ED:ray/BUMP OF CHICKEN
@81 第四次忍界大戦、開戦!
新たなペインを得た数日後。
雲隠れの里にある忍連合本部に赴く。雲、木ノ葉、砂、岩、霧、音、そして侍。産まれた国も立場も違えども、今、ここに居る全ての者は同じ志を持っている。
“忍”。
忍装束は違えども、額当ては全て統一した目の前の大連隊を見下ろす。
「壮観だな。」
その上、忍たちの士気が上がるような我愛羅の演説と約9万の忍たちが集まる異様な光景を目にして少しばかり興奮する。
「第四次忍界大戦…我々が勝つ!」
「当たり前じゃぜ。」
「ああ。」
俺の気持ちを代弁するかのように雷影、火影、土影が重々しく頷く。忍連合軍を率いる責任と重圧を微塵も負担としていないようなその姿は今まで背負ってきた“影”の名に相応しいものだった。
……全ての仕込みは整えた。更に、その仕込みが上手く行くように手は打っている。そして、切り札は3つ持っているし、それに加えて予備も1つ。
計画は最終段階に入っている。演者はうちはマダラ、演出技法はデウス・エクス・マキナ。エウリピデスのごとく書き上げたこの劇の中で……さぁ、踊れ。
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第三部 開始!
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タイミングを見て、岩隠れの黄ツチ率いる第二部隊の元に飛雷神の術で飛ぶ。飛んだ先に見えたのはズラリと並んだ第二部隊の面々。つまり、近接戦闘のスペシャリストたちだ。俺のような細マッチョとは違って彼らはゴリマッチョが多く散見される。少し劣等感を感じるが…そうだな、日向ヒナタのような胸筋が発達したカワイイ女の子を見て癒されることにしよう。
そう考えて、第一優先はヒナタ、第二優先が黄ツチさんを探していると、俺に気付いた音隠れの忍が驚きの声を上げた。
「ヨロイ様!?なぜ、ここに?」
「作戦の一環だ。……黄ツチ部隊長は?」
後ろ髪を引かれながらヒナタを探すことを諦めて、素直に黄ツチの居場所を音隠れの忍に尋ねる。
「あちらです。」
「あそこか。サンキューな。」
「ハ、ハイッ!」
遠くの方に見つけた黄ツチの元に向かう。
予め、全ての部隊には音隠れの忍を編制している。その中の小隊長一人一人に俺の飛雷神用のマーキング付きクナイを持たせているため、俺は素早い移動が可能となっている。
ちなみに、この第二部隊には音隠れの秘密兵器も持たせている。その理由は序盤で戦争の流れを一気にこちらに傾けるためだ。
「黄ツチさん。」
黄ツチさんの後ろに近づき、声を掛ける。俺は彼が原作で名のあるキャラクターということで、そして、彼は俺が音隠れの幹部ということでお互いに情報だけは知っていたという関係だ。直接会ったのは部隊長選任の際の顔合わせだけではあるものの、その時に少し話した印象は社交的な職人気質の持ち主というもので悪くない感じを受けた。
「ん?ヨロイか。本部で何かあったのか?」
「いえ、連絡ついでに細々とした用事を済まそうと思いましてね。今の所、ほぼ問題はないです。」
「そうか。それで、連絡とは?本部からの大きな連絡は奇襲部隊の勝利と敵が地面の下を通ってきているという2つの情報が来ているが。」
