だってあの説明会、本文を変えようがないんだもん……。……そして何気にインちゃん初登場回。
上条当麻が御坂美琴に絡みに行った。
流砂が所有する免許証(年齢詐称)を利用して日本酒(一升瓶)を二本購入した後、上条は躊躇うことなく一升瓶分の酒を一気飲みした。下手すれば急性アルコール中毒で病院行きもしくは死亡の恐れがある行為だったが、そこは彼特有の頑丈さが働いたのか、彼はただべろんべろんに酔っぱらう程度で事なきを得ていた。……まぁ、それでもかなり重症なワケだが。
『あれぇ? ミコっちゃんなんかべべろべろべろぶろぶろじゃねえ?』
『既に人語ですらない! ちょ、アンタ一体どうしちゃったわけ!? 第三次世界大戦とかその他もろもろのトラブルに巻き込まれた面影すら感じられないんだけど!』
「…………何やってンだァ、あの馬鹿は?」
「酔っぱらい特有の絡みだと思うんだけど、それにしてはやけにコメディチックなんだよなぁ」
「っつーかコメディチックじゃねー酔っぱらいの絡みってナニ?」
遠くの方で上条と美琴のやり取りを眺めながら、一方通行と浜面と流砂の三人は呆れた様子で好き勝手に感想を述べていた。因みに、流砂の手には一升瓶が入った袋が提げられている。帰宅した後に一気飲みしようと考えているわけだが、それが原因で一夜の過ちを犯す、なんていう死亡フラグを建てないで済むことを祈るばかりである。
電柱に体を隠しながら上条の動向を見守る三人。ちょっと目を離した隙に上条の身体には大量の少女たちが磁石に吸い寄せられたかのようにくっ付いていたわけだが、アレは一体どういう能力を使ったんだろう? あの少年の右手には『異能を打ち消す能力』意外の能力が内包されているようでならない。というかもはやアレは異常すぎる。何だ身体に樹液でも塗っているのか。
浜面は右手をギュッと握り、
「師匠って呼ぼう」
「絶対にやめといた方がイイと思うッスよ? っつーかお前にゃ滝壺がいんだろーが今の言葉アイツに報告すんぞっつーかもーメールで報告完了ー」
「ぎゃァァァああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
いつも通りのやる気のない調子で言い渡された死刑宣告に浜面は頭を抱えて絶叫する。
バカ二人が騒ぎ立てる中、一方通行は片手で耳を塞ぎつつ――
「この中でまともな奴は俺ぐらいしかいねェンかよ……」
――全力で自分のことを棚に上げた。
☆☆☆
先ほどコンビニで買ったアメリカンドッグを食べ終わってしまったので次は自動販売機で『いちごおしるこ』を買っていたジャージ少女こと
受信メールを眺めた途端、彼女は半開きの瞳をクワァ! と大きく見開いた。
「……はまづらに正当なお仕置きをする時がついに来た!」
☆☆☆
アレは一体どういう風に扱えばいいんだろう?
騒音被害の通報を受けて本部から飛んできた風紀委員の
彼女の視線の先には、『なんか昔のゲームで建物とかを全部くっつけて球体にするって感じのゲームがあったけど、そのゲームを現実でしかも建物の代わりに女性を使用したらこんな感じだよね』級の大惨事と化している男子高校生の姿がある。酔っぱらいのように顔を真っ赤にして千鳥足で歩いている男子高校生は時折大きなしゃっくりをしながらも、一つの方向へと足を進めている。どうやら明確な目的地があるっぽいが、それなら端からこんな迷惑になる前にそこ目指せよ、と風紀委員・巳之は思ったりする。
だが、巳之は第一七七支部風紀委員の中で最もやる気のない風紀委員だ。能力者同士の喧嘩を止めるのなんて死んでもお断りだし、そもそも彼女の専門はパトロールだ。事件に遭遇する度に「風紀委員ですの!」とか叫んでいる後輩みたいに荒事が得意なわけじゃない。というか、なんかもう面倒臭くなってきた。具体的に言うなら『ケンカに自ら介入する』ぐらい面倒臭い。
巳之は「うーん」と貧しい胸の前で両手を組み、十秒ほど唸り声を上げる。
そして巳之は黒のミニスカートを翻し、
