咲-Saki- 千里山編〝To the same heights.〟   作:天野斎

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8話投稿です。

お楽しみいただければ幸いです。




8.『初対局』

 ――旧校舎西棟一階。

 

 先ほどの旧校舎玄関口での会話から数分後、おれは再び園城寺たちに促されるように、もとい、江口によって半ば強引に腕を引かれながら、麻雀部の部室を訪れていた。

 校舎の東側に沿って伸びる廊下は、夕暮れ時の西日から遠ざかり、すでに日が落ちてしまったかのように薄暗い。そんな中で、他の教室とは一線を画す、いや、それ以上に異彩を放つ重厚な木製扉を正面に眺めていた。

 

 それは、男のおれでも少しばかり見上げる様な高さがあり、無垢な一枚板を対に並べた両開きの扉。細部に亘って素朴な花と蔓の彫刻が楚々とした金細工とともにあしらわれ、深く重い赤褐色のニスで彩られている。それぞれ扉の縦に伸びる中心線には一筋のステンドグラスがはめ込まれており、さらに鳥の羽を模した銀色のドアハンドルが冷たく輝いていた。

 

 今朝方、いやというほど話に聞かされた、この千里山の歴史やら伝統といったものが、言葉で表されるよりも遥かに分かりやすく、痛切に伝わってくるようだった。「物」にこれほどの威厳や風格なんてものが宿るとは知らなかった。

 

 それだけに、この扉を前にすると、今自分がここに立っていることが至極場違いな気がしてきてならない。部外者には少し敷居が高すぎるんじゃないか?

 隣に立つ清水谷の顔を横目に見ながら、先ほどの彼女の言葉を思い出す。

 

 ――半荘二回、打たへんか?

 

 唐突に、彼女の口からもたらされたその言葉に、思いがけず呆けていた自分。気がつけば、鼻息荒く目を輝かせた江口に背中を押されていた。何故、清水谷が自身の言葉に反し、とまでは言わないが、事前の言葉を取り下げてそんなことを言い出したのか。いきなりの話の転換に呆気にとられながらも、落ち着いて考えてみれば違和感がないわけではなかった。

 いや、先ほどの清水谷の表情を見れば、見返りなんか求めていないという彼女の厚意にこそ、疑わしいことなどあるはずがないのは明白だが。

 

 まあ、今回のことで彼女たちに作ってしまった大きな借りに少なからず応えられるなら、半荘二回、軽く見積もっても約二時間。今度はこっちが彼女たちにつき合うのも悪くないのかもしれない。無用な期待を抱かせてしまっているようで、あまり気乗りはしないが……。

 

 清水谷がスカートのポケットから先ほどの鍵を取り出して、扉の前に一歩進み出る。鍵を挿し込み錠を回すと、カコン、という小気味良い音が静かに響いた。そして、清水谷がドアノブに手を掛けると、それは軋む音などまるで響かせることなく、ゆっくりと押し開かれていく。

 それから、彼女はこちらを振り返りつつ、目を細めて言った。

 

「入って――」

 

 再び江口に背中を押されるようにして麻雀部の敷居を跨ぐ。

 

 通常の教室を二つほど壁抜きにしたほどの広さだろうか。まだ夕方だというのに、暗幕が引かれた室内はやけに暗い。辛うじて、カーテンの隙間から漏れる一筋の光が部屋の中を淡く照らしていた。すると、後に続いて入ってきた江口が、この暗闇の中でも危なげなく窓辺に向かって進んでいく。

 そして、重く下ろされていた暗幕の端を掴むと、シャッと軽快な音を立てて思い切り開け放った。

 

 途端に、部室内は夕暮れの金色に満たされる。西向きの窓から直接差し込んでくる夕日がひどく目に染みる。思いがけず目の前に手をかざしていた。

 程なくして、指の隙間から覗く部室内の輪郭が次第にはっきりと目に映ってくる。

 

 校舎に沿って横に伸びる長方形の広い部室内。入ってすぐ右手の壁には大きな黒板とスクリーン、いくつものホワイトボードが立ち並び、窓際にはドリンクのサーバーを完備。廊下側の壁に沿うように六台のデスクトップパソコンが設置され、また、そのそばに置かれたアルミ製の棚には幾台ものタブレットPCが整頓して収められている。

 左手に伸びる部室奥には、監督者用だろうか、年季の入った大きな木製のデスクが組まれ、雑多に積まれた書類やらファイルやらが所狭しと散在しているようだ。

 

 そして、窓側と廊下側の二列に亘って、計十二台もの雀卓が等間隔に整然と並べられていた。

 

 ここが、あの千里山高校麻雀部の部室。東城のまともな設備すら揃わない部室とは比べようもないほどに整えられた環境だ。圧倒的なまでに、あきれるほどに。

 

