以降雑記。
流砂とか利分とかシルフィのイラストを描きたいが、技術力不足と時間のなさが原因で上手くいかない今日この頃。
誰か心優しい絵師さんはおらんかえ……? とか言ってみる。
目指せ! ピク〇ブのイラストレーター級の画力!(無理)
十一月十日、オアフ島、新ホノルル国際空港第二ターミナル、自動案内窓口付近にて。
草壁流砂とフレンダ=セイヴェルンはソファの上でぽけーっと待ち惚けをくらっていた。
「…………アイツラ、遅いッスねー」
「そ、そうだね……」
いつもの厚着とは違う、銀色の模様が入った白の長袖シャツに黒の半袖シャツが密着した様な形状の服と灰色のジーンズという格好の流砂の横で、フレンダは頬を朱く染めてあわあわしていた。
彼女の格好も流砂同様いつもとは違い、黒のベレー帽に黒のワンピース(白のフリル付き)で身体を包んでいて、自慢の美脚を黒のストッキングで覆っている。彼女なりのお洒落をしている、というわけだ。
フレンダが動揺している理由はただ一つ。
愛する少年とまさかの二人きり海外状態――というイレギュラーな現状だ。
(結局、麦野たちとの仁義なきじゃんけん大会を制してここまでついて来ちゃった訳だけど……ここここれってもしかしなくてもデート!? しかも海外! 麦野たちの監視もない! い、生きててよかったぁーっ!)
心の底から幸せそうな顔でガッツポーズするフレンダ。
そんなフレンダなんかには気づく様子もない流砂は脚の間に置いてあるキャリーケースを軽く叩きつつ、
「いやー、それにしてもまさかゴーグルのせーで十分も足止め喰うとは思いもしなかったッスねぇ。いやまー確かに不審物っちゃ不審物なんスけど、生活に必要不可欠なモンなんだから見逃してくれてもイイのに……そー思わねーか、フレンダ?」
「ひゃ、ひゃいぃ!? け、結婚式はやっぱりハワイって訳よ!」
「質問に対する答えが超飛躍してて訳分かんねーよ! ゼッテー話聞いてなかったろ!?」
「う、うるさいうるさいうるさい! ちょっと今頭の中整理してるから少し黙っててって訳よ!」
「何でいきなりキレられるし!」
顔を紅蓮に染めたまま叫び散らすフレンダに、流砂はがーん! と大袈裟なリアクションを返す。まさかハワイにまで来てこんなやり取りをすることになろうとは……流石の流砂さんでも予想できなかったッス。
頭を抱えて蒸気を噴いているフレンダに苦笑を向けつつ、流砂はさーっと顔を青褪めさせる。
その理由はいたって単純。
それは――
(『ゴーグルの少年』と『フレンダ=セイヴェルン』のコンビ、か……理由もなく意味もなくただ単純に死の予感がビンビンするんスよねー……)
原作における数少ない死人の中の二人が、まさかのコンビでハワイにまで来訪してしまっているこの状況。『グレムリン』と呼ばれる組織の野望を打ち砕くためにわざわざ海を渡って来たわけだが、なんかもう戦う前から詰んでる気がする。流れ弾とかで即死! なんていう不幸な結末を迎えないように気を付けよう、と死亡フラグ野郎・草壁流砂は己の魂に誓いを立てる。
だ、大丈夫かなー!? と流砂はがっくり項垂れる。
と、流砂の目にやけに見慣れたトリオの姿が入り込んできた。
その、トリオとは――
『人選に多いなミスがあると俺は思う! 何で俺と黒夜が同じ便なんだよ! どう考えても悪いしか感じねえんだけど!?』
『実質拉致られてるのはこっちの方だぜェはァまァァちゃァァァァァ――ぎゃぎゃぎゃっ!?』
『クーロにゃーん? ミサカの近くで好き勝手に暴れようだなんて、流石に身の程知らず過ぎじゃないかにゃーん? ほれ、ちょっとポージングしてみ? その薄い胸を両手で全力で寄せてみ?』
『く、屈辱だ誰か殺してくれェェェエエエエエエエエエエエエエーッ!』
「…………海外でも無駄に目立ってんなー、アイツラ……」
心の底から呆れるように溜め息を吐いた流砂はフレンダの首根っこを掴み、
☆☆☆
学園都市第七学区にある、とあるマンションの一室にて。
ステファニー=ゴージャスパレスと麦野沈利、それと絹旗最愛はテーブルを挟んだ状態で怖ろしい程に沈黙していた。
彼女たちの手の中には、十枚ほどのカード――トランプがあり、テーブルの上には十数枚ほどの捨て札が乱雑に放られている。ババ抜きかポーカーでもやっているのだろうか。正直、第三次世界大戦中よりも真剣な表情だった。因みに、シルフィ=アルトリアは小学校に行っていて、午後五時ぐらいまでは家に帰ってこない。この間の『流砂泥酔事件』の際に『シルフィは幼女だから参加しちゃダメ!』という理由で仲間外れにされて以降、ちょっとだけ不機嫌になってしまっているとかいないとか。睡眠薬で無理やり眠らされた横で麦野たちが流砂で『楽しんでいた』ことに腹を立てている、と言えば分かり易いだろうか。とにもかくにも一人だけ貞操を護り抜いてしまったシルフィは、絶賛激おこファンタスティック状態なのだ!