「なんかもうあのツンツン頭ちゃんの相手すんのは凄く面倒臭そうだから、今日はさっさと本部に帰って初春ちゃんの紅茶でも飲もーっと」
☆☆☆
上条の案内(無駄に寄り道が多かった)によって学生寮まで無事に到着した流砂たち三人は大きく溜め息を吐きながら、コタツにもぞもぞと潜り込んだ。流砂に関しては酒を上条の家の冷蔵庫に放り込んでからの突入だった。マジであの怪物アルコールを飲み干すつもりらしい。
上条の頭に噛み付くことで彼の酔いを覚ます、という現在時点における最大の働きをした銀髪シスターことインデックスは不機嫌そうな顔の一方通行をキョトンとした顔で見つめ、
「迷子の人だ」
「どォいう覚え方してやがンだオマエ……」
ブツブツと文句を言うように呟く一方通行に流砂は苦笑を浮かべる。彼は原作知識によって『九月三十日の出来事全て』を知っているので、一方通行とインデックスのやり取りについても把握済みなのだ。
流砂と浜面が隣り合い、その向かいに上条が座り、その間に一方通行が座る――という位置取りが終了した後、コタツの余ったスペースにバードウェイはいそいそと両足を突っ込み、
「話を聞く準備は終わったか?」
「準備も何も、アンタの話に耳を傾ける準備ぐれーしか俺たちやるコトねーと思うんスけど……」
「ごちゃごちゃ言うな、爆発させるぞ」
「どーゆーコト!?」
青褪めた顔での流砂のツッコミをガン無視し、バードウェイは続ける。
「それじゃあお待ちかねの説明タイムとしゃれ込むとしようか」
そう言いながら、バードウェイはインデックスの方を見る。
禁書目録、と呼ばれる彼女の重要性や役割を知りながらも、それでも説明の舵を握るのはバードウェイだ。
矛盾しているようなそうでもないような。とはいってもやはり矛盾しているような。そんな曖昧な雰囲気を漂わせながら、バードウェイは小さな口を開き、
「お前達とも無関係ではなくなった『ヤツら』と……お前達とは今の今まで全くと言って良い程関わりが無かった――『魔術』についての話をしよう」
☆☆☆
ステファニー=ゴージャスパレスは学園都市の病院の一室にいた。
だが、彼女自身が患者という訳ではない。彼女はただの見舞客。
そして、見舞われる方の名は大刀洗呉羽。
かくかくしかじかで流砂に撃破され、そのまま病院送りにされてしまった、いろんな意味でお気の毒な大能力者の少女だ。
一般的な病室とは違う、大部屋にベッドが一つだけという超破格な待遇を具現化したような個室。
その個室の中央にあるベッドを利用している呉羽は、ステファニーから目を逸らしながら言った。
「……何でお前が私の見舞いに来るんだ」
「流砂さんに頼まれたからに決まっているじゃないですか」
「そんな単純な理由以外にもあるのだろう? 例えば、私が再び草壁を襲うことが無いように見張っている、というような理由がな」
「分かってるならわざわざ答える必要はないんじゃないですか? ……というか、随分と偉そうな口利きますね大刀洗ちゃーん? もう一回ステファニーパンチ(義手)を鳩尾に喰らわせてあげてもいいんですよ?」
「ふ、ふん! わ、私はそんな子供だましには屈しはしない! だ、大体、アラサーの癖にそんな痛々しい敬語を使ってるお前なんかに私が怖れを抱くわ……ひぃっ!」
言葉を最後まで紡ぐ前に、呉羽はとんでもなく怖ろしいものを目撃した。
額に青筋を浮かべたステファニーが、どこから取り出したかも不明な軽機関散弾銃を構えてニッコリ笑顔を浮かべている。……そして引き金には指が添えられちゃったりして、なんだかもう凄く致命的な状態となっていた。
ぽたぽたぽたぽたぽたぽたぽたーっ! と大量の汗が呉羽の顔から布団の上へと落下する。心成しか、彼女の顔色は先ほどに比べて凄く悪くなっている。
「私はまだ二十代前半だ……ッ!」ステファニーはジャコン! と弾丸をリロードし、
「ステファニーパンチ発射十秒前ー」
「もはやパンチですらないしここが病院だということをどう考えても忘れているようだしというか十秒後には私死んでる!?」
大刀洗呉羽の運命や如何に!?
次回へ続く!