「ようこそ!うちの麻雀部へ」

 

 清水谷が後ろ手を組んで、こちらの顔を覗き込むようにして言ってくる。歓迎してくれるのはありがたいが、まるで新入部員を迎えるようにも取れる、その言い回しはやめてほしい。昨年の今時分にも、全く同じ台詞を聞かされたような気がして背筋が寒くなる。

 それよりも、

 

「……ここ、部外者が入って大丈夫なのか?」

 

 これほど高価な設備が揃っているのだ。日頃から全校生徒に門戸を開いているとは思えない。その真っ当な問い掛けに、後ろから最後に入ってきた園城寺が小首を傾げながら応える。

 

「うーん。そういえば、部員と入部希望以外で他の人が来てるとこって見たことあれへんなぁ……。どうなんやろ?」

 

 ……おいおい。

 

「心配せんでええよ。今回はちゃんと許可もろうてるし、うちらもついてるさかい」

 

 清水谷が笑顔でそう口添えしてくる。果たしておれはその言葉に安心するべきか、それとも肩を落としてみるべきか、大いに悩むところだ。そもそも、いつの間にそんな許可を取り付けたのだろうか。

 

 しかし、その質問が喉を通る前に、清水谷は踵を返して部室の中ほどへと進んでいく。なんとなく、先ほどから振り回されっぱなしのようで少しだけ気が滅入る。期せずして溜息を吐きそうになるが、不意に、そばに立っていた園城寺の視線を感じてそれをのみ込んだ。

 

「……うちらも行こか」

 

 苦笑を浮かべて言う園城寺に促されて、おれも後に続いた。

 

 窓際に並んだ卓の列から、少し外れたところにぽつんと置かれた一台の雀卓。それに掛かっていたクロスを清水谷が勢いよく取り払うと、真新しい全自動卓がそこに現れた。黄色い背面の牌が卓上の角に寄せてきれいに並べられている。雀卓のメーカーや牌の種類に疎いおれでも、それらが日頃から丁寧に、細部に至るまで手入れが行き届いていることは一目で分かる。やはり、前の学校のそれとはえらい違いだ。

 

「よっこら、せっ」

 

 そんな掛け声とともに、突如、がんっという耳障りな金属音が背中で鳴った。振り返ると、江口がどこかから引っ張ってきた電気ヒーターに片手を載せて立っていた。

 

「今日は部活禁止やからこの部屋の暖房もつかへんねん。とりあえず、これがあれば寒さは平気やろ」

 

 ヒーターを軽く叩いて見せながら、江口が上機嫌に言ってくる。

 そういえば、SHRの席で五十鈴女史がそんな話をしていた。部活動全面休部の日、だったか。今ここでこうしていることが、部活動の一環に準ずるものであるはずもないが、先ほど清水谷がもらった許可というのも、考えてみればよく下りたものだ。どういった許可を取ったのかは知らないが。

 

 そして、わざわざ他所からヒーターまで持ち出してきた江口を見て、ようやく、これから半荘二回の麻雀を打つことに実感が湧いてきた気がする。

 窓の外はすでに日が暮れかけていた。日没まで持って一時間というところか。考えるまでもなく、二回目のオーラスが終局するころには外は真っ暗だろう。

 

「今さら訊くのもなんだけど、本当に今から打つのか?帰るころにはもう夜だぞ」

 

 なけなしの気概でもっともな意見を述べてはみるが、大方、彼女たちの返答に予想はついていた。

 

「普段の部活で慣れとるし、おれたちは平気やで」

 

 江口が腕を組みながら即答し、

 

「もう家にも連絡入れてあるから、気にすることあらへんよ」

 

 清水谷が淡々と付け加える。

 本気でやる気のようだ……。まあ、そうだろうな。

 

「藤見君は時間、大丈夫なん?」

 

 どうやら、園城寺もすでにその気になっているらしい。生憎と、その場しのぎに役立ちそうな予定もすぐには思いつかなかった。それに、後回しにしてどうこうなるものでもないか。

 

 ああ――、と短く言葉を返す。それならば、今さらおれがこうしてうだうだ言っている方が時間の無駄だ。仕方ない。

 一度深く息を吐いて、気持ちを切り替える。

 

「――分かった。半荘二回、つき合うよ」

 

 ――あんまり期待すんなよ。と、一言添えながら再び三人の顔を見回した。それぞれの視線が交差する。

 すると、清水谷が卓上に並べられた牌の中から、四枚の風牌を抜き出して言った。

 

「ほな、時間もないことやし、さっそく始めよか!」

 

 おれを含めたこの場の四人が、一台の雀卓を囲んで立ち並ぶ――。

 

 

 

 

 

 

 卓上に伏せられた四枚の風牌からその一枚をめくり、場決めをする。最初におれが引いたのは「南」。手前の椅子を引いて席に着くと、上家に園城寺、下家に江口、対面には清水谷がそれぞれ座った。

