすか?」

「大したことじゃないよ。あたしはミヤコ。尾崎ミヤコ。ちゃっちゃとやりましょうか。ヴァンガード」

「ミヤコさんっすね、お願いします!」

 

「「スタンドアップ、ヴァンガード!」」

 

「幼虫怪人ギラファ!」

「ラーク・ピジョン」

 

お互いFVを表にすると、先行であるハジメがデッキに手を添えた。

 

「それじゃ俺から行かせてもらうっすよ!安定の蛹怪人ギラファにライドっす。さらに、幼虫怪人に蛹怪人がライドした時、スキル発動!デッキからエリート怪人ギラファを手札に加えるっす。さらに蛹怪人は……」

「いいよ、大体わかってるから」

「あっ、そうっすか。んじゃ俺のターンはこれで終わりっす」

 

ハジメがそう宣言すると、ファイトを観戦していたシロウは困った顔をした。

 

 

「僕スキルわかんないですけど……」

「大したスキルじゃねーさ。ただ蛹怪人がVの時、ソウルに幼虫怪人がいたらパワーが2000上がるっていうもんだ」

「前、カイリさんとファイトしてたコウって人の使ってたシャドウパラディンに似てますね」

「おう、他にも似たようなのがかげろう・ノヴァ・ディメポリに存在してんだ。このギミックが初めて公開されたのがそのシャドウパラディンのフルバウだったっていうのもあって、これを【フルバウサイクル】って言われてる。指定されたG1にライド出来ればデッキからG2を手札に加えられっから手札が一枚増えてさらにG2に確定でライド出来る」

「なるほど……、じゃあ初手にその指定のG1があればわざわざG2を握ってる必要がないんですね」

「そういうこったな。さらにこれらはソウルにこのギミックのカードがあれば相手ターン問わずパワーが上がるんだ。ついでにG1はリアにコール時、手札のG3を捨てることでデッキからそのギミックのG3を手札に加えられんだ。こいつらは基本的にV用のカードしかないから出来る限りライドしていきたいってわけだ」

「凄い自己完結したカードですね……。事故回避も出来ますし……」

「まー、悪いところもあるけどな。さっきも言ったみたいに指定のG1にライド出来なきゃ意味ないし、そのG1もリアじゃーパワー6000と貧弱なんだよなー。しかもそれを四積みしないといけないし、他にFVがないクランはこのギミックの使用を強いられっちまうから構築の幅が狭められんだ」

「デッキの内容がわかったら対抗策を考えやすいですもんね……」

 

シロウとタイキがそうこそこそ言っている間に、ターンはみやこへと移行する。

落ち着いた物腰でドローする姿彼女は気品さを感じさせる。

 

「あたしのターン、ドロー。ならあたしも安定のパープル・トラピージスト(6000)にライド」

 

シロウはミヤコの言葉に首を傾げた。

 

「パワー6000にライドするのが安定なんですか?それにあのFV、ライドしても特にスキルが無さそうですけど……」

「おう、シロウは本当に勉強熱心だなー。トラピは俺もそこまでペイルムーンのことがよくわからんから何とも言えんが、あのラークピジョンは手札が無いときにあのカードをガーディアンサークルにスペリオルコールできんだ」

「なるほど、面白いスキルですね。G0だからガード値は10000有りますし、相手の意表もつけますね」

「自分も忘れそうだけどな。基本的にペイルムーンはソウルからのトリッキーなスキルが多いから、これは面白いファイトが見れそうだな」

 

ミヤコは続けて、カードをコールする。

 

「さらに、スカル・ジャグラー(7000)をヴァンガード裏にコールするよ。スカルがコールされた時、SC」

 

スキルにより、マッドキャップ・マリオネットがソウルへ入った。

 

「へぇー、もう双剣のカードを取り入れてるんすね。しかもなかなかマイナーな……」

「悪い?」

「決して全くそんなことはないっすよ!」

 

慌てて否定するハジメをよそ目に、ミヤコはアタックを宣言した。

 