☆☆☆
あまり長く講釈を垂れても、相手の頭に入らないのでは全く持って意味が無い。
そう考えたバードウェイは、しばしの休憩を言い渡した。
とりあえず流砂はベランダまで移動し、『愛が深すぎて世界がリトル黙示録』級のトラブルメーカーの恋人に電話を掛ける。
一秒で繋がった。
『もしもし?』
「はーい、こちら流砂でーす。沈利、今ドコら辺にいんの?」
『うーん……詳しい住所は分からないけど、見たところ第七学区っぽいわね。もしかして屈辱のバニーは既に私で決定されてしまっているとか!?』
「いや、まだ誰も俺と浜面を見つけてねーっぽいッスよ? っつーかこのゲームいつまで続くんスか? なんかもー終わりが全然見えてこねーんだけど」
『アンタを見つけて抱きしめるまで』
「なんかルールが極端に変わってねーッスかねぇ!?」
流砂は深い溜め息を吐く。
「ところで話は変わるんスけど、今日の夜って空いてる?」
『…………ついに私と合体するつもりになったということか……ッ!』
「はいそれ極論過ぎるね! 誰もンなコト言ってねーから! つーかイイ加減に下ネタから思考を遠ざけろ! このままじゃ際限ないエロ地獄だけが到来するコトになっちまうッスから!」
えー、という麦野の返事を流砂は「シャラップ!」と叩き伏せる。本当になんでコイツら付き合ってるんだろう、というツッコミが聞こえた気がするが、問題なのは過程なのであり、今現在の状態はそこまで問題ではない。二人がどういうゴールを迎えていようが他人はそれを見守ることしかできないのだ。
ふぅ、と疲れを吐き出すように溜め息を吐く。
「ンで、結局空いてんの、空いてねーの?」
『勿論空いてるわ。そしてらb……ホテルの予約も問題ない!』
「今言い直す必要ありましたかねぇ!? 区切りもおかしーしそもそも言葉続けた時点で『ラブホテル』って宣言しちゃってますけど!? っつーか何で学生の街にラブホテル!?」
『まぁ、学生の街とは言ってもサラリーマンとか大学生とかが多くいるわけだから、ホテルぐらいは必要なんだろうな』
「そんな学園都市は嫌だ!」
絶望した! とでも叫びそうな顔で流砂は微妙に異なることを叫ぶ。
数秒後、流砂は少しだけ頬を赤らめながら携帯電話を先ほどよりも強く握り、
「久し振りに二人っきりになりてーから、別にホテルでもイイっちゃイイんだけど……流石に場所がホテルとなると、流石の俺でも理性が保つかどーか分からねーッスよ……?」
『その時は私が全力で受け止めてやるわよ。もちろん、そのままの流れで大人の階段を全力で駆け上がってしまうことになるけどな!』
「そこは止めろよ! 一応お前も女だろ!? そこは普通、女の方が嫌がるモンなんじゃねーの!?」
『はぁ? 殺したいぐらいに愛してる奴とのセッ〇スを拒否するわけねえだろ?』
「沈利さんカッコイイ! 惚れちゃいそー!」
『もう惚れてんだろうが』
そのツッコミもどうなんだろう、と思わないでもないのだが、そのツッコミを入れる前に通話が半ば強制的に切断された。ツーツー、と機械染みた音だけを発する携帯電話を持ったまま、流砂はベランダから部屋の中へと戻っていく。
と、そこでバードウェイにシンデレラ(メキシカンスタイル)を飲ませるというミッションを遂げたばかりの黒服の男性(確か、マーク=スペースとか言ったか)が話しかけてきた。
「誰と話していたんですか? 随分と長い通話でしたが……」
「恋人ッスよ、恋人。なんかちょっと用があったんで、色々と話し込んじまってたんスよ」
「そうですか」
マークは「だからですかね?」と付け加え、
「草壁さん、凄くニヤついてらっしゃいますよ?」
「へにゃぁああ!? べ、別にニヤついてなんかないのコトですよ!? べ、別に明日には童貞が卒業できそーだからって嬉しがってるわけねーじゃねーッスよあははやだなーもーマークさんったらー! ――ハッ! しまった!」
露骨に怪しい態度で爆弾発言をし、更にはとんでもない後悔に襲われている流砂に、マークどころか部屋の中にいた全員(フレメアを除く)から軽蔑の視線がプレゼントされる。
そして代表として一方通行は深い溜め息を吐き、
「……くっだらねェ」
「オイちょっと表出ろコラ! 今からお前に沈利の素晴らしさを叩き込んでくれるわーっ!」
凄くどうでもいい戦いの火蓋が切って落とされた。
感想・批評・評価など、お待ちしております。
次回もお楽しみに!