 

「半荘二回の30000点持越しでオカ無し。その他のルールはインハイ公式戦に則る。それでええか?」

 

 清水谷が他の三人、というよりは、おれ一人に向かってルールの確認を求めてくる。その対局形式なら、おれが約半年間、東城麻雀部の練習でいやというほどに打たされてきたそれとほとんど変わらない。異存はなかった。

 

「ああ、了解」

 

 その応えに、清水谷は一度小さく頷くと、全自動卓のスイッチに手を伸ばす。機械的な高周波の細く鋭い音が辺りに僅かに漏れ出した。

 卓上に並べられていた、すべての牌を投入口に落とし込んだところで、仮東の園城寺が親決めのサイコロを回す。出目は「右6」。

 

 おれの起家で、半荘一回目の対局が始まった。

 

 

 

東一局。東家(親)・藤見。ドラ表示牌「3」。

 

 

 配牌を終え、理牌を済ませた親番最初の牌姿。

 

 一一二四五八①②②⑥⑧2白白

 

 いきなりの親番。相手は揃って全国区強豪校の麻雀部員、しかも二年生だ。生憎と、その手のレベルの、高校生との対局経験は今のおれにはない。他校の生徒が入り混じった公式戦や対抗試合の席なら、互いの打ち筋を警戒しつつ、慎重に組み立てていくのがセオリーだが。

 

 園城寺、清水谷、江口の三人は、日頃から同じ部活に所属して練習を重ねている。実際に、部内で彼女たちが同じ卓を囲む機会がどれほどあるのかは知らないが、クラスでも常に一緒にいることが多い彼女たちの仲の良さは、今日一日行動をともにしただけでも十分に伝わってくる。まず間違いなく、互いの打ち筋や癖なんかは知り尽くしているだろう。

 

 それを考えると、どうしても他の三人に比べて一手、二手、こちらが後れを取ってしまうのは否めない。せっかくの親番だが、起家にきたことは多少なりとも不利に働きそうだ。

 

 配牌三向聴。おそらく、この手では高打点には届かない。一打目、二索を切る。

 それなら、前半戦でおれにできることは、とにかく相手の打ち筋を見極めること。

 

「リーチ!」

 

 江口が、そのリーチ宣言とともに一萬を打牌。場にリー棒を投げ込む。

 

(六巡目……)

 

 速さ重視の直線的な彼女の捨て牌は、分かりやすく么九牌に染まっていた。未だ河にドラは見えていない。安手と捉えるにはリーチ宣言もいくらか早すぎるか。おそらく、少なく見積もっても満貫以上……。

 未だ一向聴の安手を突っ張るメリットはない。続けて回ってきたツモ番で対子の白を落とすと、

 

「ポン」

 

 清水谷が空かさずそれを掠める。早い鳴きの対応だ。というか、

 

(この巡目での江口の和了りを、わざわざ止めにきてるのか?……)

 

 だとすると、まずいな。

 

「ツモ!」

 

 それから三巡先、江口の和了。

 

 三四五六七③④⑤⑥⑥345 ツモ「五」 裏ドラ表示牌「發」

 

「リーチ、ツモ、タンピン三色ドラ一。3000・6000!」

 

 いきなりの跳満親かぶりで最下位転落。半ば予想通りの高打点だ。

 

「うーん、止められんかったかぁ」

「調子良さそうやな。セーラ」

 

 点棒を支払いながら、清水谷と園城寺が口々に漏らす。

 

「へへ!おおきに」

 

 早い仕上がりに、高火力の打点。ただのまぐれにしても、リーチからツモに掛けての流れに迷いがない。

 卓上の牌をすべて落とし込むと、すぐにまた、場に新たな山が積み上がる。幾度となく繰り返し続けた手済みの作業が省略されてしまい、少しだけ、どこか手持ち無沙汰を感じる。無意識に、両手の小指にできた小さな豆に触れていた。

 

 続けて、江口がサイコロのスイッチに手を伸ばす。

 

「藤見。おれは相手がどんな奴でも遠慮せえへん!下手な様子見なんてしとる場合やないで」

 

 と、江口が口の端を挑発的な笑みに吊り上げながら、こちらに向かって目を細めていた。

 

 言ってくれるな。だが、その物言いと先の和了りが、彼女の実力に裏打ちされたものなら、その言葉にも傲慢や不遜、慢心とは違った確かな重みが宿ってくる。

 まあ、そう言われたところで、おれ自身今の打ち回しに手を抜いているつもりなど毛ほどもないんだが……。

 

 

 

 親が流れて東二局、江口の親番。続けて江口が八巡目に聴牌。ドラ切りで即リーチを掛けてくるが、リーチ宣言牌を清水谷が再び「チー」、続く園城寺の自風牌を鳴いて重ねたその三巡先。そのまま江口から5200を出和了る。