「スカルのブースト、トラピでヴァンガードにアタック」13000

「まぁ、最初なんでノーガードっすよ」

「ドライブチェック、レインボーマジシャン。ドロートリガーゲット。一枚引いてパワーはヴァンガードに加えるよ」

 

トリガーの発動にハジメは苦笑いを浮かべた。

 

(まぁ、あのSCでトリガーを吸わなかった分出る確率は高くなってたからな……)「ダメージチェック、ブラッディヘラクレス、トリガーなしっす」

 

「これであたしのターンは終わり」

「じゃあ俺のスタンド&ドロー!こっからメガコロのえげつない戦い方でいかせてもらうっすよ!エリート怪人ギラファ(9000)にライド!V裏にステルス・ミリピード(6000)をコール!」

 

ハジメのライドを見たタイキは思い出したように口を開いた。

 

「そーいやフルバウサイクルのG2、G3について言ってなかったな。G2とG3もソウルに特定のカードがいればパワーが+1000するっていうのは言ったが、もう一つ、ヴァンガードの時にスキルがあんだ」

「ヴァンガード専用のスキルですか?」

「おうともよ、特にG2ギラファのスキルはその中でも最強を誇ってんだぜ!」

「そうなんですか!?」

「まずは、メガコロニーについて説明すっか。基本的にレストしたユニットはスタンドフェイズにスタンドするのは知ってるよな?メガコロニーはそのスタンドを禁止することに長けたクランなんだ」

「つまり、動きを制限するクランなんですね」

「そう、レストしたユニットはアタックもブーストもできねーから、もしユニットが全て埋まってる場合なら単純にガードに使うカードを温存出来る」

「……でも、上書きして新しくカードをコールすればブーストもアタックも出来ますよね?」

「それはそれでうめーんだよなー。それは間接的にそのユニットを除去したことになるからな。スタンド封じは除去よりもコストや条件が軽かったりすっからそれで手札を消費させられるのは大きなアドとれんだよ」

「でもそれは相手が選択出来るんじゃ……」

「そこが虫の嫌らしいところよ。相手は自ら自分のユニットを圧殺して場を整えるか、諦めてそのままアタックするかを選らばなけりゃいかんくなる。どちらも自分にとって不利益だから苦渋の決断を強いられる。そういう相手をじわじわいたぶるのがメガコロなのさ」

「ハジメさんじゃないですけど、えげつないですね……」

「ただし、スタンドトリガーにはとことん弱いんだけどな」

「あー、なるほど。あくまでスタンドフェイズのスタンドを禁止するだけで、もしスタンド封じしてもダメージチェックでスタンドトリガーが出たらスタンドしちゃいますもんね」

「そーいうこったな。ついでに言うと、メガコロは相手がレストしていることでパワーが上がるカードもあるから、スタンド封じをしなくてもスタンドトリガーが出ることは避けたいわけだ。で、スタンド禁止は除去よりも制限緩いとは言ったがCIP(登場時に使用することが出来る)スキルは同じコストのCB2なんだ。他はコストが違ったりするが、基本的にCBを必要とするもんがほとんどだ。だが、その中でもG2ギラファのスキルはおかしい。なんといってもそのスタンド封じをノーコストで使用出来んだからな!」

「ノーコスト!?ということは条件さえ整えばいつでも何度でも使えるってことですか!?」

「おうともよ。条件はこのカードがVでこのカードのアタックが相手Vにヒットした時にヒットした時に使用出来る。G2だから次のターンにはライドされるだろうこのカードのスキルはよくて一回がいいところだなー

「なるほど。それにアタックがヒットしないといけませんしね」

「いや、それに関しては全然問題ねーんだなー。まずこの序盤でガードするのは、よほど手札にトリガーでもかんでなきゃしねーし、何より大事なのはあのステルス・ミリピードだ」

「今Vの後ろにコールされたカードですね」

「おう、あれはメガコロのVをブーストした時に相手のユニットが全てレストしてたらパワーが4000あがんだ」

「元のパワーを合わせれば10000……。G2ギラファもパワーが1000上がってるから20000でのアタックが出来るというわけですね……。確かにこれはガード出来ませんね……」

