スーパーロボット大戦//サイコドライバーズ   作:かぜのこ

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αIIー2「ダブル・スラッシュ」

 

 

 新西暦188年 △月◇日

 地球圏、衛星軌道上 《ナデシコB》

 

 宇宙での戦いが一段落し、αナンバーズは混乱の続く地上へと向かうことが決定した。

 

 合流したイングは、甲児やカミーユらから手厚い歓迎を受けていた。やはり、旧SDF艦隊及びプリペンターのメンバーからの信頼は篤いらしい。

 ブルックリンが見あたらないことに目敏く気がつき、「またさらわれたのか、アイツ」と見も蓋もないことを言い放ち、クスハを困らせていた。相変わらず場をひっかき回しているな。

 

 その後、イージス事件での宣言通り、イングはゼンガー少佐に雪辱戦を挑んだ。生身でな。

 結果はさすがゼンガー少佐と言ったところだったが、本人満足そうだった。

私と違って社交的なイングだから、新入りともすぐに打ち解けている。やはり、ドラグナーチームの三人とはさっそく意気投合していた。

 だがイング、私の目の前で飛鷹葵や館華くららにコナをかけるとはいい度胸じゃないか。何が「麗しいお姉さま方」だ。

 

 落ち着いたところで、私たちはお互いの近況を報告し合った。

 私が語る様々な組織との接触の記憶に、「やっぱりかぁ……」などとなにやら複雑そうな表情をしていたイング。やはり、何か独自に掴んでいたらしい。

 一方、イルムガルド・カザハラ中尉、リョウトやリオとともに戦っていた奴の話だと、月は酷いことになっているようだ。

 身も蓋もない言い方をすれば、ギガノス帝国、ギシン星間連合先見隊、ガルファ帝国の前線基地「螺旋城」の三つ巴だ。確かに酷い。

 ギガノスが本格的に地球を制圧しにかからない理由はこれか。異星人勢力との攻防にリソースを削がれているのだな。

 バーム星人との交渉失敗を理由に、「腐敗した連邦政府に地球を任せてはおけない」として決起したギガノスには皮肉な結果だ。

 結果的にはこちらに有利に働いているとは言え、連邦軍基地や月面都市が攻撃されているのも事実。なるだけ早く、連中を地球圏から叩き出してやらねば。

 

 強化改造された《エクスバイン・アッシュ》。ただ、TーLINKフレームを以てしてもイングの念に追従するのが精一杯のようだ。

 なお、見た目上はわからないが、ゾル・オリハリコニウム製の装甲を皮きりに各部を新設計のもの――というか、リョウトが基本コンセプトを打ち出し、建造途中だった新型《ヒュッケバイン》、“MkーX”のものに換装されているらしい。

 もともとリョウトはイングが扱うことを前提に、《アッシュ》のアッパーバージョンとして設計していたため、互換性があったのだとか。もっとも、未だ完成していないパーツが大半で、無理を押しての実戦投入らしいがな。

 こんな無茶な処置に至ったのはひとえに、イングの《アッシュ》に対する愛着故だろう。梁山泊の自室には、《アッシュ》の自作プラモデルが大量に飾ってあるくらいだし。

 

 なお、今回の戦乱を受け、イングはエーテル通信機でラ・ギアスにいるマサキに来援を要請したようだ。

 確かに《サイバスター》は心強い援軍になるだろうが……、大丈夫なのか?

 

 

 

 新西暦188年 △月■日

 地球、極東地区近海

 

 現在、地球に降りたαナンバーズは移動中だ。

 《ダイモス》の基地、ダイモビックで物資の補給を受ける予定である。また、諸事情で地上に残っていた《ゲッタードラゴン》と残りのゲッターチームも合流することになっている。

 

 で、主にアラドのために、今日は小隊戦闘をメインとした訓練を行った。

 元ティターンズでPTパイロットという共通項もあり、なし崩し的に面倒を見ていたアラドがイングの参入を受けて正式に部下に収まったためだ。

 国際警察機構からの出向という扱いでαナンバーズに参加している私たちは、それなりの権利を有している。イングが中尉で私が少尉待遇だ。

 もっとも奴は自分が正式に軍事訓練を受けていないことを理解しているから、だいたい私に指揮権を委譲している。

 

 しかし……、改めてみるとアラドの操縦は酷かった。目も当てられん。

 感覚派と言えば聞こえがいいが、ようは行き当たりばったりで場当たり的に動いているということだ。落ちこぼれというのも宜なるかな。

 イング曰わく「アイツはヒュッケバインよりゲシュペンストの方が向いてる」とのこと。私もそう思う。

 《ゲシュペンストMkーII改》をマオ社に置きっぱなしにしていたことが悔やまれるな。あれば、貸してやれたのだが。

 無い物ねだりしても仕方がないし、私たちがアラドをビシビシと鍛えてやればいいだけだ。

 

 

 

 新西暦188年 △月◎日

 地球、極東地区日本 ダイモビック周辺

 

 バーム星人軍にちょっかいを出されつつ、αナンバーズは極東地区を中心に転戦している。

 バーム人と言えば、クスハやさやか、ファなどは竜崎とエリカの関係にやきもきしているようだが、私に話題を振らないでほしい。他人の恋愛などに興味はないのでな。

 

