俺は真剣でダラッと生きたい   作:B-in

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三十二話

9月、新学期の始まった小学校では何時も通りの校長の長い話しが続いていたが…他の教師達はそれどころの騒ぎでは無かった。

自分達も知らない間に市・県の教育委員会からの監査が行われていたらしく。三人の教師が免職。今話している校長も今学期で退職処分。教頭は既に新しい人間に変わっている。

何よりも、3年生の生徒数が減りクラス合併となった事が問題で在った。

免職処分に成った教師も3年のクラス担任、そして居なくなった生徒もそのクラスの生徒。

僅かに残った生徒は怯えた目でとある生徒を見て居た。

 

その生徒が問題だった。

 

川神百夜と言う生徒だった。

 

一部の教師は知っているが名前だけと言う存在で特筆して知られているのは野球関連での事で在り、彼の普段を知って居るのは担任ぐらいのモノだった。

 

川神の名の通り、彼の祖父は川神鉄心。武の極地、と言う字面だけなら何とも物騒な人物であるが私立の高校の学長でもありそれなりにその人柄は知られていた。

 

「大方、川神院の門徒に何かやらかして仕返しを受けた事が在るんじゃないんですか?」

 

担任教師はそう言う。その言葉に他の教師も「そうかも」と思ってしまう辺り川神院の強さは浸透していた。実際には門徒は礼儀正しいモノが多く、一本芯の通った人間が多い。

そして、川神百夜の学校での評価も有る。

 

勉学はそれなりに出来、宿題等の忘れ物も無し。授業中に寝てしまう事も有るが、ソレは時々の事で在り普段は真面目に聞いている。

 

そんな評価で微妙に教師から信頼を得て居る川神百夜はと言うと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「百夜ー教室に戻るぞー…?」

 

「………zzz」

 

「目を開けて直立で寝れるのかよ…」

 

爆睡中で在り、準がその姿に戦慄していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 百夜

 

おはようございます。時刻は既にこんばんはですが、二学期も始まり睡眠不足な百夜です。

最近、睡眠不足な日が多くて困る。

 

いや、別にやましい事も自家発電している訳でも無いんだよ? ただ、弁償させたゲーム類を再びコンプしているだけなんです。

桜は途中から作業ゲー。個人的には3が一番好きかな?

 

「そこんとこどうよモロ」

 

『まぁ、あの手のゲームはそうなるよね。僕的には仕方がないと思うけど』

 

「だよなぁ」

 

現在モロと電話中。

 

「でさぁ、明日ゲーセン行く約束してたじゃん?」

 

『そうだね。何? 何か用事でも出来たの?』

 

「いや、そうじゃなくてさぁ。最近ストもやり込み過ぎて飽きてきた」

 

『名作だけどね。パターン入ると作業だしハメ無しでしてもパターン出来ちゃうもんね。どうする? 』

 

ホントどうするべ…

 

「まぁ、翔一辺りが何か遣らかすだろうから何時も通りで良いんじゃね?」

 

『それもそうだね…遣らかすで思い出したけど、この間百夜が岳人にプロテイン云々って説明して遊んでたじゃない?』

 

あぁ、アレね。

 

腹筋が割れる割れ無いって煩かったから、プロテイン飲んで一日百回の腹筋をすれば一週間で割れるって嘘ついたヤツか。

 

「何? アイツまだやってんの?」

 

それならそろそろ嘘を吐き直して一カ月って事にしないと…

 

『ウン。マジで割れたよ』

 

「?……マジで?!」

 

『今日はその自慢でクラスの女子から引かれてたよ…アレが無ければ結構良い奴なんだけど…』

 

「思い込みって凄いな。まぁ、アイツもその内気づくだろ?」

 

『そうだと良いなぁ。そろそろ切るね、お風呂に入らないと母さんに怒られるから』

 

「おう、じゃぁなー」

 

『うん、おやすみ』

 

アレですね。モロとの会話って癒されるわ。なんかこう普通って感じで。

 

いやですね。最近とか寧ろ今日何ですけども、白子…もとい小雪と同じクラスに成った訳ですよ? 前も言ったし、前に有ったクラスは解散。夏休み終盤に各家庭を回って脅しつけて事実を突き付けて、法廷で争う準備まで出来て居る事を伝えて示談に持ち込んで、尻の毛まで毟って来た訳です。

 

いやぁ、良い仕事したなぁと報告がてら大和の家に寄って景清さんとかと一緒に夕ご飯頂いたりとね、良い気分だったんです。

 

でもね、ももやももや煩いわ!!