「後これはG3にライドした時のことを考えてるが、ワンチャンライド事故してG2のままでもあのカードならそのまま勝つってことがよくあるからな……。ソースは俺」

「いやぁ……虫さんは強敵ですね……」

「何よりメガコロニーってクランがサブクランに於いて一二を争うほど地力が高いんだよなー」

「サブクラン?ということはメインクランとかもあるってことですか?」

「そりゃそーさ。メインクランってーのは所謂主人公クランのことだ。比較的出番が多いからその分収録されるカードも他に比べて多い。今のところ公式はロイパラ・かげろう・ノヴァ・オラクルをさしてるが、待遇的にシャドパラもそれに含まれるだろーな。で、サブクランはその他のクランのことだが、こっちは逆に収録されるカードの種類が少ないから、メインクランに比べて戦略の幅が狭められんだ。特に、それが顕著に出てくるのがトリガー配分だ」

「デッキに入ってるヒールやクリティカルなどのトリガーの枚数のことですね」

「そう、トリガーの種類が多ければそれだけデッキのコンセプトに合わせて投入枚数を検討できっからな。一般的には、とりあえず入れるヒールトリガーは四枚。残り12枚に何のトリガーを入れるかが肝になってくんだ」

「クリティカルかスタンドかドロー……。ドローはあんまり沢山入れちゃうと防御が薄くなっちゃいますけどないと攻め手が確保しにくくなりますよね……」

「だな、だからドローも入れすぎ少なすぎず四枚が妥当だろーな」

「後はクリティカルかスタンド……。相手がメガコロならスタンドも良いかもしれませんけどヴァンガードをやってみて、スタンドよりクリティカルのほうが使いやすいですから……」

「おうおう、さすがに察しがいいな!ヴァンガードは六点ダメージを与えれば勝てんだ、四点から一気に勝ちをとれるクリティカルは結構入れたいから八枚入る。これがオーソドックスなトリガー配分だ。種類はあれど、メインクランでもこの配分をするクランは結構いる」

「なるほど……でもそれってそれだけのトリガーの種類があれば出来ますけど、枚数が足りないクランでは出来ませんよね?」

「まさにそこがメインクランとサブクランの差さ。メインクランは豊富な種類のトリガーから構築することが出来るのに対し、一部のサブクランに関しちゃあ端から配分が固定されてるものもあんのさ」

「トリガーの種類が固定されたら相手も戦略をたてやすいですもんね……」

「もちろんクランによっちゃースタンドが生きてくるクランも沢山あるが、安定性を考えると下手にスタンドを積むよりクリティカルをいれたほうが楽なんだよな。で、メガコロのトリガー配分だが、この☆(クリティカル)8引4治4の配分が可能なんだ。この時点で他のサブクランとは一線を画したっていえるわけだ。他にこの配分が出来るサブクランはメガコロを含め、現時点(双剣覚醒発売まで)で二つしかない」

「とりあえずメインクランに足並みを揃えられたってことですね……」

「それに加えてメガコロには10000ブーストのミリピード、不安定だが11000VになれるG3ギラファ、この時点で攻撃面は申し分ねーが、さらにスタンド封じで防御にまで抜け目がない点がメガコロの優遇さを物語ってるわな」

「もし後列をスタンド封じしたら11000のヴァンガードにアタックすることすらままならなくなりますもんね」

「ついでに言うと、メガコロのカードには使いにくいカードってーのがほとんどねーんだ。メガコロもそこまで収録されてねーからだが、これは他のクランからすっとかなり異常なことなんだよな……」

「ハジメさんのデッキの強さはよく分かりました……。僕とやるときはいつも別のデッキでやってたのはいい勝負をするために手加減してたんですね……」

「あいつは知り合いには甘いところがあるみてーだからな。俺以外」

「いや、そんなことはないと思いますけど……」

 

苦笑いを浮かべたシロウだったが、突然こちらに振り向いたハジメに驚いた。

 