 わずか三巡で、二向聴の手牌を和了りにまで持っていって見せた。二人の河の状況と手役の余剰牌を狙った正確な読み。

 

(上手いな……)

 

「ふふ、セーラ。うちらがいることも忘れんといてな」

 

 清水谷がいたずらっぽく笑みを浮かべて、軽口を言ってみせる。そして――、

 

 

 

東三局。東家(親)・清水谷。ドラ表示牌「①」。

 

 

 十巡目にしてこの牌姿。

 

 一二三⑤⑥⑦45*8東東中中「6」

 

 一応の聴牌はしたものの、上家の園城寺がすでに聴牌気配。二巡続けての字牌切りで手替わりはしていない。捨て牌の索子の並びを見れば、絶一門か、若しくは混一の絡め手か。

 だが、こちらの待ちも東が河に一枚、中は見えていない。他家に抱えられていれば和了りはさらに遠くなる。園城寺の手牌が読み切れない以上、こちらもダマで通すしかないか。そう考えて、続く八索を打牌して聴牌を取る。

 

 しかし、次巡、園城寺のツモ番。

 

「リーチ――」

 

 唐突に、園城寺のリーチ宣言が掛かる。

 

(……ツモ切りリーチ。このタイミングで?)

 

 手元からリー棒を取り出す園城寺の姿を横目に見る。

 字牌の東北を連続でツモ切りしての三巡目、同じくドラ二筒ツモ切りでのリーチ掛け。安手に有効牌を引き入れるためのダマじゃないのか。捨て牌による引っ掛けも重なる字牌切りではその気はほとんど感じられない。いや、こっちの聴牌を読んだ上で押して先制リーチを選択してきた可能性も捨てきれない。

 

 続くおれのツモ番。山からツモってきた一索をそのまま河へ振る。その打牌の瞬間、わずかに張りつめたような清水谷と江口の視線をふと意識した。

 

 そして、十二巡目。彼女はツモってきた牌を伏せたまま指先ですっとなぞると、それを返して静かに置いた。

 

「ツモ」

 

 そっとつぶやくような声が耳に届く。利き手で手牌をはらい、牌姿をオープンにしていく。

 

 六七八②③④④⑥西西西中中 ツモ「⑤*」裏ドラ表示牌「五」

 

「リーチ一発、自模、ドラ二。2000・4000」

 

(一発ツモ……)

 

 流れるようなきれいな和了りに、背筋が冷たくなる。この安手から満貫を和了ってくるのか。

 点棒を支払いながら、再び彼女の手牌と河の状況を注視する。六巡目ですでに聴牌。手役の揃わない牌姿でリーチを掛けていないのは、無理に安手を押して振り込む危険性を考えれば、別段おかしなことではない。

 

 だが、一巡前のリーチ宣言牌。ツモで二筒を引いているにもかかわらず、手牌の六筒を抱えて、ドラ二、一盃向の手役を崩している。おまけに三筒は未だ生牌、五筒はすでに二枚切れの状態だ。和了りに近づく要素をことごとく切り捨てた彼女の打ち筋は、麻雀における定石とはかけ離れている。次巡を見越して有効牌を引き入れたとするなら、それほどの強運を彼女が宿しているとも思えないが……。

 

 まあ、目の前でこうして一発ツモを和了られてしまっては、その客観的、いや、主観的な推察に何の意味もない。

 

「わたしの親番やな」

 

 再び園城寺がサイコロに手を伸ばす。

 

 

 

東四局。東家(親)・園城寺。ドラ表示牌「東」。

 

 

 その園城寺の親番。配牌でこの牌姿。

 

 三六七①⑤⑦4678南南發

 

 跳満も見えてくる良形の三向聴だ。先ほど見せた園城寺の奇妙な和了り、彼女の親番であれをもう一度見せつけられるのは回避したい。先んじて、まずは和了ることだ。

 七巡目。

 

 五*六七⑤⑥⑦46778南南「5」

 

 出和了りでも跳満。ツモれば倍満にも届く良形の手牌に仕上げる。早い巡目でのこの牌姿、いけるか。

 

「リーチ」

 

 宣言牌に七索を切って三六九索の三面張で聴牌。この対局が始まって初めて先手を取る。

 それに対して、同巡、下家の江口は完全安牌、続く清水谷も合わせ打ちをしてくる。高打点を気配で察せられたか、やけに慎重な打ち回しだ。そうすると、早々に他家からの出和了りは期待できそうにないか。最悪、園城寺の親番を速攻で流せればいい。

 

 かと思いきや、次の園城寺の打牌で、彼女はいきなり五索を振ってくる。

 

(一発もあるってのに、わざわざ五索を抜いてくるって。まさか張ってるのか?……)

 

 この局が始まってからというもの、常に園城寺の動きには気を張っていたつもりだったが、今に至るまで、彼女の手牌から聴牌気配はまるで感じられていない。再び訪れる言い表せない違和感に、今度はわずかに眉をひそめる。

 

 次巡のツモ番、一発はならず不要牌の北をそのままツモ切りすると、

 

「ポン」

 

 園城寺の口から、ぽつりと言葉が漏れる。

 

(直前に危険牌を切っておいて、オタ風鳴き?)