 さておき、またぞろやってきたギシン星間連合からの刺客を撃退した。

 まあ、倒れた敵の詳細などどうでもいい。ましてや、明神、ツワブキサンシローとともに対決したイング曰わく「木っ端超能力者」のことなど。

 その部隊には、《レイズナー》と同じSPTと呼ばれる星間連合軍の機動兵器部隊も参戦していた。

 部隊の指揮官はゴステロとか言ったか?嫌な気を放つ男だったが、我々αナンバーズの敵ではないな。

 

 で、その戦闘の際にアイビスが民間人の少女を救助した。

 名前はイルイ。記憶喪失らしい。

 しかしイルイは、イングと顔を合わせてすぐ「お兄ちゃん……?」と呟き、それを受けたアイビスから「ホントに兄弟なの?」と訊ねられた奴はやや困惑していた。

 ただ、子供は嫌いではないというか、兄貴風を吹かしたいらしいイングはそれからというものイルイによくかまっている。向こうも存外懐いている様子だ。

 私は某かの刺客かと密かに警戒していたのだが、どうやら杞憂だったようだな。

 

 あと、今回の出来事を通じて明神が《ゴッドマーズ》の構成機を自在に操れるようになった。今回の敵部隊の指揮官で、敵の目を欺いて接触してきた実の兄から授けられたのだとか。

 また、《ゴッドマーズ》がギシン星の神話に伝わる「遙か宇宙の彼方からやってきて、皇帝を痛めつけた最古の大邪神」の姿を模したものだと判明した。モチーフが邪神なのはギシン星の支配者、ズール皇帝に対する当てつけだろう。

 ともかくこれで、反陽子爆弾の危険性が薄れたな。

 

 

 

 新西暦188年 △月¥日

 地球、極東地区日本 Gアイランドシティ

 

 Extra-Intelligence (エクストラインテリジェンス)こと「ゾンダー」及び機械帝国ガルファの機獣、さらには謎の巨大戦艦――「ガイゾック」の「メカブースト」が入り乱れた「粒子加速機イゾルデ」での戦いが明けて翌日。

 私たちαナンバーズは、東京市臨海を埋め立てGアイランドシティに滞在している。

 

 ここに来て、さらにメンバーが増えてきた。

 ざっとおさらいしてみよう。

 

 新たにαナンバーズと協力関係を結んだ「GGG」から正式参入したのは、GBRー1《ガオガイガー》と獅子王凱ら「勇者ロボ」。そして特別隊員天海護少年だ。

 サイボーグ同士、凱と宙はさっそく意気投合していたな。

 なお、GGGはGアイランドシティに偽装されたベイタワー基地をαナンバーズの拠点として提供してくれるという。どこぞの無能な防衛長官とは大違いだ。

 

 余談だが、実はこのGGG、国際警察機構とも協力関係にあるらしい。私は大河幸太郎長官から聞くまで知らなかったが。「オレは知ってたぞ」とドヤ顔した馬鹿(イング)には一発お見舞いしておいた。

 現在、梁山泊で秘密裏に建造された「GSライド」を用いた勇者ロボが調整中だそうだ。

 

 こちらも合流を決めたGEARからは、ベガ副指令を引率に《GEAR戦士電童》のパイロット、草薙北斗と出雲銀河。それに《セルファイター》のパイロット、吉良国進、天才少女エリス・ウィラメットらがαナンバーズにやってきた。

 銀河は武術をたしなむようで、やや慢心が気になるものの、さっそく竜崎に空手の手ほどきを受けていた。一方、北斗はイングの同好らしく、αナンバーズの機体に目を輝かせていたな。

 エリス・ウィラメット、大学卒業レベルの頭脳を持つ天才少女とのことだが、中身は憧れのホシノ・ルリを前に興奮する普通の娘のようだ。イング曰わく「どこぞの赤毛ザルとは大違いだ」。よくわからんが、後でどうなっても知らないならな。

 風貌は怪しさ満点なベガ副指令だが中身はマトモらしく、さっそくアムロ大尉と部隊編成について打ち合わせしていた。

 最後に吉良国だが……あれはヤマダと同類だな。

 

 なお、イゾルデではガルファに対抗する手段となり得る「データウェポン」、《レオ・サークル》なる存在を確保したとか。

 

 謎の特機と戦艦――《ザンボット3》と《キングビアル》とそれに搭乗する神一族もまた、αナンバーズに協力を表明した。やはり予想通りだったな。

 彼ら神一族は「ガイゾック」に滅ぼされた「ビアル星人」の末裔であり、怨敵が地球に来襲することを予期して対抗戦力を整えていたという。

 なお、彼らの先祖が地球にたどり着いた理由だが、「機械の女神の導き」と代々伝わっているそうだ。

 正直、αナンバーズ各艦の格納庫は酷いことになっていたので、《キングビアル》の参入は有り難い。

 《ザンボット3》のメインパイロット、神勝平の名前を聞いたとき、思わずイングを二度見してしまった。部屋を家捜ししたことは言えないから、問いつめることはできなかったが。

 

 そういえば、イングがやけにガイゾックの旗艦に突っかかっていたな。

 「トラウマイベントは御免だぞ」などと言って猛攻をかけ、瞬く間に致命傷を与えて追い返していた。あれはなんだったんだ?