そんな幼女の怒りなんか知らない三人は十秒ほど睨み合い――
『ステファニー、ダウト!』
「ほ、本当にそれでいいんですか? あなた達は本当にその選択で誤っていないんですか? 人生というのはそんなすぐに簡単に決められるものではないはずです。時に悩み、時に疑い、時に苦しむ。そういうプロセスを経て、初めて正しい人生を歩める。――それが正しい人生選択というものなんじゃないですか?」
『ダウト!』
「この鬼畜ゥゥゥうううううううううううううううううううううううううううううううっ!」
ステファニーの絶叫を完全に無視し、麦野と絹旗はテーブルの上に置いてあった大量の捨て札をステファニーの前に移動させる。こんもりと盛られたトランプの山に覆いかぶさる形でステファニーはテーブルに突っ伏した。
ぐしゃっ、と山の中の数枚のトランプが折れ曲がる。
「うだー……くそぅ。なんで私はあのじゃんけんで負けちゃったんですかぁぁ……!」
「今さら悔やんでも超仕方ないですよ。まさかフレンダがあそこまでジャンケンクイーンだとは、この場にいる私たちの誰もが分からなかったわけですし。まさに隠れた才能? って感じでしたね、あれは」
「フレンダのジャンケンクイーン的なナニカは、流石の私の演算能力でも予想できなかったわ。何よあれ何だあれ、反則過ぎて逆に感心しちゃったわよ!」
「私は流砂さんに跨って全力で腰を振ってた麦野さんに感心しちゃってましたけどね」
「アレは愛の形だから良いのよ。っつーか、お前らも全力で楽しんでたじゃねえか。私の恋人なのに――私の恋人なのに!」
大事なことだから二度言いました。
「恋人も何も、麦野が超勝手に振り回してるだけじゃないですか。私的な視点で言わせてもらえば、麦野はセフレでフレンダは爛れた関係の実妹、ステファニーはマゾ奴隷でシルフィは義妹って感じに見えますけどね」
「絹旗さんはどういう立ち位置なんですか?」
そんなの超決まってるじゃないですか、と絹旗はケロッとした表情で付け加え、
「草壁の超伴侶ですよ!」
『次は大富豪でそのふざけた頭を叩き直してやんよ!』
そんなこんなで大惨事トランプ大戦が幕を開け、麦野とステファニーの二人掛かりで絹旗をフルボッコにするべくトランプの山をイカサマオンリーで交ぜ始めた。
☆☆☆
浜ちゃんが危ない!
「そーゆー訳だから番犬の管理よろしく頼むッスわ、相棒」
「ういういー。ミサカに全て任せとけー、相棒ぉー」
「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!?」
『へん☆しん』という如何にもあざといポーズで電気ショックを喰らわされている黒夜の傍で、流砂と番外個体が互いの手を固く握り合っていた。『黒にゃんイジリー同盟』なる関係を結んだこの極悪コンビにかかれば、凶悪なサイボーグ少女だろうが攻撃に特化した大能力者だろうがいとも簡単に掌握できるのだ!
変身ポーズの次にグラビアアイドルのポージングを黒夜に強制する番外個体。因みに、フレンダは近くにあった免税店で麦野とかフレメアたちへのお土産を物色しています。
そんな二人を視線から外し、流砂は電子式の案内板に梃子摺っている浜ちゃんこと浜面仕上の肩を叩く。
「俺が読んでやろーか?」
「…………頼むわマジで」
「りょーかいりょーかーい」
ここ読んで、と浜面の人差し指が触れている箇所に意識を向け、作業ゲーをプレイするかのような単調さで流砂は翻訳を開始する。
「えーっと、ナニナニ……『アダルトグッズ専門店』……ってお前マジで英語分からずにここ指し示したんか!? なんかもー狙いすぎててドン引きなんスけど!?」
「え? いやぁ、『adult』と『goods』って単語の意味だけは分かったんだけど、『specialy store』が上手く翻訳できなくてさぁ」
「別に深読みせずともそのままの意味ッスからね!? 特別な店! 専門店! っつーかその前の不穏な二つのワードでどんな店かに気づけよ! なんだよお前滝壺に貞操帯でもプレゼントする気なんスか!?」
「するわけねえだろ何言ってんだよ!」
「ニヤニヤしながら言われても説得力皆無だわボケェ!」
最高に緩んだ顔で鼻の下を伸ばしながら言う浜面に、流砂の額に青筋が浮かぶ。
だが、一方的に責められ続けられるこの状況を看過できるほど、浜面仕上は甘く育った覚えはない。
故に、括目せよ。
浜面の最強の切り札のチカラを――!