「地面の下を通ってきている敵について関連している連絡です。大部隊の大きな戦闘はこの第二部隊が一番早く始まりそうですので、ちょっとした先制攻撃を相手にお見舞いしてやりたいんですよ。黄ツチさんの土遁で掘り起こした後、俺と音隠れの忍でしばらく遠距離攻撃をしますので、本格的な戦闘はそれが終わった後にお願いします。」
「それは助かる。この部隊は近距離専門な忍が多いからな。遠距離攻撃で相手を攻撃してくれるのは助かる。」
「ああ、少し説明が足りませんか。……黄ツチさん。“俺と音隠れの忍で遠距離攻撃を行った後に”戦闘を開始してください。攻撃範囲に居たら命の保証ができない攻撃を行うので。いえ、どちらかといえば……。」
笑みを浮かべる。
「死ぬ保障ができる攻撃ですんでねェ。」
黄ツチさんの表情が強張る。しかし、それは一瞬のこと。すぐに笑顔を作り、こちらに向ける。
「まさに鬼神だな、お前は。」
「…鬼神などではありませんよ…。私は、あくまで忍ですから。」
彼から目線を外し、前を見据える。印を組んでいくのと同時に黄ツチさんに声を掛ける。
「それじゃあ、やりましょうか?」
「おう。…黒ツチ!術の準備はいいか?」
「こっちはいいぜ、親父!」
黄ツチさんとその娘の黒ツチは両手を天に向かって掲げる。
『土遁 開土昇掘!!』
目の前に山が現れたかと思うと、その頂上より噴火のごとく白ゼツがワラワラと上に向かって噴き出された。
パンと音を立て、最後の印を組む。
「禁術 穢土封滅。」
俺の左右の地面に次々と線が入っていく。次いで、その線から棺桶がゆっくりと立ち上る。
と、地面から縦に現れた無数の棺桶が一斉にその蓋をゆっくりと開いた。その中は闇。その闇から黒い手が形作られ、それが白ゼツの軍団に殺到する。棺桶の中の闇から作られた黒い手は闇と繋がりつつも、その動きは制限されない。自由に動くその手は白ゼツを掴むと、白ゼツを棺桶に次々に納めていく。
「グッ!」
「大丈夫か?」
「…なんとか。」
チャクラをかなり持って行かれる。流石は真理の扉擬きなだけはある。
ガンガンチャクラを取られる術だが、その成果はあった。白ゼツの軍団が混乱しているのが見て取れる。ここから…。
チャクラ切れで思わず片膝をつく。これ以上はチャクラが使えないか。穢土封滅を止め、隣の音隠れの忍に指示を出す。
「構えろ。」
「第二部隊、音隠れ銃撃班、構え!」
音隠れの忍が俺の言葉を大きくして他の仲間に伝える。
「撃て。」
「撃てェー!」
ドドドドドという腹に響く重低音をバックミュージックにマズルフラッシュが煌めく。
次いで、白ゼツの軍団が弾け飛び、閃光と土煙の中、その数を減らしていく。
白ゼツを殲滅しているのは太陽の光を反射して銀色に光る音隠れの新兵器、ガトリングガンだ。修羅道の武器にあったから、これ再現できんじゃねってノリで解析して音隠れの技術で再現してみたが、修羅道の物と比べると大型なので小回りが利かないのがネックだ。とはいえ、持ち運びは巻物に時空間忍術で封じることができるので素早い設置ができるので問題はほぼ解決できる。
「……。」
「え!?何ですか!?」
黄ツチさんが何か俺に言っているみたいだが、両隣に広く並んでいるガトリングガンの音のせいで全く聞こえない。ドドドドドって音に声が全て掻き消されているのにいつも通りの声で話されても困る。
「ああ!この新型兵器の威力は凄いな!」
「でしょう!