 

 「竹尾ゼネラルカンパニー」の《トライダーG7》。

 こちらは零細とは言え民間企業所有の特機(それもどうかと思うが……)なのだが、今回は万丈が多額のポケットマネーで長期契約を結んだのだとか。さすがだな、破嵐万丈。

 パイロットにして社長の竹尾ワッ太は11歳、前記の銀河たちや勝平とは同級生。子供だ。

 ただ、バルマー戦役時にも《トライダーG7》で地球防衛の一翼を担っていたようで、戦闘に対する心構えは図らずも出来ている模様である。

 

 

 バラエティー豊かな新入メンバーを迎え、ベイタワー基地の「ビッグオーダールーム」でささやかな歓迎パーティーが開かれた。

 改めてみたが戦闘員非戦闘員に関わらず、子供が増えたな。まるでジュニア・スクールのような光景だったぞ。

 まさか、少年兵である私やイングが年長の部類に入ることになろうとは夢にも思わなかった。イングなどは「賑やかになっていいじゃないか」と呑気にしていたが、そういう問題ではない。

 大河長官やシナプス艦長、アムロ大尉、バニング大尉、ベガ副指令などの良識ある大人たちは、彼らになるだけ有人機と戦わせぬようにとコンセンサスを取っている。

 脱出装置が優秀とは言え、未来ある子供たちを殺人者にするわけにはいくまい。……まあ、地球圏の状況を見れば、戦う意志と力があるなら立ち向かうべきだというイングの意見も筋が通ってはいるがな。

 

 さておき、多種多様の特機の参入に、イングの悪癖が久々に爆発した。

 《電童》《トライダーG7》は元より、《氷竜》、《炎竜》、《ボルフォッグ》の写真を撮りまくって彼らに迷惑をかけたり。合体形態の《ガオガイガー》、《超竜神》、《ザンボット3》などは《アッシュ》のカメラデータから画像を抽出する手の入れよう。

 やはりと言うかなんと言うか、コレクションにした上で、自作プラモデルの資料にするつもりらしい。……あとで私にも回せよ。

 

 なお、この歓迎パーティーにおいて、クスハが“例のアレ”を披露して被害者を増加させていたことを記しておく。

 

 

 

 新西暦188年 △月※日

 地球、極東地区日本

 

 先日の戦闘で現れたガルファのGEAR、《騎士GEAR凰牙》に敗北を喫した銀河も立ち直ったようだな。

 また、ベガ副指令が《凰牙》の登場に酷く動揺していた。イングには理由に心当たりがあるらしく、「よくあること」と述べていた。

 

 さておき、αナンバーズに、光子力研究所及び新早乙女研究所が開発した新たな特機が届くという知らせが入る。

 しかし輸送中、ミケーネ帝国に奪取されてしまった新型機《ミネルバX》だったが、ミケーネの手を逃れた《ゲッターQ》と《ドラグナー3型》の活躍で無事取り戻された。

 またその戦闘中、《凰牙》との戦いにおいても交戦した鉄甲龍の八卦ロボ、《火のブライスト》《水のガロウィン》が現れる。αナンバーズの戦力を削ぐためだろう。同モチーフの《氷竜》《炎竜》が対抗心を燃やしていたな。

 さらにラスト・ガーディアンの白い特機――《天のゼオライマー》が再び乱入し、恐るべき力で八卦ロボを撃破、次いで現れた《月のローズセラヴィー》とやり合い、両機は撤退していった。なんだったんだ。

 

 とまあ、ここまではいいのだが。

 《ミネルバX》と《ゲッターQ》の女性型ロボを見たイングの一言。

「《ファルケン》におっぱいつけたら、お前も少しは女の子らしくなるんじゃねーの?」

 余計なお世話だ、バカっ!

 だいたいアイツは(以下、イングに対するグチが続く)

 

 

 

 新西暦188年 △月◆日

 地球、極東地区日本

 

 リリーナ・ドーリアン外務次官がガイゾックとの交渉に乗り出したとの知らせが入り、現場に急行した。

 この前の邪魔大王国に続き無茶なことをと思ったが、実際無茶なことだった。何せ、ガイゾックの指揮官、キラー・ザ・ブッチャーに《バンゾック》から突き落とされそうになったのだから。

 ヒイロ・ユイに間一髪で救われ、事なきを得たが。まったく無茶をする。

 ドーリアン外務次官救出の際、イングはお得意のテレポーテーションで《バンゾック》の内部に進入し、散々に暴れ回って手ひどい一撃を与えた。

 あれだけのダメージを受けたら、しばらくは行動できないだろう。

 

 その戦闘後、ふと思い立って「星間連合はともかく、ネオ・ジオンやギガノス帝国ならテレポートで潰せるんじゃないか?」とイングに尋ねてみた。

 奴の返答は「やって出来ないことじゃないが、暗殺はαナンバーズ的じゃないからやらない」だそうだ。なんだそれ。

 あれか、シャアやギガノス、木星帝国を馬鹿にしているんだな。……まあ、実際のところ超能力には限りがあるらしいから出来る限り温存しているのだろう。

 