 

 意図の見えない彼女の打ち回し。他家の手を遅らせるためにこそ打ったこちらのリーチを、全く意に介さず受け流されているような気さえする。だが、同じようにして園城寺に向けられた他の二人の視線に、戸惑いや当惑といった色はわずかにも見られない。ただ静かに、彼女の次の打牌を警戒しているだけだ。やはり、これが園城寺の……。

 

 そして再び、彼女のその打ち筋がひとつの和了りに結実する。

 

「――ロン」

 

 一二三⑦⑧⑨7999 北北北 アガリ「8」裏ドラ表示牌「東」

 

「全帯のみ。1500」

 

 園城寺が開いたその牌姿を、少しの間呆然と見つめていた。

 先制リーチを躱されただけではない。三巡前の一索対子落としでこちらの和了り牌を完全に止められている。まるで、こっちの手の内が見透かされているようだった。

 点棒をのせながら園城寺がさらに言葉を続ける。

 

「――一本場」

 

 

 

東四局・一本場。東家(親)・園城寺。ドラ表示牌「⑨」。

 

 

 継続する園城寺の親番。配牌から理牌を済ませる。

 

 一四五七③⑧⑨25東南白白

 

 配牌五向聴。前局の牌姿に比べると、あまりに和了りが遠く感じられる。親の連荘は早急に流したいところだが、この局は他の二人に任せるしかないか。一打目、東から字牌を処理していく。

 

 しかし――、

 

「ロン」

 

 九巡目、再び園城寺の連続和了。今度は江口が振り込んでいた。

 

 二三四五六七⑥⑦⑧2444 アガリ「3」裏ドラ表示牌「5*」

 

「2000の一本場は2300」

 

 ダマ聴からの和了り形。またしても、直前でツモった五索三面張を崩して、二索単騎待ちへ張り替えている。

 

(江口への直撃狙いか?……)

 

 だが、その先に伸びる二枚切れの三索カンチャン待ちでは手が窮屈すぎる。それにもし狙うにしても、直前に六索を通している清水谷の方がアタリ牌を振る可能性は高いはずだ。

 

 今回の和了り。河の状況から察するに、少なくとも直前の待ち替えまでにおかしな手順組は見受けられない。四巡目のドラ一筒切り、六巡目の八九索搭子落としで裏目を引いていることから、最短で和了りに向かっているわけでもないはずだが。

 

 

 続く二本場。鳴きの喰いタンを仕掛けてきた清水谷に、七巡目、おれがアタリ牌を差しこんで1900を出和了り。なんとか園城寺の親番を流す。

 

 

 

 東場を終えてこの点差。

 

 藤見  17600

 江口  31500

 清水谷 31100

 園城寺 39800

 

 未だ焼き鳥のおれの負け分をそのまま園城寺に持っていかれた。序盤に江口の大きな和了りがあったが、他の二人に狙い撃ちをくらってほぼ原点。清水谷も振り込まない防御の姿勢を取りながらも、やはり他の二人の打ち筋を上手く読んで、ツモで削られた分を小気味よく取り返している。

 三連続和了によって園城寺の支配が強まった気がしていたが、打点の低さからまだそれほど点差は開いていない。しかし、次の親番。ここで再び他家に和了らせてしまえばその差は一気に開く。

 

 ここは何としても最速で和了る。

 

 

 

南一局。東家(親)・藤見。ドラ表示牌「②」。

 

 

 四四四四九③④⑦4689東南南

 

 良形の三向聴。面前リーチはいらない。和了り重視で鳴きの速攻。

 三巡目。

 

「ポン」

 

 清水谷が振った南牌で特急券を揃える。更に続けて次巡、

 

「チー」

 

 上家の園城寺から七索を掠めて一向聴。

 

「カン」

 

 四萬を暗槓、王牌から有効牌を引き入れて聴牌に仕上げる。上家の園城寺を横目に見る。彼女が再び奇妙な打牌を仕掛けてくる前に――。

 そして、七巡目。

 

「――ツモ」

 

 自ら和了り牌を引き当てて、卓の縁へと小気味良く打ち鳴らす。

 

 ③④東東 四四四四 789 南南南 ツモ「⑤*」裏ドラ表示牌「中」

 

「役牌、ドラ二。3200オール」

 

 思わず、口からふっと息が漏れていた。

 