「大丈夫か!?」
「チャクラ切れで少しキツイです…。」
「え!?何だって!?」
「チャクラ切れなんで一旦、俺は引きます!」
「ああ、分かった!あとは俺たちに任せろ!」
「では…。」
飛雷神用に残して置いたチャクラを使って本部へ帰還する。と、視界が歪み地面が急に近くなった。
「ヨロイ!」
上から綱手様の声が聞こえる。
「綱手…。お前といた数ヶ月…悪くなかったぜ…ガクッ。」
「師匠に対して随分な言い様だな。ん?」
慌てて跳び上がる。
「冗談ですって!ウッ。」
俺の体は再び地面に沈み込む。ヤベェ、吐きそうなぐらい具合が悪い。いや、吐きそうな時は具合が悪いのは当然だけれども。逆に具合が悪いから吐きそうになるのかもだけれど。
そう取り留めもないことをグルグル考えていたらフッと体が軽くなった。頭には柔らかい手の感触がする。
「お前のいう術がここまでチャクラを使うとはな。で、上手く行ったのか?」
「もちろんです。チャクラありがとうございます。」
綱手様から貰ったチャクラを使って口寄せの術を発動させる。煙と共に俺の後ろに現れたのは10の棺。中には先程、穢土封滅で生きたまま捕まえたゼツを幻術に掛けて保管している。
「ドス、連絡を。」
「ハッ!」
ドスが無線を取り出し、連絡を取り始める。その連絡先は忍連合軍研究部隊だ。敵の主な戦力が白ゼツだということは分かっているので、白ゼツに関して有効な薬品の研究を中心に行う部隊を連合軍に作らせた。俺の後ろにあるサンプルを研究することで、戦争はかなり優位に進めることができるハズだ。
ゆっくりと立ち上がり、影たちが座っている丸テーブルの方に綱手様と共に歩き出す。
「どうぞ。」
綱手様の椅子を引き彼女を促す。
「気が利くようになったじゃないか。」
「レディーのおもてなしについては自来也様から嫌というほど、仕込まれましたから。」
「自来也仕込みじゃ信用はできんな。」
「ご安心を。ブーブークッションなどは綱手様の椅子に仕掛けていませんので。」
今、椅子に座ろうとしていた綱手様の尻が止まった。
綱手様が椅子に座るまで少し時間が掛かりそうなので、用意されていた俺の席の方に呼びかける。
「戦場の状況はどうですか?」
「お前も知っているように、黄ツチ第二部隊の戦闘が始まった。それに、カカシ第三部隊もカンクロウ奇襲部隊に合流して戦闘開始じゃぜ。」
「他の戦場の様子は?」
「ダルイ第一部隊、我愛羅第四部隊、ミフネ第五部隊は指定の場所で待機しておる。」
「大きな動きはないみたいですね。」
「お前さんの術と兵器以外はな。あれは敵にしてみれば出鼻を挫かれたものじゃぜ。」
「本当は爆弾とかのトラップも仕掛けたかったんですけどね。そこまで時間がなかったのが残念です。」
「言葉の減らん奴じゃぜ。」
ニヤリと笑みを浮かべた土影様が肩を竦める。俺もニヤリと笑顔を返して丸テーブルの開いている席に腰を下ろす。
「第三部隊より連絡!」
連絡員の声で本部に緊張が走る。
「穢土転生体が霧隠れ忍刀七人衆を口寄せしました!」
「誰を穢土転生した?」
「え?」
「忍刀七人衆と一口に言ってもアレは代々受け継がれる形式。一つの刀に複数人の持ち主がいるハズだ。」
「そッ、それは確認していません。」
「じゃあ、穢土転生された霧隠れ忍刀七人衆が誰か確認。その後でそれぞれの敵の情報を本部から第三部隊に送れ。弱点や癖などの情報を送れば犠牲を少なくすることもできるだろう。」
「ハッ!第三部隊、忍刀七人衆の情報を連絡願う!…え?わからない?」
「霧隠れの忍に尋ねるように伝えろ。」
「ハッ!霧隠れの忍に尋ねろ!」
少し浮き足立っているな。今の情報を戦争経験がない忍が伝えたとはいえ、これは少々マズイ状況だ。本部の人員が混乱し、情報が錯綜するような事態だけは避けなければならない。
「そこの…名前は?」
「ハ、ハイッ!クッサクと言います。」
「それじゃ、クッサク。想像してごらん。戦争が終わった後のことを。」
「…へ?」