 

懐いて来るのはなんかこう…嬉しいけども!! 準や冬馬に殆ど任せてるけれども!! 

 

寝せてくれ!!

 

と、言う訳でして…かなり眠たい。

 

(よし、寝よう。もう、寝よう。絶対に寝よう。)

 

「百夜や、九鬼の所の執事さんから電話が来とるぞ?」

 

「寝せて!! 百夜さん今日は貫徹ですよ?!」

 

爺様勘弁して下さい。

 

そう言う訳で、俺は寝る事にしたのだ。クラウディオさんからの電話はちゃんと取ったよ?

何でも、九鬼帝との面会は来年ぐらいに成るらしい。

 

ぶちゃけとても安心しました。

 

 

 

それじゃぁ、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

夢の中にも小雪が出てきた。ももやももや煩かったかのでマシュマロを口に詰め込んで黙らせた。

 

次の日、小雪が虫歯に成って居た。俺は悪くねぇ!! たぶん

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

 

 

そんな事が在ったなぁと、川神百夜は豪奢なシャンデリアを眺めながらボンヤリと思った。

 

「百夜様、これよりオークションが始まりますが…開始値は本当に?」

 

「へ? あ、ウン。20ユーロでいいよ。」

 

なんでこんな事に成ったのかと考えても川神百夜には解らない。

 

(何で夏休みの宿題で描いたポスターが競りにかけられてるの? 何なの? 馬鹿なの? 評論家とかちゃんと見なかったの?)

 

人の目に必ず入り、覚えてしまう様に色を付け、記憶に残る様に描き上げたポスターが芸術評論家の目にとまりあれよあれよとこんな所へ…

本人の名前や顔は九鬼の情報規制のお陰で報道されなかったがどうしてこうなったと頭を抱えるしかない百夜は隣で高笑いしている友人と好きな人をチラ見する。

 

「「フハハハハ!! 流石は百夜だ!!」」

 

(ユンゾンしてる?!)

 

だが、まぁ此処までは良いと百夜は考えを改める。一番の問題がその隣に居るからだ。

 

「いや~アレは俺が見ても凄いってのが分かったからなぁ。やるなぁお前!!」

 

頭を乱暴に撫でてくる、友人と同じバッテン傷を額に持ち、友人と同じ髪型にスーツ姿の男。

 

九鬼帝が要るからである。

 

因みこの後は四人でディナーの予定で在る。

 

(どうしてこうなった!!)

 

全力でやったのはお前だろうと、井上準が居ればツッコンダだろう。

事実、ポスターが川神市の市役所前に張り出されてから川神市はキレイになって行った。

咥え煙草をする者も、ジュース片手に歩く若者も、携帯灰皿に、近くのゴミ箱にとチョットした手間を面倒臭がらずにその一手間を行う様になった。自分勝手な労力消費削減…つまりはポイ捨て等はしない人間が増えた。

 

例を上げれば、川神市の近くに住む赤・青・黄のフルフェイスの仮面を被った若者三人組がポイ捨てをした人間の胸倉を掴んで掃除させたり。

深夜の町を走りまわって居た暴走族が突然

 

「ヒャッハー!! 汚物は消毒だー!!」

 

と無断で大型の家電等を捨てようとしていた者を襲撃したり

 

「ヒャッハー!! ゴミはゴミ箱にだー!!」

 

と、言いながら昼間の河川敷を掃除したりと、イロイロと小さなカオスが広がって居た。

 

九鬼英雄のみがその原因に気づいていたのだが

 

(…町はキレイになった良からず達も何故か社会奉仕をするようになった。…止める理由がないな!!……若干洗脳効果が在るようだが…宣伝用の絵なら多少は仕方がないだろう)

 

と、黙って居たりする。

 

遠く離れたフランスの街中では今更な事を考えながら、思うより早かった実父と友人の邂逅には少々ドキドキしたが出だしは上々であるし、父も友人の事を気にいった様で一安心である。

 

だが

 

「帝さん」

 