「麦野と絹旗とステファニーとフレンダの処女膜破った奴のセリフとは到底思えねえな」
「何が何で何だってェェェええええええええええええええええええええええええええええ!?」
衝撃的すぎる暴露に流砂の顔が紅蓮のように真っ赤に染まり、そのまま勢いよく浜面の襟首を掴んでギリギリのところまで顔を近づける。
「な、何でお前がそのコト知ってんスか!? 俺ですら記憶になんて残ってねーのに!」
「十一月の七日ぐらいだったかな。麦野たち三人が自慢げな顔でビデオカメラを持ってきて、鼻歌交じりでテレビに接続し始めてさぁ。俺と滝壺は何も聞かされてねえ状態で『鑑賞会だ』ぐらいの説明しかされてなかったから止めようがなかったわけなんだけど……そして始まる『草壁流砂襲撃パーティ』が凄まじくて凄まじくて」
「いやァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
流砂の絶叫が空港中に響き渡るが、ニヤニヤ浜面は言葉を止めない。
「お前泥酔してたくせによくあそこまで膨張させられたよなぁ。よっ、色男!」
「それ以上俺の心にダイレクトアタックすんのはやめろ! しかもそれビデオカメラってお前、どー考えても弱み握られちまってんのと同義じゃねーか! え、なに? もしかしてそれ、俺以外の連中全員頭にインプットされちゃってる感じなの!? っつーか滝壺がそれ全部観たの? あの滝壺が!?」
「あーいや、滝壺は途中で眠っちまってたよ」
「それはそれでなんかスッゲー複雑! でも俺は記憶ないし意識失ってたから俺のテクニックが問題とかそーゆーコトじゃねーッスよね!? 俺は完全無欠に無実ッスよね!?」
「あの場にシルフィがいなかっただけ罪は軽いだろうけど…………絹旗も一応、十二歳前後だからな?」
「やめろ言うなあえて見ないよーにしてた辛辣で残酷な現実を突きつけんな! そ、そんなコトを言ったところで俺にゃどーするコトもできねーんスよ!? っつーか俺は被害者だ! 言うならば沈利達の方がギルティ!」
必死を通り越して全てをかなぐり捨てるかのような剣幕で言い訳するゴーグルの少年。話を傍で聞いていた番外個体と黒夜は彼女たちにしては珍しく、全力で頬を引き攣らせていた。流砂が可哀想だというのが半分と、流砂が意外とプレイボーイだったというのが半分だ。というか、麦野たちが超肉食系過ぎるだけのような気がするが。
号泣しながら膝から崩れ落ちる流砂にニヤニヤとした笑みを向ける浜面。いつも流砂から好き勝手に振り回されている彼は、やっとのことで成功した逆襲に心の底から喜びを感じていた。
そんな凄く微妙なタイミングで帰ってきたのは、必要な分のお土産を買い終わったフレンダ=セイヴェルン。
お土産がぎっしり詰まっているであろうキャリーケースを引きながらやってきたフレンダは「???」と首を傾げ、
「どしたの草壁? なんか嫌なことでもあったって訳?」
「ユー・アー・ギルティ!」
「突然いきなり何の前触れもなく有罪判決!?」
そうは言ってもこの悲しみを生み出した加害者の一人は何を隠そう彼女なので、流砂は涙目のままぷいっとそっぽを向いてしまう。訳が分からないフレンダは浜面に視線で助けを求めるも、浜面は静かに目を瞑って両手を綺麗に合わせて――合掌。これでフレンダと流砂の関係にヒビが入らないで済むことを祈るばかりである。
「え、えー?」とフレンダが妙なショックを受ける中、ポーン、という電子音が鳴った。
その電子音に続く形で、女性の流暢な英語のアナウンスが空港内に響き渡っていく。
浜面は眉を顰め、
「迷子のアナウンスか?」
「それよりゃ物騒だろ」
相変わらず番外個体に身体の主導権を握られた状態の黒夜が、吐き捨てるように言い放つ。
「始まったンだよ」
感想・批評・評価など、お待ちしております。
次回もお楽しみに!