 

 

 新西暦188年 △月▼日

 地球、極東地区日本 富士樹海

 

 ラスト・ガーディアンから緊急事態の一報を受け、急行するαナンバーズ。

 恐竜帝国の軍勢に劣勢に立たされていた《ゼオライマー》を保護した。

 どうやらまたぞろ八卦ロボ、《月のローズセラヴィー》を倒したらしい。イングが、「名ゼリフ聞きそびれた!」とアホなことを叫んでいたが、さておき。

 戦闘後、ラスト・ガーディアンからGEARを通じてαナンバーズに協力要請が入った。有り体に言えば、《天のゼオライマー》が参入した。

 元は鉄甲龍により建造された八卦ロボの一体であり、「次元連結システム」という超科学で稼働している。あの《メイオウ攻撃》の破壊力はおぞましいものがあるな。

 

 鉄甲龍は《ゼオライマー》の奪取を目的としているようで、体のいい厄介払いをされた感もある。

 パイロットは秋津マサトと氷室美久。

 美久はともかく、秋津の方は戦闘中の残虐な所行が響いているのだろう、甘ちゃん揃いなαナンバーズのメンバーからもやや遠巻きにされている。また、破嵐万丈は二人について何か知っているらしい。

 さらに珍しく、イングは《天のゼオライマー》ともども秋津マサトを警戒しているようである。どちらにしろ、私には軟弱な民間人の男にしか見えなかったな。

 

 

 

 新西暦188年 △月♪日

 地球、極東地区日本 

 

 かねてから準備していたデータウェポンたちが好む物質、「メテオキューブ」を用いて残るデータウェポンを一挙に集める作戦が発動した。

 発案者のエリスは天才少女の面目躍如と言ったところか。

 

 だが、結果から言えば成功したとは言い難い。ガルファに嗅ぎつけられ、一体奪われてしまったからだ。

 新たに銀河が《ガトリングボア》を、北斗が《ドラゴンフレア》を。そして《凰牙》が《ブルホーン》を得た。

 聞くところによるとデータウェポンとは心の形質により契約者を選ぶらしく、

その差によるものだろう。

 《凰牙》に新しい能力が追加されたの

は痛いが、どちらにしろ警戒すべき《ファイナルアタック》は一発しか撃てないのだ、与し易い相手であることに変わりはない。

 

 データウェポンが増えて、艦内はますます騒がしくなった。しかし、イルイを筆頭に、チビたちが戯れている様子は見ていて和やかな気分になれた。

 

 

 

 新西暦188年 △月⊿日

 地球、極東地区日本 Gアイランド・シティ

 

 今日は珍しく、戦闘のない退屈な一日だった。

 なので、作りかけのプラモデルにゆっくりと熱中できた。フルスクラッチの《ビルトファルケン・タイプL》、まだまだ完成にはほど遠い。

 

 気分転換に部屋を出て基地内をぶらついていたら、談話室に年少組が屯していたのを見つけた。……のはいいのだが、そこにイングが違和感なく混じっていたのが問題だな。いちおう、保護者役のつもりではあったんだろうが馴染みすぎだ。

 

 どんな話の流れだったかは忘れたが、銀河のアイドル好きという一面が発覚した。ちょっと意外だ。

 なお、じゃりん子たちに混じっていたイングはエイーダ・ロッサという最近売り出し中のアイドルが気になるとか。「中の人的にレアだから」とか「ぽんこつだし」とか「出演できるか心配」などともらしていた。

 

 その後、シャワー上がりにイングに呼び止められた。

 どこから聞きつけたのか、《ビルトファルケン》とその兄弟機によるパターンアタック「TBS」に対抗して、《アッシュ改》とのコンビネーションアタックを作ろうと提案されたのだ。

 私は当初、「機体のパワーが釣り合わないだろう」と難色を示したのだが、「Rー1でできたんだからファルケンとでもできるだろ。アーマラ、お前とじゃないと駄目なんだ」と熱心に要求されて、思わず折れてしまった。

 ま、まあ、お前がそこまで言うならやってやろうじゃないか。うん。

 とりあえず、両機の性能と頻発するモーションデータの比較から始めてみるかな。

 

 

 

 新西暦188年 △月▲日

 地球、極東地区日本 大阪 

 

 唐突に、恐竜帝国の本格日本侵攻が開始された。

 未来世界でも現れた奴らの本拠地、「マシーンランド」により占領された大阪を解放すべく、急行するαナンバーズ。

 だが、マシーンランドのマグマ砲と現地の一般市民を肉の盾とする「人間の砦」に攻め倦ね、撤退を余儀なくされた。

 下劣極まりない作戦だ。奴らめ、こちらが手段を選んでいるからと舐めた真似をしてくれる。

 この代償は高くつくぞ、トカゲ共……!