「そろそろ始めていいのか?そこそこ待ってんだけど……」

「「あ、どうぞ」」

 

呆れ顔でそう二人に言うと、ハジメは再び視線を戻した。

 

「中断されたっすけど、気を取り直して行くっすよ!左上にブラッディ・ヘラクレス(10000)をコール!このヘラクレスでヴァンガードにアタック!」10000

「レインボー・マジシャンでガード」11000

「ですよね。では本命!ミリピードのブースト、エリート怪人ギラファでヴァンガードにアタック!」20000

「ノーガード」

「ドライブチェック!アイアンカッタービートル。トリガーなしっす」

「ダメージチェック、スカルジャグラー」

「じゃあ、エリート怪人ギラファのアタックがヴァンガードにヒットしたので後ろのスカルジャグラーさんには次のターンまでおねんねしてもらうっすよ」

 

ミヤコは特に困った様子もなく、軽く返事をした。

 

「そう。じゃああたしのターン、スタンド&ドロー。ジャンピング・ジルにライド」

「ジルのパワーは9000、俺の場には10000のユニットしかいないっすから、ブーストしないと通らないっすよ?まぁ、トリガーが出れば問題ないっすけどね」

 

ハジメはニヤリと笑ってそう言ったが、次のミヤコの行動にその余裕の表情は消えた。

 

「フフフ、そうね。うまくトリガーが出ればアタックは通るかもね。でも、あたしはそういうギャンブルあんまり好きじゃないのよ。ブーストさせてもらいましょうか?」

 

ミヤコは手札からカードを一枚取ると、左下にコールした。

 

「パープル・トラピージストをコール。トラピのスキル、自分のリアガードを一枚ソウルに入れて、ソウルからトラピージスト以外のユニットをスペリオルコールできる。あたしはレストしてるスカルをソウルに入れて、そのままスカルをV裏に。もちろん、ソウルから出たこのカードはスタンドしてコールされるし、コールされた時にスカルのスキルも発動できる。というわけでSC(ターコイズ・ビーストテイマー)させてもらうよ」

 

ミヤコの場は何事も無かったように全てのユニットがスタンドし、同時にソウルまで一枚増やしたのだ。

自分の思惑も軽くあしらわれ、ハジメは先ほどまでのヘラヘラした態度を改めた。

 

(レストしたユニットをスペリオルコールすることでスタンドさせるっていうのは特に難しいことじゃない……。でもこの発想はある程度カードに慣れなければ生まれないものだ。この人……見た目とは裏腹にかなりカードに慣れてる……)

 

ハジメは真剣な目付きでミヤコを見た。

 

「フフ、いい目になったじゃない?さらに左上にバーキング・ケルベロス(10000)をコール。トラピのブースト、バーキングでヴァンガードにアタックするよ」16000

「シェルター・ビートルでガード!」20000

「スカルのブースト、ジルでヴァンガードにアタック」16000

「それはノーガードっす」

「ドライブチェック、ミッドナイト・バニー」

「ダメージチェックっす。あちゃあ、シャープネル・スコルピオ……トリガーが無駄っちゃったのは痛い……」

「あたしのターンはこれで終了よ」

「俺のスタンド&ドローっす。真打ち登場!ライド、邪甲将軍ギラファ(10000)!ソウルにエリートがいるんでパワーは常時11000!そして右上にアイアンカッタービートル(10000、)左下にメガコロニー戦闘員B(6000)をコールっす」

 

「うおっ出たな、メガコロニー屈指の嫌がらせカード……」

「あの戦闘員Bですか?っていうかメガコロ、嫌がらせばっかりですね……」

「それがコンセプトだからな、皆もメガコロニー使いには気をつけろよ!」

「誰に言ってるんですか……」

 

メガコロ

 

手札2

ダメージ表2

 

前列

ヘラクレス/邪甲将軍/アイアンカッター

後列

戦闘員B/ミリピード/

 

 

ペイル

 

手札4

ダメージ表1

 

前列

ケルベロス/ジル/

後列

トラピ/スカル/

 