(とりあえず、焼き鳥は回避したけど……)

 

 椅子の背に深く体を倒すと、西日に淡く照らされた格子状の天井が視界に映った。たった一度の和了りにこれほど神経を研ぎ澄ませて打ったのはいつ以来だろう。前の学校では、常に気の抜けない麻雀を打たされていた気がするが。ほんの数秒にも満たない時間、目を閉じながら追想に浸っていた。

 

 そこでふと、前からの視線を感じて、はっとするように体を起こしていく。すると、江口が先ほどとは違う、心底楽しそうな笑みを浮かべてこっちを見ていた。

 

「そうこなくちゃ、おれたちもおもんないで。藤見!」

 

 それから、へへ!――と、なぜか彼女の方が得意げに胸を張って見せる。

 

「ほんま、見てるこっちも気持ちよかったで」

「そやな。わたしも止められんかった――」

 

 口々にそんなことを言ってくるが、たった一度の和了りに対して少し大げさ過ぎはしないか。それに、相変わらず三人の表情には余裕が浮かんでいる。おれの方はといえば、今の段階ではわりと必死なんだが。

 そして園城寺、あんたに止められたくなくて、高打点を捨ててこの和了り形を選択したんだというに。

 

 

 親で連荘。再びサイコロに手を伸ばすと、場に新たな山が積み上がる。

 一本場。七巡目に面前で聴牌、ダマで江口から3900を出和了る。しかし、続く二本場で清水谷の狙い撃ちを受けて点棒分を重ねた同打点を放銃。

 親が流れて南二局を迎える。

 

 

 

南二局。東家(親)・江口。ドラ表示牌「⑧」。

 

 

「――ツモ!」

 

 五巡目。親番の江口が自模和了り。リーチ宣言から二巡跨いで引き入れたアガリ牌を卓上に叩きつけ、手牌を晒す。

 

 三三四四五④④⑦⑧⑨567 ツモ「五*」裏ドラ表示牌「一」

 

「リーチ、自模、平和、一盃向、ドラ二。6000オール!」

 

 高目親っ跳ツモ和了りで、東場に続く二度目の和了。再び早い巡目での高打点を見せる。やはり、ここぞというときの火力に迷いのない打ち筋、そして、わずかながらも自ら和了り牌を引き込む強運、その自信を裏打ちするだけの確かな実力が彼女にはある。

 この手のプレイヤー、ここで彼女を勢いづかせるのはまずい。

 

「――一本場や」

 

 

 

南二局・一本場。東家(親)・江口。ドラ表示牌「⑦」。

 

 

 一二三四五*六⑤⑥⑧⑧北北「⑦」

 

 八巡目でこの牌姿。リーチを掛ければ満貫に届く一向聴だが、対子の北は純カラで直線的にシャンポン待ちを組んだところで待ちが悪い。目の前の三人も安易にドラを切ってくれるほど甘くはないだろう。下家の雰囲気から察すれば、再び江口が高い手を張っていそうだが。

 

 視界の端に園城寺の捨て牌を捉える。六萬切りに続く直前の二萬切り。ツモ切りでないところを見ると、裏目を引いたわけではないのか。迷彩のために一度手牌に不要牌を抱えたという真っ当な考えも否定できないが、東四局の出和了り直前に見せたおかしな手順組、あれをもう一度仕掛けてくるとしたら……。

 

 ひとつ短い息を吐く。ここは手替わりを待って守りに入る。逡巡の末に北を打牌、そして、その一巡後、

 

「リーチ!」

 

 連続する江口のリーチ宣言。手牌から四萬を切り、場にリー棒を投げる。しかし――、

 

「通らんで、セーラ」

 

 上家に座る彼女から声が掛かる。一巡以内のリーチ宣言牌での出和了り。園城寺が再びそれを塞いだ。

 

 三五五五⑥⑦⑧222345* アガリ「四」裏ドラ表示牌「發」

 

「断么、赤一。一本場は2900」

 

 一盃向に生牌六萬と一枚切れ三萬の両面待ちを捨てて、わざわざ手の狭いカンチャン待ちを選択。やはり、彼女の和了直前での奇妙な打ち回し、次巡で狙った相手から和了るための待ち替えか。だが、江口の八巡以内の河の状況から察せるわずかな気配だけでは、単騎どころか数牌の種類の判別すら容易ではない。

 

 先ほどから時折見せる、園城寺の場の支配。清水谷のように、最も効率的な和了り形をデータ打ちで割り出し、河の状況や相手の聴牌気配から正確な読みを組み立てているわけではないし、江口のように、最も有効な手役を作りながら、ここぞというときの引きの良さに加えて、直線的な和了りに向かう打ち方ともまるで違う。

 