 

 

 

 新西暦188年 △月*日

 地球、極東地区日本 大阪

 

 私とイングは、獅子王凱を除いた生身の戦闘を得意とするメンバーを率いて敵要塞マシーンランドに対し、テレポーテーションによる奇襲を仕掛けた。

 奴ら、αナンバーズを撃退したと高をくくっていたのだろう、全く警戒していなかった。無論、本隊による陽動もあったが無様なことだ。

 馬鹿め、国際警察機構のエキスパートを舐めるなよ。十傑集や北辰集とやり合うより、粟を食ったトカゲ共を撃ち殺す方が何百倍も簡単だった。

 さらに、《ガオガイガー》の空間湾曲デバイス《ディバイディングドライバー》によりマシーンランドと都市部を空間的に分断、結果住民は解放された。

 頼みのマシーンランドの機能を停止させられ、人質も失い、追いつめられた恐竜帝国の指導者、帝王ゴールは機動兵器による決戦を挑んできた。

 ……その決戦において、ゲッターチームの巴武蔵が戦死した。《ブラックゲッター》のゲッター炉を暴走させ、《無敵戦艦ダイ》諸共自爆したのだ。

 私は、特に個人的なつき合いはなかったが、バルマー戦役以来の戦友だったイングはことさらショックを受けていた。

 

 「オレがもっとうまくやれていれば」などと戯けたことを吐いたので、おこがましい考えだと叱り飛ばしてやった。

 例えお前が全知全能に近しい力を持っていたって、独りで出来ることには限界があるのだと。そんな惰弱で傲慢な考えは、全身全霊を尽くして逝った戦友に失礼だと説経を垂れた。我ながら、似合わない真似をしたものだ。

 

 

 

 新西暦188年 △月☆日

 地球、極東地区日本 阿蘇

 

 邪魔大王国の拠点を強襲した。

 簡潔に言えば、邪魔大の指導者ヒミカを討ち取った。

 ただ、ククルや幹部たちは逃してしまったことが少し気がかりだな。

 

 

 

 新西暦188年 △月□日

 地球、極東地区上海 梁山泊

 

 オルファン封じ込め作戦「バイタル・ネット作戦」及び北米、アリゾナ基地から核燃料と核弾頭を奪ったネオ・ジオンを追撃するため、αナンバーズは部隊を分割した。

 

 一方私とイングは、《ナデシコB》に同乗してギガノス帝国やその他の敵性勢力に対応するために地球を奔走することになった。まずは量産型へのフィードバックのため、《ドラグナー》を重慶基地への移送だ。

 《ナデシコB》には、イングが保護者をすることになったイルイも一緒に同乗している。

 そのイルイだが、別れる間際、イルイはアイビスに自分のつけていたネックレスを渡していた。いつの間にそんなに打ち解けたんだ。イングが「百合百合な関係なんて、お兄ちゃん許しませんよ!」と馬鹿を言っていたので黙らせている。

 イングの奴、武蔵の戦死から多少は立ち直ったらしい。まだまだ空元気なようだが、落ち込んでいる姿など見たくもないので安心した。

 

 その道すがら、ガルファの襲撃を受けていた梁山泊に立ち寄り、調整の終了した《風龍》《雷龍》と共闘、合流して私たちの指揮下に入った。

 だが、どちらも《氷竜》《炎竜》兄弟に比べるとAIの発達が未熟なように思える。まあ、そこは追々学んでいけばいいだろう……イングに妙なことを吹き込まれないように、目を光らせなければ。

 

 艦内では、ケーンらが「これで軍隊生活ともおさらばだ」と浮かれている。

 ……騒がしい奴らだったが、いざいなくなるとなると少し寂しい気もするな。

 

 

 

 新西暦188年 △月∧日

 地球、極東地区中国 地球連邦軍重慶基地

 

 意外なことになった。

 重慶に到着した《ナデシコB》。現地に先乗りしていたプラート博士との遭遇で一悶着あったものの、無事《ドラグナー》各機を引き渡した。

 《ナデシコB》は無事認証を解除したケーンたちを降ろし、ギガノスの部隊の掃討に向かったのだが、その裏をかかれた形で重慶基地はギガノス帝国の「グン・ジェム隊」に襲撃を受ける。急ぎとって返す《ナデシコB》。そこでは、三機の《ドラグナーカスタム》がギガノスのメタルアーマーと激闘を繰り広げていた。

 ケーンたち三人は、プラート博士により強化改造を施された三機の竜騎兵に乗り込んでギガノスと戦っていたのだ。

 結局、元サヤというわけだ。奴らも、なんだかんだ言って地球圏の現状には思うところがあったのだろう。

 イングとイルイがうれしそうに三人を迎えていたのが……、また騒がしくなるだけだろうに。何がうれしいのやら、だ。

 

 

 

 新西暦188年 △月ℓ日

 地球、極東地区日本 京都

 

 日本地区に戻った《ナデシコB》にギガノスの蒼き鷹から秘密会談の要請が舞い込んだ。

 明らかな罠であり、実際罠だった。

 そこに待ち受けていたのは仕掛け人の北辰集だけではなく、BF団のエージェント、呼炎灼(コ・エンシャク)。BF団との決戦で私とイングが倒したはずの強敵だった。

 ベガ副司令と協力してなんとか撃退したが、恐るべき相手だった。

 やはり、BF団は壊滅してはいないのだな。いつか近いうちに、奴らとは雌雄出を決さねばなるまい。

 