「おいおい、英雄のダチなんだろ? もっと砕けろ、おじさんでもいいぜ」

 

ソレをブレイクするのが

 

「そんじゃミッチー」

 

「いいなソレ!! 今度局にも呼ばせてみよう。なんだモッチー?」

 

「モンスターファーム2?! 百夜さんはあんな桜餅じゃありません!! まぁ、良いか。一つ言わなきゃならん事が有るんですよ」

 

「おっ、なんだ~? 今は気分が良いからお土産も買っちゃうぞー?」

 

川神百夜である。

 

「揚羽さん貰うわ」

 

「応。幸せにするなら持っていけ」

 

(クラウディオー!! 早く戻って来い!!」

 

「おやおや、早速ですなぁ」

 

楽しそうに笑うクラウディオは慌てて心の叫びを肉声として放ってしまった英雄に微笑みながらそう言った。揚羽は赤面ショートしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 百夜

 

 

 

こんばんは。百夜です。前もこんばんはだったような気がしますが、私は元気です。

なんだか、本気で書いたポスターが競りに掛かる程の大騒動に成ってしまいましたが忘れてください。

ほんの出来心何です。ちょっと好きな人のご家族への印象を良くしたかっただけなんです。

 

値段? 200万ユーロだってさ。

 

(世の中狂ってる)

 

そう考える俺は正気だと思います。

 

「俺、エスカルゴって初めて食う」

 

「実は俺も初めてなんだよなぁ、中々喰う機会が無くてさ-」

 

あっ、十年来の親友の様な会話をしていますが帝さんもといミッチーはとても親しみやすい人間でした。

なんか…翔一に近い感じがする。両方共に運が馬鹿みたいに良いし。翔一の方は自分のピンチの時に発揮されるけど、ミッチーは常時発動見たいな感じ。

 

「英雄、此処も九鬼系列?」

 

「うむ。外食系にも手を出しているからな!! 三ツ星は当たり前だ。」

 

(それにしても百夜よ。)

 

(どしたん小声で?)

 

皆で食べる時のひそひそ話はマナー違反とは言わないけど、受けは悪いぞ?

 

(そろそろ現実を見よ)

 

…見つめたくないから話題逸らしてんだよ!!

 

おさらいしましょう。今、こんな状態です。

 

九鬼揚羽と婚約確定

    ↓

我が世の春が来た

    ↓

でも、妾の三人は作ってね

    ↓

落ち込んだりもしたけれど頑張って説得してみよう

    ↓

父親の許可出たコレでかつる!!

    ↓

説得中(今ここ)

 

半ば心が折れそうなんですがね!!

 

ってかミッチー!! 何でそっち側?! アンタ親父でしょうが!!

 

「ミッチー、普通はコッチ(妾反対派)だろ?!」

 

「いや、嫁公認のハーレムとか男の夢だろ? 俺も局以外に孕ませちゃった女要るし?」

 

どうなってんの?! お家騒動とか百夜さんは嫌ですよ!!

 

「ちょ、英雄さん? マジ?」

 

「紋の事か? マジだが? いや、流石に我も父上に対して想う所が無いわけではないが…紋の母君は既に他界されて居てなぁ。何よりも妹は可愛い!!」

 

おぅふ、ひ、英雄さん? 

 

「いやまて百夜。父上と百夜とでは話は別だぞ? 我としては姉上と仲睦まじく過ごして欲しい。」

 

だよね!! ハレムとか許されないよね!!

 

「成らん!! 我以外の女の三人ぐらい囲い愛し養う気概が無くては将来九鬼を背負う事など出来ぬ!!」

 

何を断言してますかこの人は

 

「だーかーら!! 常識的に考えて!! 平等に複数人の人間を愛するってかなり無理難題何だよ!! 俺が好きなのは揚羽さん一択なの!! 他は無理なの!!」

 

「ぬぅ…だが!! 我の伴侶と成るからには大勢を背負い、養っていくと同時にその者らの生活の保障にも責任を持たなくてはならぬ!! 我以外の女子も背負えぬ者には勤まらんのだ!!」

 

根本の部分で俺との認識が違う。だから平行線なんだけど、こういう時に自分の語彙の少なさが憎い。

どう違うのか解るんだけど説明する為の言葉が見つからない。

あぁ、アレだ。

 

(平等とか無理)

 

均等に、平等に愛を注ぐとか出来る訳だない。愛にだって違いが在るさぁ。

 

良い変えてしまえば、俺は姉ちゃんを愛してるし、爺様も、釈迦堂さんもルーの事だって愛してる。

一子もモロも岳人も大和も翔一も…英雄も冬馬に準に小雪の事を愛してる。

 

家族愛、友愛、親愛。そう言った愛だもの。ホモォでは無いのよ?