 いったい、彼女がなにを読んで和了り牌を絞ってきているのか。まだ、彼女の打ち筋の根幹にあるものが見えてこない。一巡以内の手替わりか……。

 

(そういえば、東場で一度……)

 

「うぁーん、やっぱりそう簡単に怜は抜けへんかぁ」

 

 江口が点棒を支払いながら、ため息交じりにつぶやく。そんな様子の彼女を見て、

 

「そう何度もセーラに連荘されとったら、うちらが適わんで」

 

 口元に笑みを含んで園城寺が返した。

 

「ほな、次いくで!」

 

 親番の清水谷がサイコロを回す。

 

 

 

南三局。東家(親)・清水谷。ドラ表示牌「5」。

 

 

 東三局で見せた彼女の一発ツモ。これまでの彼女の和了りの中で唯一の自模和了り。あのときも彼女は、直前に有効な手役を崩して待ち替えし、一発ツモを重ねて満貫を張り返した。

 あのタイミングでのリーチ宣言。直前までのダマ聴では手役がなく、ツモでない限り和了りはない。だから、彼女があの手で直撃の出和了りを狙っていなかったのは分かる。では、あの手牌で他家から出和了るには?……それゆえのリーチ。だが、それでは手役を崩して手の狭い悪待ちを選ぶ理由にはならない。

 

 ひとつ息を吐いて、再び行き詰まる思考を切り替える。

 

 それから、その発想における視点を入れ替えてみる。ならば、ツモで和了れる牌を待つためにダマで通していた?……捨てた手役分の翻数を張り返すためにリーチを重ねてきた?……そして、

 

 

(――次巡の自模和了りを狙って待ちを変えた?)

 

 

 そんなとりとめもない、浅はかな思考に至った瞬間、おれは思いがけず息をのんでいた。

 

 いや、相手の手役を読んだ出和了りの直撃狙いと、次巡のツモ牌を見越しての一発自模和了り狙いとでは、本来であれば比べるべくもなく、元より後者の考えは破綻している。だが、園城寺の場合に限っていえば、その前者における彼女の出和了りも、まともな常識の内にあるとは決して言えない。

 次巡に回ってくる自分のツモ牌なんて誰にもわかるわけがない。そして、河の状況や場の雰囲気、プレイヤー本人から感じられるリアルな情報の範疇を超えて、相手の打牌を読み切ることもまた不可能だ。

 

 何故、自分がこんな閃きとも言えない、単なる憶測を肯定しようとしているのかが分からなかった。

 

 自模和了りだけじゃない。出和了りだけじゃない。園城寺がやって見せている、その和了りに向かう直前の打ち回しに起因しているものはおそらくひとつ――、

 しかし、その瞬間、思慮に沈んでいた意識が唐突に引き戻された。

 

「リーチ――」

 

 ここで見せる、園城寺の二度目のツモ切りリーチ。手にした点棒を高々と構え、卓の中心へと勢いよく突き立てる。園城寺のリーチ宣言が場を支配する。こっちは未だ二向聴、手の出しようがない。

 

 次巡、彼女のツモ番。山からゆっくりと牌をツモってくる彼女の姿が、東三局のときのそれとダブって見えた気がした。そっと目を閉じて、盲牌により読み切ったツモ牌を卓上に思い切り振り下ろす。

 

「――ツモ」

 

 その和了りに、不思議と驚きは感じられなかった。

 

 四五*六六七八①②③789白 ツモ「白」裏ドラ表示牌「2」

 

「リーチ一発、自模、赤一。2000・3900」

 

 たかだか2000の手を7700で和了ってくる相手。彼女の打ち筋も、おれの憶測も、冗談にしてはあまりに笑えない。だが、もう一度、彼女がその和了りを見せてくることがあれば、それは――。

 

「――南四局、オーラスやな」

 

 

 

南四局(オーラス)。東家(親)・園城寺。ドラ表示牌「⑥」。

 

 

 二三四五⑥⑦⑨2256南南

 

 配牌で良形の二向聴。前半戦とはいえ前半南四局のオーラスでこの点差だ。いつものおれならとにかく和了り重視。序盤数巡の場を読んで組み立てていくはずだった。しかし――、

 

「――リーチ」

 

 さらに、続けて発揮される、園城寺による場の支配。再び、彼女の前に手に取ったリー棒が起立する。

 

(三巡目……)

 

 この半荘が始まって最速の仕上がりに、こっちも最大限の警戒をはらう。

 だが、今回はツモ切りではなく、その巡目でのツモ牌を手役に加えた手出しによるリーチ宣言だ。そして、もし彼女がそれを一発ツモで和了ることがあれば、それこそ、彼女が直前の聴牌をダマで通していた理由の証明につながる。

 

 そのとき、おれの中にあった関心はすべて、次巡で園城寺に訪れるであろう彼女の一発自模和了りに向けられていた。しかし、次にこの卓で上がった声は、園城寺の和了を告げるものではなかった。