 

 

 新西暦188年 △月Å日

 地球、極東地区日本 沿岸地帯

 

 ドラグナーチームが哨戒任務中、グラドスの地上部隊と遭遇、本隊到着の後そのまま本格的な戦闘に突入した。無論、返り討ちにしてやった。

 連中は「ギガノスの汚物」と呼ばれているらしく、下品な奴らだった。いつぞやのグラドス人といい勝負だな。

 

 

 

 新西暦188年 ◎月∑日

 地球、極東地区日本 沿岸地帯

 

 引き続き、日本周辺の哨戒任務で今度は星間連合のSPT部隊と交戦した。指揮官はエイジの知り合いだったらしい。

 後に聞いたところによると、実の姉の婚約者らしい。ドロドロだ。

 

 その指揮官、ゲイルとか言ったか、はなかなかの実力者でSPTのサイズと相まってかなりてこずらされた。音に聞くオーラ・バトラーもこのように厄介なのだろう。

 もっとも、ゲイルは発動した《レイズナー》の《VーMAX》で海の藻屑と消えたがな。

 

 

 

 新西暦188年 ◎月#日

 地球圏、衛星軌道上 L4宙域

 

 連邦軍の防衛網をすり抜けてくる異星人勢力を迎撃するため、宇宙に上がった《ナデシコB》。

 かつてバイオハザードを起こして封鎖されたというとあるコロニーのほど近く、そこには星間連合の大部隊が待ちかまえていた。

 その指揮官の名はマーグ。明神の実の兄だ。

 以前、敵の目を欺いて接触を試みてきた時とは打って変わり、明神=マーズに対して明確な敵意をもってこちらに攻撃してきた。

 

 まともに戦えない明神を守りつつ、私たちはなんとか奴らを撃退した。

 兄弟だけあって、マーグはイングに匹敵するほどの超能力者だった。私としては敵なら討てばいいと思うのだが、そうもいかないようだ。

 実の兄の豹変に明神はかなり動揺していたが、イングによると「念が濁っていたから洗脳されてるな」。曰わく、機械的にしろ医学的にしろ超常的にしろマインドコントロールを施された人間の念には決まって歪みがあるのだという。

 なお、奴は例として《凰牙》のパイロットを上げており、さらっと「あれが典型例」と述べていた。なんというか、いろいろと台無しな気がするのは気のせいか。

 だがあのとき、一瞬私に気遣わしげな視線を向けたのはどういうことだ?

 

 

 

 新西暦188年 ◎月♬日

 地球、極東地区日本 Gアイランド・シティ

 

 バイタルネット作戦及び北米ネオ・ジオン追撃作戦を完遂し、αナンバーズが再び集結した。

 《ナデシコB》隊が言えたことではないが、両隊ともに激戦をくぐり抜けてきたようだ。

 

 北米を経由し、宇宙に向かった部隊に参加していたアラドが、例の《ファルケン》の兄弟機、新型PT《ビルトビルガー》に乗り換えていた。どうやら元相方と宇宙で一悶着あったらしいな。

 

 また、ヴィレッタ大尉がプラズマ・ジェネレーター仕様の《ヒュッケバインMkーIII・タイプL》(かつて、リョウトがバルマー戦役で使用していた機体だ)でαナンバーズに参加してくれた。心強い味方だ。

 なお、SRXチームの他のメンバーは別の任務に就いているらしい。

 

 さらに、レーツェル・ファインシュメッカーを名乗るPTパイロットが参入した。

 怪しい。極めて怪しい風体だ。

 アラドの《MkーIII》を大尉と同じ仕様にし、パーソナルカラーらしい黒・赤・金に塗り、「トロンベ」と呼ぶ変人である。

 大体なんだ、「謎の食通」ってネーミング。偽名だと隠す気がないのか。

 ゼンガー少佐とは親しい仲のようだが、余計に怪しいと思ってしまった私は悪くない。

 後にイングからSRXチームのライディースの兄であると教えられた。……とりあえず、お前は何でそんなことまで知ってるんだ。

 

 さておき、ここG・アイランドシティではついに浮上してしまったオルファンの対策会議が行われることになっている。

 我々αナンバーズは、その警備に駆り出された。

 こういう任務は私とイングにはお誂え向きだ。ここは一つ、超一流のエキスパートがどういうものか見せてやろう。

 

 

   †  †  †

 

 

 復活したメガノイドの策略により、アーマラとイングは万丈、そして故郷を滅ぼした宿敵を討つためボソンジャンプで現れたアキトとともに亜空間に閉じ込められてしまった。

 ボソンジャンプやイングの強力な超能力も通じない完全な閉鎖空間で、彼らは援軍もないままの戦いを強いられる。

 《無敵戦車ニーベルング》を駆るメガノイドの司令官、コロス。《メガボーグ・サンドレイク》、《メガボーグ・ベンメル》、《メガボーグ・ミレーヌ》の三人のメガノイドに、ソルジャーの大軍勢が押し寄せる。