「アイアンカッターでリアのケルベロスにアタックっす。スキルで12000なってるっすがまぁ関係ないっすね」

「スパイラル・マスターでガード」15000

「ミリピードのブースト、邪甲将軍でヴァンガードにアタックっす!」21000

「ノーガードよ。その様子じゃあ将軍のスキルも使わないでしょうしね」

「ぐぬぬ……ツインドライブ!!ファーストチェック!ヴァイオレント・ヴェスバー。セカンドチェック!レイダー・マンティス!GETドロートリガーっす!一枚引いてパワーはヘラクレスへ」

「手札が充実してきたみたいね。ダメージチェック、レインボー・マジシャン。ドロートリガーGETよ。あたしも一枚引いてパワーはヴァンガードに加えるわ」14000

 

「うわぁ」と呟きながらハジメは顔を渋らせる。

 

「プラマイ0か……でも手札的にワンチャンある……!戦闘員Bのブースト、ヘラクレスでヴァンガードにアタックっす!」21000

「そう思い通りにはいかないよ。お菓子なピエロでガード」24000

 

「あーあ、守られちまったか。残念」

 

残念とは口では言ったが、他人事のような様子のタイキにシロウは口を開いた。

 

「結局あの戦闘員Bのスキルって何なんですか?見た感じブースト時そのアタックがヒットしたら使えるスキルっぽいですけど」

「メガコロにブーストした時限定だがだいたいそんな感じだな。もしあれ当たってれば、ハジメはCB1でスタンド封じが使えたんだよ」

「あぁ、お得意のやつですね。なるほど、たしかスタンド封じに必要なコストは基本的にCB2ですから軽いコストでスタンド封じなんかさせたくないですもんね」

「ただ、アタックがヴァンガードにヒットしないといけねーから、あんまり融通が効かねーんだよな」

「充実過ぎる気もしますけどね……リアガードにブーストしても使えますし……。パワーが6000なのが救いですね」

 

「ワンチャンなかった……これで俺のターンは終了っす」

 

残念そうに宣言するハジメに、平静を装っているミヤコも少なからず焦っていた。

 

(ドロートリガーが出てなかったらガード出来なかった……。別人みたいだけど、大口叩くだけのことはあるようね)

 

お互い実力を認めあったところで、ターンはミヤコに移行する。

 

「あたしのスタンド&ドロー。宵闇の奇術師ロベールにライド!メイン開始時、ロベールのSC(バーキング・ケルベロス)、スキルでデッキトップを確認する」

 

「え!あれデッキの上を見ることが出来るんですか!?トリガーがあるかどうか分かるじゃないですか!」

「あぁ、しかも確認した後デッキの一番下に置くかそのままにするかを選択出来んだ。模擬的な詰め込みだわな」

「うわ……しかもあれインビンと同じSCのスキル何ですよね……。毎ターン使えるなんて強すぎですよ……」

 

理不尽だと訴えるように言うシロウにタイキは苦笑いを浮かべた。

 

(もしシロウがアマテラスみたらどんな反応するんだろうな……)

「それだけじゃない」

 

タイキがそう考えていると、突然ハジメが発言したことに思わず後ずさりした。

 

「うわっ!お前突然解説側に入ってくんじゃねーよ!」

「解説ってお前ペイルのことほとんど知らないだろ!メガコロばっかり説明して負けフラグ建てんな!」

「仕方ねーだろ!周りで使ってるやついねーんだから?」

 

忘れられたと思ったミヤコは不機嫌そうに喉を鳴らすと我に返ったハジメは慌ててミヤコに視線を移す。

 

「このカードはそのままにするわ。解説も大事だから別に気にしないけど、やるならやるでさっさとやってくんない?」

 

「すっ、すいません!お前のせいで怒られただろ!」

「どーみても俺のせいじゃねーだろ!」

 

「さっさとする!」

「「は、はい!」」

 

二人は直立不動に大きな声で返事をした。

このやり取りを側で見ていたシロウはまるで他人を装ったようにタイキ達との距離をとった。

 

(僕は関係ない……僕は関係ない……)


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