 

でも、揚羽さんの事は異性として、他人として、一緒に居たい人として…一人の男として愛してるの。

 

どう、伝えれば良いんだろうか。

 

一気に体が重くなる。精神的な物かも知れんけど、どう行ったらいいモノか。

手にしたグラスに背後の夜景が見える。

高層ビルの頂上近く、最高の夜景を見ながらのディナーは本来ならば最高の物なんだろう。

 

(今の俺にはキツイわぁ)

 

何だろう。何処かに飛び出したい。と言うか逃げ出したい。

ほら、遠くに見える夜景には此方に近づいて来る…ん?

 

「英雄さんや」

 

「どうした百夜?」

 

いや、うん。金持ち達の世界は狂ってるって先ほど見たばかりだから一応聞いておこう。

 

「都市部での夜間飛行ってハングライダーでも良いの?」

 

「…現実に戻って来い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side out

 

 

ワインの香りを楽しみながら、九鬼帝は眼前の少年をそっと見つめた。

 

肩ほどまである黒髪は濡れた鴉の羽の様な純粋な黒。肌は自分よりも少し白め。少々垂れ目気味の瞳には揺るがない何かと、惰性やらなんやらが見れる。

 

和服が似合いそうな、今時には少ない少年だ。

 

(揚羽も良い男を引っ掛けたなぁ)

 

そう思う。帝は川神百夜が何故妾…愛人を作らない、作りたくないと言って居るのかが解るからである。

正にお前が言うな。と言われてしまえば何も言い返せなくなってしまうが…まぁ、解るのである。

複数の女性とそう言った関係に成りたいと言うのは、ブッチャケて言えば性欲と支配欲に虚栄心等を満たしたい一心の願望なのだ。

 

心を、欲を満たしたいのである。

 

(後数年もしたら解るだろうがな。)

 

そしたら、仲間が出来る!! とか、考えている辺り妻に対して少々の罪悪感が在るのかもしれない。

 

だが、好きに成ってしまったのだから仕方が無い。愛してしまったのだから躊躇わない。

妻と愛人どっちを取るかと言われれば両方と答える。

それぐらいには九鬼帝は強欲なのだ。

 

それと同時に

 

(どうすんのかなモッチーは?)

 

彼は新規新鋭の財閥当主である。川神百夜の精神的な疲労等はお見通しなのだ。そう言う風に仕組んだのだから分からない筈が無い。

 

高が一芸術評論家の目に留まっただけで此処までの事に成る筈も無い。此処まで来るのにはヨイショが在って当たり前なのだから。まぁ、それでも

 

(流石に200万ユーロは凄ぇわ。ホント)

 

子供が持つべき金額では無いのは確実で、九鬼の情報規制が無ければ今頃エライ事に成って居ただろう。そういうレベルだった。

 

でも、その程度じゃ娘を幸せに出来るとは思わない、思えない。

 

(あぁ、おもしろいなぁ。コイツ、でも、まぁ…こっちも家族の事だけじゃねぇけど命欠けてんだ。男を見せてみろ?)

 

スッと視線を逸らす。自分の近くにいる執事、クラウディオと目が合う。

クラウディオは目礼で返し、少しだけ身構えた。

 

 

瞬間、川神百夜の叫びと爆音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九鬼帝、家族や会社に勤める社員達の為なら自分の命をチップにするぐらいは当たり前の様にする男である。

 

 

 




九鬼帝・川神百夜・風間親子が冒険に出かけるとギャグ風味なスプリガン+αな話しになってしまう。

いっその事書いてしまった方が良いのだろうか?

今はアレだけどね。まずは地盤固めの話し。次に方針・信念(野望とか将来の夢とか)

で、ちょっと君主じゃなくてつよきす成分入れてガチ戦闘書いてから

ようやっと真剣恋…

脳内プロットをざっと整理したらえらい事になったよぉ。

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