 万丈の旧友、コマンダー・キドガーこと木戸川が旧友の危機に反旗を翻して助太刀に入るも、コロスによって粛正されてしまう。

 メガノイドの猛攻に追い詰められたイングは、起死回生の切り札を切った。

 

『アーマラ、あれをやるぞ!』

「! テストも無しにかっ?」

『オレの相方、“レディ・マグナム”なら出来るだろ?』

「……フッ、いいだろう、やってやる。言い出したからにはしくじるなよ、イング!」

『あたぼうよッ!』

 

 二人のやりとりに、メガボーグと化したコマンダー・サンドレイクが嘲笑を浮かべる。

 

『何をするのか知らないが、ヒトの分際で超人間たる我々に楯突くとは身の程知らずめ』

『勝手にほざけ!』

「メガノイドの分際で、私たちを舐めるなよ」

『っ! 小娘、貴様ぁ!』

『黙れ! 貴様の邪念、オレたちが断ち斬る!』

 

 檄するサンドレイクを征し、イングはお決まりの口上とともに念を解き放つ。

 《アッシュ改》のコクピット周囲に設置されたTーLINKフレームが念を関知して、超常的な力を発揮し始めた。

 

『TーLINK、ダブルコンタクト! シーケンス、SDE!』

「テスラ・ドライブ、出力最大! オーバー・ブーストッ!」

 

 《アッシュ改》から伝播した念動波が《ビルトファルケン》に伝わり、背部の翼が最大可動形態に変形する。

 テスラ・ドライブの真骨頂、慣性制御による急加速で飛び出した《ファルケン》を見送り、《アッシュ改》は眼前に重力の穿孔を生み出した。

 

『まずはオレからだ! グラビトン・ライフル、ランダム・シュート!』

 

 格納空間から呼び寄せられた《グラビトン・ライフル》から文字通りランダムに放たれる幾条もの重力波の合間を縫うように、紅い荒鷹が最大戦速で飛翔する。

 同士討ちを恐れない大胆な機動は、二人の信頼の証と言えた。

 

「影すら踏まさん! パターンセレクト、S・D・E……エンゲージ!」

 

 テスラ・ドライブの軌跡を残し、《ビルトファルケン》が猛烈なスピードでメガボーグの背後を奪う。

 左手の《バスタックス・ガン》を掲げ、速度を乗せて突撃する。

 

「ストレイト・アタック! 撃ち抜く!」

 

 先端部の突起を突き刺し、最大出力のテスラ・ドライブの推進力により《ダイターン3》と比する巨体を。

 ゼロ距離砲撃を繰り返し、メガボーグの分厚い装甲に傷を刻んでいく。

 

「そちらに送るぞ、イング! マキシマム・シューートッ!」

 

 最大限までチャージした《バスタックス・マッシャー》が、巨体を上方へと一気に押し出した。

 その先には、オレンジの外套をはためかす手負いの騎士。翠緑の念動光を迸らせた《アッシュ改》が攻撃モーションを取って待ち受けていた。

 

『ハァァァァッ、セイヤーーッ!』

 

 強靭な念動フィールドを右足のつま先、その一点に収束集中させた跳び蹴りをメガボーグにお見舞いした《アッシュ改》は、そのまま敵の巨体を足場にして跳躍。ひらりと宙返りをした後、テスラ・ドライブで慣性制御、再び肉薄する。

 両腰の《ロシュダガー》をマニュピレータの間に挟んで引き抜き、起動させた。

 

『ロシュダガー! 六爪流だ!』

 

 展開させた六本の光刃を突き刺し、そのまま振り抜いて前面の装甲をズタズタに切り刻む。

 《ロシュダガー》を脇に投げ捨てつつ、《アッシュ改》は左腕の《ストライク・シールド》から伸びた柄を握りしめた。

 

『セイバー、アクティブ! 剣風一陣ッ、瞬殺百閃ッ!』

 

 引き抜いた《TーLINKセイバー》による超高速斬撃。パーソナルトルーパーの限界を超越したデタラメな機動で、刃が縦横無尽に繰り出される。

 斬撃の檻、惨殺空間に囚われた哀れな獲物にもはや逃れる術はない。

 

『凶鳥は、無明の闇を斬り裂いて飛ぶ! アーマラ!』

「まだ終わらんッ! 翔ろッ、ファルケン!」

 

 一旦モーションを終了し、イングが合図する。するとアーマラは《ビルトファルケン》を急速接近させ、《バスタックス・ガン》の紅黒い砲撃を次々に放り込む。

 再び光速斬撃の嵐を刻む《アッシュ改》の間隙を縫い、縦横無尽に飛び回る《ファルケン》。そんな複雑な機動の中でも、アーマラは狙いを違わず、正確な射撃でサンドレイクを追い詰める。

 剣撃と砲撃で散々に痛めつけた後、両機は同時に攻撃を停止、メガボーグを挟み、ちょうど対角線上に距離を取った。

 

「さあ! とどめだ!」

『TーLINK、フルコンタクトッ! 灰は灰に、塵は塵に! 貴様のエゴを、その邪念ごと断ち斬ってやる!』

 