「まずは『おかえり』といって皆の肩をたたくんだ。で恋人を思いっきり抱きしめる!大食いの人にはご飯をたくさん食べさせてあげなきゃね。疲れた人はその辺で寝ちゃうだろうから毛布をかけてあげないと。大人組はワインで乾杯したいね。ドンチャン騒いで眠ってしまえたら最高だね…そして少し遅れて恥ずかしがり屋が仏頂面で入ってくるんだ。」
「えっと…?」
「戦争が終わった後、君は何がしたい?」
「あ…えっと、里に帰った後は恋人にプロポーズしたいです。」
「死亡フラグを勝手に作ってんじゃねェよ、このオタンコナス!」
「え?」
「いや、何でもない。……いいことじゃないか。水影様に聞かれたら溶かされてたかもしれないけど。じゃあ、質問を変えよう。戦争に勝つためには今の君には何が足りないと思うかい?」
「えっと…冷静さでしょうか?」
「うん、それも正解だ。けど、まだ重要なものがある。……信じることだ。」
「信じる…こと?」
「ああ。戦場にいる仲間を信じろ。彼らは強い。隣に居る仲間を信じろ。彼らは強い。そして、自分を信じろ。君は強い。全部信じた君は余裕を持てる。」
指を鳴らす。
「さて、話はこれで終わり。第三部隊の状況は?」
彼が自分を取り戻す。
「ハッ!霧の忍刀七人衆のメンバーは
「オッケー、カカシに任せよう。」
『はぁ!?』
この場に居る全員が俺の方に呆気に取られた表情を向ける。
「一番厄介な霧隠れの術のサイレントキリングを得意な再不斬との戦闘経験がカカシにあるし、アイツなら大丈夫だろう。」
「しかし、それでは犠牲がッ!」
「犠牲が出るのが戦争だよ。そして、この手が一番犠牲を減らすことができる最善の一手だ。連携に関してはここの穢土転生組にはムラがある。そこを付く事をしないカカシじゃない。本部でできるのは情報を現場に回すぐらいだな。」
「今、名前を挙げられた忍刀七人衆と白、ガリ、パクラの情報についてはこちらです。伝えるべき情報を精査しています。」
「マブイ、ありがとう。クッサク、マブイが纏めてくれた情報を第三部隊に伝えてくれるか?」
「ハッ!」
クッサクはすぐに連絡を取り始める。その様子を見ていた土影様が俺の方に身を乗り出す。
「全く…。土影であるワシの前でよぅやるもんじゃぜ。」
「…何のことでしょう?」
「クッサクに幻術を掛けたじゃろ?精神安定の効果を持つ幻術ってところか。指鳴りが発動のための鍵ってところかの?」
「…俺の手は死角だったハズなんですけどね。」
「影の名を背負ってるんでな。そう易々と騙される訳にはいかんじゃろ?」
そう言って、土影様は体を元に戻した。
「今回は礼を言っておく。が、我が里の忍の不始末はワシが付けるから結構じゃ。……誤解のないよう言うておく。これはお主らを信用していないという訳ではないぞ。お主らに対する礼儀じゃ。“岩”も誇りを持って連合軍に里の忍を選出しておる。そんな忍の失敗を他里の忍に拭わせるのは失礼極まりないからの。」
「畏まりました。出過ぎたマネを…。」
「よい。ワシの責任じゃからな。それに、お主の力でクッサクは元の調子を取り戻したからの。」
「ご厚情あざっす!」
「丁寧なのかそうじゃないのか分からん奴じゃぜ…全く。」
苦笑いの土影だった。
さて、と。目を白ゼツが入った棺の方にやると、研究班が運び出している所だった。綱手様のお陰でチャクラも回復したし、そろそろ俺も然るべき場所に向かう時間だ。椅子から立ち上がり、研究班の後ろにつく。
「それじゃ、データが出たら本部に戻ってきますんで。」
本部の人たちに頭を下げて部屋を出る。研究班の人と共にしばらく廊下を歩くと、突然、思い出したフリをする。
「あっと…!お前たちは先に行け。必要な器具を持ってくる。」
「かしこまりました。」
廊下を一人で進み、誰もいない場所に来た俺は飛雷神の術を発動させ、自分のアジトに飛ぶ。飛んだ先の部屋にポツンとあるシングルベッドに自分の体を横たえ、印を組み、眼を閉じる。
数秒後、目を開けた。
「うん、調子はいいな。進行方向はオールグリーンでイインダヨ。」
気分良く部屋を出て行きながら、物置に向かい白ゼツの解剖に必要な器具を引っ張り出す。
これは後からリンに聞いた話だが、鼻歌を歌いながら部屋を出て行く俺への目線は限りなく冷たかったそうだ。