 

「――ポン」

 

 おれがほとんど無意識の内に切った打牌、オタ風北を下家の江口が鳴いて掠める。ふとしてそちらに視線を移すと、彼女の鋭く細められた目は、今この場を支配する園城寺に向けられていた。その口元にわずかな笑みを浮かべて。

 

 再び、場を注視する。園城寺が先制リーチを掛けてきているこの状態で、さらに手を遅らせるようなオタ風ポン。今の江口の鳴き、彼女自身が和了りに向かうためのものじゃないとすると、

 

(園城寺の一発消しか?……)

 

 だが、今の江口の表情が気に掛かる。眉をひそめてその先の状況を窺う。続く、清水谷も純カラとなった北牌を合わせ打ち。

 そして、その園城寺のツモ番。彼女は山に向かって手を伸ばすと、ツモってきた牌をゆっくりと返して一見し……、

 

 打牌した――。

 

(和了れない?……)

 

 手出しからのリーチ、今回は普通の和了りを狙ってきたとでもいうのか。いや、これまでの彼女の打ち筋からすれば、それはリスクにしかならないはず。

 回ってこないと思っていた四巡目のツモ番。先の展開を訝しく思いながらも、手牌を一瞥し、ツモ牌を掴み取った瞬間、ぞくりとするような言い知れない気配を感じて目を見開いた。

 

(この気配、アタリ牌を掴まされた?)

 

 横目に園城寺の姿を捉える。……いや、そうじゃない。先ほどの江口の鳴き、表情、視線。これは、園城寺がツモるはずだった牌だ。つまり一巡前、

 

(園城寺のツモ牌がずらされた……)

 

 東三局のとき、意識的に感じられた、江口と清水谷のわずかに緊張をはらんだ視線が不意に思い起こされる。あのときの二人が、一発ツモを躱すために鳴ける牌を待っていたのだとしたら、納得がいく。

 

 ひとつ、短い息を吐いて、伏せていた牌を確認する。

 

(〝赤五筒〟……)

 

 先ほどの気配、そして彼女が一発ツモを見越した手順を組んでいたとするなら、これが園城寺の和了り牌。これをツモ切りすれば、やはり園城寺が和了るかもしれない。

 ほんの息を吐く程度の短い時間、すっと目を閉じて逡巡する。そしておれは――、

 

 ツモ切りを選択した。

 

「!……ロン――」

 

 園城寺が、少し慌てたように和了りを宣言する。その彼女の手牌は、

 

 二三四②②⑥⑦345678 アガリ「⑤*」裏ドラ表示牌「②」

 

 

 その瞬間、おれの中にあったとりとめもない憶測が、ひとつの確信に変わる。

 

 彼女が見ているもの。それは、場の状況でも、相手の手牌でも、河の捨て牌でも、視線でも、所作でも、気配でも、流れでもない。

 

 

 

(一巡先の先見――)

 

 

 

 やはり、園城寺だけはまともな打ち手じゃない。

 

 

「――リーチ、平和、断么、ドラ二。12000……です」

 

 おれから和了り牌が振られると思っていなかったのか、未だに怪訝な表情のまま点数申告をしてくる園城寺。そんな顔を浮かべたいのはこっちの方だ。対局中ということもあり、苦心してポーカーフェイスを気取ってみてはいるものの、そうでなければ四苦八苦と百面相しているところだ。まあ、そんな自分の姿など想像できないが。

 

「ほら」

 

 言われた通りの点棒を彼女に差し出す。さて、わざわざ直撃で振り込んでしまったせいもあり、あまり気の抜けない点差になってきた。まあ、それは最初から変わらないか。半荘二回の点数持越し、まだ前半のオーラスは終わっていない。

 

 だが、園城寺の打ち筋に確信が生まれたおかげで、まるで視界も思考もクリアになったかのように錯覚する。目の前に座る三人の打ち筋が見えてきた。これでようやく五部と五部……、いや、違うな。

 

 

 そこでふと、部屋の中がいよいよ薄暗くなってきていることに気がつく。いつの間にか、金色の光の帯は壁から遠ざかり、窓に映った空の色は、夕日に焼かれることなく深い瑠璃色に染まっていく。肌に触れる冬の冷たく澄んだ空気が、指先だけでなく、思考の片隅を少しずつ冷やしていく気がした。

 

 

 再び、園城寺がサイコロを回す。からから、からから。その音がどこか遠くに聴こえていた。

 

 

 

 オーラス、一本場――。

 

 

 

 

 

 




前半戦対局シーンでは、主人公の一人称視点を外したくなかったため、終始、彼から見える範囲で場を進行させました。
原作「咲-Saki-」の麻雀描写とは書き方が異なっていると思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話投稿を楽しみにしていただければ幸いです。

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