 ラスト・アタックを決めるべく、更なる念を解き放つアーマラとイング。コーティング・クロークを翻す《アッシュ改》、そして一対のテスラ・ドライブユニット羽撃かす《ビルトファルケン》。

 《バスタックス・ガン》と《TーLINKセイバー》を念動フィールドが覆う。二人の念動力が共鳴し合い、両機に強力な相乗効果をもたらしていた。

 

『ダブル・デッド・エンドォォォッ――』

 

 前後からの完全な挟み撃ち。テスラ・ドライブが唸りを上げる。

 斧と剣、“凶鳥(ヒュッケバイン)の眷族”たちが邪念を断つべく武器を振りかぶる。

 

「『スラァァァァッシュッッ!!!」』

 

 すれ違いざまの一閃が重なり合う。

 《ビルトファルケン・タイプL》と《エクスバイン・アッシュ改》の合体攻撃――《ストライク・デッド・エンド》が炸裂した。

 

『ば、馬鹿な!? この私がっ、メガノイドが人間などにぃぃぃ!?』

「貴様はお呼びじゃないんだよ、三下」

『一番大事なヒトの心を忘れたお前らに、この技はちと勿体なかったか。あばよ、あの世でお前の罪でも数えてな』

 

 意味にならない断末魔を叫び、《メガボーグ・サンドレイク》は爆発四散する。《ダイターン3》、《ブラックサレナ》と交戦していたほかのメガノイドたちはあまりの一方的な展開に絶句していた。

 そんな中、イングがあっけらかんという。

 

『悪いな万丈さん、宿敵の一人を倒しちまって。あんまりふざけたこと抜かすから、思わずぶっ飛ばしちまった』

『いや、いいんだイング、僕も目が覚めた思いだよ。大事なのはヒトの心と、仲間との絆なんだってね』

 

 どこか憑き物が落ちたような表情で万丈はイングに応じた。

『くっ!』コロスが悔しげに呻く。しかし、自身の優位な状況は揺るがないと見て笑みを浮かべる。

 

『たかがコマンダー一人を討ち取ったところで、あなた達がこの空間に囚われているという事実は変わらないのですよ』

『フッ、そうでもないみたいだぜ?』

『何?』

「ッ! なんだこの念……空間に、亀裂が……?」

 

 不意に、亜空間に亀裂が入る。

 外界の光とともに現れた白い巨鳥に導かれ、《ナデシコB》、《大空魔竜》、《アルビオン》、《マザー・バンガード》、《キング・ビアル》が姿を現した。

 

『ご無事ですか、皆さん』

 

 心配するルリの第一声を皮切りに、万丈の事情を知る仲間たちが声を上げる。

 皆、水くさい、自分たちを頼れと口々に言う様は万丈が持つ抜群の人望の現れだろう。特に、勝兵やワッ太は万丈に懐いているとあって感情的になっていた。

 

『あと、やっぱりいましたね、アキトさん。ユリカさんが急にいなくなったって、心配してましたよ』

『ルリちゃん……ユリカに会ったのか』

『ええ。「ルリちゃ~んっ、アキトがいなくなっちゃった~!」ってボソンジャンプで現れまして。相変わらずですね』

『ユリカ……、いろいろ台無しだよ』

 

 一部では揉めているが、さておき。

 

「どうやら形勢逆転のようだな、メガノイド」

『役者も揃ったところで。万丈さん、いつもの頼むぜ』

『すまない……みんなの力、今一度貸してもらうよ』

 

 万丈は感動を押し隠すように、わずかに瞼を伏せる。

 拓かれた眼差しが、メガノイドを射抜いた。日輪のような闘志を宿して。

 

『いくぞ、コロス! 世のため人のため、メガノイドの野望を打ち砕くダイターン3! この日輪の輝きを恐れぬならば、かかってこい!!』

 

 

   †  †  †

 

 

 新西暦188年 ◎月∇日

 地球、極東地区日本 Gアイランド・シティ

 

 ついさきほどまで、万丈主催のパーティーに出ていていささか疲れた。イルイも同じようで、ベッドで夢の世界に旅立っている。

 コマンダー・キドガーもとい木戸川め、存外しぶとかったようだ。あのとき、死んだと思ったんだが。

 

 しかし、今回は久々に窮地に陥った気分だ。

 滅びたかに思われたメガノイドが再び姿を現し、破嵐万丈の抹殺に暗躍した。私とイングはその罠に巻き込まれたというわけだ。さすがに、今回ばかりは死を覚悟したぞ。

 

 宿敵の復活を受け、万丈は破嵐財閥を解体して身辺の整理をし、さらにはαナンバーズからも離れて独自に対抗するつもりだったらしい。もっとも、今回の一件で思い直したようだ。

 身軽になるという判断は間違ってはいないし立派だとも思うが、破嵐財閥の財政的な後押しというのは密かに重要だったわけで。今後に影響がなければいいが。

 

 それにしても、あの白い鳥型ロボは何だったんだ? 外にいた連中によると、突然飛来して不可思議な光(イングに匹敵するほどの強力な念を放っていたとはクスハ談)により、亜空間への活路を拓いてくれたそうだが……。

 敵か味方か、だな。

 


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